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お姉ちゃんの友達

ストックがなくなって来ました。書かないと……

「さ、行きましょう。アリエル」

「うん」

学院長のいる部屋から出てきたお姉ちゃんは、笑顔で話しかけてきた。

「お姉ちゃんさ、エイヴァンさんと何話してたの?」

「たいした事じゃないわよ」

「そっか」

そして僕は、お姉ちゃんに連れられるままに廊下を進み、階段を降りていくのだった。

「一度私の部屋に寄りましょうか。アリエルの荷物も置かなきゃだし」

「うん、そうだね」

そう言うと、お姉ちゃんは校舎の中を進んでいく。

校舎と寮は繋がっているため、外に出なくても行き来できるらしい。

やがて校舎を抜けると、すぐ先に大きな旅館のような光景が広がっていた。

壁に、一定の間隔で扉が設置されているのだ。それも、ずっと奥まで一直線に。

「ふふっ、驚いた?凄いよね、ここの寮」

「う、うん。すっごくたくさん部屋があるね!」

「この先に行けば、大食堂とかの各種施設があるわ。後で一緒に行きましょうね」

「うん」

確かに、廊下のずっと先を見ると、何やら大きな部屋があるのが見えた。

「お姉ちゃんの部屋は何号室?」

「401号室よ」

言われてから、扉の1つ1つを確認していく。

大分進んだとき、お姉ちゃんの部屋があった。

「ここが私の部屋。これも生徒手帳で鍵の開閉ができるの」

そう言って扉に生徒手帳をかざすお姉ちゃん。

すると、ガチャッと言う音がして扉の鍵が開いた。

「さ、入って入って」

僕はお姉ちゃんに誘導されて部屋の中へと入っていった。

室内には2部屋あるようで、寝室とリビング、といった感じだ。

トイレも各部屋に1つづつあるらしい。

「それじゃあ、荷物はそこの引き出しの中にいれてね。あ、お金は別で金庫があるからそこに入れて」

「わかった〜」

僕はお姉ちゃんの指示通りに、金庫にお金をいれて、荷物は、まずは日用品だけ取り出す。

そして、カバンをさらに開こうとしたその時、僕の動きが止まった。

カバンの下の方に、可愛いく彩られた、スカートや女の子物の服が見えたからだ。

この服、実は1週間くらい前に買っていたもので、女の子アリエルとして活動する際、少年アリエルのままの格好で行動すると、僕の正体がバレたりする可能性が高くなると思って、女の子の服を一通り買っていたのだ。

「急に動きを止めたりして、どうかしたの、アリエル?」

「な、なんでもないよっ!!」

瞬間、僕はカバンを閉じた。

「もう荷物なくなったの?」

「う、うん。日用品は出したから、もういいんだ」

本当は、スカートとかの服はハンガーに吊るしたいところだけど……

仕方ない。

お姉ちゃんにこの服を買った事がバレるのはまだしも、なんで女の子物の服を買ったのかについて聞かれて、そのままギルドで戦っている事がバレるよりはいいだろう。

そう思った僕は、少しためらいながらも、クローゼットにカバンを押し込むのだった。

「アリエル。お姉ちゃん、この部屋の合鍵、というか来客専用の生徒手帳と同じ事ができるものを借りてくるから、ちょっと待っててね」

「うん、わかった」

「それまでの間はベッドでゴロゴロするなり、自分の部屋だと思ってくつろいでていいから〜〜」

それだけ言うと、お姉ちゃんはドアを開けて出ていった。

それから、やる事が無くなって手持ち無沙汰になった僕は、とりあえず部屋を見渡してみた。

リビングには、大きなテーブルが1つと、4つの椅子がそれを囲むように置いてあるだけ。

備え付けのソファもあるが、あまり使われた形跡はない。

「お姉ちゃん、質素な暮らししてるなぁ……もうちょっと可愛い物を増やしてもいいと思うんだけど」

4年間も実家に帰ってこなかったのだ。多分、家具を彩る暇もないくらい忙しいのだろう。

お姉ちゃん、学院生活を楽しめてるといいんだけど。

僕は軽く溜息をつきながらソファに座る。

あ、フカフカしてて気持ちいい!

