円安は日本経済にとって結局「善」なのか? それとも「悪」なのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「円安は日本経済にとって結局どうなのか?」をテーマに僕の意見を語っていこうと思います。
質問者:
確かに、円安が日本経済にとってプラスかマイナスかで現状の1ドル=160円に近い状況の見方も変化していきますよね……。
◇「円安1円で0.02%」しか物価上昇しないのか?
筆者:
明治学院大学の佐々木教授のこちら https://www.jeri.or.jp/survey/202506-07_18/ の分析を参考にさせていただくと、
『円安が、輸入価格、企業物価指数、とともにコアCPIにどれくらい影響を与えるのかを明らかにすることを目的として分析している。そこでは、使用する日銀の輸入物価指数に正確に一致するウェイトを用いた名目実効為替レートと企業物価指数を構築し、TVP-VAR分析を用いることで、パラメーターの変化を捉えている。主な結果は、為替相場の物価への影響はレベルとしては小さいものの上昇傾向にあるということだ。TVP-VARの結果によると、1%の円安は0.02%程度のコアCPIの押し上げ効果がある。』
と1.5円の円安では0.02%の物価上昇にしかならず、ほとんど影響しないという見方を示しています。
質問者:
え!? そうなんですか!? それじゃぁ、10円円安になってもたった0.2%の物価上昇にしかならないという事ならほとんど円安は物価高に影響がないという事なんでしょうか……。
筆者:
高市総理が言うような「円安ホクホク論」を唱えて「円安はプラス」と考えられている経済学者の方々は大抵この「0.02%上昇」データに基づいた理論で通そうとしていますが、
僕はこれは「一側面」しか捉えていないために全てを鵜呑みにして採用することは危険だと思います。
なぜなら、「物価上昇率」というのは必ずしも「円安の影響をすべて反映させたものではない」からです。
質問者:
ちょっと意味が分かりません……。物価上昇率そのものが信頼できないじゃないですか……。
筆者:
物価上昇率が「質の変化」によってリセットされるために怪しいのは間違いないのですが、今回はそれとは違います。
よくよく思い起こして欲しいのですが、政府はガソリン補助金や電気代の補助、自治体によっては水道代の補助などを行っています。
それも電機は夏や冬などの一番使うタイミング、ガソリンは22年以降、170円を上限にしてそれ以上なるべく上がらないように補助金を7回にもわたって出しています。
そのために、円安に一番影響しそうなエネルギーに関しては消費者物価指数に反映される前に勝手に政府が軽減させてしまっているんですよ。
質問者:
確かに円安が加速している状況からガソリン価格は抑えられていたような気がします……。
筆者:
本当の意味での「円安が物価高に影響していない」というのは分析的に間違っているという事です。
しかも、ガソリンなどの補助金は数兆円単位で毎回出しており、他に必要なところに財政出動ができ無くなったり、後で増税又は国債を発行しないという方法で回収しようとしてくるわけですからね。
これは必ずしも国民にとってプラスと言えるかは怪しい領域なわけです。
◇本当に近い「円安の評価」はどうなっているのか?
質問者:
そうなると「本当の物価高」はどれぐらいなんですか?
筆者:
まず、一番影響が大きいガソリンの補助金ですが、これだけで物価上昇率を0.5%ほど下げているという試算があります。
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20260401_025673.html
次に、電気代への補助ですが第一ライフ資産運用経済研究所によりますと、冬の2,3月には0.65%押し下げ効果があったとされ、 https://www.dlri.co.jp/report/macro/546419.html 冬の間は補助金だけで1%以上も物価指数が下げられた計算になると思います。
夏も同様の押し下げ効果があるとするのなら4カ月だけでも影響は大きいでしょう。
質問者:
補助金が無ければその4カ月だけでも物価高1%上がってたと考えると大きいですね……。
筆者:
しかも、電気代、ガソリン代はベースとなる金額が大きいですからね。
120円から140円に円安になった2022年時点で『前年度と比べて平均で約7万8千円増える。内訳は食料品が約3万6千円、エネルギーが約3万4千円、家具・家電が約8千円だ。』『収入に対する負担増の割合は、年収900万円台の世帯では1・0%だが、300万円台の世帯では2・0%と2倍になる。』
https://www.asahi.com/articles/ASQ9273FVQ92ULFA00T.html
と言ったものまでありました。
しかもこれが160円に迫ろうとしているわけですから「本当の負担」はこの倍あると思います。
エネルギーの家庭への負担が補助金によってほとんどないためにその率が少ないように見えるだけに過ぎないのです。
質問者:
な、なんと……補助金によってそれだけの負担増が隠されていたわけですか……。300万円世帯で2%の負担が2倍なら4%ですからあまりにも大きいです……。
筆者:
一つ勘違いして欲しくないのは物価高対策としてガソリンや電気代補助は有効です。
ただし、「円安への物価高の影響」としては物価高の計算に補助金による物価下げ圧力を加えた上で「物価は上昇していない」とするのは妥当性を欠くので除外した方が良いと思っているという事です。
また僕は国債をもってして補助金を出せばいいという考えですが、現状の政権の考えや市場の反応から見るにそれはなかなかできないという考えが主流になっている様相です。
◇円安でも輸出への影響は薄い
質問者:
物価への影響は補助金が無ければ実は家計にとって甚大なダメージを受けるという事は分かりました。
しかし、円安になれば輸出が増えるという話があると思うんですけど、
輸出が増えるのであれば問題が薄いのではありませんか?
