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第02.5話:エメラルドグリーンの少女

 アルクスクルム魔術学園といえば、誰もが憧れる超有名な魔術学校。世界には魔術を学べる場所がいくつかあるけれど、アルクスクルム中央学園都市といえば、あの偉大なる魔法使い様のお膝元!つまり、由緒正しき魔術を学べる正統派学校なのだ。

 しかも、そこには貴族と平民の区別がない。お金持ちと貧乏人も関係ない。考慮されるのは、魔術の才能があるかないかだけ。地方を巡礼する聖フォルティ教の使者様に可能性を見出してもらえれば、私にも可能性がある。

 私は小さな頃から半年に一度やってくる使者様に、何度も魔術の特訓の成果を見てもらった。

 そうして、十二歳の秋、その努力を認めてもらってどうにか試験の推薦状をもらうことができたのだった。

 両親はなんてことのない平民。田舎の村で、小さな商いをしている。そんな家庭から魔術師が出るかもしれないとなれば、村総出のお祭り騒ぎ!

 まぁ、期待を背負って、大金叩いてやってきたアルクスクルムでの試験は、正直落ちたと思ったよ。

 攻撃魔術は的にちゃんと的中できる人ばかりだし、防御魔術はきちんと攻撃を防げる人ばかり。筆記は得意だったから、そこは自信あったけれど、私の半分の時間で筆を置いて会場を出ていくすごい人もいた。さすがに自信を無くすよ……。

 それでも受かった!そう、受かったんだ!

 戦後で人手が足りていないとか、魔獣の数が増えてて小さな可能性をも取りこぼす訳には行かない、みたいな大人の事情があるのは分かってた。けど、そんな補欠みたいなおまけでも、嬉しいものは嬉しい!

 学費も寮代も掛からない!しかも教材類は先輩達の残したものを貸与してもらえるシステムがある!贅沢をしなければ、少しのお小遣いでたくさんのことが学べる学園!すごい……、すごすぎる!

 そんなこんなで、期待に胸を膨らませながら、私は入学式に挑んだ。


 緊張で張り裂けそうだった。魔導エントランスにいるのは、貴族出身みたいな子ばかりで、上品そうな両親に見送られ、荷物もたくさん。私はそんな子達の中の荷物に紛れて押し込まれる。何この子、みたいな視線がちょっと痛い。

 転送は人生で三回目。試験の時の行きと帰りで経験していたけど、急に別の場所に飛ばされる感覚は不思議で、ちょっと目が回る。どうやらコツがあるみたいだけど、どうすればいいのか私にはよくわからない。

 馬車酔いみたいな症状に見舞われた私は、エントランス内の椅子に座って休んでいた。そんな時、興奮した様子で近くの男の子たちが騒いでいるのが聞こえてくる。


「おい、あれ見てみろよ」

「うわっ、めちゃくちゃかわいい!お前声掛けて来いよ」


 私だって女の子!しかも、村では結構可愛いって有名だった。お貴族の子みたいなお上品さや小綺麗さはないかもだけど、負けてない。

 そう思って見上げた私は、目が釘付けになった。

 絹糸のような繊細で真っ白な髪をたなびかせ、すたすたと足早に、けれどスカートは乱れない綺麗な歩き方。冬の朝のまっさらな雪原のような綺麗な肌がほんのり紅潮していて、どこか憂いげに伏せた瞳が色っぽい。

 貴族の子女とは違って荷物ひとつ、御付き一人つけないでやってきた少女。貴族でさえ相乗りが普通の転送魔方陣を、たった一人で乗って来ちゃうってことはかなり権力者ってことなのかも。

 わぁ……、あんな子と仲良くなれたらなぁ。

 私は、それまで感じていた気分の悪さなど吹き飛んで、彼女を追いかけた。

 もう一度見ることを楽しみにしていた魔導エントランスから見下ろす都市の絶景、かつてのお城を改修した歴史ある学園の校舎。それらも目に入らないまま、私は声を掛けるタイミングを伺いながら、彼女に近づく。

 ……うわっ、これじゃあ私ストーカーみたい。で、でも、この子が可愛すぎるのがいけない!はぁ、ずっと見てられちゃう。なんなの、そのアンニュイな表情。きょろきょろして可愛いぃ。そうだよね、知らない人もいっぱいで緊張するよね。白い髪、綺麗だなぁ。触ってみたいなぁ。

 あっ、馬車に……。

 そう思った矢先、彼女が乗った馬車を担当していた行者さんが私に声をかけてくる。

 

「はい、馬車乗ってぇ~。そこの子、はい!」

「え、私?」

「そうだよ、いいから。ほんとは男女分けるんだけど、女の子が乗り込んじゃったから」


 なるほど、確かに男子五人の中にこんなかわいい女の子を一人は危ない。私が守ってあげないと。


「ありがとうございますっ!」

「ん?ど、どういたしまして?」


 首を傾げる行者さんを横目に、私はまんまと少女の隣に座ることに成功した。

 あぁ、私はなんて幸運なんだろ!可愛い、可愛すぎる。すごい良い匂いする。みんなこの子のこと見ちゃってるし。でも、当然だよね。やばい、ちっちゃい……。肌白すぎ。まつげ長い。なんなの、その表情!もうすりすりしたい!

 よしっ。この幸運、絶対に離さないんだから!

 

 そうして、ユーリ・クロウとウィン・ネルヴァンスは出会ったのだった。

今日は少し短めですが、こういった他の視点でユーリの視点と周りの視点ギャップみたいのを感じられるTSモノって…よくないですか?よいですよね。そう、いいんです。

たまーに挟んでいこうと思います。恋心寄せる男の子モブ視点とか、書きたいなぁのきもち。完全に本編に関係ないんですけどね

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