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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

廻ることのない世界

作者: 猫音
掲載日:2016/05/31

ぜひ、前に書いた詩を読んでください。


「愛してる。愛してる。愛してる。好き。好き。愛してるの。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。愛してる愛してる。好き。好き。愛してる。愛してる。……愛してる。アルト。アルト。アルト。アル、ト愛してるの。アル「ルナ。…ル、ナ、もう、良い。愛してる…ありがとう…耳を塞げ…。」

「あ。嫌だ。いやだ!やだ!やだぁ!!アルトっっ!!」


__グシャッ。


「あ、あ、あ、あああああ!!」


─────────────────

どうして、なんで、アルトが。

嫌だ、嫌だ。アルトがいなきゃ、私、わたし、どうすればいい?

アルト。アルト。どう、すれば?私は、に、逃げなきゃ。早く、早く。アルトがそう願ったから。私に生きろって。


アルト、でも、私は。どうして。ここにいるの?


走りながら私は必死に考えた。

逃げて、逃げて、どこか遠くに。


──どれぐらい?


遠く、遠く、とてもとおくに。

もっと、早く!足、動いて!!アイツらが来るから。早く、早く。

息をきらせて部屋に辿り着く。飛び付くように扉を開けた。


早く、早く。

錠を外して窓枠に足をかけ、下を見下ろす。辺りの静けさを強調するかのように煩く響く川の流れ。


この川が唯一アイツらから逃げ切れるかもしれない場所。

流れが速いから、私も無事に逃げられるか分からない。


胸もとのペンダントを握りしめて恐怖を飲み込む。




冷たい。冷たい。感覚が、無くなっていく。頭は冴えてるのに、身体が動いてくれない。

だめなんだよ、こんな所で、死んだら、

私は、私が生きなきゃいけない。


平衡感覚が無茶苦茶の中。水面へ、光のある方へ。


「ハッ!!ハァッ。」


思いっきり空気を吸いこむ。

夜が、明けてきてる。どれぐらい流された?

距離を稼がないとアイツらに追いつかれる。

だからといってこのまま流されても死んでしまう。辺りを見回しても深い森の中だということしか分からない。


陸に上がるしか無い。

ベットリと水分を吸った服が気持ち悪い。

でも、そんな事を考えてる暇は無い。

早く、もっと遠くに。それだけを考えて。


助けくれる奴なんてこの世界にいない。


よろよろと立ち上がって走り出す。

小石や枝が素足の足にはキツイ。

でも、血が出るぐらいなら良い。くじいたりだけはしたくない。


体力の尽きかけている身体にムチを打って走り続ける。


「ハァッ。ハァッ、」


まだ、だめ、せめて、日が昇り切る前までは。

あぁ、早く、もっと早く。


でも、限界なんて簡単に来るもので。

崩れ落ちるように転んだ。

ぜぇぜぇとうまく吸えない空気を求める。


乾ききっていない服がつめたい。風もつめたい。

そうか、そうなのか。

はっ、と頬に触れたモノで気づく。


─雪。


降ってきた。つめたい。

ふわふわ、不規則に。少し風に吹かれただけで軌道を変える、白。


……アルトの温もりが恋しい。寒い。


いつの間にか整った息。緩やかになる思考。

馬鹿みたいね。川に入るなんて。


すべての生命に死と眠りをもたらす、冬。

嗚呼、でも。貴方からなら死を受け取ってもいい。

ふっ、と笑うようかのように白い息を吐く。


この世界に。私は今、一人きり。

私は異物。


アルト、寒いよね。大丈夫。今から温めに行くから。待ってて。

ふらふらと立ち上がって歩き出す。



自分の吐く息での音で、いつの間にか座り込んでいたことに気づく。


周りは真っ白な世界。

ずるずると身体を引きずりながら木の幹にもたれ掛かる。


…神様、もしいるなら。私が死んでも、次の私はアルトと幸せに暮らしたいです。出来れば、ずっと。

今の私は、すごく、頑張ったと思うんです。


ねえ、アルト。私達は在ってはならない存在だったけど。

せめて、せめて私達が、生きていたんだよって。認められなくていいから。

見つけてもらいたい。優しい奴らに。


ふと、故郷の歌を思い出した。

この歌も、真っ白な雪の世界で、大切な人が自分の腕の中で眠る歌だった。

とても、今の私には相応しくない歌。

この世界はあの歌のように優しくはなかった。


だって、アルトは、わたしの腕の中で眠れなかった。


─────────────────

雪が降り積もったある冬の朝。

森へ出掛けたとある男は、とても美しいものを見た。


霜を被せた艶やかな黒髪に、雪に透けてしまうほどの白い肌。

冷たく凍った世界でも尚、血が通っているかのような赤い唇。

哀しそうに微笑んだまま、時を留めた少女。

木に寄りかかるようにしてそこに在た。

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