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スパ銭を作ろう!

「では、本人もいますが、宿屋シエナの調査に関する報告をさせていただきます」

 チラリとシエナの方を一瞥した後、テッツは報告用に作成してきたと思われる書類に目を通し、それを読み上げる。

 今は、あくまでもテッツとメローナの主観や調査の結果を報告する場面であるので、シエナは口を挟まずに、シフォンケーキを食べながら自身の宿の評価を聞く。


 最初に、今回の計画の要でもある大浴場の調査についての報告が挙げられ、靴入れ(下駄箱)衣類入れ(ロッカー)の存在や、実際の浴室の間取りなどの話をし、備え付けられている道具や身体を洗うのに利用できるヘチマのスポンジの話をする。

 これはテッツとメローナがシエナから直接話を聞く前に自分達で調べた事の報告であり、その報告の後にはシエナと話をしてから見せてもらった手押しポンプや湯沸かし器の話へと移行する。


 カイエンも聞いた事のない道具の名称と用途に驚きの表情を見せるが、質問したい事は手元のメモに残して話を聞く事に集中をする。


 ある程度の報告を終えたところでカイエンからの質問が入り、テッツが自分で答えられる部分についてはテッツが答え、答えられない部分についてはシエナが答える形を取った。

 もしも、テッツが間違えているようならばシエナは訂正を入れようと思っていたが、特に間違っている部分は何もなく、訂正の必要は何もなかった。



 大浴場の話しを終えた後、別件の報告としてテッツは宿屋シエナの食堂についての報告も読み上げる。

 今回、二番街区から流れていったのはほとんどが女性冒険者であったが、食堂では男性冒険者の数も多かったと報告をする。

 テッツとメローナは、前日にシエナと約束を交わして別れた後に、常連客へ聞き込みを行っていた。

 冒険者の風貌をした男性客が多かった点から、もしかすると男性冒険者も意外に多く来ているのでは?と、考えての行動である。

 テッツの考えは正しく、宿屋シエナの宿泊客は女性冒険者メインではあるが、食堂利用客は男性冒険者も多く利用していたのだった。

 それについてはシエナも「宿は別に取っているようでして、食事だけウチに来られる方はかなりいらっしゃいますね」と、常連が出来上がっている事を話す。


 実際、宿屋シエナは今まで宿泊をする冒険者はあまり多くはなかったが、食堂を利用する冒険者はかなり多かった。

 拠点にする宿は、二番街区に存在する宿屋シエナよりも安い宿を取っている。

 しかし、食事に関してはわざわざ三番街区の宿屋シエナまで足を運んだりしているのだ。


 宿屋シエナで一度でも食事をした事のある人間は、その味に魅了されてしまっている。

 濃い味付けであったり洗練された味付けであったりと、今まで自分達が食べてきた料理は手抜き料理だったのではないかと錯覚してしまうくらい、宿屋シエナの料理は美味しいと感じているのだ。

 酒に関しても、他の酒場などにはないような珍しい酒が置かれている。


 値段は他の食堂や酒場とそう変わりはないのに、味や見た目に関しては何倍にも良い宿屋シエナの食堂は、それだけで多少遠くとも足を運びたいと思わせるほどであった。



 アッシュ、レイラのパーティーように普段は安宿に宿泊をし、食事も我慢をしてなるべく安いところで済ませるが、たまにの贅沢として、宿屋シエナへ宿泊や食事に来るパターンの冒険者。

