車で轢かれて拉致された。
青空には雲一つ無く、快晴である。
しかも今日は休日で、学校が無く気分はさらに上がる。
「1日中、家でゴロゴロしようかな。」
ミーンミンミンミン
蝉の声が大合唱している。
蝉の声って暑く感じるよねぇ。暑い暑い暑い暑い。
「コンビニでアイス買おう。何にしようかな?1000円分、テキトウに買おうかな。」
ふんふんふーん♪
音程の狂った鼻歌を歌いながらコンビニに向かう。
「いらっしゃいませ」
びくっ。
毎回なんだけど、びっくりしてしまう。
軽くお辞儀をして店内に入る。
コンビニは冷房が利いていて、火照った体を冷ましてくれる。
「カリカリ君、レバー味が出たんだ~。美味しいのかな…よし。買ってみよう。」
ドキドキしながらレバー味のアイスを取る。ささっと会計を済ませて天国であるコンビニを出た。
キキキキィィィイ
えっ
黒い車が私に急速で近寄る。あ。ひかれる。と思った瞬間には私の体は宙に浮かんだ。
「んっ…。痛っ!」
足首と手首に鈍い痛みが走る。
痛む箇所に目を向けると少し黒く汚れている縄が目に入る。縛られている。
「目が覚めたんだね。お姫様?」
にたりと笑っている。
「ええ。お姫様のお目覚めよ。誰かお茶を持って来て!!」
「は?」
「えっ?こういうノリなんじゃないの?」
「くくくっ。へぇ、面白いな、キミ」
「頭が高いわ!姫様とお呼びなさい!!」
「あっははは。もう、サイコー」
目には涙を浮かべ、お腹を抱えて笑っている。いや、大爆笑している。
「で、なんで私を捕まえたの?」
「桜嵐龍の姫は桜嵐龍の総長よりも強いという噂が耳に入ったんでな。どんなものか見てみたかったんだ。結構ノリが良い事が分かったよ」
パチンッとウインクをした。
「お褒め頂き光栄ですわ。」
制服のスカートの裾を少し持ち上げお辞儀をする。
「あれ?縛り忘れた?」
蓮華の足下には縄が落ちている。それが彼を混乱させる。
「ご丁寧に手足両方縛られていたよ」
皮肉を含ませ言葉を紡いだ。
「?」
「ボキボキッ…こうしたの」
腕を鳴らした。
「?」
「間接外し」
口元が自然と歪んだ
「カンセツハズシ?」
理解が出来ていないようだ。
「そう。か・ん・せ・つ・は・ず・し」
「カンセツハズシ…間接外し!?」
「だからそう言ってんじゃん」
「何者だテメェ」
幾分か焦った声。
「お姫様。だよ?護られているだけがお姫様じゃない。」
喋りすぎて乾いた唇をペロッと舐める。
「ほぉ。面白い。けれど残念ながら女の力は男の力には適わない」
「随分となめられているのね。この私を」
脚を大きく上げ男の顔を蹴りつける。
ボキッ
鼻の折れる音がした直後鼻血がたらりと垂れた。
「ああ。なめていたようだな」
額には青筋が浮いている。
ゆらりと倒れた身体を起こし殴りかかってくる。
「歯ぁ、食いしばれ!!」
「…残念だけど、歯を食いしばるのはお前だ」
顎を狙い殴った。
周りを見ると誰もいない。足音もない。
姫だと思って1人しか置いていなかったのだろう。
帰ろう。家に…………
あれ?アイスが無い。……車に轢かれた時に落ちたのかな?
ああ。私の1000円が…