筆者:
アベノミクス以来、「円安が輸出に寄与する」と言われて久しいですよね。
実際のところ21年が83兆円なのに対して、2025年の輸出額は110兆円の上に過去最高を更新しています。
しかし、それは「為替レートドル建てにするとプラスになる」だけに過ぎないんです。
「数量」と言う側面で見た場合において、
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/mhri/research/report/2026-0048/index.html
こちらのみずほ銀行の経済EXPRESSのグラフをお借りしますけど、
コロナ渦以降の実質財輸出と言うのは2000年を100としたとき190前後がずっとなので横ばいにとどまっています。
上のグラフについてもっと言うのなら、アベノミクスで75円~80円ほどから円の価値は半分以下になりましたが実質財輸出は160から190と1.2倍程度にしかなっていません。
そのために「輸出額が増えた!」と言うのはドル建てに過ぎず、数量自体はそれほど増えていないんです。
市場競争力は直前のURLの分析にあるように現地の日本への輸入依存度が下がり、国際的なシェアは全世界的に下がり続けていると言って良いでしょう。
質問者:
な、なんと……円安になってもサッパリ輸出が増えていないだなんて……。
筆者:
ちなみにですね、半導体で輸出競争力が爆上げしている韓国や台湾に輸出額においても日本は敗北したようです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA050VT0V00C26A8000000/
高市政権とその擁護する経済学者の「切り取り方」でさも「日本は円安で良くなってるんだ!」「円安の影響は薄いんだ!」としていますけど、実情は最悪の状況に向かっていると言っても過言ではありません。
これも輸出が「自動車一本足打法」になっていたのがいけないと思います。
自動車すらも電気自動車やら自動運転で世界で後れを取っているのでどうなるか今後分かりません。
ちなみに「外需」と言う側面で唯一大きく伸びているのがあります。
それは外国人が観光に押し寄せている「インバウンド需要」です。これは25年は9兆4000億円になっています。もはや輸出は観光に頼るしかない様相では「後進国」と一緒だと思います。
しかし、それも外国人が文化を破壊したり「多文化共生」で日本らしさが失われれば、他国との差別化が無くなっていく日もそう遠くないかも分かりません。
質問者:
うわぁ……政府の失政でことごとく酷い方向に向かっているんですね……。
筆者:
そしてもっと問題なのは「円安問題論者」の間で円安の解決方法として「利上げ」が挙げられていますが、住宅ローンの変動金利が0.25%上がると、借入額4,000万円・35年返済の場合、毎月の返済額は約4,500円〜5,000円、年間で約5万〜6万円の負担が増えることになります。
https://mogecheck.jp/articles/show/Xpa1rDVlqQQLqvdnjM3K
借入額残高次第で負担増加具合が変わっていきますから一概には言えませんけど、1回の利上げで消費減税分の負担減が2人以上世帯だと6万円減なので、あれだけ騒いでいる消費減税が0.25%1回の利上げで吹き飛ぶんです。
高市政権になって既に0.25%×3回利上げなので借り入れている方は確実に減税分は前もって吹き飛んでいるでしょう。
※とは言え固定金利のフラット35も3%付近まで実質的に利上げされているので今後借り入れるのは大変です。
以前の利率が高いバブル崩壊前後と違い、今利上げをしてしまえばただでさえ税金と社会保険料で苦しい状況で手取りが少ないのでさらに一般の日本人は貧しくなります。
加速度的に利上げをしているのに変動金利の方の補填をするというという話は全く出ません。「自己責任」という事で終わりにしようとしているのでしょう。
その上で、利上げもアメリカよりも利率を上にしなくては利上げによる円高にはならないでしょう。
日本国民が倒れながら円高になっても何も意味が無いと思うのでその政策もバランスに欠くものだと僕は思います。
質問者:
しかも、2023年より前は利上げがされるだなんて夢にも思わない状況でしたからなおさら悲惨ですね……。
筆者:
結局のところ日本が今円安なのは高齢か&人口減少社会で将来性が無い上に、輸出できる軸となるモノが存在しないからに他なりません。
超大幅利上げをすれば円高にはなるかもしれませんが本質的な解決にはなっていないのです。
仮に日本全体を熊本のTSMCみたいに「特区」にして誘致すれば円高になるかもしれませんけど、日本全体が海外の植民地みたいになるのでそれはそれで恐ろしい状況と言えます。
質問者:
なんとか、そう言うことにならないで円安は軽減されて欲しいですね……。
筆者:
ただ、長期的に見れば経団連も政府も円安の方が良いと思っていそうですから、「行き過ぎた円安」が決算の実情と乖離するのでやめて欲しいと言っているに過ぎません。
NISAやトランプ関税の海外投資によって残念ながら円安の傾向は止まないと思います。
しかし、それを擁護するかのような複合的なデータを伴わない理論には惑わされてはいけないという事です。
ただ、円安は問題とは言え単純に利上げも出来ないという事です。この点が複雑であり、長期的に日本を立て直す必要がありますが、「高市政権の成長産業への投資」 でどうなるのか? この点が注目です。現状は円安傾向が続いているので「市場からは低評価」という事なんでしょうけどね。




