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戦うだけが弓ではない

「シエナ、今度その恰好でデートに行かないか?」

 テスタに連れられてルクス達のいる部屋へと入ったシエナは、入室してすぐにルクスにデートに誘われた。

 ルクスはシエナの服装に一瞬にして目を奪われ、そしてデートに誘わずにいられない気持ちとなったのである。


「え、えぇ。喜んで」

 シエナは頬を染めながらルクスからのデートの誘いを受ける。

 その様子を、ティレルとケイトがニヤニヤしながら見ていて、テスタは少しだけ驚きの表情でルクスとシエナを交互に見た…が。


 デートに誘った本人であるルクスが一番驚いた表情をしていた。

「ま、まさか受けてもらえるとは思ってなかった」

 なんだかんだで、ルクスは今までシエナにデートの誘いは全て断られていたのである。


 別にシエナも嫌だから断っていたり、意地悪で断っていた訳ではない。

 単純に、今まではタイミングが悪かっただけである。


 基本的にはシエナは宿屋シエナで従業員の手伝いをして日々を過ごしている。

 昼食後から2~3時間は暇な時間もできるが、大体は何か便利な道具の作成や掘り出し物を探しに出かける事が多く、デートに誘われても受ける事もままならないのであった。

 そして、たまに丸一日暇な日も存在するのだが、そういう時に限ってルクスはやってこない。

 結局、ルクスがシエナと出かけられたのは、アルバと一緒に公園に行った時と、ディータと一緒に遊んでいる時だけであり、デートとは呼べない出来事なのであった。


 そして、今回も「まあ、断られるだろうな…」と思いながらも衝動的にデートに誘い、いつものように「ごめんなさい、忙しくて…」と言われると思っていたルクスはシエナと一緒にいた事により、ここがテミンでない事をぼんやりと忘れていた。

(そうか!いつもは宿屋の手伝いをしているから忙しいのであって、ヴィッツならばシエナはほとんど手が空いてるはずだ!ここでならデートし放題!?)

 一瞬だけそんな考えがよぎったが、今度はルクスが仕事で忙しい身であり、シエナとデートできる時間はあまり作れそうにない事を思い出してしまい、ルクスは少し落ち込んでしまった。


