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よわむしドラゴンとプリンセス  作者: 立川ありす
第3章 勇気の魔法
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たたかう2

「そうはさせんぞ!」

 ひっくり返ったラパンの運転席が開いて、王さまが飛び出した。

 王さまはルー王女をつかまえて、クロウから引きはがす。


「何をなさいますの!? クロウはお父さまに勝ったではありませんか!」

「まだわがはいは負けておらん! おまえたち、ドラゴンをやっつけろ!!」

 王さまがさけぶと、兵隊たちのスーリーがいっせいに飛びたった。


「そんな!? なんてことを!」

「でも、てっぽうやミサイルは全部こわれちゃって、まだ使えないんじゃ……?」

 あたしは首をかしげる。

 そのとき、スーリーたちの下側から何かがのびた。

 スーリーたちのアームは、鉄のカタナをささえていた。


「ええっ!? あれって!?」

「てっぽうのかわりに、こわれたパーツをくっつけて、けずりだして、カタナにしたのだ!」

 カタナを持ったスーリーたちは、うずくまったまま動かないクロウめがけておそいかかる。カタナがクロウの体を切りつけて、クロウはひめいをあげる。


「お父さま、あんまりですわ!? やめさせてくださいませ!」

「ええい! ドラゴンなんかに! ドラゴンなんかにルーはわたさん!」

「クロウ! 魔法で身を守ってくださいませ! かまいません! 先にやくそくをやぶったのはお父さまですわ!」

 でも、クロウは魔法を使わない。

 つかれはてて、身をまもる魔法すら使えないの?

 それとも、こんなことになっても、王さまとの約束をやぶりたくないの……?


「王女さま! わたしたちのこともおわすれなく!」

 そう言いながら、アリサが自分の飛行機に走っていく。

 そうだよね!

 こんなのはヒドイもん、あたしたちだってクロウをまもらなきゃ!


「アリサさん! マギーさん! おねがいしますわ!!」

「うん、わかってる! まかせて!」

「あとで、お金をいっぱいいただきますよ!」

 もー、アリサったら!

 あたしは魔法のペンダントを取り出す。


「風さん、空気に宿る魔力さん、クロウを守って!」

 あたしの魔法で、クロウのまわりに風のバリアができる。

 でも、大きなドラゴンのクロウを守るには、バリアを大きく広げなくちゃいけない。飛行機の大きなカタナで切られて、バリアははじけて消えてしまった。


 でも、そのすきに、アリサのヘッジホッグが空にうかび上がる。

 けれども、こんなことになるとは思ってなかったので、ヘッジホッグはたいほうを持っていない。

 だから大きなアームをふりまわしてスーリーをつかまえようとする。

 でもやっぱり、動きがおそいヘッジホッグはすばやいスーリーをつかまえられない。スーリーたちはバカにするようにアームをよけて、クロウをカタナで切る。


 あたしも、いそいでスクワールⅡのところまで走る。

 ピンク色のボディをよじ登って運転席にのりこむ。

 ガラスの風よけをしめて、スティックを引きしぼる。

 スクワールⅡは足のエンジンをふかして飛び上がる。


 タタタタタタタッ!


 引き金を引いて、スーリーたちをてっぽうでふっとばす。

 スクワールⅡのてっぽうは頭のコンピューターにくっついているから、いつでも使える。でもクラウ・ソラスは持ってきていない。

 それにスーリーたちはいっぱいいて、あたしが1機をふっとばす間に、別のスーリーたちがクロウをカタナで切っている。


 ゆだんしたスーリーのカタナをヘッジホッグがアームでつかんで、へし折る。


 でも、ほかのスーリーはヘッジホッグのこうげきをかわして、次々にクロウに切りかかる。クロウは体を丸めて、ひっしでたえる。

 黒いウロコがはがれて、切れて、クロウの全身から赤い血が流れる。


「そんな! どうすればいいの!?」

 あたしがこまっていると、

『王さま。もう、こんなことはやめてください!』

 ピッピのラパンが飛んできた。


 キュイーン! キュイーン!


