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本日の商品 異世界への転移と復讐

「すみませんでしたぁああああああああああっ!!」

 

 俺が今居るのは何もない謎の空間で、目の前で土下座しているのは神を名乗る爺。ちっ! どうせなら美少女が良かったぜ。ミスで殺したお詫びに転生させてくれるついでに一発ヤらせて貰っておきたかったのに気が利かねぇな、あの野郎。

 

「じゃあ特典は~として、最後に一つ……俺をひき殺したトラックの運転手を酷い目にあわせろ。家族まとめて人生をグッチャグチャにしてくれよ」

 

「……はい。承りました。それと向かった世界で満足せずにお亡くなりになった場合、前の世界で別人として一からやり直しです。では、良き人生を……」

 

 ぐふふふふ! これで異世界でハーレム築いての好き放題だぜ! ああ、本当に俺は選ばれた存在だよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、糞っ! 面白くもねぇ」

 

 脂ぎった顔に数段脂肪が重なった腹、髪はボサボサで薄い。糞親のせいでこんな見た目に育った俺はニートって呼ばれているけど、親が悪いんだから養うのは当然だ。グチグチ言ってきたらぶん殴ればいいんだから楽だよな。今日もネットで小説を読み、片っ端からボロクソに評価してやる。評価機能がついてんだからどんな評価しても自由だぜ。だからメッタメタにコメントしたら運営に対応されてブロックユーザーだ。……エロサイトでも見るか。

 

 ああ、ついでにイケメン俳優のブログに嫌がらせをしないとな。俺なんて教室でエロ本広げた程度で嫌われたから正当なしかえしとして修学旅行で風呂を覗いたら退学だってのに、此奴はモテモテ何だから不公平だ!

 

「ったく、俺が異世界に行ったら馬鹿が書く小説の主人公より上手く行動するってのに」

 

「おや、だったら行ってみますか?」

 

 背後から聞こえてきた声に振り返れば奇妙な姿の男がいた。あのババア、誰も入れるなって言っただろうが。後で罰を与えてやる。それが彼奴の為なんだし、俺って親孝行な息子だぜ。

 

 

 

 

 

「ええ、ええ、貴方は見た目のせいで理不尽な目にあっただけ。本来は選ばれし者なのです。……ですから異世界にお連れいたしましょう」

 

 普通なら馬鹿が何か言ってるって思うけど、何故か信じることが出来たので差し出された手を取る。よっし! 俺の華やかな未来が目に浮かぶな!

 

 

 

 

「さてと、俺の新しい顔は……」

 

 あの後、不細工に産んだ罰として両親をぶっ殺し、風呂を覗いた程度で騒ぎやがった女子の家に火を付けた後で言われた道路でトラックの前に飛び出した。あの神が言うには全部トラック運転手の犯行になるって話だ。轢かれた時に結構痛かったからな。当然の報いだ。

 

 近くにあった池をのぞき込めば映ったのは映画俳優みたいな美形の顔。俺に相応しい顔だと満足したので特典として貰った魔法を使って近くの街までワープする。ちょっと腹減ったし、何か喰うか。金無いけどワープすれば良いしな。だって、此処って俺のために用意された世界だろ?

 

 

 

 

 

「おい! 何だこれは!!」

 

 早速入った食堂でオススメの肉料理を頼んだら、出てきたのはデカい芋虫の丸焼きだ。鉄板の上で音を立てて焼ける匂いが吐き気を誘う。うぇっ! 美味そうに食べてる奴が居るし、ゲテモノ料理の店だったか。

 

「お客様、一体どうなされ……」

 

 取り敢えず腹が立ったので店員を掴んで顔面から鉄板に押し付ける。悲鳴を上げて暴れる姿に気分がすっきりした。さて、腹立ったし店を吹き飛ばすか。

 

 

 

 

 

「おいおい、マジかよ……」

 

 あの後、騒ぎになって鬱陶しいので街を焼き払う。ついでに牧場が近くにあるらしいから肉でも確保しに行けば……虫しか居なかった。この世界の食用肉はデッカい虫だけだったんだ。牛も豚も鳥も存在すらしていないと調べた結果分かった。

 

 

「ふざけんなっ!!」

 

 苛立ち紛れに周囲を焼き払い、喉が渇いたので酒場に入って適当な瓶の中をコップに注ぐ。店主くらいは生かしておけば良かったと思いつつ匂いが大丈夫だったので飲んでみれば酷い味だった。苦みとエグ味と酸味が一緒になって口に広がり、ネバネバと残り続ける。他の瓶の中身も……いや、井戸水さえも飲めたもんじゃなかったんだ。

 

 あの神、とんでもない世界に送りやがって! もう魔法で飲食不要にしてしまえ! そんな事より女だ、女! もう適当なのを攫って犯して楽しんでやる。俺は年頃だし、持て余した性欲を発散させて何が悪いんだっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……此処は?」

 

 適当な街で気に入った女達を攫って洗脳して犯しまくったまでは覚えているんだが、気付けば神が居た空間に戻り、目の前に神が立っていた。

 

「誠にお気の毒ですが、洗脳したことで貴方に抱いた好意が過剰すぎて嫉妬から寝込みを襲われてしまいました。では、予定通りに……」

 

 有無を言わさず指を鳴らせば俺の意識が混濁していく。ちっ! まあ、あんな世界に居ても面白くねぇし、次の人生は金持ちスタートって情報が頭に入って来たし別に良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夢か」

 

 俺……いや、私が前世の記憶が取り戻したのは十五歳の時。あの自己中心的で良心の欠片もない屑の記憶が戻った時、狂いそうになった。だが、この歳まで受けた教育と注がれた愛情が精神の破綻を防ぎ立ち直ることが出来たんだ。……記憶と言うには朧気で、明確な夢程度だったのも助かった要因だろう。

 

「いや、逃げちゃ駄目だ。私が犯した罪には変わりない。償える罪ではないが、それでも……」

 

「パパー!」

 

 思い悩んでいた時、幼い娘が抱きついてくる。ああ、私は本当に幸せだ。本当に……。

 

 

 

 此処で私について語ろう。とある巨大なグループ会社のトップの息子として生まれた私は経験を積むためにと下請け会社に身分を隠して入社し、そこで妻と出会った。……一目惚れだったよ。他人には語れない罪から想いを告げる事さえ迷ったが、それでも抑えきれなかった。

 

 相手は下請けに勤める平社員。当然、親には結婚を反対され、一度は駆け落ち同然に逃げ出したが、今度こそは親孝行をしようと話し合い、漸く和解する事が出来た。まあ、罰として新しい就職先でもっと経験を積まないと跡を継がせて貰えないって話だけどね。

 

「じゃあ、行ってくる。今日は絶対に早く帰るよ」

 

 娘と指切りをして私は出社する。今の仕事は運送会社のドライバー。……ああ、私が人生を狂わしてしまった彼も……あれ?

 

 

 運転中、前世の記憶が克明に蘇る。あの時、前世の私をひき殺したトラックの運転手顔は……私だった。

 

 

「あれ? 手が勝手に動く。ブレーキが踏めないっ!?」

 

 必死にトラックを止めようとするも体が動かない。目の前に誰か飛び出してくる。此方を見て笑っているのは前世の……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、あのお客様とご家族の人生の今後を思うと不安で一杯です。でも、全部お客様が望んだ事ですので。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

 

 

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