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ヒャクモノガタリ  作者: やまひつじ
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蝋燭1本目 「リストバンドの理由」

私からですか?

わかりました。じゃあ私がいつもしているリストバンドの話をします。

え?それ怖いのかって?

先輩、それは聞いてから判断してくださいよ。

それでは話しますね。



まず私がしている左手にしているリストバンドなんですが、滅多なことでは外しません。

というかお風呂のときしか外しません。替えもたくさんあるので、洗うときも別のをつけてます。

ーーーそうですね、普通そこまでしませんよね。ちょっと理由があって。

今、ちょっと外しますね。・・・はいこの通りです。

あ、断っておくと別にリストカットしたわけじゃないですよ?ホントですって!先輩!。

この傷痕見ちゃうと信じてもらえないかもしれませんけど。

少なくとも自分でやったことは一度もありません。

ーーーええ、私がリストバンドをすることになった理由をお話ししたいと思います。



私は幼い頃、両親を交通事故で亡くしました。

親戚がいなくて後継人がいないものでしたから、私は児童施設に入ることになりました。

私と同じような境遇の子もいれば、虐待された子や家出してきた子もいました。

そんな中で生活していくうちに次第に私はいじめられるようになっていったのです。

ーーーなぜかって?わかりません、理由なんて。

子供のすることですから、気に入らないとかそんな理由じゃないでしょうか。

叩かれたり、物を隠されたり・・・当時両親のことで沈んでいた私はさらに暗くなりました。

それでいい気になったのか、いじめはさらに増長していきました。



いじめられるようになってしばらくたち、ただ日々を過ごすだけの私に転機が訪れました。

私を養女にしたいという方が現れたのです。・・・はい、それが今の両親です。

私はすぐにうなづきました。いじめられるよりはマシだ、そう思ったのです。

しかし、その日のうちに施設を出ることはできず、次の日また迎えに来てくれることになりました。

施設での最後の夜です。今でもよく覚えています。

とても寝苦しい夜でした。誰かが左手に触れているような気がして、むずむずして、何度も寝返りをうちました。

そして次の日の朝、左手を見てみると布団と左手が真っ赤に染まっていました。

私は悲鳴をあげました。すぐに施設の大人の人がやってきて手当をしてくれました。

いじめていた子たちの仕業だったのはいうまでもありません。

どうもリストカットの跡があれば、気味悪がられて養女の話はなくなるだろう、と考えたそうです。

子供らしく、浅はかな考えでした。

そんなことで養女の話がなくなるわけもなく、無事私は引き取られました。



・・・それから優しい両親の元で平穏な生活を送っていましたが、私が高校1年生になったときそれはおきました。

左手がむずむずして、なかなか寝付けないのです。目を覚ましてみても左手に異常はありません。

無理やり寝てしまえ、と思い我慢して寝ました。いつの日かのように寝苦しい夜でした。

そして次の日の朝、私の左手はあの時のように真っ赤に染まっていたのです。

すぐに私は両親に相談しました。なかなか両親は信じてくれませんでした。両親はこう言いました。

子供の出来事がトラウマになっており、無意識に自分でやったのではないか、と。

その日の夜は両親と3人で寝ました。そばに私たちがいれば大丈夫だと優しい両親はいってくれます。

しかし、左手の疼きはやみませんでした。何度起きてみても、怪我一つありません。

次の日の朝、やはり私の左手は切り傷がつけられており、血で染まってました。



あの施設になにか原因があるのではないか?と考えた私は久しぶりに施設を訪ねることにしました。

しかし、そこに施設はすでになく、ただの空き地になっていたのです。

詳しく調べてみると、火事があり全焼。そこにいた子供たちは全員亡くなったということがわかりました。

怖くなった私は、有名な霊媒師さんに診てもらいました。


「あなたに憑いているのは子供の霊ですね。それも1人や2人じゃない。何か心当たりがありますか?」


私は幼い頃施設で過ごした際いじめられた話、そして火事でみんな亡くなった話をしました。


「おそらくそれが原因でしょう。子供たちの霊はあなたが妬ましいのです」


あの中で1人だけ助かった私が妬ましくて、今も私に憑いている。

そう霊媒師さんは教えてくれました。

何とかする方法はないんですか!?と必至にすがりました。


「大人になれば自然と霊があなたを認識できなくなります。あの霊たちは子供のあなたを見ていますから。大人になるまでは、なるべく左手に何かをつけて過ごすといいでしょう。そうすれば霊もちょっかいをだすことができなくなります」


霊媒師さん曰く、何か左手に身に着けていれば、霊からは左手が切断されたように見え、それ以上ちょっかいをかけてこないとのことでした。

その帰り、私はたくさんのリストバンドを購入しすぐに身に着けました。

その日から左手がむずむずすることもなく、寝苦しい夜もなくなりました。




・・・これが私がリストバンドをいつもしている理由です。

本当に自分でリストカットしてるわけじゃないですよ。

ーーーえ?今はどうなってるのかって?

この前の旅行にいったじゃないですか。ええ、先輩もいたやつ。京都いったやつですよ。

あの旅行中、仲のいい子が私が寝てる間にリストバンド外したらしいんですよ。

外し忘れたまま寝たと思われてて、あとはいつもつけてるから好奇心からでしょうけど。

・・・はい、お察しの通りですよ先輩。

私はあの朝洗面所にいました。






ーーーどうも私はまだ大人になっていないようです。







これで私の話は終わりです。

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