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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

落花枝に返らず破鏡再び照らさず

作者: 湊 悠美

(破鏡再び照らさず)


 カン、カンッと甲高い音が城に響き渡る。ワザと足跡を立てているのに誰も出てきやしない。いつもは部屋から出してくれない女も、運良く出れたとしても追い返す騎士もだ。

 なんてつまらない。王へ刺客を送り込んだと嘘の手紙を送りつけただけなのに、殆どの者がそちらに気をとられているのだ。不遇な王妃の相手なんかしてられないと、私の監視まで私の側から居なくなっている。


 今になって気を許すだなんて、あの愚王と傾国美人は認められていると酔っているのか?私の扱いを隠しているから、母国は許すとでも?私が傾国美人の存在を許しているなんて、母国が勘違いしていると。


 馬鹿馬鹿しい。呆れすら通り越して笑いがこみ上げてくる。白の結婚でありながらも、私たちは愛しあっていた。私は確かに愛していた、私にも仕事を与えてくれて自ら仕事をしてくれる王の事を。

 それも、あの傾国美人が来るまでのこと。傾国であるからこそ傾国美人であって、今の王は私が愛した賢王ではない。だから、傾国美人の存在なんて認めない。それどころか()()()()()()()()()()認めない。


 傾国美人さえ離れれば()に戻れたと言うのに、愚王は愚王のままでいた。傾国美人の周辺を探ろうにも何者かに邪魔され、彼女は愚王のそばで傾国美人の悪名を高めていった。

 そして、政治の指揮をしていた他国の王女を殺し、彼女を正妃の座につかせようと考えるまで愚かになった。


 ここで、愚王には見切りをつけた。政治を任せてくれるなら、彼女が国母になろうと構わなかったのに。任せてくれるどころか、私を殺して国を殺そうとした愚か者はもう更生なんて不可能。そんな愚王を()としても認めたくない。


 だから私は、脅迫状を送りつけたのだ。警備が少しでも薄くなればと思ったが、思いの外どころか正気を疑うほどに誰も居なくなった。体力を使う手間が省けたと良しとしよう。

 それに、()()()の警備も薄くなっているだろうから良い笑いの種を提供出来ただろう。


 笑いを我慢していると、重厚な扉が見えてきた。()()()の部屋だ。やっぱり警備のものはいない。

 吐きそうになったため息を我慢しつつ、ライオンを象ったドアノッカーを鳴らす。

 相変わらず耳に心地よい声が聞こえ、ゆっくりとドアを開かれた。




 開かれた先に居たのは、見覚えのある青年と()()()()()()()。何故この青年がここに居てドアを開けてくれたのかわからないが、()()()が害のある者を近くに置かないので別段気にしなくて良いか。


「おひさしぶりです、()()()

「おや?()()()()は?」

「私の血縁上も育ての父も、お父様だけですから」

「宰相と呼ばないという事は、()()()を見限ったと?」

「あの愚王は、私の愛した夫ではありませんので」

「それは良かった」


 笑い合う私達は悪役にしかなかっただろう。それなのに、青年は微笑んでいた。彼の事が不思議で仕方なく、私の笑いが治っても尚笑い続ける父を睨みつけた。


「あの愚者に脅迫状が届いたと侍女から聞いたからね?その侍女は愚者の心配をしてたから私の使いになってもらって、代わりとして彼に来てもらったよ」


 ニコニコと微笑み当たり障りのない事を言う父は、相変わらず無害の顔をしている。この壊れかけの国の宰相が無害のはずもなく、冷酷であり身内以外には厳しい。と言っても父の身内は()()()()()()()()ので、身内に対する優しさを見えた人物はそうそう居ないはずだ。


「彼の説明もいるし、我が愛しい娘が()()()()()であった説明もいるし座ったらどうだい?」

「そうさせていただきます」


 頷いた彼が私に座るように促すが、首を振って横の部屋に歩いていく。男の人と言うのは、お茶の準備を考えないのか?父には()()()()()()()()()がついていたし、彼は王宮の騎士とは程遠い身分の持ち主だろうから出てくるのが当たり前なのだろう。


「さすが愛しい我が娘!さぁ、私の横に座りなさい」

「それ以外どこに座れと言うのです」

「僕の横なんてどうでしょう?」


 茶器とお茶菓子を持った私を、父が家族向けの笑みを浮かべる。この父の本当の笑顔は神々しいと言っても良いほどで、人に見せたら気絶する美しさだ。この笑みを広めようとも考えたが、絵でも人が気絶したため泣く泣く回収した事がある。父の笑みに惚れたからと、脅しのネタが広がったのに残念な。

 勿論、青年が言った世迷い言は無視だ。こう言う輩はよく来ていたのだ。姦通の罪で、私を処刑しようとした馬鹿者のお陰で。


「君の残念そうな顔は面白いが、愛しい娘の話をしても?」

「勿論!僕の身分の話をする前に、一旦整理した方が良いと思いますので」


 愉快そうに微笑む父に、青年は屈託のない笑顔を見せた。その笑みは思わず身惚れてしまうほど素敵で、それに気づいた父が横で軽く舌打ちをしていた。

 …少しぐらい良いじゃないか。最近、悪意満載の笑みしか見ていないから心が荒んでいるんだよ!…なんて、口が裂けても言える気がしない。言えば十分もしないうちに、愚王と傾国美人の首が並べられる。気づいているが行動に移さない父に感謝して、真面目に話を聞くとしよう。


「さて、まずは私の結婚の話でもするか」

「留学していた母から、閣下がなき奥方に求婚されたと聞いています、奥方を求める争いは凄まじいものであったそうで?」

「凄まじくないよ?精々、子爵の娘に求婚しただけだが?」

「…なるほど」


 凄まじいからな!そこで納得したかのように頷くなっての!閣下の呼び名の通り、この顔面凶器は当時公爵子息であったからな!?公爵が子爵令嬢を嫁に貰った時の周りの反応は凄かったと聞いたから!昔、執事に教えてもらった記憶がある…うん、なぜかは知らないけど覚えている!しかも、その娘の求婚者に伯爵以上の高位貴族が居たとも聞いた。それで、その女が父を選んだのは、父の顔の美しさを周りに自慢できるからだったそうだ。自分の装飾品としか見ていなかったと、()()()()()()()ので、間違いない。

 それにしても、青年よ。何も迷い無く『なき』と言ったな?それはあれか?亡くなった方の『亡き』ではなく、公爵夫人では無い方の『無き』だな?二人の中では、公爵夫人では無くなった馬鹿女と言う解釈であってるのか?


