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セリーヌの悩み~おっぱい編~

 季節が夏に差し掛かり、日差しが強く暑い日が続き始めた頃、宿屋シエナの受付ではセリーヌがため息をついていた。

 事の発端は、遡ること2週間程前に起きた、ヴィシュクス王国第一王子によるプロポーズ騒動が原因である。


 お忍びで来ていた王子が、一目惚れをした女性に結婚を申し込み、手痛く振られた。と言う噂は、テミンの街中に広まっていた。

 ほぼ事実ではあるのだが、噂を聞いたほとんど人が、王子からのプロポーズを断る事などあり得ないからと、その噂を信じてはいなかった。

 


 しかし、火の無いところに煙は立たぬ。

 噂を聞いて興味を持った人々は、噂となっている宿屋シエナへ、その中心人物を一目見ようと訪れていた。


 人々の想像では、王子が一目惚れをした人物は絶世の美女となっていた。王子が一目惚れをするくらいなのだから当然である。

 スタイル抜群で顔も性格も、全てが完璧なお嬢様を、皆想像していた。

 しかし、宿屋シエナにはそれに該当するような人物は見当たらなかった。


 かろうじて、アンリエットがそれに該当していたが、人妻である。

 まさか王子が人妻に結婚を申し込まないだろう。と思った人々は、消去法で次に該当しそうなセリーヌに目を付けた。

 セリーヌは、顔はそこそこの見た目ではあるがどこか田舎くさい見た目である。

 しかし、その豊満な胸が特に男性の目を惹くのである。

 宿屋シエナの看板娘として、ほぼ受付業務に携わっている為、セリーヌは嫌でも一番目立ってしまう。


 見物に来た人々は、セリーヌの胸を見た後に今度は顔を見て、王子が一目惚れをするほどの美女ではなく、どちらかと言えば田舎娘に見えた為にやはり噂は噂だったのだと、何も聞いてもないのに勝手に納得をして帰っていく。

 それで終わっていれば良かったのだが、その中にはそのままセリーヌの胸に見惚れてしまう男性も多く存在していた。


 セリーヌ目当てで宿泊も食事もしないのに何度もセリーヌと会話をする為だけにやってくる迷惑な男性客が増えてしまい、セリーヌの受付業務は滞り、疲れも倍増してしまった。

 それがもう1週間以上も続いている。セリーヌは誰も見ていない時に、ついため息を吐いてしまうのだった。




「あ~…肩凝った~…」

 まるで親父臭い台詞を吐きながら、その日の宿の営業が終了した後、セリーヌは共有部屋に置かれているソファーに座り込んだ。

「お疲れさまです。肩でも揉みましょうか?」

 お疲れモードのセリーヌを労う為、シエナは肩揉みを買って出る。

 お言葉に甘えようと、セリーヌが「お願いしていい?」と疲れ切った表情で答えると、シエナは「喜んで」と、笑顔でセリーヌの肩を揉み始めた。


 シエナが肩を揉み始めてからすぐの事、セリーヌは艶っぽい声を出しながら、「あ、そこ気持ちいぃ…」と喘いでいた。

 そのセリーヌの声に、同じく共有部屋にいた男性陣は「これ、絶対入ってるよね?(ツボに)」と顔を赤らめる。


 シエナによる肩揉みがしばらく続き、セリーヌは恍惚の表情を浮かべる。

「胸が大きいと肩凝りますもんねぇ」

 肩を揉みながらシエナがそう言うと、セリーヌの横に座っていたミリアからツッコミの言葉が入る。


「いや…あたかも胸の大きい人の悩みはよくわかります。的な言い方だけど…シエナ、胸、ないじゃん…」

 ミリアがそう言うと、シエナは自分のまっさらな胸をぺたぺたと触り、「そういえばそうでした」と、前世の自分を懐かしんだ。

 そのシエナの行動に、共有部屋にいる全ての人間が苦笑する。



「でも、胸が大きいと肩凝るのは確かかなぁ…これ、重いもん…」

 セリーヌはそう呟くと、自分の両胸についている豊満な果実を持ちあげる。

 シエナはそれをベストポジションから見下ろし、少しだけ悪い笑顔を出す。


「セリーヌさん、少し失礼します」

 シエナはセリーヌの返事を聞く前に、後ろからその大きな果実を揉み始めた。

 その突然の行動に、セリーヌは慌てて胸を隠して顔を赤くする。


「ちょ、えぇ!?突然何っ!?」

 自分の後ろで両手をわきわきと動かすシエナに、セリーヌは少しだけ恐怖を覚える。

「シエナ!おっぱい揉みたいなら私のを!!」

 すかさずシャルロットが横から割り込んでくるが、シエナはシャルロットを「結構です」と冷たくあしらって、逃げようとするセリーヌを捕まえる。


(大きくて重いなぁ。ブラでも作ってあげようかな?)

