第30章 見えない自然
洞窟は静まり返っていた。ただ、柔らかな呼吸のリズムだけが響く。巨大な葉のベッドに身を寄せ、一行はついに眠りについた。
レインとギュンユウは落ち着かない夢の中で身もだえし、かすかな呻き声が、音の蛍のように静寂を断ち切った。ムトウとトグは近くで像のように立ち、常に警戒する守護者として、その見張るような静けさが無言の誓いとなっていた。
しかしピアースは深い眠りについていた――疲労が彼を断片的な幻影の世界へと引きずり込んだ。
胸を押しつぶすような重み。
肺が焼けるように痛い。
私…息ができない…
かすれた声で、かろうじて唇から漏れた言葉。視界がぼやけ、世界の縁が影へと溶けていく。
何が…私に起きているの? 私は…消えかけているの?
その時――温もり。懐かしい。以前も彼女を救ったあの抱擁。安らぎ。守られている感覚。
ピアーズ様…
かすんだ霞の中でも、彼女は感じた――彼のマナ、彼の意志が盾のように彼女を包み込むのを。
また私を救ってくれた…でも守るべきは私だ。彼を守るべきは私なの。私は彼を尊敬している。愛している。いつも彼の盾でいなければ…
しかしその時、冷たく見えない何かが彼女の首に絡みついた。見えない手が締め付け、喉から息を奪う。彼女の体は震え、衰弱していく。
なぜ…動けないの?
———
別の場所、夢の嵐の中で、ピアース自身の思考が歪んだ。
「…ごめん、母さん…父さん…許してくれ。リノを救えなかった…」
間。その名は壊れた灯のようにちらついた。
リノ?…待て。リノ?お姉ちゃん?
冷や汗に濡れた身体が跳ね上がる。洞窟の壁が鋭く、圧迫感をもって聳え立っていた。
「は…?あれ…夢だったのか?」
傍らでルシが身動いだ。低く荒い呻きが唇から漏れる。全身が硬直し、あらゆる筋肉が緊張で張り詰めている。
唇が開き、かすかに囁く。「…痛い…」
ピアーズの視線が鋭く光った。何かがおかしい。
彼は鑑定を発動した。
[毒蔓]
特性:高毒性の植物体。接触により致死性毒素が急速に吸収される。
効果:即時的な激痛。神経系の麻痺。治療しなければ数分以内に死に至る。
彼の目が細まった。深淵は彼らが目を覚ますのを待ってはいない。
すでに彼らの喉元に迫っていた。
待て…毒?いや—彼女の呼吸が弱まっている—
「パニックがピアーズを襲った。四肢は重く、呼吸は荒く、目は青ざめるルシの顔に釘付けだった。」
どうして?彼女はすぐそばにいたのに…なぜ今?なぜまた?どうすればいい?体が…動かない!リノすら救えなかった…ルシまで…なぜ彼女も救えないんだ?!
その時――バキッ。
リエンが蹴り出した足が見えない何かに衝突した。ルシの喉が突然解放され、荒い息と共に空気が肺に流れ込んだ。
空気が揺らめいた。透明化が揺らぐ。ゴブリンがちらりと姿を現した――ぼろぼろのローブをまとったその姿は、歪んだ杖を握りしめ、病的な悪意を宿した目を輝かせていた。
「リエル――バリアを、今すぐ!」リエンが叫んだ。その声には切迫感がにじんでいた。
「ムトウ、ソグ――マスターの後ろへ!」
全てが爆発的に動き出した。
リーエルの手が素早く上がり、光が爆発的に放たれ、ピアースとルシをきらめく保護のドームで包み込んだ。
ムトウとソグは躊躇なく突進し、武器を閃かせながら、震えるピアースの姿を両側から挟んだ。
彼は葉のベッドに硬直して座り、肩を震わせながら、ルシの弱々しく苦しそうな頭を小さな膝の上に抱えていた。
リエンが必死の蹴りで吹き飛ばしたゴブリンは、洞窟の口のように開いた縁でよろめいた。よろめくうちに、その正体が露わになる。
ギュンユウは、きらめく空気の泡の中に閉じ込められ、無力に浮かんでいた。小さな目は閉じられ、体はぐったりとして、まるで眠りを揶揄するような残酷な状態だった。
呪文だ。
これは普通のゴブリンではない。
シャーマンだ。
ピアーズの視線が下がり、影が彼の表情を横切った。
「リエル…彼女を癒せるか?」