「結婚して一年ぐらいして、愛しい我が娘が生まれたっけ。我が娘だけは、私に似ていてとても可愛らしくて良かったよ」

「確か、彼女以外のお子さんはあなたに全然似ていなかったと」

「あれは困ったよ。私に似ず、()()()()()()()()彼女に似ていたからね?彼女も困っていたから、()()()()()()()商人に養子に出したよ。彼は優秀な子を欲しがっていたからね」

「確か入り婿でしたね。先代の娘に婿入りし、彼女が死んだ後も商会を広げていったとか。彼の子供は彼に似ているものの奥方に似ていなかったため、誰との子か騒動が起きているとか。その為、貴族の信頼はガタ落ちで商会は潰れかけとか」


 ククッと喉を鳴らして笑う二人は、とっても貴族らしい。心配している振りだが、内心は清々しているのだろう。父の娘は私だけで、他はあの女への求婚者との間の子供なのだから。私以外の子供は父の面影がなく、あるのは他家の特徴ばかり。出産の日から逆算した日にちに、我が家の領地に子供によく似た男がお忍びで泊まっているのだから正気かと疑った。()()ながら、()は公爵家の人間では無いと考えさせられたな。

 商人の愚か者には、自業自得としか言えない。妻を殺害してその実家を乗っ取り、取引先の奥方を寝取っていたのだから。その貴族達が、子供の事をつついて騒動を起こしたってわけだ。流石に、伯爵以上の妻には手を出そうとはしなかったようだ。…例外を除いて。

 その例外があの女だ。どうやら気づかれていないと思ったらしく、白昼堂々コトに及んでいたらしい。何回もだそうだ。その時は彼に子供騒動は起きていなかったから、あの女は彼を頻繁に呼んでいたらしい。その結果、彼の双子の子供が誕生し、父が彼にほかの子供と一緒に押し付けたわけだ。二歳下の男の子と四歳下の女の子、そして商人の子供である双子の男の子。その子供達が騒動の原因なったのだから、父が仕組んだと言っても良いだろう。


「そして、この()が八歳の時。彼女は出ていったよ、『隣国の王に見初められた』と泣きじゃくるこの()を引っ張ってね?私は、毒を盛られてて止められなかった」

「お父様。私はその話を初めて聞いたのですが?昨今まで、いつのまにか消えていたと仰られていましたよね?」

「3日寝てなくて誰かに名前を呼ばれたと思ったら、口に毒を入れられ思わず飲み込んでしまったよ!」

「…ごめんなさい!」


 聞いてしまって少し後悔。誰も、睡眠不足で判断ができず毒を飲み込んでしまったなんて思うはずないだろう!?しかし、その時まであの女が身内であったのであれば仕方がないか。父の身内への警戒心のなさは異常とも言ってもいい。毒を盛られる瞬間まで、あの女は妻と思われていたのだろう。今はそんな素振りは一切存在していないが。


「閣下、少し宜しいでしょうか?」

「彼女を選んだ理由だね。…この件に関しては何も知らないのかい?」


 思い出したかのようにこちらを向いた父に、曖昧に微笑みお茶を飲む。父のことだから、私の反応を見てわかるだろう。私が真実を知っているのはあくまでも、八歳までのこと。それ以降のことは、あの女の妄想しか知らないという事を。

 つまり。私が知っているのはあの女の気持ち悪い妄想であって、父の常人には考えられないふざけた理由を知らないのだ。


「そうだなぁ〜」


 優雅にカップを傾け、父は考えをまとめる。その優雅さは素晴らしいが、目をキラキラさせている青年の気持ちも考えてやれ。彼は大恋愛の末に結ばれたと思っているのだから、その夢を壊してやるな。誰が、妄想癖の女と常人には程遠い男が結婚したと思い至る?


「彼女が『自分は高位貴族と結ばれる存在であって、あなた達みたいなお馬鹿なんか興味ないのよ』と言っていたからかな?」

「…はぁ?」

「その馬鹿さを気に入ってね?『貴方の顔を自慢できるのが良い』って、面と向かって言ってきたのも良かったなぁ〜」


 ウフッと言う声と共に表情を崩した姿は、ハッキリ言って気持ち悪い。見てみろ、夢を崩された青年が下を向いて落ち込んでいるぞ?『母上、恨みます」との声が聞こえてくるあたり、彼のお母さんは真実を語らなかったのだろう。なんでも、当時、学校に通っていた生徒たちには暗黙の了解で語らない事になっているらしい。実の娘である私も知らなかった辺り、その様は徹底されているようだ。…知ってしまった今、当事者の皆様に感謝してもしきれない。皆様、父の公爵としての威厳を保させて下さり有り難うございます!


「だからね?少しぐらいのお遊びなら許してあげていたよ。愛しい娘も産んでくれたし、別に他の男を求めようとも私を愛していたからね?」


 フッと父の顔から表情が失われた。人形のように人の温かみが感じられない。人を気絶させる顔が、恐怖の意味で人を気絶させるだろう。この顔を見るのは()()()()()、それでも気絶しそうだ。初めて見て不思議そうに首をかしげる青年は尊敬に値するな。


「あの狂人の元に、この()を連れていくなんて正気を疑う。」

「ですが、彼女は()()でしょう?」

「この()がこの国に嫁入りした事は知られてないんだよ」

「なるほど。敗戦国の王妃を自らのものにするのですか」


 父と同じように表情を消し去った青年と父との話に首をかしげる。私は狂人にあった記憶などないし、国を挙げて祝ってもらった記憶がある。二人が何故そんなに険しい顔をするのかがわからない。

 父よ。あなたがあの女を嫌いになった理由も、よくわからないのだが?


「お父様はどこで愛想をつかしたのです?」

「私に毒を盛ったこと。そして、君を。泣きじゃくる君を無理やり連れて行ったことだ。自らの身を痛めて産んだ我が子に優しくできない者を、私は家族だなんて認めるわけにはいかない」


 悲しげに微笑み私を優しく撫でる父が、だんだんと瞳を潤ませ始めた。王妃として再会した時も泣かなかった父がだ。その弱さを見るのが怖くて、青年の方を向いた。


「その後の事をお話しいただいても?」

「えぇ。間者の報告もあったと思いますが、当事者から聞くのでは違うのでしょう?」

「感謝します」

「こちらこそ」


 意図を汲み取ってくれた青年に目礼する。気づいた青年がチラッと父を見て、軽く首を振った。彼にとっても、父が泣く姿を見るのが居た堪れないのだろう。意見があった青年と軽く頷きあって、明るい調子で話し始めた。


「母に無理矢理馬車に乗せられ、泣き疲れて寝たと思います。目が覚めると、見たことのない寝室で見たことのない男性が覗き込んでいました」

「それが、隣国の王?」

「はい。王は母を次の王妃として召し上げ、連れ子である私を王女として公表すると言いました。勿論、信じられるはずもなく私は反抗します。けれど、公爵家での教育はその国の王女教育より厳しく、先代の子供達よりも優秀だと言われるようになりました」

「まぁ、閣下の父親が父親だからかな」

「えっ?」


 意味がわからず首をかしげる。先代公爵は夫人とともに、私が生まれてすぐ亡くなったと教えられてきた。そんな都合よく亡くなるのかと執事に聞くと、曖昧に誤魔化された。どうやら、先代公爵夫妻の死は公爵家では話題にしてはいけないらしい。だから、祖父の影響だと言われも理解ができないのだ。


「えっ!?あっ、気にしないで!一通り話終わったら話すから」

「はい…?わかりました」


 一瞬にして素に戻った青年。父が無反応であるのを確認し、微笑んだ。口元が微かに引き攣っており、誤魔化しきれていないが後で話してくれるなら良しとしよう。

 未だ泣く父には、今まで泣いていなかった分泣いてもらいたい。この父の事だ。自分が必要となった時に、泣き止むだろう。己の心が泣いていても。


「えっと、王家の教育が杜撰だと話しましたね?その後、私は先代の子供達とは離れた所に住むようになりました。私が王宮で、子供達が離宮でです」

「相変わらず、変わっているよね〜?」

「えぇ。変わっていると言うより、狂っていると言ったほうがいいかもしれません」

「確かに」


 クスクスと笑う青年に向ける笑みは、きっとどこかが歪んでいる。思い出される記憶はどれもこれも狂っているものであって、普通だと思っていた己も壊れていたのだと考えさせられる。睡眠時間を削られ、復習だと何時間も同じ授業を受けさせられた。それに、初潮が来てすぐ閨事の授業も受けさせられそうになったな。思わず離宮に逃げ出してしまったので未遂である。流石に、王太子含め亡き王妃の子供が皆味方して隠してくれた。

