表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の帳  作者: 是空
一章 月の帳
1/37

プロローグ


ーーーーいつも意識している、家でも学校でも、山でも海でも、朝起きてから夜眠るまでーーーー


「彼女」を手に入れるために、何が必要だろう?

整った容姿?知性と教養?紳士的な振る舞い?

例えすべて揃っても、叶わないのだろう。



彼女は俺の、姉だから。



彼女は幼い頃から俺を可愛がってくれた。

物心ついた時から、両親よりも彼女に付いて回っていた。

いつも俺の前で笑顔で手を引いてくれた。


「好き」という気持ちは当然ずっとあった。

だけどいつからか、「好き」は少しずつ形を変えていった。

距離感も変わった。

ずっとくっついてるわけにはいかない。

成長した身体と心が、それを許さないのだ。


たまにやってくる切ないような寂しいような、胸が締め付けられる感じ。

その時いつも視線の先に彼女がいる。


思春期特有の何かなのだろう。

時間が経てばきっと元に戻る。

歪んだ「好き」が、真っ当な「好き」に戻る。


だけどーーーーーー


伝えたい衝動が日に日に強まる。

家族のために、自分のために、そして何より彼女のために、この気持ちだけは表に出してはいけない。

そう、自分に言い聞かせる毎日だ。


伝えたところでどうするんだ?

それは家族として明確な裏切りだ。

「貴女を家族として見ていません」という、弟であることを放棄する卑劣な行為だ。

それを彼女に突きつけたところで、傷付けるだけだ。

わかっている。


腰ほどまであるビロードのような黒髪、陶器のように滑らかで透明感のある色白な肌、星のように澄んだ瞳に、艶やかな唇。

そして女性らしい曲線を描くシルエット。

彼女を形作る全てのものが魅力的で、蠱惑的だ。


ああ、心底気持ちの悪い弟だな。

こんな眼で見られてるなんて夢にも思ってないだろう。

彼女以外を想うことができない、彼女で埋め尽くされた俺の頭はとうに壊れているんだ。

思春期だからって限度があるだろう。

こんな弟を持って心底不憫でならない。


彼女はもう受験を控えた高校3年生だ、俺も今年同じ高校に入学した。

一緒にいられる時間はもう、限られているのかもしれない。


さて、今日も1日を始めよう。

どんなアトラクションより、映画より、音楽より、スポーツより、ゲームより、刺激的で夢中になれる存在と過ごせる、貴重な1日を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