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よわむしドラゴンとプリンセス  作者: 立川ありす
第3章 勇気の魔法
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クロウの決意

「お城の兵隊たちのスーリーと、お父さまのラパンですわ」

 飛んでくるたくさんの飛行機を見ながら、ルー王女が言った。

 銀色のネズミみたいなスーリーたちの先頭を、金色のウサギが飛んでいる。

 あれがラパンだ。


「兵隊たちの飛行機、なおったんだね」

「この前ピッピちゃんから聞いた話だと、エンジンはぜんぶなおったから、とりあえず飛べるようになったんですって。てっぽうやミサイルはまだみたいだけど」

 あたしとアリサがそんな話をしていると、飛行機たちは家の前におりてきた。


 ラパンの運転席が開く。

 中は2人乗りで、後ろの席には王さまがすわっていた。


 王さまは運転席から下りて、走ってくる。

 スーリーからも兵隊たちが下りて、あたしたちを取り囲む。


「ルー! やっぱりドラゴンなんかといっしょにいたのか!」

 王さまはカンカンにおこって、大声でどなった。

「あれほど言ったのに! なぜ、わがはいの言うことが聞けんのだ!」

「それはこっちのセリフですわ! クロウは何も悪いことなんてしてないのに、どうして、ひとりぼっちでいなくちゃいけませんの!?」

 ルー王女も、同じくらい大声でどなり返す。

 こういうところは親子だよね。


「ルー王女!」

 ラパンの前の席にすわっていたピッピが、王さまをおいかけてきた。

「ルー王女、またしてもドラゴンにさらわれたんですか? どうしてマギーさんやアリサさんといっしょにいるんですか?」

 ピッピはこまった顔で、ルー王女を見やる。

 ドラゴンの家に、あたしたちとルー王女がいっしょにいてビックリしてるんだ。

 だって、ピッピはルー王女がクロウと友だちだってことを知らなかったから。


 ルー王女はしゃがみこんで、ピッピと目の高さをあわせる。

 そして、やさしくほほえみながら、言った。


「ピッピ。ブラックドラゴンのクロウは、わたくしの友だちなんですの」

「ドラゴンが、王女さまの友だち……!?」

 ルー王女の言葉に、ピッピは目を丸くしてビックリする。

「クロウはピッピとおなじくらい、かしこくて、やさしくて、魔法で人間のすがたになることもできるんですのよ。それなのに、ドラゴンだからというだけで、さみしい思いをしていたのです。だから、わたくしはクロウと友だちになったんです」

 王女は言った。

 クロウはおどおどしながら、それでも勇気を出して、ニコッと笑った。

 でも、ピッピはルー王女を見て、クロウを見て、ちょっとかなしそうな顔で、うつむいた。


 ピッピはドラゴンをこわがったりしない。

 でも、自分が知らないところで、大好きだったルー王女とドラゴンが仲良しになっていて、なかまはずれにされたみたいな気持ちになったんだ……。

 そんなのはちがうよって、あたしはピッピに言おうとした。でも、


「ドラゴンなんかが、わがはいのむすめと友だちになるなんて、ゆるさんぞ!」

 王さまはカタナをぬいた。

 クロウはおびえて後ずさる。

 王さまはカンカンにおこってカタナをふりまわす。


「お父さま! なんてわからず屋なの!」

「むすめをたぶらかしたドラゴンめ! おまえに、けっとうをもうしこむ!」

「クロウ! こんなわからず屋の言うことなんか、聞かなくてもいいですわ!」

 ルー王女はクロウをかばうように、王さまの前にたちふさがる。でも、


「……わかりました」

 クロウはルーのせなかから出てきて、王さまの顔をしっかり見た。

 王さまはものすごい目でクロウをにらむ。

 それでもクロウはにげない。

 マントの上にさげられた、サクラの花のペンダントがキラリと光った。


「……わたしが勝ったら、ルーといっしょにいることをゆるしてくれますか?」

「いいだろう! ただし、けっとうに魔法を使ったらダメだ!」

 王さまは言った。

 ルー王女は何か言おうとしたけど、クロウが何も言わなかったのでだまった。

「明日の同じ時間に、もう1度ここに来てやる。その時にしょうぶだ!」

 そう言って、王さまは兵隊たちを連れて帰って行った。


 あたしはピッピと話したかったけど、王さまはピッピも連れて行ってしまった。

 ピッピがラパンの運転手だからだ。

 だから、あたしとアリサ、クロウとルー王女は、つぼみの部屋でこまっていた。


「クロウ、ほんとうにごめんなさい。お父さまったら、とんでもないことを……」

 ルー王女がこまった顔で言った。

 お友だちになろうとしたクロウに、一方的にけっとうしようだなんて、王さまのしていることはムチャクチャだ。でも、


「……ううん、いいの」

 クロウはルー王女を安心させるみたいに笑ってみせた。

「いつかは、王さまとちゃんとお話をしないといけないって思ってたから」

「でも、自信はあるの? 魔法を使わずに王さまと戦うなんて」

 そう言って、アリサはクロウを見やる。

 すると、クロウはちょっとこまったみたいにうつむいてしまった。

 もー、アリサったら!


「きっと、だいじょうぶだよ! クロウは強いブラックドラゴンなんだから!」

 あたしはクロウをはげます。

「そうですわ! クロウ! お父さまに勝てるように、魔法を使わずに飛行機をつかまえる練習をしましょう」

「……う、うん」

「マギーさん、練習につきあってあげてくださいませんか?」

「うん! いいよ!」

 そして、クロウたちはクキのろうかを通って、百合の花のベランダに出た。

 クロウの体が光ると、そこにブラックドラゴンがあらわれた。


「がんばってくださいませー!!」

 ルー王女のおうえんに答えるように、ブラックドラゴンは大きな羽をはばたかせて、大空に飛び上がる。


 あたしも、家の外にとめてたスクワールⅡに乗りこむ。

 ガラスの風よけをしめて、運転席のスティックを引く。

 スクワールⅡは足のエンジンをふかして、飛び上がった。

 ガラスの風よけごしにドラゴンのクロウを見ながら、お話しできるようにスピーカーとマイクのスイッチをいれる。


「クロウ、聞こえる?」

『……はい、よく聞こえます』

「それじゃ、スクワールⅡをつかまえてみて!」

『や、やってみます……!!』

 ドラゴンは、ギザギザの歯がついた口を大きく開けて、カギヅメのはえた手をのばして、おそいかかってきた。


 でも、魔法を使わないクロウの動きはすごくおそい。

 あたしがスティックをちょっとかたむけただけで、スクワールⅡはクロウの手をヒョイとかわす。

 スクワールⅡをつかみそこなったクロウは、飛びながら転びそうになった。


「もっと、相手をよく見て! 魔法でねらうみたいに!」

『……は、はい!!』

 それから何度かチャレンジしてみた。

 けど、魔法を使わないクロウは、ぜんぜんあたしをつかまえられなかった。

 運動が苦手だとは聞いていたし、ダンジョンでもそうだった。

 けど、まさかここまでとは思わなかった。


 クロウはスクワールⅡをつかまえようと、カギヅメのついた手をいっしょうけんめいにのばす。

 でも、何回つかまえようとしても、とどかなくて転んでしまう。

 そしてクルクル回りながら地面に落ちて、近くの岩にぶつかってしまう。


「イタタ……」

 ちょっと泣きそうな顔になった。

「クロウ! しっかり!」

 おうえんするルー王女も、だんだん心配そうな顔になっていった。

「だいじょうぶかしらね……」

 ベランダで、アリサがため息をついた。


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