「よ、確認させて」リエルの手が震えながら、ルシの浅い胸に押し当てられた。
「毒だ」
「治せるだろう?」彼の声は刃のように鋭かった。
「はい、ピアーズ様。治せます…ほんの数分お時間を」
安堵の息が鋭く漏れた。
「よし。治せ」
だが彼の視線はシャーマンから離れない。シャーマンは今なお杖を握りしめ、ギュンユウをトロフィーのように掲げ、汚れた顔に得意げな笑みを浮かべていた。
ピアースが立ち上がった。小柄な体が震えていたが、その表情は……無表情だった。空っぽだった。
「ムトウ。トグ」彼の声は平板で冷たかった。「下がれ。境界を守れ。これ以上ゴブリンを通すな」
ムトウの兜が一度、かすかに揺れた――理解の証だ。
トグは厳しい表情で頷いた。無言の承諾。
二人は従った。
リエンは凍りついたように立ち、リエルを盾のように守りながら、両手から癒しの光を放っていた。
ルシの目がぱちりと開いた。痛みでまだ霞んだ視線――それでも彼だけを見つめていた。
そしてピアースは…歩みを進めた。
洞窟が彼を中心に狭まるように感じられた。空気が重く、胸を押し潰すように圧迫し、闇そのものが彼の足音に寄り添うかのようだった。
息が詰まる。
視線が追う。
シャーマンは嘲笑し、杖を強く握りしめた。毒の術を力と勘違いしている。
しかし、その沈黙の中で――
その静寂の中で――
一つの真実が恐ろしいほど鮮明になった。
誰も彼のこの側面を見たことがなかった。
彼が前進する間、その顔は変わらなかった。不動。読めない。
髪に覆われ半ば隠れた瞳は、鈍く不気味な虚無を輝かせていた。
怒りもない。
炎もない。
ただ冷たさだけ。空虚。見たもの…そして行ったものの重みで刻まれた皺。
それは彼が前世で、医師を素手で葬る直前に浮かべていた表情と同じだった。
洞窟に震えが走った。恐怖だ。生々しく、根源的な。味方さえもそれを感じ取った。
シャーマンゴブリンが喉の奥から呪文を吐き出す。足元で記号が閃いた――歪み、病的な緑の光の中でうごめく。
咆哮と共に、四体の皇帝ゴブリンが姿を現した。巨躯が洞窟の壁を飲み込み、一歩ごとに岩盤が震えた。
ピアーズは躊躇しなかった。
彼は立ち上がった――片足は何も踏んでいないのに、重力に逆らって上昇する。
空中歩行。
その歩みは幽霊のようで、一歩ごとに重力そのものへの冒涜だった。
シャーマンの笑みがさらに歪んだ――脆い虚勢の仮面だ。
だが皇帝たちは…凍りついた。
筋肉が膨張し、筋繊維が皮膚を押し上げる。牙を剥き、爪を立てた。
それでも――動けなかった。本能が叫ぶ:少しでも動けば、一歩でも踏み出せば、彼らは消滅するのだと。
背後でルシは必死に体を起こした。浅い息が胸に詰まる。信じられないという大きな瞳が、知っているはずの小さな姿に釘付けになった。
ピアーズの手の中で、霜が咲き始めた。渦巻きながら凝縮し、
硬く固まって短剣となった――湾曲し、輝き、あらゆる刃が死を囁く。
彼は石化した皇帝たちと目と目を合わせた。
召喚された巨人の最後の一体が痙攣した。
誤算だ。
ピアーズの手が動いた。氷の短剣が白く閃き、空気を切り裂く。
ドン。
三つの首が同時に転がり落ち、水晶の床を転がった。
一瞬、静寂が訪れた。
シャーマンの笑みが歪んだ…生々しい、濾過されていない恐怖へと変貌する。
最後の皇帝は震えながら立ち尽くしていた。その巨大な体は腐った木材のように震え、緑の肌を汗が伝う。大きく潤んだ目は逃げ出そうと懇願していた――だが恐怖が鋼鉄にも勝る鎖となって彼を縛りつけていた。
ピアーズは別の短剣を召喚した。湾曲した残酷な刃、縁に沿って霜がヒュッと音を立てる。
彼はそれを掲げ、その視線――穏やかで、虚ろで、くぼんだ――が巨漢の胸元に落ちた。
刃が滑り込んだ。
ゆっくりと。
緑の肉がぬめり音を立てて裂けた。骨が抵抗し、やがて軋み、一片ずつ砕け散った。その音は長く、息が詰まるほどに延々と続き、水中で布が引き裂かれるようだった。
