16:section of カグヤ 【海を超えて2】
僕たちは目的の国に無事につき、宿泊を予定していたホテルに到着した。
「うわぁ! すごい素敵なところだね!」
ジュナが、ホテルの広々としたエントランスホールに入った途端に、目をキラキラさせた。
このホテルは古城のようなデザインになっており、エントランスホールの天井は、アーチ状の立体が美しい模様を作っていた。
受付でRin-comをかざしてチェックインした僕たちは、荷物を運んでくれるポーターに案内されて、部屋に通された。
ジュナが部屋を見渡しながら歓声を上げる。
「わぁ! 部屋も可愛くっていいね。お姫様になったみたい」
「フフッ。そうだね」
「カグヤは王子様だもんね」
「それは光栄だね」
はしゃぐジュナを僕の腕に閉じ込めながら、僕らはソファに座った。
そして彼女を、自分の膝の上に横を向いて座らせた。
すると僕たちは目線が同じになり、ジュナが楽しそうにおでこをくっつけてきた。
「王子様。私、有名なルーフトップバーに行きたい」
「いいよ。どこにでも連れてってあげる」
僕たちは笑い合いながら、キスを交わした。
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僕とジュナは、さっそく彼女が行きたいと言ったバーに来ていた。
宿泊先とは違うホテルの屋上に、この国の街並みを一望できるバーがあった。
僕とジュナはバーカウンターに並んで座り、心地よい音楽とお酒を楽しんでいた。
ちょうど夕日が沈んでいる街並みは、キラキラオレンジ色に輝いて美しく、開放感のある外の空間が気分を高揚させた。
「明日は南に移動して、目的の海に行くんだよね?」
少し酔ってきたのか、頬を赤くしたジュナが僕を見つめていた。
「そうだよ。その海の地中に欲しい材料が埋まっているそうなんだ」
「海の中まで取りに行くんだね」
「うん。専門の人にインストラクターを頼んでるよ」
「アクティビティの延長みたいなんだよね? 楽しみ!」
ジュナはすっかり旅行を満喫しているようで、楽しそうに笑った。
そして僕たちは寄り添いながら、目の前の風景を眺めて過ごした。
日が沈み、街並みがライトアップされて、また違った美しさを描き出した。
以前の僕なら、風景になんて少しも興味を示さなかった。
けれどジュナと見る風景は、彼女のように活き活きとしてどれも美しく見えた。
それは、愛しい人と共に過ごしているからだということも、分かってきていた。
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あれから僕たちはバーを出て、すっかり夜になった異国情緒あふれる街並みを見て回った。
手を繋いでときおり笑い合った。
そしてゆっくり遠回りしてから、宿泊しているホテルに帰ってきた。
部屋に通された時にも座ったソファに、僕とジュナはくっついて座り寛いでいた。
「ジュナ、ついてきてくれて本当にありがとう」
「いいよ。どこも楽しそうだったし。あんな素敵な景色をカグヤと見て過ごすなんてね。本当のハネムーンみたい!」
ジュナは僕に向けて無邪気に笑った。
「結婚したんだし、僕は本当のハネムーンも兼ねてると思ってるよ」
「えー。材料を集めるために結婚したのも大きいんでしょ?」
「そう思われてるなら悲しいな。研究を完成させたいのは、ジュナがとっても喜ぶものだからなのに。ジュナの為なんだよ」
僕はジュナの頬を両手で優しく包み込んだ。
「……そうなんだ。〝永遠を証明する〟ってやつ?」
「そうだよ」
「ふーん。楽しみにしてるね!」
ジュナが不思議そうにしながらも、屈託なく笑った。
僕もその笑顔を受けて、穏やかに笑い返した。
そしてジュナの唇に自分の唇を重ねる。
ジュナも僕の背中に腕を回して、抱きしめてきた。
「どう? 僕の愛は足りてる?」
「フフッ。まだまだ足りないから、もっと感じさせて?」
ジュナがそう言って、自分から仰向けにソファに倒れながら僕を引っ張った。
僕は誘われるままにジュナに覆い被さった。
そして僕を嬉しそうに見上げている彼女とまたキスをした。
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お互いがお互いを求めて肌を重ねる。
境界線など無くなるような錯覚を覚える瞬間だった。
そのひとときに、僕はとてつもない幸福を感じていた。
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翌朝、僕は宿泊しているホテルのバルコニーに出ていた。
清々しい朝で、バルコニーからの景色を思わず眺めていた。
ホテル内の整備された綺麗な庭園や、古城の厳かな建物が見えた。
そこを見たことのない鳥たちが通り過ぎていく。
ジュナはまだベッドの中で丸まって眠っていた。
「…………」
僕は、室内の空中ディスプレイが表示する時刻を見た。
そろそろ起きてもらわないといけない時間なので、僕は眠っているジュナに近づいてキスをした。
「ジュナ、起きて」
「…………うーん」
まだ目が開いてないジュナは、うつらうつらしながらも体を起こした。
そして目をこすろうとして、彼女はあることに気付く。
ジュナの左手の薬指に指輪がついていた。
彼女はゆっくりと目を開けて、指輪を見つめていた。
「結婚指輪っていうんでしょ? ジュナが僕のものって証みたいでいいね」
僕はジュナの近くに座って、自分の指輪も彼女に見せた。
お揃いのシンプルなシルバーの指輪だ。
「…………カグヤって案外強引だよね」
「でも、ジュナ、そうゆうの好きでしょ?」
「指輪、一緒に選びたかったなぁ、これも好きだけど」
「また今度一緒に買おう」
僕はジュナを抱きしめて、駄々をこねるお姫様のご機嫌を取ろうとした。
「結婚指輪って何個も用意するもんだっけ?」
「いいんじゃない。ジュナが僕のものって目印になればいいんだから」
僕は腕の中のジュナの頭にキスを落とした。
「ジュナは僕が周りの女の人に見られてるっていうけど、ジュナも男の人によく見られてるんだよ」
「そう?」
「うん。ジュナはとっても可愛いから」
「……私よりモテモテの人に言われてもなぁ……」
ジュナが照れ隠しなのか、頬を赤くしながら口を尖らせた。
「けど、なんで指輪のサイズ知ってるの?」
ジュナが少しだけ冷ややかな目つきで僕を見てきた。
「ジュナのRin-comに触れたら、すべての情報が僕に入ってくるから……そこの個人のデータベースから」
「それって、スキャンした私の詳細なデータも知ってるってことだよね? めちゃくちゃ個人情報の……」
「そうだよ」
「…………はぁぁ。ハイスペックすぎる旦那様には、何もかも筒抜けなんだね……」
ジュナは顔を真っ赤にさせて、僕の胸に顔を埋めてグリグリしていた。