僕は、お姉ちゃんが帰ってくるまでこのソファの上でゆっくりする事にしようと決め、クッションを抱いて横になる。

と、その時だった。

「セレーナ〜〜帰ってきてるのー?」

扉の外からお姉ちゃんを呼ぶ、女の人の声がした。

お姉ちゃんは今いない事を伝えるためにソファから立ち上がろうとすると、扉のドアノブが回った。

「あれ?空いてる……って事は。セレーナ、いるんでしょ、入るよ〜?」

僕が立ち上がるのと同時に、女の人が部屋の中へと入ってきた。

「すっごく可愛い子があなたと一緒にいたっていう噂があるんだ、けど……」

ショートカットの髪をふわふわと揺らすその人は、僕と目が合うと動きを止めた。

「お、お姉ちゃんは、今ちょっと出てているので、ここにはいないですよ」

初対面の人には少し緊張してしまう癖が抜けないけど、なんとか言い切った。

「えっと……」

すると、その女の人は一度部屋を出て、扉に書かれている部屋番号を確認した。

「401号室、うん、間違えてないよね」

その人は呟いた後、僕をまじまじと見つめた。

「もしかして、あなたが噂の子かな?

いや、絶対そうね。こんなに可愛い子、普通いないもん。うん。なでなで」

その人は、なぜかいきなり僕の頭を撫で始めた。

それが気持ちよくて、つい口元が緩む。

すると、その人は僕をいきなり抱きしめてきた。

「やばい!この子超可愛い!!」

「わっ?!えっ?ええっ?」

僕が戸惑っていると、その人はすぐに僕から離れてくれる。

「ねぇあなた、お名前はなんて言うの?」

「あ、アリエル・ナーキシードです」

「ナーキシード……って事は、もしかして、セレーナの弟さん?」

その人は、僕の顔を見て確信するかのように話した。

「はい、そうです」

「やっぱり!ねぇねぇ、アリエルちゃんって、呼んでもいいかな?」

「それは構いませんけど。なんで僕が男だってわかったんですか?大抵の人は僕の事を女の子だって言うのに……」

今まで、初対面の人に男と思われた事は一度もなかったのに。なのに、なんでこの人は僕が男だってわかったんだろうか。

「それはね、セレーナが……あなたのお姉さんが、アリエルちゃん事をよく話してたからだよ」

「えっ、そうなんですか?」

「それはもう。口を開けばアリエルが可愛い、アリエルに会いたいって言ってた。高等学院の人ならアリエルちゃんの事はみんな知ってると思うよ?」

「そ、そんなに……」

お姉ちゃんが僕に会いたがってたのは知ってるし、それは嬉しいんだけど、学院の人に話さなくても良いんじゃないかなぁ。

少し恥ずかしくなる。

「私の名前は、ハルルカ・ケニアン。私の事はハルって呼んでね、アリエルちゃん!」

「ハルさんですね、分かりました」

僕が名前を呼ぶと、なぜかその人は悶えるように喜んだ。

「それじゃ、私はどうしよっかなぁ……せっかくだからセレーナが帰ってくるまではアリエルちゃんとお話してもいいかな?」

「本当ですか?!お姉ちゃんが帰ってくるまで、やる事がなくって困ってたんです!」

「それは良かった。ならソファにでも座って、セレーナの話でもしましょうか?」

「学院でのお姉ちゃんの話、聞きたいです!」

ソファに座ったハルさんは、自分の隣をぽんぽんと叩いて、僕を促した。

すぐにハルさんの隣に座り、僕達の談笑が始まった。

「アリエルちゃんって、学院でのセレーナについて、どこまで知ってる?」

「成績が良くって、女神騎士様と首席を争ってることくらいですね」

僕がそう言うと、ハルさんは苦笑いした。

「あー、なるほど、アリエルちゃんがしってるのって、周知の事実ってやつだけ見たいね。学院生活とか、何も知らないでしょ?」

「あ、それは確かに……そういえば、学院の事を聞いても、試験が大変だったとか、勉強が大変とか、そんな事しか聞いてないですね」

言われてから初めて気づいた。お姉ちゃん、友達はいるって言ってたけど、具体的にどんな事をやってるんだろう?