「…?どうしました?」

 先ほどからルクスが喜んだり驚いたり落ち込んだりと忙しないので、シエナは少し怪訝そうにしている。

 ルクスは「なんでもない」と言いながら気を取り直し、シエナとデートできるように仕事を片づけて時間を作らなければならないと、今度は燃え始める。


 メイド達がお茶とお菓子を持ってきて、30分程の休憩を挟んだ後にルクス達は会議を再開する。

 その時のルクスはやる気に満ち溢れていて、今までこんなにやる気になっているルクスの姿を見た事のないティレルとケイトは驚いているのであった。




「さて、ここの珍しい料理とか教えてくれないかなぁ」

 そう呟き、シエナはテスタの館の厨房に向かって歩きだす。


 食文化レベルが低い世界とはいえ、平民と貴族とではかなりの差がある。

 特に、ヴィッツでは海鮮系の食材も豊富に使えるのだから、シエナの知らない珍しい料理も沢山あるはずである。

 それをきっかけに思い出される料理もあるはずなので、シエナはわくわくしながら厨房の前に立って、中に向かって声をかけた。


「すいません~。どなたかいらっしゃいますか?」

 厨房の中からは美味しそうな匂いであったり、何やら焦げ臭い匂いなども漂っていたので、誰かはいるとは思っていたが、一応はそう声をかけてみる。

「ん?おぉ!シエナさん!」

 1人の料理人が出てきて、シエナの姿を見るなり嬉しそうな表情をする。


「今、貴女が作ってたトマトソースを再現しようと皆で試行錯誤していたところです!」

 そしてシエナは皆に歓迎されながら厨房内へと招き入れられる。

 つい数時間前までは全員がシエナの事を疎ましく思っていたはずなのに、熱い手の平返しである。

 シエナの料理の腕前を知れば当然と言えば当然であるが…。


「どうにもうまく再現ができなくて…。是非、ご指導よろしくお願いします」

 料理長が頭を下げてシエナにお願いをすると、料理人達全員が一斉に頭を下げる。

 皆、向上心の塊であり、主人であるテスタの為にも料理の腕を上げようと必死なのである。

「わかりました!代わりに、私にもここの名物料理などを教えてください」

 そしてシエナも頭を下げる。

 まさにWin-Winな関係なのであった。



「うん!美味しいです。これに唐辛子を入れると少しピリ辛になってもっと美味しくなりますよ」

 早速シエナは、再現しようとしていたトマトソースの味見をする。

 メモを取ってる者はいたが、一度作って見せただけのトマトソースをこれだけ再現できるのは、流石貴族の館の料理人だと言わざるを得ない。

 下手にレシピを教えるよりも、目の前で色んな料理を作って見せた方がこの料理人達には合っているかもしれない。


 シエナはそんな事を考え、ふと周りに目をやると悲しそうな表情をする。

(焦げ臭い匂いはこれだったかぁ…勿体ないなぁ…)

 おそらく色々な調味料を塗って焼いてみる実験をしていたのであろう、焦げたパンがいくつも皿の上に転がっていた。

(ある程度はしっかりと教えるべきではあるみたいですね)

 基本的には見て覚えてもらう方法を取り、逆にやってはいけない事はきちんと説明をしていた方が無難であると判断をする。

 特に、食い合わせの悪い物で料理した場合が目も当てられなくなるので、そう言ったものはしっかりと教えるべきだろう。


「ところで、今日の夕食で使う材料ってどんなのですか?」

 いくらトマトソースを再現していても、それを利用できない食材だったら意味がない。他にも食材はもちろんあるから問題はないのかもしれないが、料理人達としてはやはりメインで使ってみたいだろう。


「今日はテスタッチョ様の好物のエビを使う予定だ」

 そう言って、料理長は大量のエビの入った籠をドンとテーブルの上に置いた。


「わぉ!こんなに沢山のエビ!」

 籠一杯に入ったエビを見て、シエナは歓喜の声を挙げる。

「それで、このエビでどんな料理を作る予定だったのですか?」

 続けてシエナは料理人達がどんな料理を作るのか興味を持って質問を投げかける。


「ジャボレヌエイスだよ」

「え!?なんて言いました?」

「ジャボレヌエイス」

 全く聞いた事のない単語にシエナはつい聞き返してしまう。どうやら完全にこの世界の言葉の、この世界の料理の名称のようであり、シエナの頭の中にある翻訳機能は全く働かなかった。


 すぐにそれがどんな料理で、どんな材料を使用してレシピはどのようになってるのかをシエナは質問する。

 ジャボレヌエイスと言う料理は、簡単に説明をすると『色んな具材を、米と一緒にフライパンで蒸して炊き上げる』料理であった。


「パエリアにかなり類似してますねぇ」

 むしろ、まんまパエリアである。


 使用する具材もエビをメインに他の魚介や人参、玉ねぎなどであり、パエリアと違う点があるとすれば、にんにくと香辛料を使用していないところくらいであった。


「それなら丁度良いです。そのジャボレヌエイスと言う料理に、にんにくと香辛料、あと丁度作ったトマトソースを入れましょう。もっと美味しくなりますよ」

 シエナはトマトソースの酸味とにんにくの香りによってかなり食欲の刺激される料理になると味のイメージをした。


 シエナのアドバイスを聞いた料理人達は「おぉ!早速このトマトソースが役に立つのか!」と喜んでいて、シエナと同じように目を瞑ってシエナのアドバイスした具材を追加したジャボレヌエイスの味をイメージする。