 エレン、クラウド、カルステンのパーティーように拠点は他に存在するが、食事だけは宿屋シエナの常連となる冒険者。

 チャーチル、マチルダ、ビショップ、アリスのパーティーように拠点も食事も宿屋シエナと決めている完全な常連の冒険者。

 大体がこの3パターンに分かれており、チャーチル達のようなパターンはまだつい最近加わったばかりのパターンである。



 その報告を聞き、カイエンは宿屋シエナのポテンシャルの高さに驚く。


 それなりに安い料金で女性冒険者が安心して宿泊できる環境。

 かなりの格安で利用できる、貴族も驚くような豪華な大浴場。

 拠点から遠く離れているにも関わらず、常連になってしまうほどの味を持つ食堂。


 どれだけ完成度の高い宿なのかと、興味を抱かない方がおかしいくらいである。

 もしも、三番街区区長が宿屋シエナの事を知っていて隠していたのならば、一度文句を言わねばならぬな。と、カイエンは心の中で思った。



 報告を聞いたカイエンは、シエナが大浴場建設計画の助言者として来てくれた事にかなりの期待を寄せる。

 元々の建設計画では、燃料費についてが一番のネックであった。

 しかし、それはシエナの協力があれば解決できそうだと考える。

 ただし、その前にしておかなければならない話が1つだけあった。


「建設計画の会議をすぐに始めたいとは思うが、先にシエナくんとの取引について話し合わねばならぬな」

「取引ですか?」

 一体何の取引なのか?と、シエナは首を傾げる。


「無論、今回は助言者と言う事で来てもらっているが、無料(タダ)で助言してもらう訳にもいくまい。更に提供していただきたい技術などもあるのだ。それを踏まえたシエナくんへの報酬の話だ」

 無料(タダ)より高い物はないし、先にこの取り決めをしておかなければ、お互いの認識の違いのせいで、信頼に亀裂が入り、修復不可能になる事だってある。


「あぁ~…そういえば、何も考えずに来てました。別に報酬とかはいらないんですけどねぇ…」

 シエナとしては、自分の持てる技術や知識はとにかく広めたい。

 それは、今世の自分の為ではなく、いずれ同じ世界へと転生する可能性がある来世の自分の為である。

 その為であるならば、別に報酬などなくても無料で教えるのはやぶさかではなかった。


 これがテミンに来たばかりのシエナであれば、宿を建設する為のお金を確保する為にある程度は交渉していただろうが、今のシエナは特にお金には困っていない。

 従業員への給金の支払いも、1年程前までは自分が冒険をして得たお金や、作り出した道具を別の商人が売る特許のような使用料などで賄っていたが、今は宿の宿泊費や大浴場の利用料、食堂の売り上げで大幅に黒字化できているので問題なく支払えている。

 余ったお金は、貯めこみつつも料理教室などで使用していて、宿屋シエナは三番街区の経済に大きく貢献している。

 なので、今のシエナにとってお金は特に必要のないものなのであった。


「…ここまで交渉のし甲斐のない人は初めてだ。シエナくん、君は成功者ではあるが、商人としては失格だね」

 カイエンが呆れたようにして首を振る。


「新たな技術・技法を無償で提供しようとする心意気は感心する。誰にでもできる事ではない」

「考案者が君なのだから、それは君の自由だろう。だが、君がそれを『当たり前』にしてしまうと、今後、他の者が今までになかった技術を発見した時、誰からも技術料が取れなくなってしまう」

 カイエンはシエナを諭すように、説明を始めた。


 誰にも思いつかなかった技術を無償提供するのは、確かに考案者の自由である。

 しかし、そうやって無償で広める人がいると、教えてもらってる立場の人間は、最初こそは感謝していても、後々になってそれが当たり前になってくるのである。

 他の者が新しい技術を発見した時、「前の人は無償で技術を教えてくれた」と、さも当然のようにして対価を支払おうとせずに、知識だけを得ようとしてくるのである。


 考案者が苦労して発見した技術、それには技術料や使用料を徴収する権利が発生する。

 しかし、シエナのようにその権利を放棄する人間が現れると、お金を出したくない人間はそれを引き合いに出し、相手に権利を放棄させようと企み始める。


 現代日本でもあちこちで見かける「前の人はサービスしてくれたのに、なんであんたはしないの!?」と、理不尽なクレームをつけ始める人が大勢現れるというのと同じような感覚である。

