ステンザード一家との出会い①
前書きを修正。
途中の-----で区切られたスペースは、現在と過去の視点の切り替えとなってます。
この日の宿屋シエナの食堂の夜の営業は、特に忙しかった。
「3番のオムライスあがりました~」
「は~い」
ガストン達の手伝いでシエナは調理場で料理を作る。
たった今、3番テーブルで注文されていたオムライスが出来上がったところである。
シエナやガストン達が作った料理を、ミリア達給仕係がテーブルへと運ぶ。
どこの飲食店でも見られる光景である。
定休日以外の毎日、宿屋シエナの食堂は忙しい。
しかし、この日は周囲で何かイベントをやってる訳でもなく、近所の食堂が定休日という事も何もない、なんでもない日なのに、現代日本でも稀にある利用客がやたらと重なる日となっていて普段よりももっと忙しかった。
「じゃがいもの在庫あとちょっとです。ミノタウロス肉は今出てるので全部です」
「了解です!ミリアちゃん、ミノ肉料理はラスト3です!」
下ごしらえをしているエトナが現在の食材の在庫を確認し、それをシエナに伝える。
シエナも、在庫状況をオムライスを取りにきたミリアにそのまま伝える。
ミリアはそれをリアラにも伝え、在庫状況を把握しながら注文を受け付ける。
余程タイミングが悪い事がない限りは、「その料理は品切れになりました」と、注文を断る事は発生しないが、注文を受けた後に「品切れでした」とお客様に報告になるハメになるよりかはマシである。
その日は、食堂の営業時間終了間際まで来客が止まらなかった。
この調子だと、オーダーストップ後にも中々帰らずに残る客も少なくないだろう。
ある程度落ち着いてきたところで空いている皿を下げていたシエナがそう考えているところに、エルクが新たなお客様を食堂内へと案内してくる。
「いらっしゃいませ~」
シエナ、ミリア、リアラの可愛らしい声が同時に食堂内に響き、常連達は頬を緩ませる。
エルクによって案内されてきたのは、チャーチル達であり、つい先ほど冒険者ギルドから戻ってきたばかりであった。
「ぎりぎり間に合って良かった~…」
ビショップが案内されたテーブルに突っ伏して食堂のオーダーストップに間に合った事を安堵する。
「遅くまでお疲れさまです。ご注文はお決まりですか?」
シエナは水の入ったコップをチャーチル達の前に置きながら、注文を確認しようとする。
「それなら先ほど、私が伺いました。直接ガストンに伝えてきます」
そう言って、チャーチル達の注文を事前に聞いていたエルクは調理場の方へと向かう。
エルクが食堂内に現れた事により、食堂内にいた女性客達からは黄色の声が挙がる。
エルクは容姿端麗であり、更に物腰が落ち着いているその接客態度は、非常に女性受けが良い。
しょっちゅう、結婚しているかどうかの質問をされるほどであり、結婚をしていなかったらエルクを狙おうと考えている女性客は少なくない。
「シエナがこの宿の経営者って知らなかったら、彼が経営者って思ってしまいそうですね」
調理場の方へと向かうエルクの背中を見ながら、チャーチルが呟く。
「よく言われます」
シエナは苦笑しながら返事を返す。
シエナの見た目は完全に子供なので(年齢もまだ子供であるが)、普通に考えたら家業の手伝いか雇われ人にしか見えないので、同じ事をよく言われているのである。
「しかし、見た目も雰囲気もだけど、どこかの貴族なんじゃないかって思える程物腰落ち着いてるよね」
水を飲みながらマチルダが思った事を呟き、それに同意したかのようにビショップとアリスがコクコクと頷く。
「えぇ、エルクさんは元貴族ですよ」
そのシエナの爆弾発言に、マチルダは口に含んでいた水を噴き出す。
「ぎゃあ!マチルダ、汚い!!」
対面に座っていたビショップがその被害を受けて悲鳴を挙げる。
「ち、ちょっ…!?どういう事!?なんで貴族だった人間がここで働いているの!?」
ビショップに謝る事も忘れてマチルダは驚く。その間に、アリスがハンカチを出してビショップの顔を拭いていた。
「貴族でなくなった理由は聞いてないですけど、たまたま森で出会って、そのままここで働いてもらう事にしたんですよ」