皇帝は悲鳴を上げた。甲高く、獣のような。だがその体は動かなかった――恐怖で凍りついていた。
ピアーズは微動だにしなかった。
彼はさらに深く押し込み、整然とした力で肋骨を切り裂いた。そして同じようにゆっくりと、同じように確実に刃を引き抜いた。エメラルド色の血が滝のように流れ落ち、石床にぽつぽつと音を立てた。
再び。
そしてまた。
一突き一突きが計られた。急がず。洞窟は鋼が肉を貫く卑猥なリズムで満たされた。
「エメラルド色の血が激流のように溢れ、彼の足元に濃く溜まり、銅のような匂いが洞窟に重く漂った。」
ついに巨体はぐったりと崩れ落ちた。胸は空洞のようにぽっかりと開いている。沈黙が捕食者のように忍び寄る。
ピアーズは微動だにせず、表情も変わらず、冷たい氷の仮面のような顔をしていた。
口元のわずかな痙攣だけが、わずかな満足の影をほのめかしていた。
他の者たちはただ見守るしかなかった。凍りついたように。喉に息が詰まった。
これは彼らの主ではなかった。
彼らに微笑みかけ、安らぎを与え、温かな言葉をかけてくれた幼子のような少年ではない。
今、彼を包む闇は生々しく、容赦なく、見分けがつかないほどだった。
足元には、最後の皇帝が切り刻まれて横たわっていた――空洞化した肉の廃墟。ピアーズは死体を一瞥もしなかった。彼の目はシャーマンだけに固定されていた。
ゴブリンの歪んだ笑みが恐怖に歪んだ。膝が折れ、紙のように崩れ落ちた。震えながら、隠した短剣を探るように手探りする——絶望から生まれた哀れな反射だ。
パチン。
二つの氷の破片が空気を裂いた。鮮やかで、容赦ない。
瞬きする間に、シャーマンの腕と脚は関節から切り落とされた。緑の血が洞窟内に飛び散り、結晶の床にぽつぽつと落ちた。飛び散った一滴がピアーズの短パンを汚した。
彼は下を見た。
「…面倒だな」
その言葉は平板で、色も味もない。血みどろさえも、単なる厄介事に過ぎなかった。
ゴブリンは身もだえし、喉の奥から絞り出すような悲鳴が空気を裂いた。
ピアースが踏み出す。ブーツが、ぐちゃぐちゃになった脚の切断面に着地した。
ガリッ。
骨が砕ける音が足元で響く。悲鳴は甲高く、獣のような音程へと昇る。ピアースはさらに強く押し込み、切断面が崩れるまで押し潰した――かかとの下で、ただの肉塊へと変貌するまで。
ついに、シャーマンは沈黙した。目は見開かれたまま。ガラスのように無表情。口は恐怖の歪んだ笑みに凍りついていた。
ピアースはブーツをさらに高く上げ、その胸にしっかりと踏みつけた。
死んだ。あるいは死に等しい。
そして彼は気にも留めなかった。
再び踏みつける。より強く。
死んだ肋骨が次々と折れ、やがて胸全体が内側に陥没した。臓器が破裂し、彼の踵の下でドロドロに潰れた。
それでも…彼は続けた。
洞窟に湿った軋みが反響し、グロテスクなリズムを刻んだ。
その時――背後から腕が彼を包み込んだ。柔らかく、震えている。
「ピアーズ様…」
ルシの声がかすれ、罪悪感に濡れて細く響いた。
「ごめんなさい…毒に気づくべきでした。でも…もう止めてください。とっくに死んでいます」
私は答えなかった。
気にかけているかどうかもわからなかった。
重い沈黙が洞窟を押しつぶすように降りかかる。
すると、ゆっくりと、息が詰まるような怒りが引き潮のように引いていった。明瞭さが忍び込む。ピアーズのこめかみから、照れくさそうな汗がぽろりとこぼれた。
「…ああ。俺、えっと…ちょっとやりすぎたかも?」彼は認め、弱々しく歪んだ笑みを浮かべた。
まだ青ざめ震えているレインが、ついに声を震わせて叫んだ。
「ご主人様、『少しやりすぎ』ですか?! あのゴブリンを緑のペーストに変えたじゃないですか!」
一瞬、沈黙が支配した。
そして――ガラスの破片が散るように――笑い声が爆発した。
安堵の。狂気の。止まらない。
恐怖がようやく砕けた時にだけ弾ける、あの種の笑い。.
.
.
.
