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ヒャクモノガタリ  作者: やまひつじ
2/2

蝋燭2本目 「未来痛」

俺はあんまり怪談とか知らないんだって。いやマジで。

まいったなぁ・・・じゃあ俺の親友の話でもするか。

いっとくけど、怖くないからな。フリじゃなくて!本当に!。



ーーー俺には、小学校から大学まで一緒の学校に通った幼馴染がいた。あ?女かって?バッカ、男だよ。

家も近所でさ、よく一緒に遊んだんだよ。まさかずっと学校一緒とは思わなかったけどな。

別にここに行こうって話してたわけじゃないんだ。似たようなこと考えるってことかね。

でその親友なんだが、やたら勘がよくてさ。

俺がちょっと体ダルいなーって考えてると、少し熱があるんじゃないか?って聞いてくるんだぜ?。

あとで確認してみたけど、別に顔色悪くないし、そんな仕草もしてないのに気づくんだよ。

実際に熱を計ると微熱があってさ。そんときはすげぇって思った。

・・・今思うと、この頃からちょっと片鱗があったのかもな。




事の起こりは俺たちが大学2年の時だ。

たまたま講義の終わりに会って、そいつと一緒に帰ったんだよ。

あの教授は嫌味が多いとか愚痴を言い合ったりしてたんだが、そいつが急に左肩を押さえて蹲りだしたんだよ。おいおい、どうしたんだよ急に?って声かけると、


「肩が痛くて・・・あぐっ・・・」


苦痛で顔が歪むってこういう感じなんだって実感したよ。

すげぇ冷や汗かいてて、とても演技とは思えなかった。

とにかく心配になって、服脱がせてみたものの、痣もなければ腫れもない。

ごく普通の状態だった。だけどそいつは蹲ったまま、立ち上がる様子もなかった。

これはヤバイと思って救急車を呼ぼうとしたところ、そいつが立ち上がってケロッとした顔で、


「治ったみたい」


とかいうんだぜ。とてもじゃないけど信じられなかった。

顔色も真っ青だった。でも救急車を呼ぶほどないと思ったんだよ。

俺は、そいつに早く病院に行ったほうがいいと何度も言った。

明日病院に行ってくる、とそいつも素直に頷いた。





ーーーそれから数日後。俺はあいつがどうなったのか気になったので連絡をとった。

まぁ親友だったからな。何か悪い病気じゃないんといいんだがと思ってたよ。

でも事態は遥か斜め上にいってた。

病院で再開したそいつは左肩から先がなくなってた。

比喩でもなんでもなく、左手がなかった。

なんでも俺と帰った次の日に病院に行こうとする途中で、事故に巻き込まれてすっぱりと・・・らしい。

びっくりしたよ。なんて言葉をかけていいのか思い浮かばなかった。

茫然と見つめていた俺にそいつはこういった。


「こんなんになったけど、不思議と痛みがないんだ。もしかしてあの時感じた痛みは、この痛みだったのかな?」


俺はぞっとしたよ。そんなことがありえるのかって。

でも昔から勘がよかった親友だった。ありえるかもしれない、そう俺は思った。

どこか他に痛む場所はないのかよ!?って必至に聞いたよ。


「今朝は頭痛が酷かったよ。でも検査してもらってなんともなかったから」


そいつは安心してたよ。病院で検査して大丈夫だったんだから。

きっとこの前の肩の痛みはたまたまだったんだよって。

でも俺は全然、安心できなかった。



ーーーその三日後だよ。そいつが死んだって聞かされたのは。

死んだのはおそらく夜中。死因は・・・難しいことは俺にもわからんが、頭の中の血管が切れて出血。血栓ができて他の血管を圧迫。血が頭に巡らなくなり死んだって話だ。

朝、問診にきた看護師が見つけたらしい。

なんにも考えられなくなったよ。つい数日前まで元気だったやつが、一緒に帰ってたやつが死んだんだぜ?。

もしかしたら俺はそいつを救えたんじゃないか?あいつのあの言葉を真剣に考えてやれたらなんとかなったんじゃないか?

そのあとは後悔しかなかったよ。そいつの葬儀のときも心の中では謝ってた。

悪い。信じてやれなくて、疑ってやれなくて、ってな。



しばらく沈みはしたが、今更考えてもどうこうできる問題でもない。

元気になった俺はまたいつも通りの大学生活を過ごしたよ。

それから大学を卒業し、俺は社会人になった。

就職先がそれはそれは酷いところだった。前に話したことあるだろ?そうそう、そこ。

いわゆるブラック企業ってやつでさ、睡眠時間は毎日2,3時間くらいしかなくてバカみたいに仕事振られるの。結構タフなほうだと思ってたけどさすがに堪えたよ。

睡眠不足とストレスで心も体もボロボロだった。



ある朝、起きると体の節々が痛かった。でも動けないほどじゃなかったから仕事にいこうと思った。

スーツに着替えて、自宅を出て・・・会社に近づけば近づくほど痛みが酷くなっていくんだよ。

とうとう痛みに耐えきれずに、会社の目の前の歩道で膝をついて蹲った。

近くにいた同僚が心配して声をかけてきてくれた。その声に顔あげた瞬間、俺の目の前を大型トラックがつっこんでいった。

その大型トラックはうちの会社につっこみ、大騒ぎ。朝早かったのが幸いして怪我人はいなかった。

あとから聞いた話じゃ、運転手の居眠り運転が原因だったらしい。

もし俺が痛みで蹲ってなければ、今頃俺はひき肉になってたかもな。冗談じゃなく、それくらいの速度でつっこんでったからな。

気づいたら痛みはなくなってた。でも気分は最悪だったし、冷や汗で体中気持ち悪かった。

そこで俺は親友のことを思い出したよ。



ーーーあの時の痛みは、俺の親友が教えてくれた死の危機だったんじゃないか。



今でも俺はそう思ってる。年に一回は線香あげにいくよ。お前のおかげでまだ生きてるよ、ってな。

これで俺の話は終わりだ。

あ?うるせぇな・・・だから怖くないっていっただろ?。

ほら、もういいだろ?蝋燭消すぞ。

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