 ビームをうつ。

 スーリーがふっとぶ。


『わたしは王さまとルー王女のおかげで、お城で働けて、飛行機にのれるようになりました。お2人とも、すばらしい人だって思います!!』

 ピッピはスピーカーでさけぶ。

 いつもの真面目なピッピとは思えないくらい、はげしい声だ

『そんな王さまが、みんなと友だちになりたいって言っているドラゴンを、こんなひきょうな方法でやっつけるなんて、まちがってます!!』

 スーリーたちはピッピのラパンにおそいかかる。

 でも、ピッピが運転するラパンにカタナなんか当たらない。


 金色のウサギはヒラリ、ヒラリとこうげきをかわして、おそってきたスーリーをビームでふっとばす。

 ピッピはクロウみたいに運転席にあてないようにうった。

 それどころか、こわれても直しやすいところをねらっている。


「ピッピ!? わがはいにさからうのか!?」

 王さまはビックリした。

 そのスキをついて、ルー王女は王さまのうでにかみついた。

「イタッ」

 王さまは思わずさけんで手をはなす。


 ルー王女はクロウに走りよる。


「ええい! はやくドラゴンをやっつけるのだ!」

 そのとき、スーリーが持っていたカタナが、根元からポッキリおれた。

 こわれたパーツを無理やりくっつけたから、もろくなってたんだ。


「……ルー!? あぶない!」

 クロウがビックリする。

 カタナはクルクル回りながら、ルー王女めがけて飛んでいく。


 ピッピのラパンはカタナをうちおとそうとするけれど、できない。

 ラパンのいるところからカタナをうつと、ルー王女にもあたってしまうからだ。


「風さん、空気に宿る魔力さん、ルー王女を守って!」

 あたしは呪文をとなえてバリアをはる。

 でも風のバリアはそんなに強くない。

 手かげんした火の玉はふせげても、大きな鉄のカタナなんてふせげない。

 てっぽうをもっていないヘッジホッグも、どうすることもできない。


「……で……伝説の魔女ダーナよ! ……わたしに力をかしてください!」

 クロウもとうとう魔法を使おうとする。

 でも、つかれはてて、いたみにうめきながらとなえた呪文はとぎれとぎれで、せっかく作った氷のカベも、間にあわない。


 カタナは風のバリアをやぶって、ルー王女のせなかに当たった。

 ルー王女はふっとばされて、地面をごろごろ転がった。


「……ルー!?」

 クロウがキズだらけの体で、立ち上がろうとする。

 バリアのおかげで少し弱くなっていたけど、大きなカタナがぶつかって、ぶじなわけがない。

「なんということだ!?」

 王さまは、まっ青な顔でさけんだ。スーリーたちも戦うのをやめる。


 うつぶせにたおれたルー王女のせなかから、血が出ていた。


「ルー!! ルー!?」

 王さまはさけびながら、ルー王女にしがみつこうとする。

 そんな王さまを、アリサがはがいじめにする。


「ええい! はなせ!? ルーが! わがはいのむすめが!!」

「今、ムリに動かしたら、よけいにたすからなくなりますよ!」

 アリサがピシャリと言うと、王さまはしゅんと大人しくなった。

 でも、王さまは顔をくしゃくしゃにして、なみだをボロボロながす。

 あんなにえばっていた王さまとは思えないほど、うろたえて、子どもみたいに泣いていた。


「なら、どうすればいいんだ!? たのむ、ルーをたすけてくれ! ああ、わがはいは、なんということをしてしまったんだ!」

「ねえ、アリサ!? どうしよう!?」

「マギーも、おちついて」

 アリサが冷静な顔であたしを見た。だから、

「うん」

 あたしも冷静になってうなずく。


 あたしたち【なんでも屋】はキケンなこともいっぱいある。

 だからアリサは、どんなピンチになっても、なんとかする方法を考えてくれる。


「マギー。街にもどって、お医者さんをよんできて。ルー王女が大変だって言ったら、ぜったいに来てくれるわ」

「でもアリサ。それじゃ間に合わないよ?」

 ルー王女のせなからは、赤い血がダラダラ流れ出している。

「だいじょうぶ」

 それでも、アリサはあたしを安心させるようにうなずく。


「クロウ、【時間と空間の魔法】でルー王女の時間を止められる? 小さいころに星を見ようとした時にしたみたいに」

 そっか!

 おいしゃさんがくるまで時間を止めておけば、間に合わなくなることはない。

 でも、クロウはキズだらけで、つかれはてている。

 そんなスゴイ魔法を使ってだいじょうぶなのかな?

 あたしは心配する。だけど、


「……は、はい、だいじょうぶです!」

「ムリはしないでね」

 クロウはものすごく苦しそうな顔で、それでも呪文をとなえる。

「……伝説の魔法使いタリエシンよ、ルーの時間を止めてください」

 するとルー王女のまわりが白と黒になって、血が流れるのも止まった。

 それを見ていた兵隊たちは、おこってカタナをぬいた。


「ドラゴンが王女さまに悪い魔法をかけたぞ!」

「えっ!? よく見てよ! クロウはルー王女をたすけようとしてるんだよ!」

 でも、兵隊たちは、あたしの言うことを聞こうともしない。そんなとき、

「おまえたち、さがれ! この魔法は良い魔法だ! わがはいにはわかる!」

「しかし、王さま……」

「ええい! わがはいの言うことを聞かなければ、おまえたち全員、ろうやに入れてしまうぞ!!」

 王さまがカタナをふりまわしておこったから、兵隊たちは大人しくなった。


 あたしはビックリした。

 王さまが、クロウをかばってくれるなんて思ってもいなかった。


「マギー、今のうちに!」

「オーケー、アリサ!」

 そして、あたしはスクワールⅡに飛び乗ると、ガラスの風よけをしめる。


 運転席のスティックを引く。

 スクワールⅡは足のエンジンを下向きにふかして、うかび上がる。

 スロットルを引きしぼる。大きなしっぽのエンジンから、光の粉がはげしくふき出て、スクワールⅡはフルスロットルで飛び出した。

 アリサはあたしの運転がらんぼうだなんて言う。

 でもアリサは、あたしがどんなにらんぼうに運転しても最高のスピードで飛べるように、いつもエンジンノズルをピカピカにそうじしてくれる。

 だから、そんなアリサに答えるように、あたしはスロットルを思いっきり引きしぼる。そして、


「風さん、空気に宿る魔力さん、力をかして!」

 呪文をとなえる。

 まわりで風がふいた。

 前にある空気はどいて、後ろの空気はスクワールⅡのおしりをおしてくれる。


 そうやって、あたしはたつまきみたいなスピードで飛んだ。


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