 以後、憐れに思った子供達が味方してくれるようになったから良かったのかもしれない。彼らの手助けが無かったら、()()()()()()()()いたからだ。私宛の刺客も含め、国王は騎士を殺させようとしたのだ。国に忠誠を誓う騎士を、私の中に残っていた父への思い出を消すためだけに、私の心を壊すための犠牲にしようとしたのだ。子供達がそれとなく騎士を各々の専属にしてくれたので、被害はなかったが騎士達の忠誠心に翳りが生じた原因とはなった。

 そして、国王が狂った原因は私とも言われるようになってしまったのだ。


「私は、国王が怖くなりました。毎日毎日私に会い来て、こんな優秀な嫁が欲しいと褒め称える男が義理の父親だなんて思えませんでした。

 私は国王から逃げようと、王宮に仕える女官に頭を下げに行きました。どうか日中だけでも、女官の仕事がさせてほしいと」

「それは…。彼女達が認めてくれると自信があるほど、国王は狂っていた?」

「えぇ。仕事を恐ろしい速さで終わらせ私の元に。部屋にやってきては、世話をさせておりましたから。公爵家の教育のおかげで何とか上手く出来ましたが、少しでもでもヘマをすれば誰かの嫁になっていた事でしょう」


 ガタガタと震え出した父の手を握る。泣きながらも、怒りに抑えられないのだろう。別に抑えてほしいとも思わないが、泣きながらながら怒りのあまり笑い声をあげるのは怖いから止めてほしい。目の前の青年も輝かしい笑顔を浮かべているが、目が一切笑っていない。その目の冷たさは、温度が幾らか下がったと思わせる程だ。私の笑顔も恐ろしいと言われるが、ここまでハッキリと怒りを表せられないだろう。因みに、この世で一番恐ろしい笑顔をするのは父である。何回も言うが人を気絶させることができるからな?


「そのお陰で、私は日中は逃げれることになりました。流石に、家族交流と言う名の食事の時間は避けられませんからね。しかし、そんな逃げ切る時間も終わりが迎えました」

「愚か者との婚姻か」

「私の結婚当初は、愚か者ではありませんでしたよ?寧ろ、私を救ってくれた命の恩人でした」


 吐き捨てるように言った父に、微苦笑を浮かべているだろう。私の中で思い出される当時の愚者は、愚か者ではなかったのだから。キラキラとした目をして『一緒に国を守ろう』と言った彼は、正真正銘の賢王であり夫であったのだ。私が嫁ぐ事で刺客の人数が増えたため、落ち着くまで契らないと決めた彼は私を思ってくれていたのだ。そんな彼を支えようと言う気持ちは、見事半年で潰れたがな?何処からか現れた傾国美人が誘惑して、夫は1日も持たなかったのだ。私に全てを押し付けたので、その時に愚者の括りに入ったと言うわけだ。

 傾国美人と愚者を恨む気持ちもあるが、それ以上に賢王を賢王のままで支えられなかった私が憎いのだ。強硬手段に出ても止められなかった、己が一番憎い。


「自分を憎むのは止めなさい。君は出来る限りのことをした。君は若すぎたんだよ」

「我が国でも結婚適齢期に掠らない若さだからね?」


 握りしめていた手を、倍の力で握り返される。いつのまにか泣き止んだ父が、真剣な眼差しで私を見ていた。その瞳に浮かぶ感情は怒りだ。冷たい眼差しをしていた青年も、同じ感情を瞳に浮かべている。

 その感情が不思議で、少し首を傾げてしまったのだろう。二人が美しい笑みを浮かべた。…怖い。


「君は幼い!マトモな教育も八歳まで受けてないんだよ!」

「それ以上自分を貶めるな!周りと何歳離れている!?」


 怒りを爆発させたした二人から思わず目線をそらす。王家での教育も受けていたのだが、父にとってはマトモの類に入らないらしい。それにしても、わたしが憎いと思っていることを何故気づいたのだろうか?


「…いい加減、閣下と僕の話をしようか。これ以上話していたら、自分がどんどん憎くなるだろう?」


 青年の眉は困り果てたように下がっていた。それが少し気になったが、青年の提案に頷いてしまう。私の反応に嬉しそうに笑った青年だが、その瞳は不安で揺れている。


「私の口から話すよ。まだ幼いのに、残酷な事を話させるわけにはいかないからね?」


 青年の不安を感じ取ったのか、私の頭を撫でながら父は深く頷いた。彼にしてみれば、泣いている人に話させるわけにもいかないし勝手に語るわけにもいかない。だが、話を切り出したのは自分であるのだから自ら話さねば成らぬと不安であったのだろう。涙の跡が残る父に語らせるのは居た堪れないが、青年にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかなのだ。


「彼女とそんなに年は変わらないけど、彼女より年上だよ?」

「大人しく言うことを聞いておくといいよ?甥っ子」


 外見の若さからか年齢について気にする青年に、父はいたずらっ子のような笑みを浮かべる。甥っ子と言う言葉に、顔を赤らませ黙り込む様子はは少年言っても良いほど幼い。それにしても、甥っ子と言う言葉はどう言う言葉なのだろうか?…ん?甥っ子?


「えぇ〜!?甥っ子って、あの甥ですか!?」

「それ以外に、甥があるのかい?」

「無いよ!無いですけど!?変換は出来ましたけど、意味が繋がりませんでした!」


 クスクス笑う青年と宥めてくる父に、少し怒りが湧く。父は親戚のことを何も教えくれないし、青年は青年で何も言ってくれなかったのだ。青年は身分を隠さねば成らないから仕方がないが、父は少しぐらい教えてくれたって良かっただろう?父に似ていないからわからないのだ。

 …よく考えてみれば、私には似ている気がする。自分で言うのもあれだが、神々しいとは言えないが『麗人』と称される程度には整っている。彼も化粧をすればそう称されるだろう。中性的な顔立ちであるから化粧も映える。寧ろ、化粧しなくても女官達に舌打ちされるほどに美しい。『筋肉も程よくついていてあんな綺麗な顔なんて、嫉妬どころか殺意が湧く』と女官達が私のそばで文句を言っていた。王妃の側で毒づくほどって言えば、どれほど妬ましく思われていたかわかりやすい。

 因みにだが、その女官達は宰相直属だ。王宮の女官は腐っているものが多く、父がマトモな人間が居るべきだと数人寄越してくれた。それでいて、公爵家に居た侍女達だったからなんてやりやすい事だったか。流石に、王妃として再会した時に泣き叫ばれた。腐り女官が顔をしかめ、護衛騎士が慌て愚王が呼ばれる騒ぎになった。母に似ていたからと誤魔化したが、王宮の三大珍事の一つに残るほどの騒ぎになった。


「そう言えば」


 王宮の三大珍事で思い出した。そう言えば、この二人の発言が、三大珍事になっていた気がする。

 …最近のことだけだが、それ程までにこの国は騒動なんて気にしなかったのだ。


「お父様の事をオッサンと呼んだこと、お父様が彼を罵倒した事が珍事になっていたようですが?」

「あったね〜。そう言うこと」

「その事で、君におじさんとの事が気づかれたと思っていたよ」


 気まずそうに笑う二人は、確かにその血を感じさせるほど似ている。気まずくなると、少し首を傾げて髪を触る仕草も親子と間違うほど。寧ろ、娘以上に似ているなんてどう言うことだ?育ちの差か?