 以前の人はちょっとした親切心からサービスをしただけである。

 それを本来は受けられるサービスではないという事を理解しようとせず、次の人からも同じサービスをさも当然のように受けようとするのが当たり前なってくると、決められているルールと言うものは意味をなさなくなってしまう。

 行き過ぎたサービスも、却って裏目に出てしまう結果である。



 カイエンの説明に、シエナは現代日本でも起きている現象を思い出して反省をする。

 同時に、チャーチル達からも同じような事を言われていた事を思い出す。


 シエナとしては、単純に『情けは人の為ならず』の精神で起こした行動ではあるが、それを当たり前にすると、自分以外の他の人に迷惑がかかってしまう。

 旅の道中で人助けをした際には、どんなに必要を感じなくてもお礼は受け取らなければならない。

 そうしないと、助けられた人間はお礼はしなくて良いと当たり前に考え始めてしまう。

 そうなると、礼金目当てに人助けをした人がお礼を貰う事ができなくなってしまったり、余計なトラブルに発展する可能性だって出てくるのだ。


(冒険者としても、商人としても失格だなぁ…)


 今までシエナが生み出してきた道具や技術の使用料を、シエナがいらないと言っても支払ってきた商人達は、そうならない為にも自分を戒めてきたのである。

 シエナは、そこまで考えが及んでいなく、今の今まで「皆律儀だなぁ」程度にしか考えてなかったのであった。


 そして今回、カイエンに説明をされた事によって、ようやく自覚をする。

 今までの自分の中の常識だけでなく、きちんと周りの常識を把握しなければならない。


 盗賊を皆殺しにした件で、冒険者としてのランクがシルバーランクからブロンズランクに下げられてしまったのも、全ては常識外れであった事と自覚が足りなかったという事を、ようやく理解する。



「考えが足りず、申し訳ございませんでした」

 シエナは申し訳なさそうにして、カイエンに頭を下げる。

 カイエンも、常識知らずであったシエナに常識を説いただけであり、まさか頭を下げて謝罪されるとは思っていなかったので、そのシエナの行動に少し焦ってしまう。


「い、いや。謝る必要はない。少し口調がキツクなってしまってたようだな。すまない」

「区長だけにですね」


 シエナが呟いた瞬間、部屋の中は静寂に包まれた。


(あぁーっ!!またやってしまったぁぁぁーー!!)

 どうしても、勢いで変な親父ギャグを言ってしまう癖が抜けなくて、シエナは頭を抱えて悶絶する。

 そんなシエナの様子を見て、シエナの親父ギャグを聞いて固まっていた3人はプッと吹き出す。

 説教と謝罪により悪くなっていた場の空気は、その流れで穏やかにほぐれる。


「報酬はそれなりの額は用意させてもらってる。更に、シエナくんの助言による貢献度次第では上乗せもさせてもらう予定だ。…受け取ってくれるよな?」

 さっきまでの流れで「受け取らない」といった選択肢を取る馬鹿はどこにもいない。

 シエナも笑顔で「ありがとうございます。受け取らせていただきます」と返事を返し、その後にカイエンから告げられた報酬額の大きさに驚きの表情を見せるのだった。




 それからシエナ達4人は、大浴場の建設計画についての会議を始める。


「候補地は3つ。どれも川がすぐ近くに流れているが、水源があって井戸が掘れるのが一番良い。この手押しポンプとやらが役立ちそうだからな」

「水源があるかどうかでしたら、私が魔法で探ってみましょうか?」

 宿屋シエナが建っている土地を購入する際、いくつかある候補地の中からシエナは魔法を使って水源がある場所を探り当てていた。

 水場の有無やどれだけ近くにあるかで土地代も大きく変動してしまうので、そこはこっそりと探っていたのだが、その時と同じように水源を魔法で探知すれば良いので、あっけらかんとシエナは答える。


