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Cry for the moon 〜永遠の愛を求めるジュナと未来から来た青年カグヤの竹取物語  作者: 雪月花


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18:section of ジュナ 【短期留学編】


 私たちは愛車に乗って次の目的の国に入っていた。


 ブームスランをオートモードにしてゆっくり走らせる。

 風景をゆっくり眺められるので、窓をフルオープンにして。


「傷が綺麗に治ってよかったね。2103年でも、皮膚の再生技術がある程度発展していて良かったよ」

 カグヤが助手席で、風を気持ちよさそうに浴びながら言った。


「うん。カグヤがすごい剣幕で病院の先生に詰め寄ったから、丁寧に治してくれた気がするし」

 オートモードなので、私はハンドルから手を離して袖をまくり、腕を見つめた。

 そこにあった切り傷は、跡形もなく消えていた。




 今回はこの国のカレッジに、カグヤが短期留学生と偽って2週間だけ潜り込む。

 ここのカレッジの教授が研究している、生き物の遺伝子データが欲しいらしい。

 

 私が本当に通っているカレッジの生徒では無く、カグヤは遺伝子工学の学科があるカレッジの生徒ということになっている。


 私には専攻学科が違うカレッジ生になりきることは無理なので、新婚ということでくっついてきただけの設定だった。

 あくまでもこの国のカレッジに潜り込むのは、カグヤ1人だった。

 

 まぁ専攻じゃない学問の話なんて、世界共通語でなんて喋れないよね。


 この国はありがたいことに、世界共通語が一般言語だった。

 それなら私でも喋れた。


 


 そんなことを考えていると、今回2週間滞在するホテルに到着した。


 そこでブームスランを一旦預けて、私たちはオートタクシーでカレッジに向かった。




**===========**


「じゃぁ、ここで待ってるね〜」

 私は、カレッジの校庭にあるベンチに座ってカグヤを見送った。

 学長からの直々(じきじき)の挨拶があるらしい。


「知らない人について行っちゃダメだよ」

「フフッ。子供になった気分だね。パパいってらっしゃい」

 そう言って笑う私に、カグヤは苦笑しながら去って行った。




 しばらくベンチでRin(リン)-com(コム)を立ち上げて眺めていると、誰かが私の隣に座った。


「君、ここのカレッジ生じゃないよね?」

 淡い茶髪に水色の瞳をした、かっこいい男の子が座っていた。

 彼からは遊び慣れた雰囲気を感じた。


「うん。夫がね、ここに短期留学しに来たからついてきたんだ」

「へー。もう結婚してるんだね。もしかして今日、短期留学生の歓迎パーティをガーデンでしてるって噂を聞いたけど、そいつ?」

「そうじゃないかな?」


 カグヤはさっそく歓迎パーティに出席してるのかな?

 

「こんな可愛い奥さん置いといて? じゃぁ代わりに僕と、どこか遊びに行かない?」

「知らない人についてっちゃダメって言われてるの。フフフッ」

 私はクスクス笑いながら言った。


「僕はアデム。君は?」

「私はジュナ」

「……ジュナ……いい名前だね。これで知らない人じゃないだろ?」

「フフッ。そうかもね。じゃぁその歓迎パーティを見てみたいから、エスコートしてくれる?」

「結局、夫に会いに行くんじゃん。まぁ可愛いジュナのお願いは断れないけどね」

 アデムは苦笑しながらも、ベンチから立ち上がった。

 私も立ち上がり、彼の腕をとってパーティ会場に連れて行ってもらった。




 会場につくと、中央に人だかりが見えた。

「あー、おそらくあれの真ん中に夫がいるかも」

 私は思わず目を細めた。

「すっごい女の子たちが群がってる。ジュナ、あそこに行くのか?」

 アデムも引き気味に答えた。


「……こうなってると思って、助けてあげようかなって考えてたんだけど……もうちょっと様子みようかな?」

 私は冷や汗をかきながらアデムを見上げて、喋り続けた。

「あんなナイスバディのスラッとしたお姉様たちに勝てる気がしないや」

「そう? ジュナは可憐でいいと思うよ」

 アデムが笑いながら「僕のタイプ」と付け加えてきた。


 この国の遊び人は口が上手いなー。


 その時、人だかりの中からカグヤの声が聞こえた。

「ジュナ!」

 そうしてやっとの思いで抜け出してきたカグヤが、私のもとに歩いてきた。


「何でそんなやつといるんだ?」

 カグヤが、私たちの自国語で聞いてきた。


 私はツンと顔をそむけて、アデムの腕を握ってる手に力をこめた。

「この人はアデム。親切に私をカグヤの所まで連れて来てくれたの」

 私も自国語で答えた。

 

 何でか分からないけど、私はカグヤにちょっと怒っていた。


 カグヤはアデムに目線を移した。

「ジュナを、ここまで連れて来てくれてありがとう。もう大丈夫だから、エスコート変わってくれるかな?」

 カグヤは少し冷たい目線で世界共通語を喋った。

「もちろん。……ジュナ、また遊ぼうね」

 アデムがそう言って私に笑いかけながら、そっと離れて去っていった。


 さすがだ。

 アデムは慣れてるのか、ちょっとした修羅場からの立ち去り方もスマートだった。




「今日の用事は終わったから、もう帰ろうか」

 カグヤが私の手を握った。

 周りの女の子たちがヒソヒソ喋り出す。

 カグヤの相手が私だから、何か悪口でも言われてそうだ。

「…………」

 私はムスッとしたままだった。


「何で怒ってるの?」

 カグヤはそう言いながら私を引っ張って歩き出した。

「私には知らない人についていくなって言いながら、カグヤは綺麗な女の人たちにチヤホヤされてるから……」

 私はむくれながらブツブツ言った。


「もしかして、それって……」

 カグヤが立ち止まって私を振り返って見た。

 そして嬉しそうに笑う。

「嫉妬?」

「!!」

 私は言われてビックリした。


「違うよ! 私もチヤホヤされてもいいでしょって……」

 まずいことに、そう言いながら照れてしまった。

 これじゃぁカグヤが言うように、嫉妬したみたいだ。


「あはは!」

 カグヤが本当に嬉しそうに笑った。


「ジュナからの初めての嫉妬だ」

「…………」

 とても嬉しそうなカグヤを見てると〝そういうことにしとこうかな〟とか思ってしまい、私はジトっとした目を向けたまま、何も喋れなかった。


 するとカグヤが私に近付いて耳元でしゃべった。


「安心して。僕はジュナだけが好きだから」


「……うん。知ってる」

 不貞腐(ふてくさ)れている私は、照れ隠しで可愛くない返事をした。




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