翌朝。
ピアースが小さな手をパチンと鳴らした。集結の合図だ。
「よし、みんな。集まれ!」
彼の表情は穏やかで清々しい――昨夜の血みどろの戦いが、単なるストレス解消に過ぎなかったかのようだった。
次々と、彼らは足を引きずりながら近づいてきた。リエル、ルシ、トグ、ギュンユウ、レイン、ムトウ――幼い指揮官の周りに半円を描くように集まる。目を大きく見開き、 待ち構えていた。まるで読み聞かせを待つ子供のように。
彼は深く息を吸い込み、口調を整えた。
「ゴブリンどもはもう我々を襲ってこない。それは一つのことを意味する――奴らは待ち構えている。我々を誘い出そうとしている。罠だ」
彼は言葉を途切れさせ、その重みと重要性を響かせた。
全ての視線が彼に注がれた。
そして——
「ご主人様!」
レインが飛び出してきた。馬鹿げた興奮で目が燃えている。「じゃあ、あいつらのところへ突撃してぶっ潰そうぜ!昨夜の緑の野郎たちみたいに——ドカン!ガシャン!」
強調するように空中に乱暴なパンチを連打し、松明を台から落としそうになった。
ピアーズが口を開く前に、肩に乗ったギュンギュウが誇らしげに鳴いた。
「そうよ、マスター!寝てる間に何があったか知らないけど、とにかく信じてるわ!わーい!行けマスター!!」
見えないドラムスティックで戦争交響曲を指揮するかのように、彼女は両腕を振り回した。
レインはすぐに割り込み、胸を張った。
「俺も主君のすぐそばで、もっと強く叩き潰すぜ!」
「ありえない!」ギュンギュウはピアーズの肩から飛び降り、怒った蚊のようにレインの頭上を飛び回った。
「主君のすぐそばにいるのは俺だ!俺の応援が主君のパワーを上げるんだ!」
「ふん、応援じゃゴブリンは倒せない」レインはニヤリと笑って言い返した。
「君のちっぽけな拳は空気を殴るのにしか使えねえ」
「おい!ちっぽけって誰のことだ?!」ギュンユウの声は石にひびを入れるほど甲高くなった。
「もう一度言ってみろ!この拳の威力を身をもって教えてやる!」
これで決着がついた。
冷静な作戦会議のはずが、拳の大きさを叫ぶ妖怪と、音量調節不能の戦闘欲旺盛なエルフによる騒々しい応援集会へと変貌した。
ピアーズのこめかみに静かな血管が脈打った。
口論が激化する中、リエルが最初に気づいた――ピアーズの瞳に浮かんだ、かすかな苛立ちの揺らめきを。
彼女の胃が締め付けられた。
その表情を知っていた。
ピアーズの「短気」が表面化した時の様相は、誰もが目にしていた。あのシャーマンと彼の巨大ペットたちが洞窟の床に緑のペースト状になったのも、そのせいだ。
「二人とも」彼女は堅く、冷静だが鋭く言った。「静かにしなさい。ピアーズ様にお話しさせて。昨夜の二の舞はごめんだ」
レインとギュンユウは言い争いの途中で動きを止めた。
彼女の視線が再びピアースに向けられると、その眼差しは柔らかくなり、中断したことへの無言の謝罪を込めていた。
ギュンユウは彼女の言葉の重みを全く理解せず、興奮して宙中で跳ね回った。
「はい、マスター!昨夜何があったのか本当に知りたいです!戦略会議の前が絶好のタイミングですよ!」
レインはすぐに加勢し、彼女をからかった。
「そうだぞ、ご主人様!教えてやれ!次の大勝負で居眠りしないようにな!」
彼はニヤリと笑いながら彼女の脇腹を突いた。
「ちょっと!わざと寝てたわけじゃないんだから!」彼女はふくれっ面をし、小さな頬を餅のように膨らませた。
「マスターの料理がこんなに眠くさせるんだもん!」
「まあ、確かに料理は美味しかったよ——みんなお腹いっぱい食べたしな。でもゴブリンをぶっ潰す時だけは気絶しなかっただろ?」
レインの得意げな笑みが、まるで輝いているようだった。
ギュンユウはさらに頬を膨らませたが、言葉は出ない。ただ怒りに震えるブーンという音だけが響いた。
ピアーズは顔を覆うように手を引いた。
「…正直、今ちょっと腹が立ってきた」
部屋が静まり返った。
そして──
ボンッ。ボンッ。
静かに見守っていたルシが、ついに介入した。レインとギュンユウの頭に二つのこぶができた──生々しい、環境対応型ルシの正義。