「それと…せっかくだからエビチリも作っちゃいましょう」

 トマトソースがあり、大量にエビがあるのであればエビチリを作らない手はない。

 料理人達は初めて聞く料理名に首を傾げるが、シエナがどんな料理なのかを簡単に説明すると「それは美味しそうな料理だ!」と、作るのを楽しみにしていた。


「あとはそうですねぇ…。昼食時に使った油が残っているようですから、エビフライもオマケに作っちゃいますか。2年前のクリスマスからずっと食べたかったですし」

 シエナは鍋に残されていた油を見て独り言を呟く。

 この世界で初めてクリスマスパーティーをやった時からずっとエビフライが食べたくてしょうがなかった。しかし、つい最近まで港町が近くにあるとは知らなかったので、昨日まで諦めていたのである。


 そして、昨日の網焼きでエビがあった事にシエナは大歓喜した。

 流石に網焼きでエビフライは作れないが、市場に行けばエビは買えるだろうからこれでいつでもエビフライが食べられると心に余裕が出来ていたシエナは、油を見るまで逆にエビフライの存在を忘れてしまっていたのであった。



 それからシエナ達は料理の仕込みに入り始める。

 エビばかりとなっているが、サラダなどもきちんと用意していて、それは完全に料理人達にお願いをしていた。


 あとはスープを付け加えたいと思い、シエナはいつものコンソメキューブを取り出して、海鮮系を使用せずに普通のコンソメスープを作る。

 コンソメキューブを使わなくてもブイヨンを作れるだけの材料は揃っていたが、そこはただの時間短縮である。


 最初に料理人達に作り方を教え、味見をしてもらう為にシエナは少量のエビチリとエビフライを作り上げた。

 料理人達はシエナの使用した食材や調味料、そしてレシピを目で見て覚え、そしてそれらを思い出しながらメモを取る。


 オークカツのレシピは最近ヴィッツにも流れてきていたので、料理人達は揚げ物についての予備知識はある程度はあった。

 しかし、それはあくまでも『オーク肉を揚げるだけ』の料理と思っていた為、海鮮系ではまだ試してなかったのである。


 なので、今回シエナがエビフライを作った事により、料理人達は「海鮮系もいけるのか!」と色んな物を揚げてみたいと思うようになった。

「アジって魚がいるなら、それをフライにするのが一番のオススメですね。いなければ別の白身魚を」

 シエナは料理人達にアドバイスをしつつ、その後は絶対に揚げ物にはしない方が良い魚介類を説明していく。

 なんでも揚げれば良い物でもないのである。


 料理人達が試食をして「これならテスタッチョ様も気に入る!」と太鼓判を押したところで、それぞれが調理に取り掛かった。




「まあ、今日はエビ尽くしなのね!」

 夕食の席で、テスタは大好物のエビを見て嬉しそうに手を合わせた。

「でも、このジャボレヌエイスもいつもとはちょっと違うし、他のエビ料理は見た事もないものですわね」

 すぐにテスタは、ジャボレヌエイスがいつもとは違うことに気付く。

 流石に、にんにくの香りがほのかに漂ってきて、色が違うのであればすぐに気付かない方がおかしいが…。


「はい。シエナさんのアドバイスでより美味しいジャボレヌエイスを作る事ができました。他のエビ料理はシエナさんが教えてくださった料理です」

 料理長がそう説明をすると、テスタはちらりとシエナの方を見た。

 シエナは自分の前に並べられた料理を早く食べたくて涎を垂らしている。


「ふふ、どうやらシエナが待ちきれないようなので早速いただくとしましょうか」

 本当はそれぞれの料理の詳細を聞きたいと思っていたが、シエナの方から子犬の鳴き声のようなお腹の音が聞こえてきたテスタは、各料理の説明は食べながらにしようと考え、ナイフとフォークを手にする。