 今の自分には不要な物だったので、シエナはブラジャーの事は今まで考えた事もなかった。なので、この世界にブラが存在しない事をすっかり忘れてしまっていた。何度もお風呂に入る時に皆の脱衣シーンを見ているにも関わらず。

 無いのであれば作れば良い。自分はその為に前世で色々と勉強してきたのだから。

 シエナはそう思うと、その為に必要な情報を集めようと、セリーヌの胸のサイズを確認しようとするのであった。


「別に変な事は何もしません。ただちょっと胸を揉ませてもらって、サイズを測らせていただけると良いだけです」

 それは十分に変な事なのでは?と、その場にいる全ての人間が思う。


 セリーヌが慌てて周りを見渡すと、サッと男性陣は顔を反らした。

 その反応を見たシエナは人目につく場所でやることではないか、と、セリーヌを自分の部屋へと誘う。

「大丈夫です。すぐ済みます。ほんのちょっとだけ、先っちょだけですから」

 意味不明なシエナの言動に、セリーヌは動揺してしまう。一体この子は何がしたいのか…と。


 シエナは、返事を聞く前にセリーヌの手を引いて自分の部屋へと引きずりこむ。

 その際に、滅多にかけることのない鍵までかけている。

 シエナが鍵をかけたのは、男性による覗き防止と、シャルロットの乱入を防ぐ為であったのだが、他の人間から見れば、セリーヌの逃げ場を塞ぐ為、また他者の助けを防ぐ為に鍵をかけたようにしか見えないのであった。



「では、服を脱いでください」

 自室にセリーヌを連れ込んだシエナは、開口一番に変態発言をする。

 そのシエナの発言にセリーヌは思わず脳天にチョップをかます。


「痛いじゃないですか…」

 頭を擦りながら、シエナは抗議する。

「いや、シエナが変な事を言うから…つい」

 どうにも先ほどから会話や行動が噛み合わないと感じたシエナは、これからセリーヌに自分が何をしたいのかを説明し始めた。


 シエナは、セリーヌのカップサイズを測りたかった。

 カップサイズを導き出し、ブラジャーという下着を作りたい。と、シエナが語ると、セリーヌは「ブラジャーって何?」と当然の質問をした。


「ブラは、ざっくり説明すると乳房の形を整えるのを第一目的とした下着です。が、今回は少しでも重さを軽減する為の補助用具の下着として作成をしてみようかと思いまして」

 またシエナが訳の分からない物を作ろうとしている。とセリーヌは苦笑するが、重さを軽減させようとしてくれているというシエナの善意を汲み取り、シエナに任せてみようと上着を脱いだ。


 シエナは、皮で作られた柔らかいメジャーで、セリーヌのトップバストとアンダーバストを測り、ついでに持ちあげてみて大まかな重さを確認をすると、机に置いていたメモにサイズを記入していった。

「う~ん…まさかのFですか…重さも片方900グラム近くありそうですねぇ…まだ16歳なのにこのサイズは凄いです。まさに夢が詰まってます」

 そしてデリカシーなく声に出して答える。

 シエナの言っていた言葉の意味がよくわからなかったセリーヌは首を傾げる。シエナは淡々とセリーヌの首からの長さを測ったり、形をどのように作るかを手元にあった布を当てて確認するのであった。





 それから3日程経過して、シエナはこの世界で初のブラジャーを完成させた。

 セリーヌに合わせて作ったので、ストラップにアジャスターを付けていない簡易的な物で、ホックはオーソドックスな後ろにあるタイプである。

 色も模様も何もこだわりのない真っ白なブラジャーであり、フルカップブラに形は近いが、若干4分の3カップ寄りの形のブラであった。これはあくまで試作品であるとシエナは後に語る。