「じゃあ、セレーナの学院生活、及び私生活について、セレーナの友人である私から教えてあげる!」

「お願いします!!」

こうして、僕はお姉ちゃんの学院での、様々なエピソードについて聞かせてもらった。

お姉ちゃんはとても人当たりが良く、人気者で、勉強を教えてくれたりする事とか。

魔物討伐の実習では、クラスメイトを魔物から守って、英雄視されてたりする事とか。

中でも驚いたのが、お姉ちゃんが求婚されたと言う事だ。なんでも、魔物討伐の実習の際に助けた人の中に、貴族の人がいたらしく、お姉ちゃんに結婚を申し込んだらしい。しかし、お姉ちゃんは丁寧に結婚をお断りしたんだとか。

なんでも、魔物から助けた直後に言われたから、その場の勢いが大半だったらしい。

ちなみに、貴族の人がその場で結婚を申し込む事はよくある話らしい。

「そんな事があったんですか〜!なんというか、お姉ちゃんが楽しく学院生活を送れてそうでよかったです。学院生活かぁ、羨ましいなぁ〜」

僕は、もしも自分が学院に入っていたらどうなったかな、と想像してみる。

友達とかとお出掛けしたり、遊んだりしたいなぁ。服を買いに行くのもいいかも。

すると、ハルさんが僕を不思議そうに見てきた。

「え、羨ましい?アリエルちゃんはここに編入するために来たんじゃないの?」

「あはは、それは違いますよ。僕、最近王都に来まして。そしたらお姉ちゃんが、同じ王都にいるんなら一緒に住むって言い始めて」

それから僕は、ハルさんに王立学院へ来た経緯を簡単に説明した。

「そういう理由でここに来たんだーー。じゃあ、王立学院に入る気は無いの?」

「興味はありますけど……入る気は無いですね」

僕には勇者になるという目的があるから、学院で勉強をする暇は無い。本当は、そのために王都に出て来たのだから。

「そっか、それは残念。アリエルちゃんが学院に入って来るんだったら、これからはさらに楽しくなるって思ったんだけどなぁ」

「例え試験を受ける気になったとしても、僕には入れないですよ。倍率、すごく高いんですから」

「セレーナの弟なんだから、勉強も得意だと思うけどなぁ……」

こんなやり取りを交えつつ、僕は、しばらくハルさんにお姉ちゃんの話を続けてもらった。

ハルさんと話し始めて10分ほど経ったとき、ドアが開いた。

「ただいま〜!ごめんね、アリエル。手続きに時間を取られたせいで、ちょっと遅くなっちゃった。待たせちゃったかな?」

あ、お姉ちゃんが帰って来たみたいだ。

「おかえり、お姉ちゃん」

「する事がなくて退屈じゃなかった?」

「ううん、ハルさんが話し相手になってくれたから平気だったよ」

僕はこちらに歩いて来るお姉ちゃんに視線を向けた。

「あ、そう?ハルが話し相手になってくれて…………」

最初に僕と目があったお姉ちゃんは、僕のすぐ隣に座るハルさんに目をやった後に沈黙した。

「いや、セレーナが可愛い子を連れてるって噂が流れてたからさ、真相を聞きに来たんだよ。部屋の鍵が開いてたから、セレーナがいるのかと思って部屋に入ったら、アリエルちゃんがいたわけ。だから、そのままおしゃべりをしてたわけ。いやはや、まさかセレーナの弟がこんなに可愛い子だとは思わなかったよ」

陽気な声で状況の説明をしたハルさん。

お姉ちゃんは、そんなハルさんを見てはぁ、と大きなため息をついた。

「今回はアリエルの話し相手になってくれたのはありがたかったけど、許可がないのに躊躇なく人の部屋に入るのはどうなのかしら?」

「あはは、そんな事言わないでよ。私とセレーナの仲でしょ?」

「……それもそうね、あなたにそんな事を言っても無意味ね」

呆れた顔で返事をするお姉ちゃん。

2人のやりとり、なんか友達っぽい感じがするなぁ。

「ハルさんと仲いいんだね、お姉ちゃん」

「うんそうなの、仲いいの!」

「何でハルが答えてるのよ……」

「ふふっ」

2人のやりとりが面白くて、僕は笑った。

最初は不安が多かったけど、学院長や、ハルさんはとても優しい。

これからの生活が楽しみだと思う僕だった。

言うまでもないとは思いますが、一応お伝えします。この話の主人公はアリエルです。では、ヒロインは誰なのか。ティアやセレーナ、ハルルカではありません。そう、もちろんアリエルですっ!!!

すいません。これが言いかっただけです、はい。

中々話が進みませんが、これからも読んでいただけると嬉しいです。あと、更新は大体夜になるかと思います。

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