「えぇえぇ。それに気づかなかった私の目は節穴ですよ。気づく以前に、話してくれなかった方もズルいと思いますがね!」


 罵倒したいところだが、なんとか飲み込む。罵倒したが最後、正座させられ何時間もお説教させられるからだ。この口調は、国王への反抗心みたいなもので生まれたので治す気は無い。普段の口調が丁寧なのだからいいだろう。バレなきゃ良いのだ、バレなきゃ。


「あの愚者を見限らなかったら、彼は母国に帰るからだよ?」

「期限は一年間。それまでにお嬢さんが愚王を見限れば、王子妃として連れて帰る約束だったんだ」

「王子妃…?」


 グルグルとその言葉が頭を回る。私はこの国の王妃。その王妃が、どう言う形になれば王子妃になれるのだろう?そもそも、王子と言うのは、どこの王子だ?結婚していない王子がある国はどこだ?…まさか。


「あの大国の王子ですか!?」

「正解!僕は何番目だと思う?」

「そうですね…。王太子は健在でありますし、第三皇子は騎士として優秀であると聞きます。であれば、外交に力を入れていると言う第2王子でしょうか?」

「流石、我が娘だ!」


 撫でてくる父に反応する元気もない。椅子にもたれかかりたい、このまま泥のように眠りたい、目覚めたらなかったことにして欲しい!現実逃避したくなるほど、大国は国として素晴らしい。軍事力も強く、医療も発達している。それでいて、厳しい教育によって王族を名乗れる者が選別されるのだ。愚王や国王陛下は、大国では王になるどころか満足に生きてはいけなかっただろう。

 …もしかして、私にされた教育は大国のものだったのでは無いか?それならば、隣国の教育より厳しいと納得がいく。


「と言うことは、私は殿下と従兄妹になると?」

「それがね違うんだよ。面倒だから甥って説明されたけど複雑でね〜?」


 なんて説明すれば良いかな?と黙り込む殿下。父が説明するといったのに忘れているようだ。将来の妻にする予定の私には、自分の口から語りたいのであろう。


「閣下の母君は、隣国の先王の姉であったんだよ。どうやら、公爵が隣国に訪れた際に王女を気に入ったらしい。この国も我が国には劣るものの、それなりの豊さだから反対も無かったそうだ。

 つまり。君の母君は、友好の架け橋である君を連れ去った大罪人ってわけだ」

「ですが、殿下。私が連れて行かれたのは祖母の故郷ですよ?そんな大罪人なんて言われるほどの罪にはならないのでは?」

「やっだなぁ〜?もう一個の国があったから、余計に反対は無かったんだよ?」


 ニコニコと笑顔を浮かべる彼は、とても嬉しがっている。彼にとって、私がされた仕打ちが気に入らなかったらしい。潰す名目が出来て楽しいのだろう。抑えきれない嬉しさが、その目に怒りとして溢れている。


「閣下の祖母が我が国の王女でね?我が国に訪れた閣下の祖父に一目惚れなさったそうだ。閣下の祖父が宰相として外交に励んでいたこともあり、生まれた子供に王家の教育を受けさせることを条件に結婚が認められたそうだ。そして生まれたのが、先の公爵閣下。王女が体を崩し子供を産むことが困難とされたため、二人はその子に王家のより厳しい教育を施した。その結果、鬼の宰相として呼ばれた先の公爵閣下が生まれた。先の公爵閣下が大国の血を引いていたことがあり、隣国の王女との結婚も反対が少なかったというわけ。

 ね?三国の友好の架け橋を無断で連れて行くなんて、十分大罪人でしょ?」


 ねぇ〜?と聞いてくる彼の瞳は爛々としている。父に助けを求めるもの、別に良いんじゃないか?と止めもしない。生き続ける方が死ぬより辛いと言うのだから、その質問には良しと答えるわけにはいかないのだ。


「殿下?母の話より私の今後の話をしませんか?」

「今後?」


 殺す気満々な彼と興味すらない父を止めるのに、さっきから気になっていた事を聞く。王子妃やら嫁やら説明してくれないとわからないのだ。そもそも、私が彼を好きになるのかだなんて分からないだろう?彼だって私が好きなのかわからない。


「えぇ。殿下は私が好きなのですか?」

「それは…」


 顔を赤くした彼の反応は、とっても可愛らしい。あの女の事を忘れてくれたのは嬉しいが、私をチラチラと見て口ごもる様はこちらが恥ずかしい。愚王で忘れていた感情が、心に湧き上がってくるの感じる。

 …父よ。見えないように肘でつつくのはやめてくれ!


「半年ぐらい前に、この国でお嬢さんの報告をしていた間者から連絡があったんだ。お嬢さんが殺される可能性があるって。だから一年以内にお嬢さんが見限ったら連れて帰ろうって話になって、母上から『お嬢さんが良ければ王子妃になってもらってこい』と言われてたんだ。その時は『お嬢さんがどんな子かわからないから会ってから考えますね』って言って君を妻にしようなんて考えていなかった。

 でも。報告だけしか聞いたこと無かったけど君が気になっていたのは確かで、悶々としながら閣下のお宅を訪ねて事情を説明し、宰相の推薦として近衛騎士として務めることになったんだ。お嬢さんもご覧になったように、弟に劣るものの剣の才能があったからね?お嬢さんを通りすがりに救った一件から、僕は王付きとして仕事させられるようになった。『あんな王妃を救えるのだから、国王陛下も救ってくれるだろう』ってね」


 怒りを抑えるためか、その拳はキツく握られていた。あの時の騎士や侍女の様子も彼は気に入らなかったはずだ。刺客が現れても動かない騎士、私を盾にする侍女。傾国美人が現れてからは日常的光景だった。

 呆れてため息とともに隠し持っていた剣を取り出そうとした時、鮮やかな命の紅が輝いたのだ。両足を抑える刺客たちに、返り血も浴びること無く立っていた騎士。彼は刺客の服で剣の血を簡単に拭き鞘に戻すと、私に向かって膝をついた。

『賊を倒すのが先と考え、その場面を見せてしまい申し訳ありません』

 お怪我はありませんか?と微笑む彼は騎士としても美しく、私はその腕とともに彼の事が気になっていたのだ。


「僕は渋々頷いたよ。拒否して騎士を辞めさせられたら、お嬢さんを救う機会も少なくなるからね。けれど仕事を君に押し付け、側室でもない女とイチャイチャするなんて王として失格だ。あの女は得体も知れないし、存在が何というか気持ち悪い。見ていて気持ち悪いから、勝手に王の名代を名乗ってお嬢さんの所にお邪魔させてもらっていたよ」