「意味がわかりません!」
「おや、私の話ですか。懐かしいですね…あの時、シエナさんに出会ってなければ私達一家は森でのたれ死んでいたでしょう…」
ガストンに注文を伝え終えたエルクが戻ってきて、自分とシエナの出会いを話しているのを聞き、辛い思い出ではあるが、今は幸せに暮らせている為に懐かしい思い出として、エルクは目を瞑って当時を振り返る。
「そういえば、シエナさんには何故私が貴族でなくなったかは話してなかったですね」
「まあ、粗方検討はついてますけどね」
以前にルクス達からグバン帝国がフォルトに戦争を仕掛けた話を聞いたシエナは、それが原因でエルク達が追い出されてしまったのだと予想をしていた。
「せっかくなのでお話ししましょうか」
エルクのその発言に、周囲にいた常連客達は一斉にエルクの方を見る。
(き、気になる…)
ごくりと喉を鳴らして常連客は静まりかえったので食堂内は静寂に包まれる。
「はは…どうやら皆さん気になってるようですね」
急に静かになった事により、調理場からもエトナが顔を覗かせて頭の上に「?」を浮かべている。
「でも、良いのですか?辛い過去の話しだとは思うのですけど?」
シエナが確認するかのようにして質問をすると、エルクは優しく微笑んで頷いた。
「今からおよそ6年前の事です…私達の暮らしていた国はグバン帝国に攻め込まれ、戦争が始まりました、そして…」
エルクはゆっくりと口を開き、当時の事を思い返しながら語りだす。
シエナ達は、それを聞き漏らすまいと真剣に耳を傾けた。
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フォルト王国、敗戦。
1年近くに渡る戦争は、グバン帝国の勝利によって終戦を迎えた。
もしも、フォルト王国がヴィシュクス王国やノーイッシュ王国からの援軍が整うまで持ちこたえていれば、結果は違っただろう。
唐突に開戦されたその戦争は、フォルト王国が2つの国に援軍を要請する時間を与えてくれなかった。
攻め入られてすぐにいくつかの領地が堕ち、フォルト王国はかなり不利な状況に追い込まれる。
堕とされたいくつかの領地の中には、特に重要な辺境の領地が二か所存在していた。
ヴィシュクスとノーイッシュに行くには必ず通らなければいけない最重要辺境地であり、そこを重点的に攻められてしまったフォルト王国は、2つの国への伝令手段を失ってしまう。
ヴィシュクス王国へは、ヴィシュクスとフォルト、そしてグバンにも繋がるバッヘラ大平原への道。
ノーイッシュ王国へは、比較的低く、それなりに通りやすい山脈の道。
この2つの道を失ったフォルト王国は、険しいシュバルヘーレ山脈を越えて2つの国に応援を要請する手段を取った。
大多数の部隊に分かれ、様々なルートを通ってヴィシュクスとノーイッシュを目指す。
中でも一番厳しい道程になったのはシュバルヘーレ内部を突破するルートであった。
もしかすると、どの部隊も辿り着けないかもしれない。
それでも、フォルト王国は一縷の望みに賭け、必死の防衛線を行い、耐え忍んだ。
開戦からこの世界でいう七ヶ月が過ぎた頃、険しい山脈を越えて1つの部隊がヴィシュクス王国へと到着をする。
何も知らずに平和に過ごしていたヴィシュクス王国は、友好国であるフォルト王国の事態に驚き、そして迅速に行動を移した。
しかし、間に合わなかった…。
ヴィシュクスがノーイッシュにも伝令を送り、出来る限りの兵と装備、フォルトへの補給物資を整えてバッヘラ大平原を目指していた頃、フォルト王国は敗戦を迎えてしまう。
敗戦の原因はいくつもあった。
一番の原因は、フォルト王国が弱かった事である。
フォルト王国は、危険なモンスターや魔物も他の国に比べるとかなり少なく、ヴィシュクス王国(特にテミン近辺)であれば平原を歩いていたらかなりの確率で何度も出会うゴブリンですら、滅多に遭遇しない。
それほど平和な国であり、武力というものをあまり持つ必要のない国という事でもあった。
その結果、争いをあまり好まない国となり、当然戦力も低くなっていった。
もちろん、傭兵や冒険者などを各村や町へ配置してはいたが、彼らが出動する事など稀である。
