4ー無職
「はぁ、はぁ、とりあえず落ち着いて貰えたみたいで嬉しいです。」
レイジはまた正座させられていた。
「御迷惑をお掛けしました……」
暴れに暴れてようやく落ち着きを取り戻す事ができていた。
「大丈夫です!生きれてばそういう事もありますから。まぁ……これ以上暴れてたら魔剣を使わざるを得なかったところですけどね!」
そう言いながらリリーは地面に刺さった魔剣を叩いた。
「…………」
本気なのか冗談なのかレイジには判断が出来なかった。怖かったのでこれ以上は突っ込むのを止めた。
「あっそれはそうと、なんであんな所で唸りながら寝てたんですか?アレじゃ私じゃなくても怪しいと思いますよ?」
「あぁ、あーそれはその……」
(ここで正直に話しても信じて貰えるようなもんじゃなさそうだしなぁ〜別世界から来たなんて言っても信じてもらえんだろうし……)
「いやぁ旅をしてたら魔獣?に襲われて体はボロボロになるしちょっとパニック状態だったんだよ、いやー大変だった大変だった。」
とりあえず適当な嘘をついて誤魔化した。本当の事を言ったところで信じては貰えないどころか、せっかく打ち解けかけているこの状況を自ら壊すのはなんとしても避けたかった。
(何よりこの世界についてわからん事だらけだし、色々聞いておかないとこの後絶対にマズいと俺の直感が囁いてやがる。)
「なるほどなるほど。そうだったんですね、それは災難でしたね〜。」
1人、フンフンを頷くリリー。
(ふぅ、こいつバカみたいで助かったぜ!!)
「けど、見たところレイジさんはどうやら無職のようですが本当に旅をされてたのですか?私に嘘ついてませんか?ホントの事教えて頂いても?」
リリーは訝しげな目でレイジの顔を睨みつけ付けていた。
(!?!!な、こいつ疑ってやがった……!どうすればいい!考えろ!考えるんだ!)
無理矢理だが起死回生の一手を打つことにした。多少無理があったとしてもレイジは行くしかない!と諦めていた。
「……実は俺、記憶が所々思い出せないんだ。自分の名前は覚えてるけどそれ以外、特に自分が何者なのかとか、この世界の事とかハッキリと分からねぇんだ……。」
(我ながら苦しい!苦しすぎる言い訳だ!!だが嘘は言っていない!!分からない事だらけなのはホントのことですし?騙してないから心も痛まない!!)
レイジは無理矢理、自分自身に言い聞かせる。こんな優しい少女を騙してしまう事への罪悪感を感じては居たが、それすら吹っ切れて開き直る。そうこれは必要な嘘なのだと。
「そう……だったんですね、記憶を無くされて……それなのに私レイジさんを疑ってました…こんなボロ雑巾みたいな無職風情が嘘をついたのだと思い。そうですよね言いづらいですよね記憶がないだなんて。言いづらい事を無理に聞いてしまって……ごめんなさい!!!」
(なんだろう凄く複雑なんですけど、凄く悪い事をしたと思う反面、途中明らかに悪口言われて複雑なんですけど!つーかそれよりーーー)
「なんで無職って分かったんだ!!」
さっきから聞かないふりをしていたがそろそろ我慢の限界だった。