 傾国美人を思い出したのか、吐きそうになっている彼には同情する。傾国美人は側室でも無かったのだ。王が王宮へと連れてきた得体の知れない女。王から寵愛を受けているのにも関わらず、他の男にも声をかける尻軽女。彼も尻軽女に声をかけられたのだろう。傾国美人は顔が良い男を標的としているようだからな。


「お嬢さんの所の侍女には、物凄く警戒されたっけ。僕が愚か者の手先で、お嬢さんを淫通罪で処刑しようとしてるんじゃないかってね?まぁ、閣下から渡されたお嬢さんのネックレスを見せたら喜んで迎え入れてくれたけど」


 淫通罪の響きに思わず顔が固まる。バレていないと思っていたら、流石は公爵家の侍女。気づいており、排除してくれていたようだ。それでも私の元に現れたものがいるのだから、想像以上にその人数は多かったのだろう。どれだけ私を殺したかったのだ、まったく。

 それにしても、ネックレスとは何の話だろうか?父にもらった記憶もないし、愚王や国王からもらったこともない。今の私がつけているのは、この国の王妃の象徴であるピアスだけだ。


「ネックレスなんて知りませんが?」

「君の曽祖母、つまり我が国の王女が嫁入りする際に持って行ったものだよ。自分の子孫が友好の架け橋になるのだから、その象徴としてネックレスを受け継いで貰おうって。その様子じゃ、母君は着けていなかったみたいだね?」

「そんなネックレスなんて見たことが有りません。それにあの女がつけていた装飾品は、全て模造品でしたよ?巧妙に作られたガラスで、鑑定士でないとわからないほどの素晴らしさでした。」


 お互いに首をひねった私たちは、知っていそうな人物に顔を向ける。顔を向けられた父は、我関せずと優雅にカップを傾けていた。自分は知らない雰囲気を醸し出しているが、絶対に関係しているからな?宝石商を呼んでいたのも、社交界でのあの女の衣装を準備していたのも父だ。あの女にとられたが、誕生日にもらった髪飾りは本物だった。そのことからも、父が意図的に模造品を渡していたことになる。


「君が生まれてすぐ、両親から言われたんだ。彼女が言っていた『私は、本物の宝石ぐらいわかるのよ!』が本当か確かめろって。模造品を渡し気づくまで、あのネックレスをつける資格などないってね。むしろ、生まれた君の方がこのネックレスが似合うと言ってたよ。だから、彼女が着けなくても君が着ける姿だけでも良いから見たいって楽しみにしてたなぁ。

 それにしても、模造品を渡しても直ぐに指摘してくれるって思っていたけど…」


 その前に私を連れて、隣国に行ってしまったと。うん、これ以上この人に聞かない方がいいな。8年以上模造品を渡し続けて指摘されないでいて、嘘だと思わない人にあの女の話を聞いても無駄だ。

 それに、禁句とされている祖父母のことを聞くわけにもいけない。


「…ネックレスを見てみますか?」

「はい!お願いします!」


 空気を読んでくれた殿下がどうにか話を変えてくれた。あの女と父に対する不満に、()()()()()()()()()()()と考えてしまった冷静さで表情が死んでいたはずだ。父は父で、あの女の事で凹んでいる。親娘が一瞬にして負の感情を出したのだから、とても驚いた事だろう。それでも、不快に思う事なく対応してくれた殿下は良い人だ。

 そういう細かい所に気を使える殿下は、良い夫になるだろうなぁ。…羨ましい。


「お嬢さん?」

「…いいえ。何もありません」


 …私は何を考えていたのだろうか?あまり頭が回らず、とりあえず声が聞こえてきた方を見る。わたしの斜め前で膝をつき、不思議そうに顔を覗き込んでいる殿下。大振りで豪華な刻印の入ったアクセサリーケースを手に持っている。


「綺麗…」


 私を覗き込んでいる殿下の瞳は、紺碧の空の様に美しい。その瞳に私が映し出されているのだ。それはまるで自由に空飛ぶ鳥の様で、昔憧れていたもの。


「昔、同じ瞳を見たことがあります」


 まだ公爵家に居た頃、父へのお客様である親子が同じ瞳を持っていた。父は父君と話があるからと、そのお子さんに話し相手になってもらった。何を話したのかよく覚えていないが、一つだけ心に残っているものがある。


「君は囚われた鳥なんかじゃない。何故なら…」

「何故なら、父親の手伝いをしている君こそが自由に羽ばたく鳥のようだから」


 あの時の声と重なって聞こえた。陽に照らされ宝石のような金色の髪。キラキラ輝く紺碧の空のよう瞳。顔を赤らめて少し上目づかいする様子。その姿も、あの時の少年と重なる。


「閣下の手伝いをしている君は、とっても可愛らしかった。褒められて嬉しがる様子は、気難しい父までも笑みをこぼしていたよ。だから、二人っきりになって君の悩みを聞いた時に答えたんだ。

 君は自分のやりたいことをしているのが似合っている。血筋や性別なんか関係ない。ありのままの君自身が美しいってね?

 確か、籠の鳥と言ってたから鳥を例えに出してもらったよ。…分かりにくいのに、覚えてくれたんだ」

「はい…!」


 覚えていたどころではない。私は、その言葉を聞いて救われたのだ。母の節操のなさに絶望し、父の子供ではないと考えてしまう日々。実の娘ではなくても少しぐらい役に立ちたいと手伝いを始めた。手伝いが楽しくて父に褒められるのが嬉しくて、それでいて罪悪感を覚えながら生きていた。

 その時に、あの殿下の言葉だ。暗い日々が一転する。私は私であり、今この場においては父の子供であると。だから、積極的に手伝いをして行こう。もし父の子供でなければ、この地で民の為に働こうと。

 それ以来に私の理想の夫婦像ができた。お互いがお互いのために、そして民の為になるような政治をする相手。私と切磋琢磨してくれる相手が理想になった。


「泣かないで。泣くより笑っている方が笑顔だよ?」


 いつの間に泣いていたのだろう?綺麗な紺碧がボヤけてしまっている。心配そうな顔をする殿下もだ。アクセサリーケースを机に置き、ハンカチを差し出してくれるがそんな余裕などない。私は、初恋とも言える人に会えて嬉しいのだ。愚王と結婚する時、唯一後悔した初恋の相手と。


「…あぁ!もう!!…彼と一緒に座りなさい。お前は、この()を泣き止ませなさい。…なんで、娘が恋に落ちる様を見させられる?」


 シビレを切らした父が、文句を言いつつ対応してくれる。久し振りに会った時に『愚王は好きだが初恋が忘れられない』と言った事を気にしていたのだろう。もし、あのまま公爵家にいたのであればきっと恋は成就されたのだから。


「承りましたおじさん。お姫様、お手をどうぞ?」

「はい!」


 父の言葉に頷いた彼が私に手を差し伸べる。今度は断らない。もう、彼を愚者の手先だなんてひどい勘違いはしない。彼こそが、私の王子様だったのだ。


「さぁ?涙を拭いて」

「ありがとう…ございます」


 エスコートしてくれた殿下からハンカチを受け取る。何度も涙を拭うが、一向に涙が止まらない。それほどまでに、この人は私の心に住みついていたのだ。


「僕はね?初恋の少女が忘れられなかったんだ。だから、君を嫁に貰うのを戸惑っていた。だけど報告から聞く王妃は、あの少女が成長した姿の想像とソックリだったんだ。だから余計に気になって、君のところにお邪魔していた。仕事に打ち込む姿も女官から諌められた時の落ち込み方も、そして騎士の姿勢を誇りに思ってくれる姿は初恋の少女にしか見えなかった」


 頭をポンポンとしてくる殿下の言葉に、余計に涙が出てくる。何回も『初恋』と言われて恥ずかしい。寝不足になりながらも仕事をしていたら怒られたのだ。女性の気のバランスが崩れやすいやら、端的に太りますよ?と脅されたりもしたのだ。その姿を見られてただなんて!彼女達も教えてくれたら良いのに!

