36:section of カグヤ 【モネの一族】
「ジュナ!?」
僕は目を見開いた。
まさかのデア様はジュナだったのだ。
1000年の時を超えて、僕はジュナに再会した。
「カグヤの不老不死の薬のおかげでね、元気に永遠を生きてるよ」
ジュナがニッコリと笑った。
「リヒトとセレネは……」
僕は両サイドにくっ付いている双子を交互にみた。
2人は嬉しそうに笑っている。
「そう。私とカグヤの子供だよ。不老不死の薬を飲んだ時に、もうお腹の中に2人がいたの。だから、リヒトとセレネも不老不死なの」
ジュナが柔らかく微笑んだ。
それでこんなに距離感が近いのか?
僕とジュナが2人の親だから……
リヒトが、困惑気味の僕を見ながら喋った。
「だから、ジュナに対してだけ守れっていう命が出てたんだよ。僕たちがお腹にいるからね。不老不死だけど、お腹の胎児がどこまで大丈夫か分からないから、万が一を考えて。海に落ちた時はすごく心配したけどね」
そう言って笑ったリヒトは、ジュナにそっくりだった。
そうか。
ナオに似ていると感じるのは、ジュナに似ているからなんだ。
「……モネの一族って」
僕は再びジュナを見た。
「私とカグヤの子孫かな。あれからツキシロ財閥を大きく発展させて、世界的なトップに君臨するようにしたの。それがモネの一族の前衛」
そこまで喋ると、それまでニコニコ笑っていたジュナが、突然悲しそうな表情をした。
「あれから頑張ったんだよ。この日のために……」
「ジュナ……」
僕はジュナに近付き、そっと彼女を抱きしめた。
そしてキスしようと、彼女の瞳を覗き込んだ。
「ちょっと待って」
空気を察したジュナが真っ赤になった。
そして僕の口が彼女の両手で覆われる。
「複雑な気分。これは……浮気?」
ジュナが珍しく半笑いになって狼狽えている。
「パパ、怒ると思うわよ」
「嫉妬深いから、例え過去の自分でもな」
セレネとリヒトから野次が飛ぶ。
「??」
僕はジュナをやんわりと抱きしめたまま、首をかしげた。
「……何か勘違いしてそうだね。私はあれからカグヤと一緒に生きてるんだよ。永遠に一緒にいようっていう約束を守ってくれてる」
「…………もう1人ここにカグヤがいる?」
「そうそう。今は連邦星府の軍に暴れに行ったかな? 1000年越しの復讐だね。アハハ!」
ジュナがケラケラ笑った。
「僕は……2103年のジュナの元に戻れるの?」
僕が静かに聞くと、ジュナは一旦笑うのをやめた。
そして今度は優しい微笑みを浮かべた。
「戻れるよ」
「!!」
思わず見開いた僕の目から、涙がハラハラとこぼれ落ちた。
「泣かないで。カグヤ」
ジュナがゆったり笑いながら、僕をあやすかのように優しく抱きしめ返してくれた。
悪夢を見て2人で朝日を見た時みたいだ。
「……だから、2103年に戻るカグヤとキスするのは、ちょっと……複雑」
ジュナが照れながら、僕の耳元で打ち明けてくれた。
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それから僕は、2203年のジュナのもと、それまでの歴史の変遷を学んだ。
2203年のカグヤは、軍を解体、再構築するために奔走しているようで、まだ会ったことは無かった。
僕とジュナは、初めに双子に案内された部屋で、窓際に並んで立っていた。
ジュナがそっと喋り出したので、僕は耳をかたむけた。
「モネの一族として、私たちは人類の影のトップに立ちながら、出来るだけより良い選択が出来るように手助けしてるの。出来るだけ多くの人を幸せにしたい……長く生きてる間にそう思うようになったんだ」
ジュナが窓から外を見ながら語った。
彼女の目線の先には地球が見えていた。
「〝デア〟は象徴的存在。私であり、カグヤであり……たまにリヒトやセレネもその役割を負っているの」
ジュナが隣に立つ僕を見上げた。
「本当はここ最近の星間の戦争も止めたかったんだけど……連邦星府の軍の力が強くなっててね、モネの一族の力と拮抗してた。……ごめんね。カグヤの罪悪感を少しでも軽くしたかったのに」
ジュナが悲しそうに俯いた。
「…………」
僕はそっとジュナを抱きしめた。
どの時代の彼女でも、悲しそうにしているジュナは慰めてあげたい。
「けど、今回、裁判の判決を覆してまでカグヤを連れ戻したのは大きな過ちだった。このことで一気に形勢逆転できる。……明日、形だけの裁判が開かれるから、最後にそこでカグヤにも手伝って欲しいの。それが無事に終われば2103年に帰れるから」
ジュナが僕をそっと抱きしめ返しながら説明してくれた。
「裁判?」
「そう。軍の最高責任者を裁く裁判。カグヤには証人尋問として参加してもらうだけだから。私のカグヤに出てもらってもいいんだけど、本当に時空を超えた渡航歴を調べられるから、若いカグヤしか出席出来ないんだ」
ジュナは僕を見上げて、ニッコリ笑って続けた。
「ごめんね。早く2103年のジュナの元に戻りたいんだろうけど」
「そうだけど、僕も軍には思う所があるから、手助け出来るならしたい」
「フフッ。ありがとう」
僕たちは笑い合ってから、同じタイミングで窓の外を見つめた。
そこから見える地球を、僕は初めて美しい星だなと感じた。




