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第2王子の病を治したら婚約破棄されたので、伯爵令嬢の身分を捨てて国外逃亡します!!  作者: 弓立歩


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サイドストーリー リーナとお嬢様の未来

「アーニャは先ほどのフィスト様の発言はどう思いました?」


「最低ですね。お嬢様も何か考えているみたいで、部屋に戻っても元気がありませんでした」


「やっぱりそうですよね。そのまま婚約成立なんてことになったら…」


「相手は侯爵家。家格を考えればお嬢様が第2夫人として入らざるを得ないでしょう」


「そうならないように2人きりで会うようにしないといけません」


「食事時での態度を確認してそれからですわね。アーニャには負担をかけてしまうけれど、その後に戻られるときには部屋を出てもらって警備を」


「それしかないようですね。ここに置いていただき、世話になってはいますが肝心なところで…」


「ま、まあまあアーニャ様。フィスト様も経験がないので…」


「では食事後にもう一度、集まりましょう」


結局のところ食事時もお嬢様はお悩みされていて、返事も上の空だった。それでもマナーがきちんとできているところは教師として誇らしいところだ。とはいうもののフィスト様が話しかけてもあまり興味もないようで、これは本格的に後で集まる必要がありそうだ。


「アーニャ、部屋に戻ったら、おりを見て合流してください」


「はい」



「どうしましょうリーナ様」


「そうですわね。お嬢様がああなった理由がわからないことには…」


「どうされました?」


「アルフレッド様!いえ、お嬢様の様子の件で…」


「先ほどの大奥様の件ですな。心配せずとも大丈夫ですよ。大奥様は以前から孫の顔を見たいとよく言われてましたから、今回こそ縁談をまとめたいのでしょう」


「でしたらお相手の方の方が…」


「まあ、爵位などを考えればそうでしょうが、あの家には醜聞も付きまとっておりますし、よほどのプラス要因がなければ話を持ってきたというだけのことでしょう」


「ですがあそこまでお嬢様の態度がおかしいのも事実ですし、心配なのです」


「リーナ様お待たせしました」


「アーニャ、どうでしたか?」


「変わらずというか、深みにはまっている感じです。早めにお連れしたいですね」


「フィスト様は今は大旦那さまと大奥様の2人とお話をされております。このお話が終わればやる気を出していただけると思うのですが…」


「では、様子を伺いましょうか。そこの先のところで待ち構えましょう」


アーニャの指差した先は今話が行われているという場所から2部屋先だ。


「こちら光が屈折して入るようになっており、向こうからもこちらからも光が簡単に漏れたりしませんので」


「ですが、そんな穴をどうやって?」


「普段使われない部屋位お手の物です。穴も2つありますのでリーナ様もどうぞ」


言われるがままにスタンバイをして待つ。数分後にフィスト様が部屋から出られたようだ。行き先はこっち側、つまりお嬢様の部屋の方向だ。


「どうです」


「…」


通り過ぎて行ったフィスト様の顔はとてもりりしかった。どことなくライグが告白してくれた顔つきに似ている。


「もう大丈夫だと思いますわ」


きっと今のフィスト様ならお嬢様を受け入れてくれるだろう。2人の告白の瞬間を見られないのは寂しいけれど、それだけ成長したという事だ。


「さて、では見守るとしましょうかな」


「あ、アルフレッド様なにを?」


「いえ、もう次にこのような瞬間を迎えることは無いかと思いますので、立派に育ったフィスト様の一世一代の覚悟を見ようかと思いまして」


「それはいい考えです。私も興味あります」


「そうでしょう。しかし、この老骨1人ではなかなかできませんでな」


「お、お2人とも主に対して失礼ですよ」


私だって見れるなら見たいものだけれど、お嬢様の邪魔をするわけには…。


「ではリーナ様はよろしいのですね。10年以上も見守って来られてお嬢様の一番の瞬間の言葉も分らずじまいで、このまま一生を過ごされても…」


「そ、そういう話では…」


「リーナ様、私はまだお嬢様にお仕えしてわずかですが、知りたいと思っています」


「…分かりました。ただし!絶対に邪魔にならないようにしてください」


「それはもちろんです。ではアルフレッド様は天井裏へ、私は隣室へ入りますので」


「はて?あの部屋に裏はありましたか?」


「一部分だけ延長して作っています。落ちないようにだけお願いします。」


「アーニャ様、色々作られてるんですね」


「いつでも部屋にいるわけにはいきませんから。用事のない日はこうして見守っているのです」


アーニャの言う見守りはともかくこれでお嬢様の様子が分かるに越したことはありません。


「では、お2人とも頼みます」


「はい」




「まだですかね」


「ジェシカ、言葉を伝えてすぐに出てくるようでは寂しいでしょう?」


「そうですね。気になって、気になって仕方なくて」


「なら、あなたも参加しても良かったのでは?」


「私の腕ではお嬢様はともかく、フィスト様に気づかれそうで」


「それではいけませんね。次回があればできるように訓練しておきなさい」


「でも、そんな機会はもうないと思いますけれど」


「何を言っているのです。お嬢様のお嬢様もそのまたお嬢様にもその瞬間があるのですよ。その時に備えておくのです」


そう、たとえ20年後、30年後にお仕えすることができなくなったとしても、私たちのお嬢様ですからね。


ガチャリ


待機していた部屋のドアが開く。入ってきたのはアーニャとアルフレッド様だ。