 騎士の姿勢に関しては、純粋な私の感想だ。あの王家の教育では、剣の扱いも入っていたのだ。だからこそ、隠し通せる大きさの剣を隠し持ち使おうとした。使う前に鮮やかな剣筋を見せられたのだ。剣に携わった事があるものなら、褒めないと言う選択肢なんてあるわけない。


「ある日、睡眠不足で気を失っただろう?丁度移動しようと立った時で、倒れる前に抱き上げる事ができた。そして僕の瞳を見て言ったんだ。『綺麗な空。あの子が言ったように、空飛ぶ鳥になれたかしら?』

 その時僕は決めたよ。君を安全な場所に連れて帰ると。そして、出来る事なら君を妻にすると」


 あぁ、何で私は気が緩んだところでしか気づかないのだろうか?父に関してはすぐに気づいたのだ。だが、侍女や殿下の事は気づく事ができなかった。もしや、公爵家で行われ事に関して無意識に思い出さないようにしていたのではないか?愚王と結婚するのにその感情はいらないから。

 その証拠に、父に『初恋』の事を告げたのは結婚発表の場だった。しこたま酒を飲まされて、夜風に当たっている時に父にあったのだ。父だけは酔っている事に気付き、送り届けると約束して騎士と共に部屋に連れて行ってくれた。その時に、つい言ってしまったのだ。父と公爵家の息がかかった騎士だったから誰にも知られずにいた。

 そう考えると納得がいく。()()()()()()()()()()()()()のだ。彼が忘れられなくて、でも隣国に連れて行かれたからには愚王と結婚するしかなくて。私を飛ばせてくれる所だけを彼と同一視していた。

 だから、傾国美人が来て私の元に来なくなった時も安堵したのだ。その次に来た怒りは、裏切られたと感じたから。私は理想を押し付けて、勝手に失望したと言うわけだ。本当にあの女と一緒で気持ち悪い!!


「でんかぁ」

「どうしたの?」

「私は、あの女とソックリなんです。だから、だから愚王が傾国美人(アレ)と一緒になった時も失望しかありませんでした!殿下と一緒のように認めてくれると思ったのに、全然違うくて。だから、白の関係で良かったと殿下が会いに来てくれると安堵しました。

 私は、殿下が考えている以上に昔と違います!!」


 最後まで喋り切って、また涙が溢れてくる。殿下が好きだった私は純粋だったのだ。今の私は、あの女と何も変わらない。勝手に人に期待して思っているのと違ったと失望した私が、顔を自慢したくて父と結婚して

 国王に求婚されたからと私を連れて行った母と何が違うのだ?


「それは違うよ?君は昔と変わらない。本当に変わっているのなら、わざわざ言わないはずだ。そうやって罪悪感を抱くのは、閣下の娘じゃないかと考えていた時と変わらない。ね?君は、僕が恋した時から変わっていない」

「殿下…」

「待ってくれるかい?誰の娘が私の子供じゃないって?」


 …どうしよう。隣国が潰されるかもしれない。

 …父には伝えてなかったのだ。私が、父の子供でないと貴族の連中から文句を言われていたのを。実の母でさえ、わからないと言っており多くの連中から嘲られていた事を。


「そのまんまだよ、オッサン。あの時のアンタは、自分の事しか考えていないクソ野郎だってね!」

「どうして言わなかった!言っていたら少しは…」

「かわんねぇだろうが!前もそれとなく言ったのに、『自分の言う事をキチンと考えろ』って聞かなかったのはおっさんだろう!?」

「黙れアホ。遠回しに言い過ぎだ!もっと分かりやすく言え!」」

「なに〜!?」


 …なるほど。三大珍事は全部私がらみの事だったのだな。すれ違ったからと意見交換をしていて、それとなく言えば父から分かりやすくしろって言われて喧嘩騒ぎ。癖でオッサンと言い、父がそれに乗っかった。そのあと、騎士方面でオッサン呼び宰相方面で罵倒の話が流れ、それぞれ別の話になったと。

 それにしても、どう喧嘩を止めればいいのだろうか。私が何か言ってしまえば、また喧嘩になってしまう。何か良い物が…あった。


「綺麗…」

「これが人の世に出てなかったと」


 その良いものとはアクセサリーケース。ビロードの上で輝くネックレスは、見事殿下の気をそらしてくれた。

 豪華なネックレスだ。1つの大きい雫から左右に2つずつ雫のような宝石が連なっている。雫の形を小粒のダイヤが象り、その真ん中で大粒のダイヤが輝いているのだ。それが計4個あるだけでも輝かしい。それ以上に目を引くのは、大きな雫の中心で輝く大粒の宝石。美しい緑色をしており、美しいカットがされている。周りのダイヤを象るダイヤに劣らない輝きだ。王女の私物であったとしても結構な代物。時と場合によっては、ダイヤより価値があったはずだ。


「美しいだろう?彼女の顔じゃネックレスに負けるって言った、両親の気持ちがわかるよ」

「美しいです!真ん中の石は?」

「エメラルドでしょ?」

「アレキサンドライトです」

「「あれきさんどらいと」」


 二人の反応を見ると聞いたことがないのだろう。男性は宝石に興味がないと聞く。ダイヤ、サファイヤ、ルビー、エメラルドさえ知っていたら良いとか言うのだから全く。


「アレキサンドライトは、色が変わる宝石です」

「色が変わるの!?」

「えぇ、殿下。例えば、サファイヤとルビーは同じ石なのですよ?色によって名前が変わるのです」


 2つの元になった鉱物、コランダムと言ったかな?それは様々な色系統を持っており、赤いものだけがルビーと言われるそうだ。つまり、ピンクでもサファイヤとなる。青以外のサファイヤはファンシーカラーサファイヤと呼ばれるらしい。


「陽の光の下ではこのような色をしますが、火で照らすと色が変わります。お父様、火種を頂けません?」


 ぼおっと聞いていた父が急いで、火種を持ってくる。その火に翳すと、それはそれは美しい赤色に変わった。


「これほどまでに変わるなんて、大国はどんな鉱山を持っているの?」

「えっ?知らない。よね?おじさん」

「同じく聞いたことがない」

「あのね?」


 なにがそんなに凄いのか?みたいに見てくる二人に、少し呆れる。お説教は、この豪華なネックレスを置いてからだ。


「あのね?アレキサンドライト自体が、希少とも言われるの。それなのに、これほどまでに色が変わって大きくて美しいカットの仕方だと、それこそダイヤより価値がでる。お判り?」


 うんうん、と激しく頭を振る二人に溜息を吐く。これの価値をわかってもらったのであればそれで良い。

 それにしても、このネックレスを私がつけて良いのだろうか?アレキサンドライトだけでも価値があるのに、周りにあるダイヤも質の良いものだ。このネックレスを売っただけでも、遊んで暮らせるだろう。考えるだけで恐ろしい。


