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読書好きには異世界は辛い

キノコ狩りに行ったらゴブリンの群れを殲滅してランクが上がった。


あらすじだけ聞くとまるでラノベのテンプレの様だが俺もそう思うぜ。

違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。


徐々に意識が浮上し目が覚める。夢を見ていたのは覚えているが内容はよく覚えていない。

夢なんてほとんどはそんなものだろう。


部屋の広さこそ前世の自室と変わらないが明らかに自室とは異なる天井。

簡素なベッドに寝具。

前世の自室は本の山に埋れていたが宿の部屋にはベッドと簡素な机と椅子。他に家具は無い。


「夢じゃないんだな」


転生そのものが長い夢の様な気がして独り言つ。


起きようとすると全身がピキピキと痛む。

筋肉痛だ。

前世でも道場の合宿や特訓で激しい練習をしたときには何度かなった。


この筋肉痛が昨日の大量のゴブリンとの戦闘が夢じゃないぜと言っている気がする。


動けないほど酷い痛みではない。

無視して身体を動かしていれば直ぐに気にならなくなる程度だが、微妙に動くのが億劫になる。


もそもそとベッドから抜け出し朝食へ向かった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


今日は冒険者ギルドでの仕事は休むことにした。

決まった休みが無いので依頼を請けるのも請けないのも冒険者の自由、自己責任だ。

ちなみに、この2日で宿代としては十分以上に稼いでいる。

最初に女神様に貰ったお金の残りも含めれば半年以上は寝て暮らせる。

気をつけないとすぐに堕落してしまいそうだな。


街中の露店を冷やかしながら先日の武器屋へと来た。


「おはようございます」


「ああ、お前さんか。どうした?」


髭面筋肉達磨の店主が愛想なく応える。


「先日買った剣が折れてしまったので新しいのをと思いまして」


「折れた?弟子の打った数打ちとは言え一昨日買ったばかりだろう」


「昨日ゴブリンの群れと遭遇しまして。4~50匹ほど斬ったところで骨を引っ掛けて折ってしまいまして」


「ゴブリンの群れか。よく生きて帰れたな」


「まあ、ゴブリン程度なら素手でも何とかなりますからね。効率の問題だけで」


「お前さん、見掛けによらず強いんだな」


「ははは、まあ、それなりには」


言いながら俺は樽に入った数打ちの剣を漁る。


「しかし、それなら数打ちじゃなくちゃんとした剣の方が良いんじゃないのか?戦士は武器を選ぶものだろう」


「そりゃ良いに越したことは無いですけど、ドラゴンや魔王に挑むわけじゃありませんからね」


ドラゴンや魔王といった強敵に挑むならむしろ伝説の武器や魔剣が欲しいところだが、さすがに伝説の武器や魔剣は普通の武器屋には置いてないだろう。


いくら質の良い剣でも普通の剣では数匹も斬れば血糊と脂で鈍らになる。

なら、ちょっとばかり質の良い剣を1本持つより、そこそこの剣を複数本持っておいた方が良い。

幸い俺には異空間収納(アイテムボックス)がある。持ち運びや取り回しに困ることは無い。


ちなみに質の良い剣を複数本持つと言う案は予算の都合で却下だ。


先日買ったのと同じ型のショートソードを5本選んでカウンターへ持っていく。

ついでにナイフや砥石などの小物も一緒に購入する。


少し前に9時課の鐘が聞こえたばかりだ。

今日は仕事をしないと決めたとたん時間が余っている気がする。

前世では空き時間は読書か鍛錬が基本だったが、手元に本は無い。


本か。この世界に本はあるのだろうか?


「この街に本屋か図書館はありますか?」


「本屋なら商業エリアの貴族エリア寄りの所にあったはずだ。図書館は王都にでも行かないとないな。調べものか?」


「半分は趣味ですが、調べものもありますね。この街と言うよりこの国に来てまだ日が浅いので色々知りたいことが多くて」


「なら、図書館は無いが冒険者ギルドの資料室に行ってみたらどうだ」


「ギルドに資料室なんてあったんですね。あとで行ってみます」


表情は無愛想だが質問にはしっかり応えてくれる辺り根は良い人なんだろうな、この店主。


剣やナイフの代金を払い異空間収納(アイテムボックス)に収納して店を出た。


まずは本屋に向かうことにする。


せっかく今日は仕事をしないと決めたのだから冒険者ギルドは明日で良いだろう。

資料室をすぐに見せてもらえるかどうかも判らないからな。


武器屋の店主に聞いた辺りを歩き回って本屋を見つけた。


予想はしていたが、やはりこの世界の本は羊皮紙に手書きの写本がほとんどらしい。

まだ植物紙も印刷技術もないらしい。


洋紙は特殊な薬品とか必要だった気がするが、和紙なら材料に適した木さえ見付ければ作り方はわかる。

印刷もそう難しくは無かったはずだ。

知識チートで内政無双キタコレとか思ったが、知識はあっても実用化には費用も試行錯誤も必要だろうし、短期間で実用化できたとしても既得権とか面倒が多そうだ。


転生したてでまだ右も左もわからない状態で知識チートは危険すぎる。

当面は保留だな。


肝心の本を眺める。

探すのは魔法関係の本だ。せっかく魔法のある世界に来て魔法の才能も貰っているのだから何はともあれ魔法だ。


あった。

魔法の入門書を見付け、即断で購入する。金貨1枚。本が1冊で10万円とか、この世界の本は高い。


オーダー武器みたいに金貨10枚とかじゃなくて良かった。

と思ったが本屋の店主によると本によっては金貨10枚どころか金貨100枚する本もあるそうだ。


この魔法の入門書は魔法使いを目指す人が1度は読むと言われる教科書的存在で、この本を専門に写本する人もいる程なのでそこまで高くないらしい。


本1冊で金貨1枚が安いとか、読書好きには異世界は辛い。



未だにヒロインが出てこない件。

女の子は出てきてるけど主人公の守備範囲外という。

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