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よわむしドラゴンとプリンセス  作者: 立川ありす
第1章 ドラゴンたいじに来たけれど……?
7/19

たたかう1

 ピッピのふとんでぐっすりねむった次の日。

 あたしたち3人はドラゴンめざして飛行機を飛ばした。


『マギーさん、アリサさん、むこうに見えるのがドラゴンの住む山です』

 飛行機のテレビ電話にうつったピッピが言った。

 あたしは、風よけごしに前を見る。


 くもがかかった青い空の下に、森の緑色が一面に広がっている。

 森のまん中に、とても大きくて茶色い山がそびえ立っている。


 お城の兵隊はみんなやっつけられちゃった。

 だからドラゴンの山めざして飛んでいるのは3機だけだ。


『そういえば、マギーさんが乗っている飛行機はスクワールⅡですね』

 ピッピが言った。

「うん。よく知ってるね!」

『はい。大きなエンジンで、すごく速く飛べる飛行機です。そんな飛行機に乗ってるなんて、さすが【なんでも屋】です』

 そう言われて、あたしは「えへへ」と笑う。

 アリサがメンテナンスしてくれている愛機をほめられて、うれしい。


 あたしの愛機【スクワールⅡ】は、ピンク色のリスの形をした飛行機だ。

 しっぽみたいな大きなエンジンと、足みたいな小さなエンジンで空を飛ぶ。

 ガラスの風よけがついた運転席は、せなかにある。

 そして、前にはリスの頭みたいな形のコンピューターがついている。


『アリサさんが乗っているのは、作業用のヘッジホッグですね。古い飛行機だけど力が強いです』

『ええ、そのとおりよ』

 アリサもニコニコ笑顔で答えた。

 機械いじりが大好きなアリサは、飛行機のお話をするのも大好きだ。


 スクワールⅡのとなりを飛んでいるのは【ヘッジホッグ】。

 まん丸で、大きな2本のアームを生やした、ぐんじょう色の飛行機だ。

 反重力でフワフワ飛ぶからおそいけど、すごく力持ちなんだよ。

 今日は力持ちのアームに大きなたいほうをかまえている。

 もちろん、ドラゴンとたたかうためだ。


『ピッピちゃんが乗っているのはスーリーね。すばしっこくてメンテナンスのしやすい、ステキな飛行機よ』

『ありがとうございます』

 アリサに言われて、テレビ電話の中のピッピもうれしそうに笑う。


 銀色のネズミの形をした【スーリー】は、足のエンジンだけで飛んでいる。

 だからスクワールⅡほどスピードはでない。

 けど、ほそいしっぽでバランスをとって、ネズミみたいにすばしっこく飛ぶことができる。それに、


『ピッピちゃんは飛行機の運転が上手なのね。マギーより運転がていねいだわ』

 アリサがそんなことを言った。

「どうせ、あたしの運転はらんぼうですよーだ」

 あたしは口をとがらせる。


 でも、ピッピの運転が上手なのは本当だ。

 足みたいなエンジンをふかして空を飛ぶネズミの飛行機が、ピッピの手にかかると、まるで空をのびのびとおよいでいるみたいだ。

 それに、ピッピは小さいのになんでもできて、とてもしっかりしている。


「あ、わかった! ピッピはパイロット学校のエリートとかでしょ!」

 でもピッピは『いえ』と首をふる。


『わたしの家はお金がなくて、わたしがまだちっちゃいころに、パパもママも病気でいなくなってしまって、わたしはとほうにくれていたんです』

 そんなことを言ったので、あたしはビックリした。でも、

『そんなとき、ルー王女が王さまに「身よりのない子どもをたすけてあげて」ってたのんでくれたので、わたしはお城に引き取られたんです』

 そう言って、ピッピはニッコリ笑った。

『すごくさむい雪の日に、ひとりぼっちでないていたわたしを、ルー王女と王さまが、むかえに来てくれたんです。あの日のことは、今でもわすれません』

 ピッピはニコニコ笑っている。

 王女さまとはじめて会った日のことを思い出しているのかな。

『お城の人たちは、わたしに勉強を教えてくれました。王さまはわたしを使用人にしてくれました。工場の人は飛行機の運転を教えてくれました。みんなはわたしの運転が上手だってほめてくれたので、わたしは飛行機が大好きになったんです』