「それほど価値があるのなら、君がつけるべきだ。我が王家の血を引く君がつけ、僕との間の子に継承させれば良い。そうすればいつかは、王家に戻るだろう?」

「…はい」


 この殿下のことだ。きっと、つけないという選択を与えてくれないだろう。それに、亡き先代も何処かで見ているかもしれない。その彼等のためにも、これはつけるべきだ。

 父につけてもらうのも悪いので、大人しく背を向けて座り直す。戸惑いつつ金具に手こずる彼は、こういう経験がないのだろう。それが少しおかしくて、思わず笑ってしまった。それが父には見えていたのか、頭を抱えて呻いている。


「できました」

「…おもい」


 予想通り、このネックレス重かった。弱々しい令嬢なら首が折れている。それに心も折れている。曽祖母の思い、祖父母の思いが詰まっているのだ。

 その思いと宝石言葉、アレキサンドライトの出発とダイヤの永遠の絆を胸に私は新しく頑張っていこうと思う。


「殿下。私の覚悟を見てもらえますか?」

「え?…うん」


 不思議そうに首をかしげる殿下に、耳飾りを押し付ける。勿論、覚悟とはこれのことではない。机の上に置いて傷がついたら、悪い感じがするからだ。この国が()()()()()()()、傾国美人がつけることになるからな?それに傷がついていたら、呪われそうだろう?


「それは…」

「あら、お父様。ご存知でしたの?」


 取り出した布に、父が顔をしかめた。この人は中身を知っているのだろう。知っているのなら、なぜ止めなかった?これで私は、嫌われていると感じたのに。


「鏡?」

「鏡です。知っていますか?男性から鏡を送られる意味は、あなたと別れたいなんですよ?」


 美しい刻印がされた鏡。これが他の物ならば、あの人を助けようと思ったのに。鏡をもらった段階から、私の心は折れてしまったのだ。


「何か落ちたけど?」

「なんでしょう?」


 布と鏡の間に挟まっていたのだろう。床にヒラヒラと落ちていった。拾い上げるとメッセージカードで、裏に文字が書かれている。


 パリーン


 その文字を読んで、思わず鏡を投げつけた。ふざけるな!今更そんな言葉を言うのか!?


「お嬢さん…」

「妻としての最初のお願い、聞いてくれますか?」


 なんて声をかけたら良いかわからなかったのだろう。絞り出すように発せられた声に、私は笑みを浮かべて問いかける。

 戸惑いながらも頷いた王子様に、お願いを告げた。


「…アッハッハ!良いよ?それが奥さんのお願いだなんて、なんて素晴らしい妻だ!」


 予想と違ったのだろう。それはそれは面白そうに目の前の王子様は笑った。父を見ると、呆れたように空を眺めている。


「奥さん?囚われの鳥はやめて、一緒に羽ばたこうか?」

「勿論です。私の王子様」


 差し出された手を取り、私は籠の鳥をやめた。私は、この紺碧と一緒に自由に羽ばたくのだ。


「さようなら、()()()()()()()()





(落花枝に返らず)


 妻として紹介された彼女は美しかった。金色の髪は容姿の美しさを引き立て、その瞳は紅玉のように輝いていた。まだ少女であるのに、その容姿は美として完成している。

 彼女を見て、思い出させられたのは我が国の宰相。金色の髪、蒼玉のような瞳を持つ宰相は暴力的な容姿の持ち主だ。普通にしているだけでも見惚れるのに、笑顔は人を気絶させるほどらしい。

 宰相に何処と無く似ている少女は、私にとても可愛らしく微笑んだ。…彼女は傾城傾国になるかもしれない。



 彼女との関係はうまくいっていた。彼女は、頭も良く私の手伝いをよくしてくれた。家臣たちの相談に乗るので、彼等からの評判も良かった。

 1つ心残りがあるとすれば、白の結婚が続いていることだろう。同盟のためにも彼女のためにも、契るべきとは考えているのだ。刺客が多く今はまだそう言うことはできない。



 彼女との結婚から半年。私の元にある女性がやってきた。それとなく身元を探らせても分からない、怪しい女性だった。皆が美しいと褒め称えるが、妻の方が美しかった。宰相の方が美しいだろう。その女性には、言えないが。


 そんな人物が、私の元に現れるなんて裏がある。だから、私が側に置くことにしたのだ。彼女に近づけて、妻が害されたら嫌だから。妻には状況説明を述べた手紙を送った。



 彼女が過労から倒れたと聞いた。彼女の側に行きたくても、この女が私を離さない。この女を近づけたが最後、この女は妻を害するだろう。彼女へは、顔を見て欲しいと手鏡を送った。見舞いの言葉を書いたカードもつけて。



 私の元に、脅迫状がおくられてきた。いつもより騎士の配置が多くなっている。私と私の最愛を守るためだというが、私の最愛は妻だけ!私の愛しい正妃だけなのだ!どうか、彼女のことを守りに入ってくれ!




 脅迫状騒動から一夜明けた、朝食の時間。この時間だけが、あの女と離れられる唯一の時間なのだ。本当は正妃の元へ行きたいが、安全の為と言われれば仕方ない。


「陛下!」

「どうした」


 その時間を邪魔するようにやって来たのは、正妃への伝達役だった。私の最愛があの女と言われる中、彼だけは私の正妃への愛を信じてくれている。


「正妃様がおらず、宰相様の所に相談に行くとこれが…」


 その手に包まれているものを見て、血の気が引く。王妃の象徴であるピアスとガラスの破片だ。彼女が持っているガラスの物は、私が送った手鏡しかない。何故、これがこんな無残な姿に…。


「お前が、愚かものだったからだろう?」

「隣国の!?」


 声と共に現れたのは、隣国の王だ。護衛も付けずに一人でお越しになっている。勿論、私は何も知らない!どうして、このお方がここにいる!?


「我が王よ!申し訳ありませぬ」

「お主の責任ではない。悪いのはソイツだ」


 伝達役が、隣国の王に跪ついた。我が王とは、もしや隣国の王の家臣だったと?間者であったと?

 視界がグルグル回り出す。これは…毒だ。毒耐性があるが、中途半端に効いているのだろう。


「お前の城は、我が国の間者だらけだ!」

「…なに、を」

「それもこれも、あの娘を貰うため!」


 グイッと髪の毛を引っ張られ、王の方を見させられる。隣国の王の顔に浮かぶのは、怒りだ。


「この国の宰相、俺の従弟の娘だったんだよ。従弟の子供にしては優秀で見目麗しいから我が物にしようと、アイツの妻を誘惑して連れて来させたんだ。思った以上に優秀で、少しでも失敗すれば不敬として妻にするつもりだったが失敗しなかった。そこで考えついたんだ。お前に嫁がせた後、お前の国を滅ぼし戦利品として王妃をもらうと」