レインは頭皮を押さえながら悲鳴をあげた。
ギュンギュウは拳で額をこすりながら甲高い声をあげた。
ルシは落ち着いて、ほとんど不気味なほど穏やかに座り直した。
「続けてください、ピアーズ様」と彼女は静かに言った。
ピアーズのこめかみから巨大な汗の玉が転がり落ちた。
隣でリエルが長く疲れたため息をついた。
トグとムトウは顔を見合わせた——いつものことだ。
ピアースは目を閉じた。
彼のマナ感知が外へ広がり、迷宮の息苦しい深淵を掃う――壁を越え、トンネルを越え、下でうごめく群れを越えて。ゆっくりと、地図が彼の脳裏に浮かび上がる:ゴブリンが這い回る巣、中心部に集うシャーマンたち、そしてより大きな何か――皇帝が潜むかすかな鼓動さえも。
目を開けると、彼の声には冷静な威厳が宿っていた。
「よし、全員。集中しろ。作戦はこうだ」
水晶の床に指先で輝く図式を描きながら、彼は炎の光を放った。溶けた線のように戦場をスケッチする。そびえ立つ十角形。一辺は遥か上方の彼らの洞窟を示す。もう一辺は――下方のゴブリンの巣窟。その数は地図そのものを覆い隠すほどだった。
「三つのチームに分かれる」
彼の視線が隊員たちを一瞥し、一人ひとりを測るように走った。
「ルシと俺は上から先陣を切る。この危険地帯にスカルボムを投下する」爆風で最初は散らばるが、その後…」彼は輝く危険地帯を軽く叩いた。「奴らはあの地点に再集結する――混乱し、方向感覚を失い、攻撃の意味を理解しようともがく」
リエンは身を乗り出し、炎の図式を追った。ピアーズの指が刃のように地図を切り裂くのを見ながらも、口を挟むのを必死に堪えた。
「群れが密集したら」視線がリエンに移る。「その瞬間、お前、ムトウが突入する。混乱に乗じて一撃を加えろ。回復の隙を与えるな」
彼の手が動くと、燃えさしの軌跡が別の側へ移った。
「リエル――お前の役割は極めて重要だ。奴らが群がり始めたら、障壁で押さえ込め。流れを一つの要所に閉じ込めろ」溢れ出させるな。
トグの巨体が前傾した。ピアーズの視線が彼へ移る。
「トグ、お前は彼女を守る。抜け出す奴は、叩き潰せ」
オークから低くうなるような同意の声が漏れた。
彼は振り返り、ルシの瞳を捉えた。
「お前と俺は空を制する。奴らが閉じ込められた隙に、天から地獄を降らせる。連携が全てだ。皆、理解したか?」
沈黙。やがて、一人また一人と、他の者たちが頷いた――表情には厳しい決意が刻まれている。計画は明確だ。実行可能だ。完璧だ。
そして――「ご主人様!」
甲高い叫びが厳かな空気を切り裂いた。
ギュンユウは床すれすれに浮いており、小さな拳を握りしめ、裏切られたような目を輝かせていた。
「私、忘れたのね!」
彼女は泣き叫び、両腕を彼に向けて突きつけた。まるで
二つの非難のように。「グループを作って皆に役割を分けたのに…私だけ入ってない!」
大きな瞳には本物の傷つきが宿っていた。まるで大冒険から故意に除外されたかのように。
ピアーズは瞬きし、小さく笑った。唇に笑みが浮かぶ。
「ああ。そうだな。私のミスだ、ギュンユウ。君は好きなグループを選べるんだよ」
彼女の目が輝いた。
「え、そうなんですか?」ギュンユウは空中で身を乗り出し、集まったグループを大げさな真剣さで一瞥した。まるで指揮官が軍隊を点検するかのように。
彼女の視線は、リエンが鍛え上げた上腕二頭筋から、トグの巨躯、そしてムトウの静かな炎へと素早く移った。
そして――閃光。決意。
彼女は宙でくるりと回転し、短い両腕をまっすぐピアースへと突き出した。
「決まりね! 私はあなたについていくわ、ご主人様! だってさ――」彼女は劇的な仕草で片手を掲げた、「誰があなたを応援するのよ?!」
グループに笑い声が波のように広がり、一瞬だけ緊張が解けた。
普段無表情なムトウの炎さえ、娘の熱意を見てわずかに柔らかくなった。
ギュンユウは小さな胸を誇らしげに張り、まるでチームの公式チアリーダーに任命されたかのように、注がれる注目を浴びていた。
* * *




