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月の帳  作者: 是空
五章 決断、そして
32/37

31話




招かれたのは…………彼女の部屋。




「今日はまだ………勉強するから」




「………そ、そっか……」




「………………………」





カリカリ……………ペラ…………




んー…………………………




なに?この時間。




えっと………………待つの?待ってればいいの?




………………ふむ。




………………………………………………




………………………悪くないな。




勉強してるのをジッと眺めてるのも。




真剣だなぁ…………………




…………部屋、なんかスッキリしたな。




ああ、俺の部屋に色々あるからな。




……………部屋いっぱいに姉ちゃんの匂いだ。




………はぁ………




なんか良いね、こういうのも。






「………………暇?」




「……………いや、気にしないで」




「……………ん……」




「…………………頑張ってるんだね、毎日」




「……………別に………たいしたことじゃないよ」




「……………そうなの?」




「うん…………みんなやってる………私はまだ、少ないくらい」




「へえ、すごい世界だね」





「……………有弥の方がすごいよ、特待生でしょ?」




「ああ………いや、俺なんか……バスケしかできないし」




「………"持ってる人"の言葉だね、それ」





「ん………んん?」





「その………"しか"が無い人の方が、多いんだよ」





「………………そう?……みんな何かしらは………」




「…………うん……好きなコトとか、打ち込んでるコトはあるだろうけど……その中で結果を出せる人んんて……ほんの一部」




「………………なるほど」




「特待生っていうのは………そのほんの一部の人なんだよ」




「…………………でも……姉ちゃんは、学年1位でしょ?……もっと凄いよ」





「……………勉強は、やればできるから」





「……………いやいや、俺は勉強しても……」




「有弥は、やってないだけ」




「………う……………」




「……………………ふう……今日はこんなとこかな」




「………おつかれさま」




「…………ん……」




隣に座ってくる彼女。




「………ごめん」




「えっ?」




「……………ちょっとイジワルなこと言っちゃった」




「………いや………まあ………事実だし……」




「………"持たざる者"からの妬みだと思ってね」




「…………なに言ってんだよ、馬鹿馬鹿しい」




「ふふっ…………そう言うと思った」





………………………そうだ。





「…………ちょっと待ってて」




「……ん?……うん」





ーーーーーーーーーーーーーー




「お待たせ、はい、熱いから気をつけて」




「なに?……わ……ココア?」




「うん、寝付き……良くなるかなって」




「……………ありがとう」




「いいよ……こんなことしかできないし……」




「……………………」




ズズ………




「……………美味しい、甘いね」




「はは、ミルク多めだから」




彼女がコトン、と肩に頭を乗せてくる。




「……………”こんなことしかできない”、なんて………」




「……ん?…」




「……言わないで、悲しくなっちゃう」




「………………そう……なの?」




「………………私たちって……そんな浅い関係?」




「…………そ、そんな意味じゃ……勉強に関してって意味で………」




「……ん………わかってるよ……でも……」




「………………」




「…………勉強だって………有弥がいるから、頑張れるんだよ」




「……………それは嘘だよ」




「………どうして?」




「…………………自意識過剰かもしれないけど……………たぶん俺の存在自体が………夢への足枷になってるよ……」




「………ふふっ…それはそうかも」




「……ほら………だから………」




「…………………でもね……有弥は私の”逃げ道”なの………」




「…………………逃げ道……ね」




「くすくすっ………心外?……」




「………良い意味じゃないだろうしね……」




「……………有弥って……頭良いよね」




「……………からかわないでよ」




「………本当だよ?」




「………はいはい………どうせ馬鹿ですよ」




「もうっ……………頑固だね………」




「………だって………」





「…………………頑固だから……………私を行かせちゃうんだ………遠くに……」





「……………………………」





「………………そこだけ……甘やかしてくれないかなぁ……」





「……………うーん………」





「……………私、なんでもするよ?」





「………な、なんでも?」





「……………あーまたエッチなこと考えて……」





「……だ、だって……………」





耳元へ顔を近付けてくる彼女。




「………いつでも……好きな時に………好きなだけ……させてあげるのに…………」





「………ね……姉ちゃん………」





「あっ、こらっ……今じゃないよ」





「………うう……」




「……………………だから………いいでしょ?そばにいて」





「……………………それは………」






「………………駄目?」






「………………………駄目……だと思う」





「…………思う?……」





「……………きっと……………自分を許せなくなる……かな……」





「………………………うん……」





「…………………………………」






「……………有弥は……………そうだね」





「…………………うん」





「……………………だから……好きなんだけど……」





「えっ…………」





立ち上がって背伸びする彼女。





「ん~」





「…………………そろそろ寝る?」





「うん………ココアが効いてきたかも」





「ははっ……良かった………じゃあ、俺は戻るよ」





「あー戻っちゃうの?」





「………うん……たまには………いいんじゃない?こういうのも」





「……………そうだね、まだまだ時間あるし」





「……………うん………じゃあ……おやすみ」





「………………………」





「………………あっ……うん」





チュッ。





「おやすみ、姉ちゃん」





「おやすみ~」





…………バタン。





スタスタ……………………






ガチャ………





バタン…………





………………………………………………………





彼女には……………………尊敬できる、明確な目標がある。




…………………………………………………………………





……………俺は…………………………




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