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君に詠む戀愛譚  作者: 神品朋依
001 再会
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001 再会~はじまり~

『ねぇ、ほら、早く!行くよっ』

『ちょっと待って。落ち着いて、ね?

そんなに慌てなくってもまだ時間は大丈夫でしょ?』

『また、そんなこと言って!早く!』

腕を取られ、半ば引きずられるように後をついて行く。


『先生-!』

実紀みのりがノックもせず勢いよく

ドアを開け教室に滑り込む。


『Ms...』

部屋の奥から軽く窘めるような声がする。

『連れてきたよっ!私の親友!詠美!ほら、入って!』

促されて入室する。


窓から差し込む光を背に、佇む男性の姿。

優しげな雰囲気、柔らかな表情、

陽射しを受けキラキラと光る艶やかな黒髪。

すらりと長い手足に細身のシルエット。

一度も会ったことがないはずなのに、

どこか懐かしく、『やっと再会えた』

そんな感覚が波紋のように身体に広がる。


『せめてドアはノックしてから入りましょうね、Ms』

男性が少し困り顔で、けれど優しい笑みを浮かべ

手元の資料から視線を上げ美紀に注意を促した後、

ゆっくりとこちらを向いた。


視線が合った瞬間、

ほんの、一瞬、その顔が美しく歪んだ気がした。


哀しみ、苦悩、憐憫、慈愛、色んな感情が混ざった、

複雑な、とても複雑な表情。


『そんな顔しないで、もう大丈夫だから』

なんの根拠もない、そんな言葉が胸の奥から溢れ

口から漏れ出そうになる。


自分は、何を言おうとしたのだろう?

彼との出逢いはこれが初めてなはずで全く知らない人。

なのだけど、知っている。

そんな確信めいたものがある。


さっきから、おかしな感覚ばかり湧いて降ってくる。

一体、何なんだろう?

これがいわゆる既視感デジャビュといわれるもの?


『初めまして、こんにちは』

人好きのする笑顔で初対面の人に対する

一般的な挨拶を口にされる。


先ほど垣間見た気がした憂いのような表情は、

跡形もなく消えている。

やっぱりただの見間違いだったのかな?

そう思う反面、

見間違いなんかじゃない、と

胸の奥がじわりとざわめいている。




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