 話しながら、ピッピは楽しそうに笑っている。

 そんなピッピの笑顔がかわいかったから、あたしもニッコリ笑った。


「そっか、それで運転が上手になったんだね」

『それほどでも』

 あたしが言うと、ピッピは照れた。

『だから、わたしはずっとルー王女にあこがれていたんです。お城の兵隊たちはみんなやられちゃったけど、わたしはドラゴンをやっつけてルー王女をたすけたいです。アリサさん、マギーさん、よろしくおねがいします』

 ピッピはモニターの中で、ちょこんと頭を下げる。

「まかせて」

 そう言って、あたしはウィンクした。


 そして茶色い火山を見やりながら、思う。

 魔法を使っちゃダメなキャロット王国にも、ピッピみたい子だっている。

 そして、そんな人たちが、さらわれたルー王女のことを心配してる。

 だから、最初はやめようとしていた仕事だけど、がんばってドラゴンをやっつけて、王女様をたすけださなきゃ!

 そんなことを考えた、そのとき、


『……あなたたちも、ルー王女をつれもどしに来たのですね』

 テレビ電話に知らない人がうつった。

 ううん、人じゃない。まっ黒で、トカゲみたいな顔をした――


「ドラゴン!?」

『気をつけて! テレビ電話にわりこんできているわ!』

 アリサがあせった声で言った。

 あたしはビックリした。

「【エレメントを作る魔法】で電波を作って、わりこんでるんだ!」

 ドラゴンが電話をかけてきたことにもビックリした。

 それよりも、魔法でテレビ電話にわりこむなんて!

 このドラゴンは、魔法がすごく得意なんだ。


『ドラゴンがしゃべってる……!?』

 ピッピも目を丸くしている。


 ドラゴンは、テレビ電話ごしに、あたしたちをにらんだ。

 よく見ると、首にはフリルのついたスカーフをまいている。

 それにちっちゃなメガネをかけていて、とても頭がよさそうだ。

 きっと強力な魔法をいくつも知っているんだろう。

 ゴクリとつばをのみこむあたしを、テレビ電話の中のドラゴンがにらみつける。


『……ルーはだれにもわたさない。大人しく帰らないと、お城の兵隊みたいにヒドイ目にあわせますよ!』

「そんなおどしなんて、こわくないもん! あなたなんて、あたしの魔法でやっつけちゃうんだから!」

 魔法を使うドラゴンは、魔法使いと同じくらい頭がいい。

 それなら、人間の言葉を話すのなんてかんたんだろう。

 それに、作戦をたてておそってくる。

 だから、ふつうのドラゴンとはくらべ物にならないほど強い。


 でも、あたしは【なんでも屋】として、ピッピのために、キャロット王国のみんなのために、ルー王女をたすけるって決めたんだ。

 そのために、あたしたちだってドラゴンのことを調べて、作戦もたてた。

 だから、ぜったいに、負けたりなんかしない!


『そうです。そして、ルー王女を返してもらいます!』

 ピッピも力強く言った。

 ピッピはルー王女にあこがれているのだ。


『この仕事をやりとげれば、すごくたくさんのお金がもらえるんですもの!』

 アリサはそんなことを言った。

 もー、アリサはあいかわらずなんだから。


 でも、ぜんぜんこわがらないあたしたちに、ドラゴンはイライラしたようだ。


『……それならば、仕方がありませんね』

 テレビ電話の中のドラゴンの目が、あやしく光る。

 とたんに、まわりが暗くなる。

 え? と思って風よけの外を見やる。

 あたしたちの目の前に、小屋くらい大きな黒い何かがいた。

 それは黒いトカゲみたいなすがたで、大きな羽を生やしていた。


「ドラゴンだ!」

『いつの間に――!?』

 さっきまではいなかったのに!

