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サイドストーリー あるメイドの回想

私はローラント侯爵家に仕えるメイドです。あれはカノン様が我が侯爵家に来られた夜の事でした…。


本日は珍しく旦那様への来客があった。いらしたのは可愛らしい貴族の令嬢と思われる方とその使用人が3人。食事時に話を聞くと涙があふれんばかりの不遇な環境で育ったと知り、私達侯爵家の戦闘訓練を受けたメイドたちの中にも涙するものがおりました。


「話があるから全員広間へ」


そんな夜です。家令のアルフレッド様より集合がかかりました。私達戦闘訓練を受けたものだけ集めるとは珍しいことです。


「皆集まりましたが、いかがなさいましたか?」


「うむ、今日来られた令嬢の件だが…」


「はい、大変お可哀そうで、我らも必ずお守りいたします」


実はこの前にも私たちや他の普通のメイドたちともそのように話しておりました。勿論本日、休みのものにも伝えます。


「それはもちろんですが、もう一つ全員に徹底してもらいたいことがあります。カノン様に手を出さぬことはもちろんのこと、あのアーニャというものの素性にも触れてはなりません」


「アーニャ?ああ、あのメイドの1人ですわね。あの子がどうか?」


ジェシカとメイド長がアーニャの名を聞いた時から顔色が悪いですわね。実はこの国の貴族だったりするのでしょうか?


「ジェシカはどう感じましたか?」


「そ、その、立ち振る舞いはメイドそのものなのです。ですが、カノン様に私たちが近づけないように必ず立っているのです。食事中も緊張した様子もなく逆に浮いて見えました」


「メイド長は?」


「私も同様ですね。確信したのはバッグを取りに行った時です。あの立った瞬間、全く気配が分かりませんでした。声がしなければ消えたように見えたでしょう」


「…皆さん。そういうことですからくれぐれも刺激しないように。特にこの1週間は絶対に。そうすれば少しは信用してもらえるでしょう」


私はこの邸でいまだに一番強いアルフレッド様が警戒されるのでつい好奇心で聞いてしまった。


「ちなみに彼女はどのくらいの実力でしょうか?」


「そうですね…。全盛期の私なら腕一本でしょうか?」


「流石はアルフレッド様です。片手でお相手できるなんて」


「違いますよ?最低でも腕の一本は覚悟するという事です。今戦えば相討ちかもしれませんね。彼女はおそらくローデンブルグ男爵家の人間でしょう」


ローデンブルグ男爵家!あのグレンデル王国で数多くの『影』を輩出した。他国の間者から、かの家のものとは2度と出会わないとまで言われる!もちろん、1度目で殺されるからだ。


ゴクリ


一気に場に緊張が走る。メイド長もジェシカもそこまでと思ってはいなかったようで、青い顔だ。


「まあ、主人に危害を加えなければ大丈夫ですよ。下手な者をつけても信頼を勝ち取るのは難しいですし、ここはジェシカに任せましょう。もう一人は戦闘訓練を受けていませんので、カノン様の護衛は複数人必要ですから」


「私ですか!?」


「ええ、きちんとした実力の者をつけることが信頼の証です。それに、かの家の技術を教えてくれるかもしれませんよ」


あっ、いいなぁ~。私たちは戦闘訓練を受けているだけあって、結構みんな好戦的だ。名家のみに受け継がれる技術か、ロマンを感じる。でも、条件がちょっと辛いかな。それから、その日のことは必ず非番の者にも伝えると再確認して解散になった。


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