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就寝前のひと時

はじめに言っておきますが、今回は話が進みません。基本的に日常感のある話が続いていきます。

「そういや、アリエルっていつこの学院に転入して来たんだ?中間転入試験はもう少し先だった気がするんだけど」

「あ、いえ。僕、この学院には入学してないんですよ」

僕は体力回復効果の高いとされる緑色をした浴槽に浸かりながらアークさんと話をしていた。

「えっ、そうなのか?」

「はい。ちょっと、色々ありまして………」

僕は、今日あった出来事を、ハルさんに説明したのと同じようにして説明したのと。

「無理矢理連れてこられたのか。それは災難だったな〜」

「ま、まぁ僕が本気で抵抗すればどうなるかは分からなかったんですけどね。僕も嫌ではなかったですし、お姉ちゃんと暮らせたらいいなぁとは思っていましたから、本当に無理矢理というわけではなかったんですけど」

「まぁ、弟思いのセレーナの事だしな。本気でアリエルが嫌がれば無理矢理はしない、か」

「ええ。お姉ちゃんは出来た人ですから」

僕は自慢の姉を誇らしく思って、胸を張ってみる。

「いや、でもそれって少しくらいなら嫌がられても気にせず連行するって事なんじゃ……ま、まぁいいや。アリエルが幸せそうなら俺はそれでいいよ、うん」

小声で何か言った様子のアークさん。聞き取れなかったけど、独り言みたいな感じだったから気にしなくてもいいだろう。

ふと、僕は大浴場に設置された丸時計をみた。

アークさんと話してる間に、こんなに時間が経っちゃったんだ……

もう十分体もあったまったし、そろそろ出ようかな。

「それじゃあ、お姉ちゃんが待ってるといけないので僕はお先に失礼しますね、アークさん」

僕がそう言って立ち上がると、アークさんは手を振って僕に別れを告げた。

「ああ、俺はもうちょっとゆっくりしていくよ。じゃあな、アリエル。俺は大体この時間にここにいるから、機会があれば、また今度」

「はい、また今度!」

それだけ言って僕は大浴場を去り、ロッカールームへと戻っていくのだった。

事前に用意していたタオルで体と頭を拭くと、着替えとして持って来た寝間着のパジャマに着替える。

そして、まだ少し湿ったままの髪の毛の水気を拭きながらロッカールームをでて、男湯の入り口を出た。

瞬間、ダダダッという駆け抜ける音が聞こえてきて、音の方に振り向いた直後、僕の視界は柔らかいもので塞がれた。

「アリエルゥゥ!!」

ぎゅううううっ、という擬音がつきそうなほど強く抱きしめられる。

「うわっ?!お姉ちゃん、いきなり何?」

お姉ちゃんの体からは、お風呂上がりだからか、石鹸特有のいい匂いがしてくる。

「もうっ、長湯しすぎよ!お姉ちゃん、アリエルがのぼせたんじゃないかって、心配で心配でしょうがなかったんだからね?!」

「あ、そっか。ごめんね、心配させちゃって。でも大丈夫だよ、優しい人と話をしてただけだから」

僕はあえてアークさんの名前は出さない。お姉ちゃんが毛嫌いしている人と話した、なんてわざわざ言う必要もないだろう。

「そうなの?のぼせたんじゃないならいいんだけど。これからは集合時間を決めようね。じゃないと、アリエルがのぼせたかどうかの判断がつかないから」

「うん、そうだね」

優しく僕の頭を撫でるお姉ちゃん。その声は少し震えている気がする。

お姉ちゃんは少し過剰な気もするけど、心配をかけたんなら悪いことしちゃったな。今度からは気をつけよう。

「それはそうとさ。お姉ちゃんの胸が当たって息が苦しいから、そろそろ離れてくれないかな?」

お姉ちゃんの胸に挟まれてもごもごしながら言った。

「……………えっ?あ、ごめんね、アリエル」

「今の間は何かよく分からないけど、とりあえず離してくれてありがとう、お姉ちゃん」

僕が目を細めてお姉ちゃんを見ると、目を逸らされた。

あれ、確信犯なのお姉ちゃん?

