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1話 第二の人生の始まり

 硬いベッドに何故か寝かされていた拓人は自分に何が起こったのかを考える為に、右手で顎を触ろうとした。


 だが、顎を撫触る事は出来ない。届かなかったのだ。

 いつも何かを考える時は、顎を触っていたので、触れないはずがない。


 だけど、今は触れない。

 触れない理由を探る為、拓人は今まで閉じていた瞼を開ける。


 が、拓人の目の前には見たことも無い天井が広がっていた。

 天井は木で作られている。その事を確認出来た事から、この家の持ち主はお金持ちでは無いとすぐに判断出来た。


 いつもなら、こんな事では泣くはずがないのに、今回は何故か無性に泣きたくなってしまった拓人は、泣いてしまった。


 「おぎゃー!」と。


 おかしい。

 感情が上手くコントロール出来ない。それに何? さっきの泣き声は。

 明らかに『おぎゃー!』 って泣いたよ、な──


 「あらあら、どうしたの? ロイちゃん」


 (──ってえぇぇ! 何で僕持ち上げられてんの?)


 肩くらいまで伸ばしてある金髪に金の瞳。そして、きめ細やかで白い肌。

 その持ち主である見知らぬ女性に抱き抱えられた拓人、改めロイちゃんは驚いた。


 彼女の外見から察するに、拓人と対して歳は離れていない。

 そんな彼女に拓人は抱き抱えられている。

 それはとても恥ずかしい事なのに、何故か落ち着いている自分がいる。


 これらの事から、自分に何が起こったのかが把握出来た。

 

 異世界に転生してしまったのだと。


* * * * *


 「ロイちゃん。少し出かけてくるけど、大人しくお留守番しててね」


 「分かった。気をつけてね、母さん」


 異世界に転生した日から、今日で五年が経つ。


 この世界に生を受けてからの五年間はとても有意義なものであった。


 この世界には、日本では知る事が絶対に出来ない事、知らなかった事が沢山あり、それらを学ぶ為に図書館に入り浸り、知らなかった事が次々に無くなっていった事に、初めて達成感や充実感を得られた。


 日本にいた時は、何故かは分からないが、何でも知っていたのだ。


 だから、自分から知らなかった事を知るという行為が出来なかったし、知らなかった事が無くなっていくという達成感や充実感を得る事が出来なかった。


 取り敢えずこの五年間で歴史や文化、古代魔術など、この世界の知識は粗方知り尽くした。

 そして、何より初めての友達も出来た。


 「ロイくん、あそびにきたよ!」


 と、母であるエミリ=グディアルが出て行ったかと思ったら、次は先ほど話した初めての友達であるルミエラ=シュタルデンが家に遊びに来たようだ。


 面倒くさそうに言っているが、内心では物凄く喜んでいる。


 それで、ルミエラとは生まれた時からの付き合いで、いわゆる幼馴染というやつだ。

 誕生日も一二月二〇日で一緒。しかも血液型もAB型で同じ。


 側から見れば、凄い偶然だなと思うだろう。

 だがロイドには、それが偶然だとは思えない。『何か』にそうなるように仕組まれるような気がしているのだ。


 「あれぇー? ロイくん、いないの?」


 「いるよ。鍵はかかってないから、入って来ていいよ」


 家の外に居るルミエラに向けて、ロイドはそう言った。

 そうすると、ルミエラはいつもと同じように、ガチャリとドアノブを回して家の中に入って来る。


 「それで、どうしたの? 今日は遊ぶ約束なんてしてなかったのに」


 「んーとね、ままとぱぱがおしごとでいえにいないの。それでね、ひまだったからロイくんのいえにきたの」


 「やっぱりルミエラの家族も出かけたのか……」


 「どうしたの? そんなこわいかおして」


 「……いや、何でもないよ。無事に帰って来るといいな」


 ロイドがこう言ったのにも意味がある。

 エミリとルミエラの両親は元冒険者。

 元冒険者であるエミリ達が出かける理由なんて、一つしかないからだ。


 そう、それは大災厄。

 魔物の活性化を全て説明すると、長くなってしまう。

 だから、手短に説明しよう。


 大災厄とは、魔物が生まれてくる速度が通常よりも、一〇倍早い事。

 そして、全ての魔物が一段階進化すること。


 この二つを意味する。


 大災厄は、エミリとロイドにとっては憎いものである。

 何故なら、大災厄によってロイドの父であるジョン=グディアルは死んだからだ。


 ジョンが死んだのは、ロイドは勿論の事、エミリも悲しかったはずだ。

 だからルミエラには、ロイド達と同じ思いはして欲しくない。


 「どうしたの? こわいかおしたとおもったら、つぎはわたしのてをにぎって」


 「いや、ルミエラの手を握りたかっただけだよ」


 「そ、そう? ならいいんだけど」


 こんな事を考えてたら、ルミエラに心配かけてしまうかも知れないな。

 それに、今こんな事考えたって、ロイドには何も出来ない。


 今のロイドに出来る事は、いつもと同じように接するという事だけだ。


 「えーと、それで話を戻すんだけど、何して遊ぶんだ?」


 ロイドがそう言った瞬間、ルミエラのお腹が鳴った。

 

 (……また、いつものパターンか)

 

 「えへへ。おなかなっちゃった」


 可愛すぎるんだよなぁ。ルミエラの頬を赤らめて、恥ずかしがってるところ。

 こんな姿見せられて、放っておける男はいないだろう。


 「なんか作ってやろうか?」


 「え? いいの? やったぁーー!」


 ルミエラの無邪気な笑顔を見て、ドキッとしたロイドがどこかにはいたようだが、それだけは認めてはダメだ。


 認めてしまったら、唯のロリコンになってしまうから。

 

 (……あれ? 今の僕って、五歳だから幼女を好きになってもロリコンにならないのか? ……ならないよな!)


 精神年齢的にはアウトだけど、実年齢的にはセーフだと、勝手に都合よく解釈したロイドは、ルミエラの為にご飯を作って、ルミエラのご飯を食べているところを眺めるのだった。


 

 


 

 

 

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