 最初はスポーツブラタイプで作ろうと考えていたが、スポブラは抑えつけて苦しいので、長時間着けるには向かない為、あえてこの形にしたのであった。


 シエナはセリーヌに、ブラの着け方を説明をして、早速装着するように促す。

 セリーヌは半信半疑でシエナの言う通りにブラを着けようとする。


「あ、そこでこうやってちょっと胸を寄せてください。うん、そうです。後は違和感のないように位置を調節してもらって…うん、そんな感じです。…どうですか?」

 シエナからレクチャーされながら、セリーヌは世界で初のブラジャー装着者となった。


「わ、すごい。だいぶ楽になった」

 ブラを着けたセリーヌは、それまで下に引っ張られるように感じていた重みがかなり和らぐのを感じた。

 シエナは真正面からおかしいところがないかを確認する。

「うん、ちゃんとゴールデントライアングルになってますね。ここも浮いてないですし…よかったぁ~」

 まるでセリーヌに向かって気功砲を撃つような構えを取り、三角にした自分の手からセリーヌを見て確認を終えると安堵のため息を吐いた。


「着けてて蒸れたりするようだったら教えてください。色々改良していきますので」

 シエナがそう言うと、セリーヌはありがとう、と笑顔で答え、服を着ようとした…が。

「ぼ、ボタンが留められない…」

 いきなり弊害が生じた。


 ブラにより、持ち上げられた胸がトップの高さを変えてしまい、すでに窮屈であった服のボタンが留められなくなってしまったのだった。

 寄せて持ち上げられた分、セリーヌの胸は更にでかく見えている。

 留まらないのも無理はなかったのだった。


「あ~…」

 これにはシエナも予想外だった。

 とりあえず、無理矢理ボタンを留める為に協力をし、なんとかボタンは留まったのだが、セリーヌの服はぱつんぱつんであった。

 胸が今にも零れ落ちそうな感じである。


「…お金あげますので、今度新しい服でも買ってください」

 流石のシエナも、今までは自分の胸が平坦だったのを気にしてなかったが、少し悔しくなってきたのであった。



 セリーヌがシエナの部屋から出ると、共有部屋にいた従業員…特に女性従業員が驚いた。

「セリーヌ!?どうしたの!その胸は!!」

 中でも一番ミリアが反応していた。

 ミリアは14歳にしてはそこそこな成長を遂げてはいるが、もう少しだけ胸が大きく育ってほしいと願っている少女である。

 そんな少女の目の前に、普段から大きいと感じていたセリーヌの胸が、更に大きく見える状態で現れたら、それは驚くであろう。つい先ほどと比べると、段違いなのだから。


「その…シエナの作ってくれた下着を着けたら…こうなった」

 セリーヌの言葉に、ミリアは険しい表情を浮かべてシエナに掴みかかった。

 シエナは、ミリアが口を開く前に「わ、わかってます!作ります!ミリアの分も作ります!」と、慌てる。

 それほどまでにミリアの表情は恐ろしかったのだった。


 当然、他の女性従業員もそれを羨ましがった。

 シエナに突き刺さる『自分にも作って欲しい』という視線。

 シエナはそれを気配で察し、汗を垂らしながら皆の分も作ると宣言をするのであった。



「胸が軽い…こんな幸せな気持ちで働くなんて初めて…もう何も怖くない」

 そう思ってた時期が私にもありました。と、セリーヌは、その台詞を数時間後には手首が千切れる勢いで手の平返しをして、全面的に撤回した。


 まず、服のサイズが合ってなかったので、時間が経過すると苦しくなってきたのである。

 それだけならまだ良かったのだが、溢れ出そうなセリーヌの胸は、いやらしい目で見てくる男共を多く呼び寄せてしまった。

 それでもなんとか、宿と食堂の利用客優先で接客をしつつ、やり過ごしていたのだが、その不幸は突然やってきた…。


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 セリーヌが丁寧な一礼をし、上半身を起こしたその瞬間、はち切れそうになっていたボタンが、本当にはち切れて飛んで行ってしまった。

 セリーヌのたわわに実った果実は、まるでブルンと言う音が聞こえてきそうな勢いで零れ落ち、その瞬間を見ていた男達は思わず「うおおおぉぉぉぉぉっ!!」と叫び声を挙げた。


 セリーヌは顔を赤らめて慌てて胸を隠し、受付裏の倉庫へと逃げ出してしまう。



 その騒動は、王子によるプロポーズ騒動の噂を上書きしてかき消してしまう程の騒動となり、後にシエナの呟いた「おっぱいミサイル事件」として語り継がれてしまう出来事となってしまうのであった。





 それから数日後、セリーヌは深いため息を吐いていた。


 やらしい目で見てくる男性客も増加してしまったのだが、突然胸が更に大きくなったという噂を聞きつけた女性客が大量に押し寄せたのである。

 皆、胸を大きく見せたいので、セリーヌに何があったのか、どうやって胸を大きくしたのかを質問攻めする。

 対応に困り果てたセリーヌは、その対応の全てをシエナに丸投げして逃げ出し、胸がでかく見えてしまうという新たな悩み事にため息を吐くのであった。







 これはその余談となるが、噂を聞きつけた中に、服屋を営んでる女性が存在していた。


 その女性がシエナにブラジャーの作り方を質問すると、セリーヌと同じように対応に困っていたシエナは喜んでブラジャーの作り方をその女性に教え、全てを丸投げした。


 女性はシエナの助言に従い、平民用の質素で安めのブラと、貴族用のレースや刺繍の入った高級ブラを作り、大成功を収め、この世界にブラジャーが広まるのであった。

「ロケットおっぱい事件」→「おっぱいミサイル事件」に修正しました。

他、一部修正。

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