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月の帳  作者: 是空
三章 葵
12/37

11話



いつからだろうかーーーーー



君との距離を感じるようになったのはーーーーー






時に笑って


時に怒って


時に泣きながら


どんな時でも離れずついてきた。


君。



いつからか、並んで立つと、見上げてる。



ぷにぷにで柔らかった君の身体は、いつの間にか、”男の人”のそれ。



もう子供じゃないんだね。



嬉しいような、寂しいような、複雑なキモチ。



最近は会話も少なくなったね。



私はもっと関わりたいって思ってるよ?



わからないよね。



でも気付いてるよ。



たまに私のこと、見てる。



その視線は姉への好意?それとも……興味?



叱ってあげなきゃ。



だけど、恥ずかしい。



ああ、また自然に話せるようにならないかな。



可愛い私の



君。




ーーーーーーーーーーーーーーー



最近ハマってるゲーム。



「ロードナイト」って言うんだけど、面白い。



ゲームの中で友達もできた。



その子の名前がアルファベットで長いから、勝手に「HH」って略しちゃった。



私のこと女だなんて、絶対思ってないだろう。



だって男の子同士みたいに話してる。



こういうノリって憧れてたんだ。



でも、「HH」はちょっと変わってる。



一緒に馬鹿言ってはしゃいでると思えば、たまに斜に構えたり、たまに考え込んだり。



誰かに似てる気がする。



誰だろ?



ーーーーーーーーーーーーーーー



ひょんなことから君と一緒にロードナイトすることになっちゃった。


やってるなんて知らなかった。


また一緒に遊べるね。


嬉しいなぁ。


私の部屋に来たの、いつぶり?


背中向けちゃって、可愛いね。


ベッドに上がってきてもいいんだよ?


なーんて、ふふ。




どうしたの?


何度も名前は「リッキー」だって言ってるよ?


アルファベットでもないし


記号もつけてないし


ニッキーでもないよ。


リッキーだよ?




なに?自分のキャラ見せるの?


見せたかった?ふふ。


「かっこいいね」ってたくさん誉めてあげなきゃ。





えっ?




嘘でしょ?




君が「HH」なの?




信じられない。




あ、そっか。




私、君に似てるって思ってたんだ。





嬉しくて嬉しくて、子供みたいにはしゃいじゃう。





だって夢みたい、ずっと遊んでたのが君なんて。





離れてたけど、共有してたんだ、時間。





いっぱい話もしたね、ふふ





どんな話してたかな……





……………………………






そういえば…………………………





「HH」の好きな人って…………………





実のお姉さんだって………………言ってた





…………………………………………





………………………………………私?






どうしよう、言葉が出ない。





君も気付いたんだ。




ずっと無言だもん。





……………………………どうしよう





だって私たち……………………姉弟だよ?






あ、待って。






出て行っちゃダメ。





ちゃんと話さないと、ダメだよ。





せっかく昔みたいに仲良くなれそうだったのに





これじゃーーーーーー





あ…………………





バタン。





…………………………………私いま、どんな顔してた?





君がこっちを見たのは、確かめたんだよね?





私がーーーーーー





どんな顔してるか。





そうに決まってる。





行かなきゃーーーーーーーー





……………………………………





行って………………………………






何を話すの?





わからない。





君の気持ちに、どう応えたらいいのか。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





あの時、どうするのか正解だったのか。





未だにわからない。





ハッキリしたのは、溝が深まったことだけ。





彼がそうするように、私もどこかで避けてしまう。





もうこれ以上、何も失いたくないから。





少なかった会話が、完全に無くなった。






………………………………………………






身勝手で、ひどい姉だね。





「好きになったもんは仕方ない」って





自分が言ったんだよ?






なのに、話も聞かずに避けるの?







…………………………………………






大事な友達も、可愛い弟も





もう、いないみたい。




空っぽになっちゃった、私。




何もしてないとおかしくなりそうだから




ずっと勉強してる。




時折よぎる、あの時の君の顔




胸が苦しいよ、切ないよ。





…………………………………有弥、なにしてる?





……………………………………………





ロードナイトでも、しよう。




君はもう、いないだろうけど。





………………やっぱりやめようかな。






えっ。




HH、ログインしてる。




もしかして、私を?





………………………そんな訳ないか





落ちよう。





………………………………………やだ。





君と遊びたい。





私、悪くないもん。




君が勝手に「リッキー」に話したんじゃん。





やだ!遊ぶの!!






返事、こないな。





そうだよね。





あ、きた。





なんで敬語?





リッキーは関係ないでしょ?





「HH」と「リッキー」が遊ぶの!





「君」と「私」は関係ない!







…………………………だめ?





あ、そのまま送っちゃった。





あっ。





入ってくれた、チーム。





やった、嬉しい。





しばらく我慢してたんだから、思いっきり遊ぶんだから。





大好きな君と。





ん?




この「好き」って……………






どっちかな?







…………………………今はいいや。






遊ぼう。

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