「魔法で水源が探せるのか!?是非頼む」

「りょーかいです!」


 そんな便利な魔法があるとは知らなかったカイエンは、シエナの申し出に飛びつく。

 あるかどうかもわからない水源の為に井戸を掘る労力が減るのであれば、それだけ経費も削減ができるものだ。

 代わりに、カイエンはシエナへの報酬に早速上乗せをする事を決める。


「浴槽の木材だが、シエナくんのところの浴槽には良い匂いのする木材が使用されてると報告書には書かれているな。どんな木材を使用してるんだ?」

「あ~…ごめんなさい。木材に関しては秘密にさせてください」

「何故だ?いや、秘密にしたいというならば無理に聞こうとするのは良くないか。すまない、忘れてくれ」


 本当は知りたいところではあるが、カイエンはグッと堪える。

 シエナはその心遣いに感謝をした。

 代わりに、別の部分で色々とアドバイスができればと考える。


「そうだ。ただの大浴場じゃなくて、スーパー銭湯みたいなのが良いかもしれないですね」

 ふと思いついた事を呟くと、三者から「すーぱーせんとう?」と疑問の声が聞こえてくる。


「はい。お風呂を数種類用意し、お風呂以外にサウナであったり軽食のできる施設や休憩所を用意した銭湯の事です」

 そもそも銭湯とは何なのか?といった疑問も3人にはあったが、シエナが何か思いついたのであれば一度その案を聞いてみる方が良いと思って質問を控える。



 シエナの出したスーパー銭湯の案は、室内風呂・露天風呂・水風呂・家族風呂・サウナ・軽食処・休憩スペースと、日本であれば少し大きな町にありそうなスーパー銭湯に揃っているようなラインナップであった。

 サウナも魔晶石を用いた魔道具を作成すれば問題なく作れるだろうと考えているし、貴族の婦人向けにエステなどを取り入れるのも良い案かもしれないと、シエナは次々と思い出されるスーパー銭湯にあったサービスを話し出す。


「良い。実に良いです!こんな面白い発想は我々だけでは出てこない!シエナくんは目の付け所が違う!」

 カイエンとテッツは、シエナからもたらされた案に興奮しっぱなしであり、メローナはエステというものが気になっているようであった。


 室内風呂は木で作り、露天風呂は河原にある大きな石で作る事を決定する。

 家族風呂は手狭なスペースとなるが、複数用意する事を決定して話し合いは着々と進んでいく。


「軽食処は作り置きしやすい物やすぐに作れる物が良いでしょう。メニューもあまり多くない方が良いと思います」

 テッツが軽食処のメニューの事を提案すると、シエナはピッタリな料理がいくつかあると話す。


「シエナちゃんの宿にあった鍵付きの衣類入れって、全部を金属で作れたりしない?それを受付前とかに設置して、荷物入れにすれば冒険者も施設内は手ぶらで歩けるようになるし、人の目があるところだから盗難防止にもなるし」

「ロッカーはもちろん金属でも作れますよ。鍵ももうちょっとしっかりした鍵を用意しましょう」

「おぉ、それは良い案だ。常に荷物を持ち運び、目を光らせておかないといけないのは大変だからな」


 メローナの提案に、テッツがよく思いついた。と、メローナを撫でて褒める。


「簡易宿泊施設にも利用できそうだな。あそこの利用者達はいつも交代で睡眠を取っているようだから、大変だろう」

 すぐにカイエンが別の施設にも利用ができそうな事を思いつき、会議の流れはますます良くなっていく。


 それから少しだけヒートアップしすぎて、理想ばかりを追い求めたスーパー銭湯の完成形は、あまりの理想の高さに断念をせずにはいられない結果となってしまい、シエナ達は熱が入り過ぎたと反省をする。