「わーい。いただきま~す」

 シエナは嬉しそうに合掌をしていつものように「いただきます」と言うと、ナイフとフォークは使わずに、持ってきていた箸を使ってエビフライを掴んだ。

 サクッと音を点ててエビフライを食べたシエナは、ようやくこの世界で食べる事のできた味わいに感動している。

 ルクス達もそれぞれの料理に舌鼓を打ち、ルクスはシエナと同じくエビフライを、ティレルとケイトはエビチリを、そしてテスタはジャボレヌエイスを特に気に入るのであった。



 夕食後、少しの食休みを取った後にテスタは立ち上がるとルクスの方を向いてニッコリと笑った。

「さ、ルシウス様。どのくらい上達したか見せてもらいましょうか」

 テスタのその言葉にルクスは目を反らす。

 シエナは何が上達したのだろうかと首を傾げながら、両手で可愛くカップを持って紅茶を飲んでいた。


「ティレル?流石に稽古をサボったりはしてませんよね?」

 ルクスが目を反らした事により、テスタはティレルの方を向いて確認をする。

「まさか!私もルクス…ルシウス様にはもっと強くなっていただきたいと思ってますので、厳しく指導させていただいております」

 そこでシエナは「あぁ、剣とかそういうのですか」と興味を失くして紅茶の香りと味を楽しみだしたのだが…。


「そういえば、ヴィッツへ来る前に何度かあった戦闘で、シエナの弓術を見ましたが、中々に美しいものでしたよ」

 ティレルのその台詞によって、急に矛先が自分へと向いた事にシエナは紅茶を吹きかける。


「まあ、それは是非拝見したいですわ」

 そう言って、テスタはシエナへと歩み寄る。

「わ、わかりました…」

 シエナは顔を引き攣らせながらも、断る事のできそうにない頼みを引き受けた。


「ちなみに、シエナの弓術を見せていただいた後はルシウス様の番ですからね」

 矛先がシエナに向いていた事により、ホッとしていたルクスはその台詞にがっくりと項垂れるのであった。



 テスタに連れられて、シエナ達は館の弓の訓練場へと移動した。

 訓練場とは言うが、日本の弓道場のようにほとんどが外である。


「あ、この弓借りて良いですか?」

 自分のコンポジットボウを持ってきていたシエナであるが、訓練場に置かれていたロングボウを見るなりそれを使いたがった。

「よろしいですけど…使い慣れた弓でなくて大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


 訓練場に置かれていたロングボウは、和弓程ではないがそれなりの大きさがあり、形も和弓に似ていた。

 シエナの持つコンポジットボウは、あくまでもシエナの体からすると少し大きいくらいのシンプルな弓なので、どちらかと言えばこのロングボウの方がシエナにとっては使いやすいのである。