「どうでしたでしょうか?」


「うまく行きました。これで、お嬢様も大丈夫です」


よく見るとアーニャの瞼にはうっすら涙がにじんでいる。彼女がこれほど感情をあらわにしたことがあっただろうか。


「そ、それでどうだったのですか?」


「では僭越ながら私が…」


そういうとアルフレッド様がどのような話だったかを伝えてくれる。


「お、お嬢様~」


ううっ、思わず私も涙が…。


「良かったですね。リーナ様、アーニャ様」


「はい。ですが、これで安心できるのはお嬢様が心を寄せる相手ができたという事だけです。侯爵夫人ともなる今、マナーや警備などこれまで以上に頑張りませんと」


「そうですね、リーナ様。私も一層精進します」


こうして私たち3人はその後も今日の出来事について話をした。アルフレッド様は途中からいなくなっており、きっと大旦那様たちに報告をしていることかと思う。そして一夜明けて…。


「お嬢様、起きてください。朝食に遅れますよ。大旦那様と大奥様に叱られますよ」


あれから長い間、お2人は話されていたようでお嬢様も起きる気配がなかったようで仕方なく起こす。大旦那さまと、大奥様に非礼があってははならないものね。しかし、恥ずかしそうに食堂の席につく姿はとても可愛らしい。


「そういえばフィスト。昨日の話はどうなったかしら?」


「ああ、縁談でしたらお断りを。もう、準備をしておりますので」


フィスト様も昨日とはうって変わって縁談をお断りする。この件についてはもう大丈夫だろう。


「大旦那様、大奥様こちら本日のメインです」


ここでアルフレッド様が話に合った通り、新しい料理の説明をする。使用人に今日は面白いものが見れると朝に説明があった。私もそれを楽しみにしていたがその前にハプニングがあった。


「アーニャが!じゃあ、アーニャの顔を描いて!」


お嬢様が良い笑顔でアーニャに絵を描くように促している。だけどアーニャは絵だけは…どうやらお嬢様も噂で聞いていたようで、いたずらっ子の目をしている。ジェシカに画家には変装しないでくれと言われても、よくわかっていない当たり今度説明が必要ね。


「あっちはにぎやかだな」


「僭越ながら旦那様のは私めが」


おっと、いけない。本命の方も見なくては。アルフレッド様が字を書いていく、『君が』…『いてくれたら』ちょっとこれは昨日の告白のセリフの一部では!?


「な、な、アルフレッド!これはどういうことだ!!」


フィスト様がガタンと椅子から立ち上がる。まあ、一世一代の告白のセリフが筒抜けだったなんて恥ずかしいわよね。お嬢様が見る前に何とか食べてしまったのが惜しい。だけどメイドや執事たちは書かれた言葉から事情を察したのか生温かい目をしている。


アルフレッド様に疑いの目を向けて問い詰めるものの、簡単に避けられてしまう。実際に段取りをつけたのはアーニャだし、嘘ではないというところだ。アーニャはアーニャで指示されなければ動かないの1点張り。…そういえば行動については私が指示したのだったわ。最終的にはグルーエル様が疑われることになり、話がフィスト様の中でついたようだ。グルーエル様もかわいそうに。


こうして、お嬢様の身に起きた一連の事件は幕を閉じました。終わってみれば国からの追っ手も退け、この国でも相応の地位と伴侶も得られ、最良の結果に終わったと言えるでしょう。今後もこの国に来てよかったと思えるように努めましょう。




あれから、2か月。もうすぐ、お嬢様の結婚式です。私は改めてフィスト様より招待客について聞かれています。


「リーナは招待客について誰か浮かぶか?」


「招待客ですか…思い浮かぶのは2名ほどですね」


元々、夜会などにも出ておられませんし、学園も行っておられないどころかこの国では身分は平民となっており、それを伏せてくれそうな方には心当たりがない。


「2名か…それぐらいなら何とかなるか。誰だ?」


「お嬢様の乳母をしておりましたメイベルと、魔導王国へ嫁がれたルラインツ子爵令嬢だったレラ様ですわ」


「ふむ。乳母は今は?」


「伯爵領にて暮らしているはずです。お嬢様が無事なことはお知らせいたしました」


「分かった。こちらで身柄を確保しよう。本人さえよければこの街で暮らせるように手配する。子爵令嬢については魔導王国という事だから、カノンの薬の件で話をしたいと言えば大丈夫だろう」


「そうですわね。よろしくお願いいたします。メイベルについてもきっと本人は来たがるはずですわ。一番最初にお嬢様の待遇に異を唱えて、やめさせられた方ですから」


「きちんとしたもてなしをしなければな」


こうしてお嬢様とフィスト様の結婚式は当日を迎え、ややこじんまりとした式でしたが、ライグの作った薬膳料理や邸の料理人の料理が振舞われ、出席いただいた方にも満足してもらえたのでした。


「良かったですわね、リーナ」


「これはレラ様。ご無沙汰しております」


「今回は私を呼ぶのに手を回してくれたみたいでありがとう」


「とんでもありません。あの頃のお嬢様が楽しいという事を感じられたのはレラ様のおかげです」


「でも、私はあの子を置いて国を出てしまったわ」


「それは…」


「何て言っても仕方ないわよね。今日は一晩中、これまでに起こったことを聞かせてくれないかしら。もちろん、新しくカノン様についたメイドも一緒よ」


「はい!」


こうして、お嬢様の結婚式は終了し、私たちとレラ様はその日、夜が明けるまで語り合ったのでした。







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これにて本編及びサイドストーリー完結となります。


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