黄金都市
ここは黄金都市パラミティア。
金脈が国内各地で発見されている、正に黄金の国である。
そんな国の暗い路地裏に、金属のぶつかる音が木霊する。
「……お前は誰だ」
黒い布を身に纏い、フードで顔を隠した男がナイフを構え、問う。
「俺は俺さぁ、この先に用があるんでね、どいてもらうよ?」
俺はあたかも余裕かのように見せるが、正直そんなに余裕は無い。
この黒い奴は相当な手練れだ。ナイフ捌きなら俺とは格が違う。
「…ここから先は通す訳に行かないのだ。立ち去れ」
もっとも、ナイフ捌きなら、だが。
黒い男が一歩足を進めた瞬間、黒い男の真上から丸太が落ちてきた。
無論黒い男は丸太の下敷きだ。助かりはするだろうが、暫く起き上がることは無いだろう。
「そこで暫く寝てな、黒づくめ」
俺は黒い奴を見下ろしながら呟き、路地裏の奥にあるドアに向かう。
「よし、今日も上々!お邪魔しまーす!」
ドアノブを回し、中に入る。
入った先に居た人は、白髪で赤い眼をした、車椅子の少女だった。
俺はゆっくりと口を開く。
「こんにちは、そしておめでとう、お嬢さん。君は選ばれた。君が必要なお金の額を言ってごらん。僕が全て奪い返してあげよう」
いつもの通り優しげに、しかし確信を持って語りかけると、少女は涙を流しながら喋り始める。
「私の母親は…父親に売られました……その父親は逃げ、今そこにいた兄が最後の家族です…………お願いします‼︎母親を…お母さんを返して‼︎あの屑から!お父さんに賭けを勧めたあの貴族から‼︎」
それまでに抑えていた感情が溢れ出したのか、赤ん坊のように泣き叫ぶ。
……ってかおれこの子の兄さんぶっ飛ばしちゃったよ。後が怖い…。
「安心して下さい。貴方は救われた。今から、貴方の父親がお金を失ったその賭けで、僕がお金を稼いできてあげよう。さあ、車椅子を押してあげよう。間近で見たいだろう?母親が帰ってくる瞬間を」
「………うん!」
ゆっくりと、暗い裏路地から、大通りへ足を進めていく。
並んでいる酒屋の中でも異彩を放っている、金がふんだんに使われている酒屋の地下へ。
階段を下ると、ポーカーやスロット、コロッセオやブラックジャックなどのゲームが軽く1種類10台ずつ置かれている広い部屋に着く。
そこにおれが足を踏み入れると、仮面を付けてスーツやドレスに身を包んだ、如何にも貴族という出で立ちの人々が、一斉にこちらを見て、落胆し、驚愕する。
『パラミティアのロビンフッドだ!ロビンフッドが来たぞー!』
皆は口々にそう叫ぶ。ある人は歓喜に身を震わせ、ある人は悲嘆に暮れる。
俺はとりあえず少女をバーの店主に任せる事にした。
「こいつを頼むよ親父」
「また救う気か?お前の趣味はいまいちよくわからんな」
よし、先ずは何をしようか。
スロットでもやろう。
金貨を一枚スロットに入れると、数字が書いてある三つのドラムが回り始める。
出てくる数字は1、7、8。
少女が落胆した姿を見せる。
俺は1枚金貨を入れる。
出てくる数字は7、7、7。
奇跡の大当たりだ。
奴隷を買い戻すには金貨100枚あれば確実だろう。
今は15枚。やはりスロットじゃあそこまで稼げない。
一番稼げるものと言ったら、ブラックジャックかポーカーだ。大富豪が多く手をつけているため、稼ぎやすい。
ポーカーの机に向かい、ディーラーからカードを5枚もらう。
1、7、6、9、8。
一つも役がない。
5枚とも引き直す。
10、11、1、12、13。
ロイヤルストレートフラッシュだ。
他の貴族が脂ぎった顔をニヤニヤさせながら周りを見ている。
「それでは皆様、カードを」
皆がカードを提示していく。
フルハウス、ワンペア、ツーペア…。
俺がカードを提示した瞬間に、貴族たちの表情が驚きの後、絶望に変わる。
これで80枚。貴族はベットする金額が高すぎる。もう少し節約すればいいものを。
最後の20枚は、ブラックジャックにしよう。
ベットの金額は金貨10枚だ。
カードを2枚ディーラーから受け取る。
13、1。
ナチュラルブラックジャックだ。
対するディーラーのカードは1、9。
俺の勝ちだ。
「親父、見といてくれてありがとな!」
「いいって事よ。それにしてもやっぱ凄えなぁお前」
「そうでも無いよ。ほら、行こうか」
「うん!ロビンフッドのお兄ちゃん!」
「…まいっか、ほら、最後は自分で買い戻しな」
少女はこれから、母親と兄に愛され、幸せに暮らすことだろう。
輝かしい未来、なんて言えるようなものじゃ無いが、黒くドロドロとした未来よりはマシだろう。
幸せに暮らせよ、未来あるお嬢さん。
久しぶりの投稿なので、下手な文章が更に下手になっていますが、生暖かい目で見守って下さると助かります!