 しかし、テッツは商人として、カイエンは市民の事を想い、いずれは思い描いた理想を現実にしてみたいと考えるのだった。




「今日は有意義な話し合いができた。感謝する」

 数時間に及ぶ会議を終えたシエナに、カイエンは感謝を込めた握手を求める。

「こちらこそ、スーパー銭湯の完成が待ち遠しいです」

 まだまだ先の事ではあるが、完成すれば街の人々は今よりも豊かに暮らす事ができるようになるだろう。


「ではまた後日、水源の確認をしにまた訪問をさせてもらいますね」

「あぁ、よろしく頼む」


 シエナはペコリと頭を下げ、カイエン邸を出る。

 時刻はまだ夕方前。せっかく二番街区に来ているのだから、少しだけディータと雑談でもして帰ろうと、自身の宿ではなく黄昏の女神亭へと足を向けた。


「テッツよ。彼女を連れてきたのは良い判断だったな」

 シエナの姿が見えなくなってから、カイエンはテッツを褒める。

「そりゃ、私も儲け話には敏感ですからね。もちろん、私への報酬額の上乗せも期待してよろしいですよね?」

 テッツはシエナとは違って、きちんと銭勘定をしている。


「抜け目ないな。少しは彼女を見習って無報酬で奉仕してみてはどうだ?」

「ご冗談を。そんな事をしていては、私共商人はやっていけませんよ」


 そんなやり取りをして2人は笑い合う。


「また美味しいケーキ食べたいなぁ」

 そして、そんな2人とは全く関係ないように、メローナはケーキが食べたいと呟くのだった。




 シエナが自分の宿へと帰り着いたのは、太陽が隠れようとしているくらいの夕暮れ時であった。

「ただいま戻りました~」

 からら~ん、とドアに取りつけられたベルの音を鳴らしながら、シエナは宿の中へと入る。


「おかえりなさい」

 受付にいるセリーヌが、笑顔でシエナを出迎える。

「あ、シエナ。おかえり。もう~…どこ行ってたのよ~寂しかったぁ」

 丁度、食堂の営業の手伝いをしようとしたシャルロットも降りてきて、シエナ成分を補充するかのようにして抱き付いてくる。


「ちょっと二番街区区長様のお屋敷に商談をしに行ってました」

 シエナに頬擦りをしていたシャルロットは、シエナの返事にピタリと動作を止める。

「カイエン様の…お屋敷ですか?」

「…?そうですよ」


 相手は貴族であるので、名前だけ知っていても何ら不思議ではない。

 シエナは特に気にした様子もなく、そのシャルロットの態度に首を傾げた。


「カイエン様には、とても可愛らしいお嬢様がいらっしゃると聞いた事がありますが会えましたか?私好みの小さな女の子でしたら良いのに」

「えぇ、シフォン様ですね。残念ですけど、シャルロットさん好みの子ではなかったですよ。それに、何か色々あったらしくて、元気がなかったです」

「そう、ですか…それは残念です」


 何とも微妙な反応ではあるが、シャルロットの手はシエナの体のあちこちを弄っている。

 客の目につかない場所であるならば、ある程度のセクハラは多少許すのだが、ここは一番客の目が集まりやすい受付なので、シエナはシャルロットの手を叩いてセクハラをやめさせる。


「あン、シエナのいけずぅ~」

 叩かれた手を擦りながら、シャルロットは唇を尖らせる。

「はいはい…。それよりも、食堂の手伝いに降りてきたんでしょ?早く行ってあげてください」

「あ、そうだった。じゃ、頑張ってくるから、また夜になったらたっぷり愛させてね」

 シャルロットの言葉にシエナが無言で握りこぶしを振り上げると、シャルロットは頭を抱えながら食堂のドアを開けて逃げ出す。


「はぁ…全くもう…」

「シャルロットはブレないねぇ…」

 受付ではシエナとセリーヌがため息を吐いて、逃げ出した残念美人の逃げていったドアを見つめる。


 そのドアの裏側で、シャルロットは少し憂いを帯びた表情をしていた。

 しかし、その場が沢山のお客様が集まる食堂である事をすぐに思い出し、笑顔を作って接客を始めるのであった。

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