廻ることのない世界
ぜひ、前に書いた詩を読んでください。
「愛してる。愛してる。愛してる。好き。好き。愛してるの。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる愛してる。好き。好き。愛してる。愛してる。……愛してる。アルト。アルト。アルト。アル、ト愛してるの。アル「ルナ。…ル、ナ、もう、良い。愛してる…ありがとう…耳を塞げ…。」
「あ。嫌だ。いやだ!やだ!やだぁ!!アルトっっ!!」
__グシャッ。
「あ、あ、あ、あああああ!!」
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どうして、なんで、アルトが。
嫌だ、嫌だ。アルトがいなきゃ、私、わたし、どうすればいい?
アルト。アルト。どう、すれば?私は、に、逃げなきゃ。早く、早く。アルトがそう願ったから。私に生きろって。
アルト、でも、私は。どうして。ここにいるの?
走りながら私は必死に考えた。
逃げて、逃げて、どこか遠くに。
──どれぐらい?
遠く、遠く、とてもとおくに。
もっと、早く!足、動いて!!アイツらが来るから。早く、早く。
息をきらせて部屋に辿り着く。飛び付くように扉を開けた。
早く、早く。
錠を外して窓枠に足をかけ、下を見下ろす。辺りの静けさを強調するかのように煩く響く川の流れ。
この川が唯一アイツらから逃げ切れるかもしれない場所。
流れが速いから、私も無事に逃げられるか分からない。
胸もとのペンダントを握りしめて恐怖を飲み込む。
冷たい。冷たい。感覚が、無くなっていく。頭は冴えてるのに、身体が動いてくれない。
だめなんだよ、こんな所で、死んだら、
私は、私が生きなきゃいけない。
平衡感覚が無茶苦茶の中。水面へ、光のある方へ。
「ハッ!!ハァッ。」
思いっきり空気を吸いこむ。
夜が、明けてきてる。どれぐらい流された?
距離を稼がないとアイツらに追いつかれる。
だからといってこのまま流されても死んでしまう。辺りを見回しても深い森の中だということしか分からない。
陸に上がるしか無い。
ベットリと水分を吸った服が気持ち悪い。
でも、そんな事を考えてる暇は無い。
早く、もっと遠くに。それだけを考えて。
助けくれる奴なんてこの世界にいない。
よろよろと立ち上がって走り出す。
小石や枝が素足の足にはキツイ。
でも、血が出るぐらいなら良い。くじいたりだけはしたくない。
体力の尽きかけている身体にムチを打って走り続ける。
「ハァッ。ハァッ、」
まだ、だめ、せめて、日が昇り切る前までは。
あぁ、早く、もっと早く。
でも、限界なんて簡単に来るもので。
崩れ落ちるように転んだ。
ぜぇぜぇとうまく吸えない空気を求める。
乾ききっていない服がつめたい。風もつめたい。
そうか、そうなのか。
はっ、と頬に触れたモノで気づく。
─雪。
降ってきた。つめたい。
ふわふわ、不規則に。少し風に吹かれただけで軌道を変える、白。
……アルトの温もりが恋しい。寒い。
いつの間にか整った息。緩やかになる思考。
馬鹿みたいね。川に入るなんて。
すべての生命に死と眠りをもたらす、冬。
嗚呼、でも。貴方からなら死を受け取ってもいい。
ふっ、と笑うようかのように白い息を吐く。
この世界に。私は今、一人きり。
私は異物。
アルト、寒いよね。大丈夫。今から温めに行くから。待ってて。
ふらふらと立ち上がって歩き出す。
自分の吐く息での音で、いつの間にか座り込んでいたことに気づく。
周りは真っ白な世界。
ずるずると身体を引きずりながら木の幹にもたれ掛かる。
…神様、もしいるなら。私が死んでも、次の私はアルトと幸せに暮らしたいです。出来れば、ずっと。
今の私は、すごく、頑張ったと思うんです。
ねえ、アルト。私達は在ってはならない存在だったけど。
せめて、せめて私達が、生きていたんだよって。認められなくていいから。
見つけてもらいたい。優しい奴らに。
ふと、故郷の歌を思い出した。
この歌も、真っ白な雪の世界で、大切な人が自分の腕の中で眠る歌だった。
とても、今の私には相応しくない歌。
この世界はあの歌のように優しくはなかった。
だって、アルトは、わたしの腕の中で眠れなかった。
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雪が降り積もったある冬の朝。
森へ出掛けたとある男は、とても美しいものを見た。
霜を被せた艶やかな黒髪に、雪に透けてしまうほどの白い肌。
冷たく凍った世界でも尚、血が通っているかのような赤い唇。
哀しそうに微笑んだまま、時を留めた少女。
木に寄りかかるようにしてそこに在た。
感想お待ちしております。




