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月の帳  作者: 是空
四章 絆
17/37

16話





あの夜から、俺と彼女の関係は大きく変わった。





言葉にはしていない。





でもきっと






姉ちゃんは、俺の彼女になってくれたんだ。









四章   絆








学校の廊下で、彼女を遠巻きに見つめる。




他の女子生徒と何か話している。




気付けばいつも彼女を探してる。




彼女が視界に入るだけで幸せなんだ。





目があった。





手を振ってくれる。




周囲の目もはばからず、俺は両手を大きくブンブンと振る。





あっ、少し怒ってる。





可愛い。





「………姉ちゃんだっけ?」





隣にいた友人が話しかけてくる。






「ああ」





「仲良いんだなー」





「まあな」





「あんな美人な姉ちゃんいたら、楽しいだろ」




……………………………





「そんなんじゃねえよ」





………………………………………





モヤッとした。





他の男に彼女を見てほしくないから?




「美人」という表現が薄っぺらいから?




早く帰って彼女とイチャつきたいから?




どれもハズレではない。




でも、そうじゃない。





「そんなんじゃねえよ」と否定しかできない。





そんな自分が、モヤッとさせたんだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーー




うちに帰って自室に入る。




彼女がベッドに座って、こちらを見つめている。




「………いたんだ」




「……うん」





一応学校でシャワーを浴びてきたが、汗臭くないだろうか。




軽くチェックした後、カバンを置き彼女の横に腰掛ける。





「………おかえり」





「ただいま」






今日1日、この瞬間をどれだけ待ち望んだだろうか。






ジッと見つめると、頬を染めて目を逸らす彼女。







「…………そんなに、見ないで」






恥ずかしいのだ。







ゆっくりと近付き






唇を重ねる。







何かを確かめ合うように。






唇から伝わってくる彼女の感触が






全身を駆け巡って、幸福に包まれる。






彼女に触れる全ての感覚は






もう俺自身のものだ。






彼女も。







ーーーーーーーーーーーーーーーー




まだ、彼女と「そういうコト」はしていない。






したくないわけではない。






俺は俺自身の意志と願望によって







彼女と結ばれたいと思っている。






それはもう、熱烈に。






だがーーーーーーーーー






あんなコトがあった後だ。





彼女がそれを望んでいない可能性がある。





そういった行為に対してトラウマになっていてもおかしくはない。





彼女を傷付けるようなことはしたくない。






俺だって不安な部分はあるし、そもそも童貞だ。






そんな諸々の理由で俺は、彼女にキス以上のことはしていない。






できていないと言うべきかーーーーー






「……………………ねえ」






そんな思いに耽っていると、俺のシャツの袖を引きながら、彼女が口を開く。






「…………なに?」





「…………すごく聞きづらいんだけど………」





「う、うん」






「……………やっぱりいい」






「え、だめだよ」






彼女をそっと押し倒す。





「気になって、眠れなくなっちゃうだろ」






「うーん………」





「なに?言ってみて?」






「………えー………」






「試しにさ、ほら」





「………クス………なんの試し?」






「…………わかんないけど、ほら」






……聞かないといけない気がする。






「……………………あの…」






「ん?」







「……………………しないの?」






彼女が顔を隠しながら、言う。






耳まで真っ赤だ。






色んな気持ちで胸がいっぱいになり、高揚感にゾクゾクとしてくる。






「………したいの?」






女性になんてことを聞くんだろうか。






だが、今の彼女に対してはついつい嗜虐的になってしまう。





心の奥底まで入り込んで、彼女のすべてを知りたい欲求に駆られるのだ。






「………やだ……………イジワル……………」






「………………実はさ……」






俺の思わせぶりな口振りに





顔を覆った指の隙間から、こちらを見る彼女。






「…………………なに?」







顔を近付ける。







「…………ムチャクチャしたい」







「やだっ」






「あははっ」






いつぞやのお返しだ。




いや俺の趣味かな、これは。




真っ赤な顔を隠すように、俺の枕を抱えて脚をバタバタさせる彼女は最高だ。





しばらくそうしていると、ピタッと止まる。






ソーっと枕が動いて、彼女の片目が見えた。







「…………………する?」






ああ、なんて魅力な言葉だろうか。





する?なにを?いやわかってはいるが。





言わせたい……………が。





なにを?なんて聞くのは流石に野暮だろう。






彼女が彼女自身の意志で、俺を求めてくれている。





求められてこれ以上に嬉しい存在はこの世にいない。





「する」





2文字には2文字で返す。





