屋根裏キューピッド
僕は今、クラスメイトの女子の部屋にいる。ドキドキはする。しかし浮いた理由が原因ではない。何故、僕がこんな状況にあるかというと…
日曜日。いつものように暇をもて余した僕は街を歩き、ハンバーガーを食べながら川縁でぼんやり。そんないつもの週末だった。のだが…
「やっぱりいた!おーい、佐藤~」
女の子が誰かを呼ぶ声がする。
「佐藤ってば!」
「うわっ!?」
ありふれた名字だけに僕のことを呼んでいたとは思いもよらず。女子に呼ばれるなんて学校でも数少ないことだったし。しかも、その声の持ち主は男子人気も高い三橋。相変わらずにキレイな髪をなびかせて駆け寄ってくる。
「お願い!助けて!!」
有無を言わさぬ程の必死の形相。そのまま彼女の家に連行される。道中に理由を聞くと、屋根裏から物音が聞こえて怖くて仕方ない。ので、誰か助けてくれる人を探していたということらしい。それで僕に助けを求めるのはどうかと思うが…
「カタカタッ」
「ほら!なんかいるし!」
たしかに何かがいるようだ。さすがに人間の足音ではなさそうだが、ハクビシンとかちょっと危ない野生動物の可能性もある。盾代わりにトレイを借りて押し入れの天井を開けて恐る恐る覗いてみる。
「なあ、大丈夫か?」
心配する三橋をよそにスマホのライトで辺りを探る。そして直ぐに犯人を見つけた。僕はそれに微笑んで声をかける。
「おいで」
「え!?ちょまっ!?なに??」
恐がる三橋だったが、犯人の声を聞いて直ぐに彼女も笑顔になる。
「にゃあ」
「うわあ♪もう、どっから入ったんだ?こんなに汚れて~」
「まだ小さいのに。親とはぐれたのかな?とりあえず洗ってあげたいけど…」
三橋が子猫を受け取りシャワーでキレイにする。そしてしっかりと乾かしてやる。
「洗いっぱだと低温症?で弱っちゃうからね。嫌がってもしっかり乾かすんだ~」
「詳しいんだな」
「昔、飼ってた」
というわりには、その行為はけっこう粗っぽい。子猫も助けを求めるように僕を見る。
「お?すっかり恩人に懐いたか?」
僕は笑った。
「そんなに嬉しい?」
「いや、三橋って普段はけっこう雑なのな。言葉も行動も」
三橋は顔を赤らめる。
「他の人には言うなよ。お前だから信用して連れて来たんだからな」
「にゃあ♪」
子猫が繋いでくれた縁。少女と少年がほんの少しふりしぼった勇気。何かが始まるのはまだこれからのお話。