 ビックリするあたしたちの目の前で、ドラゴンが口を大きく開ける。


『マギーよけて!』

 アリサがさけぶ。

 あたしはスティックをかたむける。

 スクワールⅡは足のエンジンをふかして横に飛ぶ。

 そのしっぽのはしを、何かがかすめた。

 むらさき色のビームだ!


 ドラゴンがはいたはんぶっしつが、空気をばくはつさせながら飛んできたのだ。

 とっさによけていなかったら、まともに当たってばくはつしていた。

 でも、アリサが教えてくれたおかげで、みんなよけられた。


『ドラゴンがいきなり目の前にあらわれて、ビームをうってきました!?』

「【時間と空間の魔法】でテレポートしたんだ!」

 これが、お城の飛行機をやっつけた、カメラにうつらないこうげきの正体だ。


『ルー王女を、返してもらいます――!!』

 いきなりのこうげきでビックリしたけど、ピッピはそんなことでくじけない。

 スーリーは足のエンジンから光のこなをふきながら、ドラゴンにつっこむ。

 スーリーは下側にある小さなアームでバスケットを持っている。


 シュボボボボッ!


 バスケットから、お花のつぼみの形をしたミサイルがいっぱい飛び出した。

 たくさんミサイルの【ゲイボルグ】だ。

 ミサイルたちは7色のけむりをふきながらドラゴンにぶつかる。


 バババババーン!!


 でも、ドラゴンのかたいウロコはビクともしない。


 ドラゴンはスーリーをにらむ。

 ギザギザの歯が生えた大きな口を開いて、息をすう。

 そして口のおくから、むらさき色のビームをはなった。


 キュイーン!


 でも、ピッピのスーリーはヒョイッとよける。

 ネズミのしっぽがフリフリゆれる。

 ピッピのすばしっこい動きの前に、ビームなんて当たらない。


 そんなスーリーに向かって、ドラゴンはさけぶ。今度は魔法を使うつもりだ!


「風さん、空気に宿る魔力さん、ピッピのスーリーを守って!」

 あたしはすぐに呪文をとなえる。

 スーリーの前に空気のカベを作る魔法だ。


 そして、ドラゴンの魔法も完成した。【エレメントを作る魔法】で作った、たくさんの火の玉がはなたれる。


 ドドドドカーン!


 火の玉は、あたしが作った空気のカベに当たって、ばくはつする。

 その中からスーリーが飛びだしてくる。

 あたしはほっとした。

 思ったより火の玉が弱かったからだ。

 だから空気のカベでふせぐことができた。


(よし、これならいける)

 あたしは3人でたてた作戦を思い出す。

 ドラゴンは強くて魔法を使う。だから、ピッピが目の前を飛び回ってビームをよけて、あたしが魔法をふせぐのだ。

 ドラゴンは、魔法をじゃましたあたしのスクワールⅡを見やって、さけぶ。

 目の前に、またしてもたくさんの火の玉があらわれた。

 火の玉たちは、今度はあたしめがけて飛んでくる。


「火の玉さん、ほのおに宿る魔力さん、あたしにぶつからないようによけて!」

 する火の玉は、まるでスクワールⅡをさけるように飛ぶ向きを変えた。

 エヘヘ!

 あたしの【エレメントをあやつる魔法】を使えば、こうやって身をまもることだってできるんだよ。


 でも、そんなあたしの目の前で、ドラゴンが大きな口を開けていた。

 ドラゴンは、スス――――ッと、息をすいこむ。


 しまった!

 魔法をふせいでほっとしたあたしを、ビームでふっとばすつもりだったんだ!


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