13:section of ジュナ 【オークション編】
私とカグヤは、5つの材料を集めることを始めた。
リビングでソファに並んで座り、大きい空中ディスプレイに表示された世界地図を眺める。
カグヤが操作して、その地図上に5つの箇所を示す文字が表示された。
「この国にあるとされるものは、オークションに出品されるんだ」
彼の説明の後に、この国の部分がアップになり、詳細な場所の地図とオークション会場が表示された。
「あ、サイオンジ財閥主催のオークションじゃん。息子のルキと知り合いだから、参加出来るかも」
私はさっそくRin-comを操作して、ルキにメッセージを送った。
「……なんで知り合いなの?」
カグヤがジト目で私を見てきた。
「え? 財閥界隈のパーティで声をかけられたから……あー、体の関係は無いよ。財閥の御曹司相手は揉めるからね」
「…………」
ジト目のままのカグヤに、ギュッと抱きしめられた。
感情が強くなった未来人は、嫉妬心まで強いようだ。
そうしていると、私のRin-comが2回青く点滅した。
「……参加出来るって。ツキシロ夫婦としてなら」
私はカグヤの腕の中から、彼を見上げた。
財閥が主催するオークションなので、身元がしっかりした人でないと入れない。
カグヤは、タカユキ叔父さんと私がRin-comで喋ったあの日、私の了承を聞くとすぐに空中ディスプレイを立ち上げ、そこに指先を当てて結婚届けを国に登録していた。
彼の指先は、ディスプレイに流れる電波から情報が読み取れるだけでなく、ある程度の情報なら操作出来るらしい。
カグヤのRin-comの偽りの情報をベースに、私と籍を入れることで、この国の人として限りなく正式に近い形で登録されたのだ。
つくづく未来人ってすごい。
未来人がって訳ではなく、カグヤが研究者だから、頭が良すぎるのかもしれない。
そう思いながらガグヤを見つめていたら、彼が優しく笑った。
「一緒に行ってくれる?」
「もちろん、いいよ」
私もニコッと笑って返した。
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オークション当日。
私の運転するブームスランで会場に向かっていた。
きちんとした場なので、私とカグヤはツキシロ財閥が所有する高級ショップと美容院で、着飾ってもらっていた。
私はドレスを着て、髪を緩く巻いてもらった。
カグヤはスーツを着て、前髪を上げるようにスタイリングしてもらっていた。
「えー? カグヤがめちゃくちゃカッコ良すぎて目立つんだけど? ツキシロ財閥の娘として有名な私が霞んでる……」
と、動揺しながら私は運転していた。
ヒールの靴では運転しにくいので、車内に常備しているペタンコの靴に履き替えていた。
「ジュナも綺麗だよ」
カグヤが私の方を向いて、笑みを浮かべる。
私は前を向いて運転しながらも、チラリとその余裕そうな笑みを見た。
「色気がダダ漏れだ!! 絶対いろんな女性が寄ってくるよ!」
「……嫉妬してくれてる?」
「これはまだ好奇心?」
前を向いたまま質問に質問で返した。
隣から不機嫌そうなオーラを感じた。
会場に着くと、私はヒールの靴にはきかえて車を降りた。
同じく降りてきたカグヤと腕をくんで、寄り添いながら建物の入り口へ向かう。
「ツキシロ ジュナです」
受付の人にそう告げながら、所定の位置にRin-comをかざした。
すると、別の人がオークション会場まで案内してくれた。
通された場所はパーティ会場になっており、巨大な空中ディスプレイが表示されていた。
隣接された別のホールがオークション会場だった。
目当ての商品の出品が近付くまでは、パーティ会場で寛げるようになっていた。
まだオークションは始まっておらず、私とカグヤは、とりあえずボーイが配っていたシャンパンをいただく。
「ほらほら、周りの女性たちが、カグヤの登場に色めき立ってるよ」
私はシャンパンを一口飲みながら言った。
「……絶対ジュナのそばにいる。ジュナも離れないで?」
珍しく顔を青ざめさせたカグヤが、私の腰を抱いてピッタリくっ付いてきた。
前に言ってたように、女性たちにチヤホヤされすぎるのは苦手なようだ。
その時、ちょうど近くをルキが通った。
「ルキ! 招待してくれてありがとう」
「……ジュナ! と、噂の結婚相手? すごい美形。お前、面食いだったんだな」
ルキが私を呆れた表情で見てきた。
「ふふーん。これでもカグヤからなんだよ」
「…………まじか」
胸を張る私に、ルキが更に呆れた。
「まぁ、オークションで高額商品を競り落としてってくれよな!」
主催者の息子で忙しいのか、ルキはそう言って足早に去っていった。
カグヤが競り落としたい商品のオークションが近付いてきたので、私たちは場所を移動した。
オークション会場の中は、小さめのコンサートホールのようになっており、真ん中の舞台で商品が順番に展示されていた。
その舞台の後方には、巨大な空中ディスプレイがあり、商品をアップで映し出していた。
私たちは、階段状に並んでいる1人用のソファに隣り合って座った。
ゆったりした作りのソファは、肘掛けの右側の一部が透明な操作板になっており、そこにRin-comをタッチして個人認証させることが出来た。
競り落としたい商品に、この操作板から入札する仕組みだ。
私は右隣に座っているカグヤに話しかけた。
「次の次だっけ? カグヤが競り落としたい商品は」
「そうだよ。古代の珍しい金細工なんだけど、それに使われてる成分が欲しいだけなんだ。僕の研究のナノマシンはもう出来てるから、それを媒介するための物質が必要なんだよ」
「ふーん。私は見ているだけでいいんだよね?」
「うん。僕の資金から支払うから」
そう言ってカグヤが私の右手を取り、柔らかく握った。
私のソファの操作板がある方の手なので〝何もしなくてもいいよ〟という意思表示にも感じた。
そうしている内に、カグヤの目当ての商品の順番がきた。
商品の説明が終わると、それを競り落としたい人たちが数字を入力する。
すると、入力した人の前にだけ空中ディスプレイが表示され、そこには他の人の入札額も提示されていた。
隣のカグヤも操作板に数字を打ち込んだ。
彼の前に空中ディスプレイが表示されたので、私はそっと覗き込む。
「……え?」
思わず驚きの声を出してしまった。
カグヤは他の入札者より、二桁多い金額を打ち出していた。
他の入札者たちも、響めき出す。
その金額より上の入札はもちろん無かったので、進行役のアナウンスが入った。
『こちらの商品はツキシロ カグヤさんが落札いたしました』
それを聞いたカグヤが、満面の笑顔を浮かべて私を見つめた。
「良かった。無事に手に入ったね」
「…………」
美しい未来人が、誰もが見惚れるような笑みをこぼしたのだ。
その瞬間、落札者のツキシロの名前を聞いて私たち……特にガグヤを見ていた数名から、黄色い悲鳴が聞こえた。




