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月の帳  作者: 是空
五章 決断、そして
27/37

26話




忙しい父が珍しく早く帰ってきた。




その夕飯時。




最近はずっと和やかな雰囲気だったが……




どこか重苦しい。




特に父だ。




元気がないというか、疲労?緊張?




なにかを抱えているような………




なんだ?





「……………父さん」




「……………ん?」




「なんか………暗くない?」




「…………………そうか?」




「うん………思った、疲れてるの?」




「……………いや……ちょっとな」




「……………あなた」




「……………んん………おまえたち………」




「?」




「食べたら少し……………話がある」





…………………なんだろう?胸騒ぎがする。





ーーーーーーーーーーーーーーー





この食卓で「家族会議」を開くのは何度目だろう。




「ジャー………カチャ………カチャ」



母は黙って台所に立ち洗い物をしている。




「…………………どこから話すか……」




「………………………」




「……………………葵」




「………はい」




「受験勉強はどうだ?」




「……………うん?まあ……順調、かな?」




「……………そうか」




…………………なんだ?前も聞いてたろ。



今更なんの話をしたいんだ?




「…………………進路のことだが」




「……うん」




「……………志望の大学は、どこだったかな?」




「……………ん………県内の、いくつかあるけど」




「おまえの学力なら東京の有名女子大にも受かる、と聞いている」




「!!……………………………」




「………それこそ東大ですら、視野に入ると」




「……………それは………」




…………………………………………………





………………そうなのか?




確かに……………………学校で1番だもんな…………





「……………県内の大学を志望する理由はなんだ?」





「………だって……県内にも国立はあるし………家から通え」




「仮に東京の大学に行っても、お金の心配はしなくていい」




「!!…………………」




「アルバイトなんてせず学業に専念しても、十分に仕送りはしてやれる」




「………………それ………は……」




「……………他に、なにか理由があるのか?」




「…………………えっと……」




「有弥以外の理由だ」




「!!!」




「ここにきて嘘はナシだ」





「…………………………………」





「…………………どうだ?」





「…………………………ありません」





「………………………そうか」





…………………………………………………………




……………………………………………………………




……………………俺の存在が…………………




…………彼女の可能性を、狭めている?





「…………………で、有弥」




「…………………ん」





「………………………おまえはどう思う?」





なっ……………………………………………




……………………………なんて質問だ。




……………そんなの……………………………




「………………っ…………そんなこと有弥に聞かーーー」





「今は有弥と話している」





「……………………………」





「どうだ?有弥」





………………………………………………………………




「………………しらねーよ、そんなの」




台所の母の手が止まる。




「…………………俺………は………」





「わかってる、有弥」




彼女が俺を抱きしめる。





「……………有弥には関係ない、私の問題だもん」





…………………………………………………





「…………………そうだな、葵の問題だ」




「………うん」




「……………悪かったな、有弥」




「……………そうだよ、有弥に聞くなんておかしいよ」




「………ああ、話は以上だ」




「……………………………」




「…………葵は賢い、これ以上話す必要はない」




「………………………」





「……………………よく、考えてくれ」






…………………………………………………





父の意図、わかっている。






選択肢を突きつけられたんだ。





俺たちは。








5章   決断、そして







夏休みも終わり、忙しい日々が戻ってきた。






ーーーー考える時間が増えた。





父の言葉、俺のこと、家族のことーーー




彼女とのこと。





………………考えれば考えるほど、わからない。





ゴールのない、長い長い迷路の中にいるようだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




夜もこうして考えることが増えた。




見慣れた天井は毎日同じ表情で俺を見下ろす。




……………決めるのは彼女だ。





そうだろ?




……………………………………………




そうなのか?





………………………………………………





コン、コン。






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