 宰相との娘というにも驚きだが、彼女の妻がそんなに簡単に彼女を引き渡したも不思議だ。それ以上に、そこまでしてまで彼女を欲しがる王に狂気しか感じない。


「それなのに」


 グッと髪の毛に力が加えられる。


「あの娘は出奔しやがった!アイツの父方が大国の血を引いていてな、そこの王子に連れて行かれたんだよ!!」


 王の言葉と共に、顔に衝撃が来た。グッと持ち上げられて気づく。この王が、机によって顔を殴っているのだと。

 そして、また衝撃が来た。頭が揺れるが、王の話は止まらない。


「折角、あの尻軽をお前の元に忍ばせたんだ!俺の信頼する家臣も潜入させた!なのに、何を逃がしてんだ!あの大国に連れて行かれたら取り戻せないだろうが!」


 一番の衝撃が来た。髪の毛から王の手が離される。


「あの尻軽は処刑した。次はお前の番だ」


 最後の気力を振り絞ると、王が剣を持っているのが見えた。その刀身は既に血に塗れている。

 視界の端で、机の上に飾られた花がまるごと落ちた。それは、まるでこの後の私のよう。


「隣国の王。貴方は、私の正妃を愛していたと言うのか?」

「そうだと言っているだろう?」


 最後に、これだけは言っておこうと思う。私が唯一この男に勝てた部分だ。彼女が幸せになったとわかっているからこそ言える言葉。


「愛しい女性を狂人から守れるなんて、男冥利に尽きる」

「キサマァ!」


 笑みを浮かべた私に、激昂した王が刀を振り上げる。もう思い残すことない。ゆっくりと目を閉じる。



『この愚王!国はどうするの!?』


 意識が亡くなる直前、彼女の言葉が聞こえた気がした。








 それは昔の物語。

 従弟の娘に恋した王様が、無理やり隣国の王に嫁がせました。従弟の娘だと醜聞になるからと、隣国を滅ぼし戦利品として娘を貰うために。

 隣国の王は聡明で、王様の企みなどわかっていました。正妃を愛し続け、女の間者の誘惑にも負けません。

 王は娘を守れないと考え、大国の王子に娘を託します。大国であれば、娘を守れると考えたからです。

 王は、攻めてきた王様の前に立ちました。娘は大国に託した。その言葉で激昂した王様は、王に切りかかります。王は、その死を受け入れました。

 王様の剣が、王の首を刎ねる直前。ひとつの剣が、その動きを止めました。彼こそは大国の王子。娘を託された大国の王子様です。

 出奔したと言われていた娘ですが、実は王の事が気がかりでした。王子様に無理を言って、この国に戻ってきます。

 帰ってきた娘に王は言います。貴方は王子と幸せになってくれ。娘は、泣き崩れましたが王子と共に旅立ちました。

 王は娘のためにも、この国を立て直すと誓いました。



 ついに寿命が訪れ、王は眠るように亡くなります。その手には、古めかしいメッセージカードが握られていました。



 私の愛する正妃へ。この鏡を見て、自分の顔色を確認してください。自分でも悪そうに見えるなら直ぐに休むこと。 君を愛してやまない夫より




落花枝に返らず破鏡再び照らさず

落ちた花が枝に返らないように、割れた鏡が元のように照らさないように、別れた夫婦は元には戻らないという意味。

四字熟語で破鏡不照として掲載されていました。

破鏡再び照らさずでは、鏡が割れる描写。落花枝に返らずでは、花が落ちる(イメージは椿です)描写を描いています。

その描写以降、相手に対する異なる感情(私はこの人を恋愛対象として見れないが大切であるという信頼、彼女は好きな人と幸せになってほしいという期待)が生まれたと考えて頂けると嬉しいです





設定ありの登場人物まとめ


宰相の娘。母に隣国の王の元に連れて行かれる。王の良からぬ感情に気づくが、その感情の奥に秘められたものに気づかなかった。なんとなく、この人は嫌だと王を避け続ける。その環境から救ってくれた王様が、初恋の王子に見えて心を許す。が、女にのめり込み王の仕事しない(ように見えてそれなりにしていた。王妃の元へ細かい仕事が紛れ込ませられていた。仕事しろ、役人ども)事に呆れ出奔を考える。父の元へ行くと、初恋の少年がいて罪悪感に苛まれながらその手を取る。

メッセージカードの文章を見て、王の命を守ることを決意。最後に話し合い、君を愛していなかったと言われ(演技が下手くそなため、嘘だと気づき)王子と一緒に大国の繁栄させ、王の居た国の後ろ盾となった。


宰相

めちゃくちゃ美人なお父様。年齢不詳の容姿であるため、娘が居るなんて思われなかった。ちょっと変わった人が好きで、最初の奥さんを選んだのはその考えから。自分のことを、金蔓、アクセサリー感覚としか思われてなくても喜ぶ変態。その奥さんより変わった人が現れないため、再婚せず。娘に初恋のことを聞かされ、彼女がその事を考えないようにしていると気づく。下手に聞くわけにいかないと悩んでいると、その王子様がやってきた。これが世に言う、カモがネギを背負ってきた!(意味が違う)と喜ぶ。

なんやかんやくっ付いたが、イチャイチャしていて気まずい。てか、ネックレスそんなに価値があったの!?


王子様

大国の第2王子様。初恋の少女が忘れられず、正妃を母親に恋人にしろと言われ反発する。が、その正妃が初恋の少女と気づき、叫んだら宰相に怒られた。少女から私は昔と違うと言われたが、その優しさは昔と変わっていないと思っている。メッセージカードを見た彼女から、命を助けてほしいと言われ、この国の為にとなんやかんや助けた。恋敵から彼女を幸せにしてくれと言われ、彼に対する評価を見直す。愛する女性と一緒に、自分の国の繁栄に励む。ついでに、その国を守る。別にコイツのためなんかじゃないからな!そう、国の為だ!くにの(ツンデレ?)


(愚)王

愚かと言われた王様。本当は、正妃大好き人間。メッセンジャーが間者とかわからないよね!彼女に手紙届いていなかったとか知らないよね!その結果、諦められたとか知らないよね!と結果だけ見れば残念な人。

この人がもっと賢ければ、正妃との間に子供ができーの、狂人に殺されーのあったかもしれない。とりあえず、この結果が一番幸せ!だって、誰も死んでないからね!


公爵の前妻

元凶その1。公爵の妻になるものの、娘を産んだからと男遊びに走る。堕胎する事もなく公爵の子と言い張り、気づけば公爵の実子以外が何処かに行っていた。王様に妃になれと言われ、妃!公爵より上!と喜び娘を連行。王国で正妃になるも男遊びは止まらず、娘が嫁入りしたたのち淫通罪で処刑


尻軽

元凶その2 。アホに誘惑してこいと言われ、王を誘惑しようとした尻軽女。民の中ではモテる方で、貢がせては金が無くなりしだい振っていた。今回はその手腕を買われた。が、彼女のお気に入りは王ではなく我らが王子様。王子様こと騎士様に逃げられたので、仕方なく王誘惑のお仕事に戻る。本人的には上手くいっていると思ったが、王は正妃様を思っていた。正妃様が逃げちゃったので、アホに後ろから首チョンパされた。


諸悪の根源。アホでありクズ。祖母が大好きで、祖母によく似た娘と結婚したくなる。従弟の子供だと醜聞になるからと、嫁がせて奪い取る計画を立てる。いっぺん死んでこい。マジでクズ。前王妃の子供は四人しかいないが、コイツ全体の子供は何十人いる。もげろ。

因みに、我らが王子様によって拷問にかけられたのちに処刑。彼の後は、それなりにマトモな王太子が継いだ

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