さあ、最高の人と最高の時間を始めよう。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





明かりを消してカーテンを閉めたが、夕陽がチラチラと差し込む薄暗い室内。





ベッドの上、夏服姿の彼女と俺。





優しいキスを重ねたあと、彼女のブラウスに手をかける。






首元から1つずつ、丁寧にボタンを外していく。





俺の両手にそっと添えられた彼女の手は、せめてもの抵抗だろうか。





顔を真っ赤にしながら、外されるボタンを見つめる彼女。





徐々に美しく白い素肌が露わになっていき





白地にピンクの小さなリボンの付いたブラジャーが顔を見せる。





両肩が出て肘ほどまでずらしたブラウス。





その姿は、俺の何もかもを刺激した。





「見ないで…………」





彼女には悪いが見ないわけにはいかない。





この瞬間は一生に一度だけだ。





脳裏にくっきりと焼き付け墓場まで持っていくことが、俺の人生の至上命題だ。





手を伸ばす。





優しく、あくまで優しく、彼女の胸に触れる。





ブラジャーごしでもわかる、確かな感触。





世の女性が持つ、弾力と柔軟性を兼ね備えたその物体は、これまでどれだけの男性を虜にしてきたのだろう。




俺もよくわかる、とっくに虜だ。





少しだけ力を入れてみる。




もにゅっ。




「んっ…………」





身をすくめながら小さく発した彼女の、んっ。





ありがとう。





ん?





涙目の彼女が何かを訴えようにこちらを見つめる。





まるで悪いコトをしているようだ。






ん?悪いコトしてるのか。






良かろうが悪かろうが、どっちでもいい。






そんな目で見つめないでよ。






また………………イジワルしたくなるだろ。






涙ぐましい抵抗をしていた彼女の両腕を、頭の上で抑えつける。





「やっ………やだぁ……」





両腕に力を込めて押し戻そうとするが、片手で十分に抑えつけられる。




だって俺、男の子だもん。





「……有弥っ…………やめなさいっ………お姉ちゃん命令!………やめっ……」





お姉ちゃん命令に思わず吹き出しそうになったが、彼女は必死だ。





眼で、言葉で、訴えてくる彼女に非情な決断を下す。






ブラジャーを勢いよく、ずらした。






プルンっとスライムのような2つの物体が揺れ、その全貌を明かす。







色白で罪深い双丘の先端には、色んな可能性を秘めた淡いピンクの小粒。






自身の眼が、脳が充血するのを感じた。






優しさの欠片もない思い切った決断は、彼女を羞恥の局地に誘うに十分だったらしい。





「馬鹿っ!!!」





ボフっと顔面に当たったのは枕だ。






枕が落ちて戻った視界には、ベッドの端に寄って両胸を抱えるように隠した彼女の姿。





「フーっ、フー」





「フー………フー………」






猫のように身をすくめ、口を尖らせる彼女に対し、かつての"アイツ"のような鼻息の荒い俺に、やや引き気味の様子だ。



しまった。





「…………あっ、怖い?」






「…………………ちょっと」






「……………ごめん」





「………有弥だって分かってるから平気………でも」






「でも?」





「……………そんなに………イジワルしないで……………すごく………すごく恥ずかしい………」






ああ…………………





そうかぁ、恥ずかしいのかぁ…………





なんというかもう、葵ちゃん…………






最高すぎます………………






「葵ちゃん………………」






「へっ?」





やべっ、口に出てた。





「………………やだ、なんかおじさんみたい」





ああ、自分でもそう思う。





「その手つきも……なに?」





おっと、ついついやらしい手つきで彼女ににじり寄ってしまっていた。





「……もう……………普通にしてよ」





すこし拗ねたような彼女も捨てがたい。





「ごめんごめん」と言い





彼女の横に座る。





むーっとした彼女の肩を引き寄せると






少し迷ったような俯いた表情をのぞかせ






こちらを見上げて眼を瞑った彼女。







そっと………優しく…………………







「ただいまーーーー」






はっ?






ギョッとした顔で目を合わせる。







彼女は慌てて下着を着けてブラウスを羽織り、







俺は溜め息をついてベッドに横になる。






夢の世界から一気に現実に引き戻された気分だ。







そそくさと部屋を出て行く彼女は






一度振り返り





「………またね」






と小さな声で告げて出て行く。






……………………………………………






……………………………………ま、仕方ない。







「…………おかえり、早かったね」





「早く終わったのよー、お腹すいた?」





「んーん、手伝うよ」






一階から小さく聞こえる母とのやりとり。







ついさっきまで実の弟と口に出せない行為をしていた彼女は、どんな顔で母と話しているんだろうか。






……………………………………







この先にあるのは、なんだろうか。






彼女と過ごす幸せな未来?






……………………そうなのか?







わかってるさ。






俺たちを形作る遺伝子によって







道が途方もなくーーーーー険しいことは。





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