「それじゃあ、そろそろ部屋に戻りましょうか?」

「うん、そうだね」

長い廊下を歩きながら、僕とお姉ちゃんは部屋へと向かう。

そして、部屋の前に着いた時、お姉ちゃんが学生証で部屋の鍵を開ける際、僕は何気なく言った。

「お姉ちゃん、僕を抱きしめるのはいいんだけどさ、今度からは少し屈んでくれない?お姉ちゃんの胸が僕の頭に当たって、息が苦しくて窒息しそうなんだよね」

「なるべく気をつけるようにはするけど、お姉ちゃんは全身でアリエルを感じたいから、約束はできないわね」

あ、約束はできないんだ……

別に抱きしめるのが嫌なわけじゃないし、少し呼吸がしにくいだけだからいいんだけどさ。

僕は少しだけお姉ちゃんに呆れながらも、寝る準備を始めるのだった。

そして、あとは寝るだけとなった時、急にお姉ちゃんが僕の前に立って質問を始めた。

「歯磨きした?」

「したよ」

「ちゃんとパジャマ着れてる?ボタン一個ずれてたりしない?」

「着れてるし、ボタンもずれてないよ」

「ちゃんとトイレ行った?寝る前にちゃんと行っておかないと、おねしょしちゃうわよ?」

「トイレにはちゃんと行ったし、さすがにもうおねしょはしないよ!!」

「アリエル、何か困ったことはない?寒いとか、暑いとか」

「無いよっ!まったくもう、お姉ちゃん心配しすぎ!」

僕は腰に手を当ててお姉ちゃんに抗議する。

しかし、お姉ちゃんはそれを無視して僕の体をペタペタと触り始めた。

何か不具合が無いか調べているんだろう。

「自分が大人とは言わないけどさ。それでも僕だって13歳で、もう子供じゃないんだからさ、お姉ちゃんもそんなに心配しなくても大丈夫だよ」

僕がそう言い終えたの同時に、足からだんだんと上に登って行くように調べていたお姉ちゃんの手が髪で止まった。

そして、お姉ちゃんはニヤリと笑う。

「へぇー、子供じゃないの?」

「そうだけど?何、お姉ちゃん?」

その笑みに、少し嫌な予感を覚える。

「髪がまだ湿ってるけど?」

「あっ?!」

言われてから気づいた。

そういえば、後で拭こうと思って、大浴場を出てからしっかりと髪を拭いていなかった。

「アリエルには、まだまだお姉ちゃんの手助けがいるようですなぁ?」

「ぐぬぬ……」

その言い草に、少し悔しくなった僕は、引き出しからタオルを取ってきて髪を拭き始めた。

「あーあー、そんな拭き方しちゃったら髪が痛んじゃうわよ?」

ニヤニヤしながら話してくるお姉ちゃん。

そんな顔で見られたら、なんだか乗せられてるみたいで、髪を拭こうという気持ちもなくなる。

「…………もういい。このまま寝るよ」

タオルはハンガーかけてに吊るそうとした、が。

「そのまま寝ると、寝癖つくわよ?」

「別にいいよ。朝直せばいいでしょ」

僕は少しぶっきらぼうに返事を返した。

「お姉ちゃん、中々寝癖治らないんだよね〜〜この前なんか、一日たっても治んなくって、お風呂入ってからやっと治ったのよね〜。お姉ちゃんと同じ血が流れてるアリエルもおんなじ様になるような気がするなぁ〜〜」

「……」

僕が自分で拭いたら髪が痛むし、拭かなければ一日取れない寝癖がつく。

「今なら、お姉ちゃんが拭いてあげるのになぁ〜〜」

僕は、悩みに悩んだ末、吊るしかけたタオルを持って、お姉ちゃんに差し出した。

「僕の髪を拭いてもらえないかな、お姉ちゃん」

「よろこんでやりましょう!!」

嬉しそうにしたお姉ちゃんは、僕の頭を撫でた後、水気を取る用に、髪だけ叩いて丁寧に拭いてくれた。

「ふふ、まだまだアリエルも子供ね」

「……こういう時のお姉ちゃんって、本当に楽しそうだよね」

「そりゃあね、楽しいんだからしょうがないでしょう?」

クスクスと笑いながら手を動かすお姉ちゃん。

「でも、成長はしたと思うわよ?」

「えっ、本当に?」

「可愛さに拍車がかかったわね」

うーん。それは、どうなんだろう?

「……嬉しいけどさ、何か違う気がする」

僕がそう言うと、お姉ちゃんは少しだけ真面目な顔をして言った。

「言いたいことはわかるけど、お姉ちゃんの前でくらい、まだまだ子供でいて欲しいな」

「えっ?」

「もっとたくさんアリエルのお世話させてよ。4年間も離れてたんだからさ、その空白を埋められるくらいにはね。はい、髪乾いた!」

最後に、お姉ちゃんは僕の髪を一撫ですると、タオルを吊るした。

そして、僕の目の前にやって来て、一言。

「さ、もう寝ましょう?」

「うん、そうだね」

と、ソファに向かった僕を、後ろからお姉ちゃんが掴んだ。

「ソファで寝るなんて言わせないわよ?」


こうして、お姉ちゃんと僕は同じベッドの上で寝る事になった。

僕はお姉ちゃんに抱きしめられる形で、というか抱き枕にされた。

少し苦しいけど、僕が息をしやすい様に抱きしめる位置をずらしてくれているのでこのくらいなら息苦しくなる事なく眠れるだろう。

そして、お姉ちゃんが部屋の明かりを消す。

「それじゃあ、おやすみなさい、アリエル」

「おやすみ、お姉ちゃん」

僕は、今日あった出来事をたくさん思い出しつつ、お姉ちゃんといる時はもうちょっとお姉ちゃんに甘えようかな、と思いながら眠りにつくのだった。

前回もあと3話したら話が進むとか言ってた気がするんですが、今度こそ本当です。次の次くらいから話が動きます。それからは少しシリアスになるかもしれません。

あと、この小説は基本的に僕が自由に書き殴る事でなんとか成立しているものです。プロットなんて、あってないようなものです。ストーリー性なんてものに期待せず、1話1話を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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