次の原因が、防衛ばかりに戦力を割いていた事である。
地の利を生かして侵入を防いではいたが、ジリジリと追いつめられていった。
グバン帝国側も、「今このタイミングで攻められればかなりやばい」というタイミングはいくつも存在していた。
しかし、その隙ですらフォルト王国は見抜く事もできず、相手が一時撤退をした事に対してもただホッとするだけであり、追撃をしようとはせずにここぞとばかりに守りを固めようとしていたのだった。
ヴィシュクス王国とノーイッシュ王国から援軍が来るまでなんとか持ちこたえようと考えていたばかりに、攻める事が抜けてしまっていた事がその原因である。
主にこの2つが敗戦の原因であったが、小さな問題も積み重なって敗北の要因ともなっていた。
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「…と、私の出身国であるフォルト王国は、戦争により敗北をしてしまったのです」
流石に負けた原因などはエルクも理解していない為、話してはいないが、エルクはざっくりとした説明でフォルト王国が敗戦した事を説明し、自身がフォルト王国出身である事を明かす。
誰もが辛そうな表情をして話しを聞いていたが、中でも一番辛そうな表情をしていたのはアリスであった。
「終戦からしばらくの間は、戦後処理などでグバン帝国もすぐには行動に移してませんでしたが、終戦からおよそ半年後に、それはやってきました…」
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「父上は無事なんだろうか…」
フォルト王国の中でも、かなり山奥に存在する小さな領地のステンザード領。そこの領地の中で一番大きな屋敷の中で、エルク・ステンザードは窓の外を眺めながら呟いた。
戦争が始まってすぐに、エルクの父親はエルクを領主代理としてステンザード領に残し、自身は王都へと向かった。
戦時中はもちろん、終戦後となっても未だにエルクの父親からは連絡はない。
およそ一年半の間、音信不通となってしまっている事に、エルクは毎日不安を寄せるばかりであった。
「きっと大丈夫ですよ。早くお義父様にアルバを抱かせてあげたいですわ」
エルクの傍らにアンリエットが立つ。その腕には、一歳二ヶ月となるアルバが抱かれていた。
「あぁ、そうだな。…父上もアルバが産まれるのを楽しみにしていたもんな。早く抱かせてやりたいよ」
「あ~う~」
父親であるエルクに頬を撫でられ、アルバは不思議そうに声を挙げる。
エルクの父親は、アンリエットがアルバを妊娠している時から、産まれてくるのを楽しみにしていた。
『男の子だったらアルバ、女の子だったらエリスが良いな!!』
と、エルクが自分が名付けたいと言っていたにも関わらずに毎日のように産まれてくる孫の名前を呟いていた。
そして、出産を間近に控えていた時、戦争が始まってしまった…。
産まれてくる孫が、平和に、幸せに暮らしていけるようにと、かなり後ろ髪を引かれる思いではあったが、エルクの父親は戦争に参加をしてくれる領民と共に王都へと向かい、孫の出産に立ち会う事はできなかったのである。
戦死してしまった者に家族がいた場合、その遺族には知らせが届けられていた。
もちろん、ステンザード領から出兵した者の中からも戦死した者は数多く存在していて、数日おきにエルクは領主代理として、その遺族達の元へお礼とお詫びをしに足を運んでいた。
父が戦死したという知らせがいつ届いてもおかしくないという状況に、エルクは毎日怯えながら過ごしていたが、戦争が終わってからもそう言った知らせが届く事なく、戦死した者やその遺族には申し訳ないが、少しだけホッとしたりもしていた。
『父は生きている』
敗戦してしまったのは悲しいが、戦死の知らせが届かなかった事実から、エルクは父親が生きていてくれた事の方を安堵していた。
これから、グバン帝国によってフォルト王国がどのようにされてしまうのかは想像もつかないが、とにかく父にアルバを抱かせてあげたい。
エルクは毎日そう考えて過ごしていたのである。
そして、運命の日がやってきた…。