 シエナは置かれているロングボウをいくつか手に取り、矢を番えずに引く動作をしては一番しっくりくるロングボウを探す。

 そして、中でも弦の強さと握りの部分が一番しっくりくる弓を発見すると、同じく置いてあった矢の中から、自分の手の長さに合う矢を四本選んだ。


「的との距離はどれくらいでしょうか?」

「一番手前の的が15メートル、次が30メートルで、最後のが50メートルの距離になってるわ」

 テスタから的との距離の説明を受けると、シエナは30メートルの的の前に立ち、ジッと的を見つめる。

「少し高い位置にありますけど…まあ、いいか」

 シエナはそう呟くと、弓と矢を手に持って訓練場の出入り口の方へと向かって歩きだす。


 そんなシエナの様子をテスタ達は「?」を浮かべて眺めている。

 これから的に向かって矢を放つのに、何故的から離れて出入り口の方へ行くのか。

 そう疑問に思っていたが、シエナはくるりと向きを反転させ、左手に弓を、そして右手に矢を四本握ると、出入り口からペコリと会釈をして再度、訓練場の中へと入った。



 足音を立てずに、シエナは足踏みをして的から30メートル離れた正面へと立ち、そして右足を半歩ずらして座り込む。


 その際の座る姿勢は跪坐(きざ)の姿勢を取っていて、ゆっくりと精神を集中するように静かに呼吸をする。

 矢を二本床に置き、シエナは弓を立てると弦を返してゆっくりとした動作で弦に矢を番える。

 そして、手に持っていたもう一本の矢を弓を持つ左手の薬指と小指の間に挟んで持つと、空いた右手を一旦腰の位置へと落とした。


 もう一度、ゆっくりと静かに呼吸をしたシエナは、右手で矢を番えている部分を包み込むように持つと、ゆっくりとした動作で、立ち上がる。

 立ち上がった後は、左足を半歩分ほど開き、右足を一旦左足にくっつけるようにして同じように半歩分ほど開いて立って胴造り(どうづくり)の動作をする。


 弓の下端を左膝頭の上に置き、番えていた部分を包んでいた右手を腰に当て、シエナはゆっくりと的の方を向く。

 そして弓の方へと視線を戻すと、左手の薬指と小指で挟んで持っていた矢を右手の薬指と小指で握り、腰の位置まで持ってくる。


 弓構え(ゆがまえ)の動作を取り、シエナは的の方を向くと、弓を上へと持ち上げて打起し(うちおこし)の動作を取る。

 真っ直ぐに持ち上げられた弓の、矢を番えている弦の部分を指でしっかりと抓み(弓懸(ゆがけ)がないので抓んでいる)、弓を持つ左手を的方向へ腕を伸ばす。

 そして、引分ている途中の大三の動作へ入ったところでシエナは一旦動きを止め、一呼吸置いてからさらに引分ていく。


 矢がシエナの右頬の位置まで降りて、(かい)の動作へ入ると、ゆっくりと呼吸をしながら、胸を張るようにシエナは弓を更に引いていく。

 キリキリと弓と弦から音が鳴り、ある程度経ったところでシエナは矢を抓んでいた右手の力をゆっくりと緩める。


 一定の力が抜けたところで、右手から抓んでいた矢が自然と離れ(はなれ)、シエナの右腕は大きく右方向に伸びる大離れを見せる。

 そして、矢は勢いよく弓から放たれ、30メートル先の的へと命中をした。


 弦はその勢いのまま、シエナの左腕の外側へと返っていて、シエナはそのままの姿勢で残心(ざんしん)を行い、一拍置く。


 そして、的から目を離し、右手の薬指と小指で握っていた矢を最初からの動作で番え、今と同じ動作で弓を引いていく。

 床に置いていた二本の矢も同じ動作を繰り返して弓を引き、シエナが四本の矢を引き終わって最後の残心を終えたところでシエナは「ふぅ…」とため息をつくように力を抜いてテスタ達の方へ振り返った。


「素晴らしいですわ!」

 テスタは拍手をしながら目に涙を浮かべていた。

 残念ながら、三本目の矢は的にはあたらなかった為、皆中(かいちゅう)はできなかったが、シエナとしても満足の行く結果である。


「こんなに美しい弓の引き方は初めて見ましたわ。どこで習いましたの?」

 テスタの質問にシエナは少しだけ困惑してしまう。

「お、オリジナルです」

「まあ!では、今の弓術はシエナしか知らないと!なんて勿体ない!」

 テスタは心からシエナの弓の引き方を感動していて、これがシエナしか知らないのが本当に勿体ないと感じていた。


「私のは、厳密には弓術ではなく『弓道』ですね。狩りや戦闘にはあまり向かない…どちらかと言えば、心身の鍛練をする…そう!武道です」

 シエナは戦闘中でも完全な癖で射法八節(しゃほうはっせつ)の動作をしてしまうが、モンスターや魔物、そして対人戦ではこの動作をしていてははっきり言って隙だらけである。


「心身を鍛錬する…」

 しかしテスタはシエナのその言葉に更に心を動かされていた。


「シエナ先生!私に弓道を教えてくださいまし!」

 そしてテスタはシエナの事を先生と呼び、弓道の教えを請い始める。

 シエナは少し困惑してしまったが、弓道も教えて損のない武道であるので、テスタの頼みを快諾する。



 これは後日談ではあるが、弓道を習ったテスタが他の貴族達に弓道を披露したところ、特に女性貴族が弓道を気に入る事となり、弓道は貴族の嗜みとして流行る事となるのであった。

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