3ー素敵な出会い?
「いいですか、あんな無防備にその辺をウロウロするなんて頭がおかしいです。あれでは殺してくださいと言っているようなものなんです。反省してください、とにかく反省してください。それにですねーーー」
嶺二は目の前の女の子に正座させられ延々と怒られていた。
(そろそろ足が痺れてきたな…説教長くない?ていうか誰だよこの子?)
目の前の少女は見た目は15、6歳?程で髪の薄いオレンジ色のボブヘア、服は白のシャツに黒のショートパンツ、茶色のブーツ、そして何より美少女であった。しかしそれら全てを差し置いて目に付くのが手に持っている得物であった。
(この子の手に持っている剣にどうしても目が行くな、どうやらファンタジー的な世界っぽいしそりゃ剣ぐらいは持ってるだろうけどさ……)
(どう見ても魔剣とか闇の武器っぽいんだけどアンバランス過ぎるだろ。可愛い女の子の持っていい武器じゃねぇよ!!)
そう彼女持っている剣は黒と赤が入り乱れた刀身に持ち手には赤く光る目のようなものが着いていた。
(やっべぇ!あの目見てたら魅入られそうになってた、あれ絶対持ち主暴走させる系の武器だろ……怖いよ〜)
「ちょっと!!!人の話を聞いているんですか貴方!!」
「お、おぉ、すまんすまん。ありがたいお話を聞かせてくれて凄く嬉しいんだが、、ちょっと頭が混乱してて正直話についていけてなかった。」
事実、嶺二は冷静を装っていたがこの状況についていけてなかった。
「あっ……そうですよね……、ごめんなさい!ちょっと熱くなり過ぎていました……」
少女は落ち込んだのかシュンとして下をむき出した。
「す、すまん、君は親切心で助けてくれたんだろ?そんな謝んでないくれよ!…………あっそうだ自己紹介がまだだったな!俺はたかみーーいや、レイジだよろしく。」
(この世界をよく知らんし、異世界なら何があるか分からんし本名全て言うのはとりあえず避けといたほうがいいかもな)
「私、リリネットです。リリネット・カシュール。リリーって呼ばれてるのでリリーでいいですよ。よろしくお願いします、レイジさん。」
「ああ、よろしくなリリー。ところでさ、さっきからずっと気になってたんだけど……その手の剣は一体……」
「?あぁこの剣ですか、これは『滅龍剣レギオン』魔剣です!」
やっぱり魔剣だった。
『あ、あぁ…やっぱり魔剣なんだ……そうなんだ…ほらなんというかリリーみたいな可愛い子が持つにはちょっーーと不釣り合いかなぁ…って。」
「な!か、可愛い…!あ、いやすいません、これは我が家に代々伝わる魔剣なんです!大昔に御先祖が国を滅ぼそうとする『邪龍』を倒して、その素材から作った物なんです!とてつもなく邪悪な力を宿してるんですよ!さっきみたいに魔獣を一瞬で消し飛ばせるんです!!」
リリーはそう言うと純粋でとても気持ちのいいドヤ顔を披露した。
そのドヤ顔を見てレイジはこの世界が嫌になってきていた、リリーがおかしいのか、それともこの世界ではこれが普通なのか。どちらにせよ、嫌になってきていた。
(とてつもなく邪悪な力ってなんだよ…なんなんだよこの子、怖ぇえよ。そんなのポンポン振ってたら危ねぇだろが!)
「ま、まぁともかく助かったよ、リリーが居なきゃ俺死んでただろうしな。本当にいいタイミングで助けられたもんだ。」
「あ、あーいやその、それは……」
「?」
「あのぉ実はですね私、レイジさんをずっとつけてたんです。この周辺で魔獣が出ると聞いたもので退治をしに来たらレイジさんが木の下でのたうち回ってるのを見て、その上独り言をずっと呟いてたので怪しい人がいるなと警戒して後ろからずっと跡をつけてたんです……」
「な!!んだとおぉ!」
(全部見られてたってのか!全部聞かれてたってのか!恥ずかしいじゃないか!この歳になってこんな辱めを受ける羽目になるとは!あっ…もう1回死ぬか。)
頭を抱えながらレイジは膝から崩れ落ちた。
傍から見ればここまで恥ずかしがることは無いのかもしれない、しかしエリート街道を進んでいたレイジにとっては死を選ぶ程の屈辱だった。
「あ、あの!落ち着いて下さい!何か事情があったんですよね!大丈夫ですそれぐらいのことは分かりますから!誰にも言いませんから!死のうとしないでください!!泉に飛び込もうとしないでくださいっっ!!!」
この世界で初めて会ったのがリリーで良かった、この出会いは大切にしよう。心の底からそう思うレイジだった。