「ここがステンザード領か。っち、かなり田舎じゃねぇか」
突如、ステンザード邸にやってきたのは、先の戦争で戦果を挙げたグバン帝国の軍人だった。
「こ…これは一体、何事ですか!?」
エルク達は、突然やってきたグバン帝国軍に取り囲まれていた。
「陛下からの命により、今日からここは俺が治める領地となった。これがその任命状だ」
「な!?」
突然現れてそんな事を言われ、エルクは任命状を奪うようにして確認する。
そこに書かれいていたのは、確かにこの男がステンザード領の新たな領主として任命する書状であった。
が、押されてある印はフォルト王国のものではなく、グバン帝国のものであった。
それをエルクが指摘するが、男はやれやれといったジャスチャーを取り、フォルト王国はすでにグバン帝国に吸収されている事を説明する。
「あぁ、こんな田舎だからまだ敗戦した事しか知らないだろうな。せっかくだから教えてやろう」
男はニヤニヤと思わず殴りたくなるような笑顔で得意げに話し始める。
話の内容は、フォルト王が処刑された事、残った王族は幽閉された事、グバン皇帝の弟がフォルト王国をグバン帝国フォルト領として治める事になった事という話であった。
その流れで、フォルトの各地を治めている領主も、グバン帝国の偉い立場にいる者か戦争で手柄を立てた者に挿げ替えられる事になったという説明も受ける。
「そ、そんな横暴が許されるわけ…」
「許されるも何も、皇帝陛下がお決めなさった事だからな。…ちなみに、反抗する者は処刑しても構わないとも仰せつかっている」
そう言って男は腰の剣をスラリと抜き、それを見たエルクの体は硬直してしまう。
「脅しではないからな…。戦争が始まる前の俺なら脅しだけで済んでたかもしれないが、今の俺の手は、もう血で汚れきってしまっている」
戦争で何かしらの手柄を立てているという事は、それだけ戦場で人を斬った、もしくは作戦を立てて間接的にではあるが大量に虐殺をしたという事である。
もはや男に人を斬るのに何の躊躇もなかった。
「終戦後にも反抗的な奴らはぶった切ってきた。お前の父親もその一人だ」
「…………は?」
一瞬、エルクは男が放った一言が理解できなかった。
「い、いま…なんと…」
頭の中で何度も何度も同じ言葉が繰り返されているが、動揺しているエルクには理解ができなかった。
「くく、目の焦点があってないぞ?…何度でも言ってやる。お前の父親は俺が斬った。俺が殺してやった」
エルクは膝から崩れ落ちてしまい、うわごとのように「うそだ…」と呟く。
「これがその証拠だ」
男はショックを受けて放心しているエルクに更なる追い打ちをかけようと、部下から一枚のバッヂを受け取った。
「そ、それは…ステンザード家の…」
「そう、徽章だよ」
五百円玉程の大きさのバッヂには、孔雀のように羽根を広げた鳥が彫られている。
それは、ステンザード家を表す紋様であり、その紋様が描かれた徽章は当主のみが持つ事を許される証である。
金で作られていて、小まめに清掃もされている徽章はとても美しい黄金色であった…にも関わらず、今は一部が赤黒く染まっている。
血である。
赤黒く染まった部分は血が固まって変色したものであり、その血が一体誰のものかなど答えを聞く必要などなかった。
「あああぁぁぁぁあああぁぁぁぁっ!!!」
突きつけられた証拠に、エルクは哀しみの雄たけびを挙げる。
「まだ…アルバの顔すら見てなかったというのに…」
あれだけ楽しみにしていた孫の顔すら拝めずに殺されてしまった父にエルクは深い悲しみを覚える。
そして、ふつふつと沸きあがるのは目の前にいる父の仇への殺意であった。
ゆっくりとエルクは立ち上がり、腰に着けている護身用のナイフに手をかけようと手を体の後ろへと伸ばす。
「それを抜くなら、俺は本当に容赦しないからな」
その言葉に、エルクはビクリと体全体を震わせてしまう。
圧倒的に経験値が違い過ぎる。
エルクはあくまでも護身術程度にしかナイフや剣を扱えない。
それも、木でできた剣やナイフでお膳立てされた訓練しかした事がなく、人を斬った経験などあるわけがない。
対する相手は、実践で人を斬っている。
それも、つい半年前まで続けられていた戦争でである。
強い殺意を持って男の喉元や胸にナイフを突き立てようと飛びかかっても、一瞬の内に返り討ちに遭ってしまうのは戦闘経験のないエルクでも理解できた。
男がまだ剣を抜いていない状態であるならば、可能性はかなり低いが一矢報いる事はできたかもしれなかったが、男の手にはしっかりと剣が握られている上に隙は見せようともしない。
結局、エルクはどれだけ強い殺意を持とうとも、何もする事ができずに諦めるしかなかった。
「さて、理解もしてもらったようだから貴様には今すぐにこの屋敷から出ていってもらおうか。今日からここは俺の屋敷だ。当然、財産も全て俺の物だ」
エルクは苦い表情をしながら黙って男の指示に従おうとする。
このまま何か口を開こうものなら、剣で斬り捨てられてしまうだけであり、それは命を投げ捨てるだけの暴挙である。
(父上、申し訳ございません…)
仇である男に一矢報いる事もできない上に、これまで父や先祖が守ってきたステンザード領をその男に奪われてしまうという自分の情けなさに、エルクは心の中で父に謝罪をする。
そして、せめてどこか別の地でアルバを幸せに育てあげてみせる事が、父にできる唯一の贖罪と考え、エルクはアンリエットとアルバの元へと向かう。
「エルク!」
「エルク様…っ!」
アンリエットや使用人達は、皆不安そうに広間で待っていた。
「すまない。私達はここを追い出される事になった…」
辛そうな表情でエルクが告げると、アンリエットも使用人達も「どこへでもついていきます」と、覚悟を決めた表情でこれからもエルクに仕える事を宣言する。
「使用人は残れ。これから俺様が扱き使ってやる。逃げ出したければ逃げれば良い、まあ、その時はどうなるかわかっているとは思うがな」
グバンの男は、剣をチラつかせながら使用人達を脅す。
「うぅっ…!」
使用人達は圧倒的な力量の差を肌で感じ取りたじろいでしまう。
「まあ、俺様もそこまでオーガではない。きちんと俺様が納得できる理由があればきちんと辞めさせてもやるし、扱き使うといってもそんなに酷い事はしないさ」
『そんなに』と言っているところが若干いやらしいところである。
「それにしても、こんな田舎でこれほどの美女がいるとは思わなかったぞ。…ガキ1人を産んでるようだが…まあ、良い。今夜から俺様がたっぷり可愛がってやるからな」
「……ッ!? アンリエット!!」
男はアンリエットの方を向いて、舌なめずりをしながらそう呟く。
それを聞いた瞬間、エルクはアルバを抱くアンリエットを守る為に手を伸ばし、アンリエットの手を掴んで駆け出した。
そのエルクの行動に、男も他のグバン帝国軍人達も驚いて一瞬動けずにいたが、男の部下である軍人達はすぐにエルク達の後を追おうとする、が。
「お前ら、追わなくていい。確かにあれだけの美女を逃すのは勿体ないが、戦時中にヤリたくてもずっと我慢してこなければならなかった事を考えれば、他にも女はこれだけいるんだ。全く問題はない」
男は部下を引き留め、ステンザード家で働くメイド達の方を見る。
メイド達はその舐るような視線に青ざめた表情をする。
しかし、逃げ出したエルク達の方を向き、すぐに決意の表情をする。
(エルク様、アンリエット様、アルバ様…どうか…どうかご無事で…)
使用人達は皆、お供する事が叶わなかった仕える主人達に心の中で詫び、そして無事に逃げ延びる事ができる事を願う。
そうしてエルク達ステンザード一家は、治めている住み慣れた領地から逃げ出したのである。
誤字報告をしてくださった方、ありがとうございました。
特に多かった誤字報告は『話』に関してでした。
『話』と『話し』の使い方って微妙にわかりづらいですよね。
『話している』とかであったら、『話』の後ろに『し』が付きますけど、『話をする』とかだと、後ろに『し』が付かないのがややこしいです。
それに気づかずに、今までずっと『話し』で通してしまっていた自分の無知さが恥ずかしいです(笑泣
とりあえず、自分で読み返してみて、「ここは文法おかしいような…」とか、色々と気になる所が多くあったので、おかしくないように修正をかけていこうとは思っています。




