第三章 再会
沈黙。重く。絶対的な。
悲鳴は消え、不気味な静寂に飲み込まれる。私は瓦礫の中に立ち、残された唯一の生き物だ。
痛みは裂けた肉や折れた骨から来るのではない。これはもっと深い――心に刻まれた痛みだ。溢れ出る魔力が内側から私を引き裂く。奪われた年月という重荷。別の人生での記憶。囚われの苦しみ。全てが渦巻き、増幅され、十歳の脆い身体の中で沸騰する。頭蓋骨が割れそうな感覚。
それでも私は動き続ける。一歩ずつ。影の中へではない。逃げようともしない。正面へまっすぐ。壊れた扉を通り抜け。光へと向かって。意図的な選択——耐え抜いた闇への反抗だ。
冷たい廊下は洞窟の口へと開ける。陽光がこぼれ落ちる。一筋の光が暗闇を貫く。肌に触れる。温かい。本物だ。無機質な光と冷たい手に囲まれた年月を経て、太陽は啓示のように感じられた。
外気が押し寄せる——生々しく、土の匂いがし、生きている。自由の匂いだ。一瞬だけ、平穏に近い何かを感じかけた。
すると温もりが消えた。背骨の根元に震えが走る。本能が警告を囁く。
恐ろしい何かが迫っている。
反応する間もなく影が落ちる。雲ではない。光の錯覚でもない。
巨大な斧だ。
信じがたい力で叩きつけられ、肩から腰まで真っ二つに裂かれる——本からページが引き裂かれるように。
喉から引き裂かれたような叫び——荒々しく、鋭く、獣のような。痛みに窒息する間もなく、空そのものが死を降らせた。
刃。槍。炎に包まれた矢。骨を削る鋭さの氷の破片。四方八方から襲いかかる。上より。下より。背後より。
肉体は引き裂かれる。何度も。幾度も。
血は地面に触れる間もなく——戦いの熱気の中で蒸発する。
痛い。あまりにも痛い。
お願いだ——止めてくれ。
止めてくれ。
だが止まらない。
呪われた魔力が私を引き戻す。肉は自ら縫合し、骨は真っ直ぐに折れ、今まさに引き裂かれたばかりの胸の中で心臓が再び鼓動する。
息ができない。思考もできない。
これが私の罰なのか?
癒される毎秒、新たな死が訪れる。新たな一撃。新たな引き裂き。新たな悲鳴。
引き裂かれ、癒され、引き裂かれ、癒され。
繰り返される。何度も。何度も。何度も。
また別の何かに変貌した。
人間ではない。生きてさえいない。
肉と魔力の人形。終わりのない苦痛のループに囚われた。
お願い…
お願いだ。
そしてついに、それは訪れた。
刃は消え、炎は冷め、静寂が戻った。
私はそこに横たわり、再び完全な姿を取り戻していた。体は震え、幻痛が毒のように血管を駆け巡る。呼吸は浅く、乱れていた。自分が生きているのか、それとも既に逝ったのか、心は判断できなかった。
「一体…何が起きた?」かすれ声で絞り出すように呟いた。弱々しく、小さすぎる声だった。
その時、聞こえた。声だ――耳鳴りを切り裂くように。
「止めて!そんなことできない!」
血の気が引いた。
あの声だ。
振り向くと――彼女が見えた。
愛子。
橘愛子。ほんの数歩先に立っていた。この場所に似つかわしくない淡い光に包まれて。頬に張り付いた髪、大きく見開かれた濡れた瞳、笑うか泣くか、あるいはその両方かのように震える唇。
現実とは思えなかった。
だが愛子だけじゃなかった。
みんなそこにいた。クラス全員だ。
騒がしいスポーツ少年たち、試験中ずっと囁き合っていた女子たち、窓際の静かな少年、あの別世界で見知った全ての顔。一列に並び、恐怖と不信の間で立ち尽くし、私ではなく、今私がまとっている子供の身体を見つめていた。裸で。傷だらけで。ほとんどが私自身の血にまみれて。
彼らの目は全てを語っていた…恐怖、罪悪感、恐怖。
彼らは友達を見つけたわけではなかった。
見つけたのは怪物だった。
アイコの声が混沌を切り裂く。鋭く、必死に。
「彼はただの子供よ!」彼女は叫び、私と他の生徒たちの間に立ち、盾のように両腕を広げた。「わからないの? 彼は怪物なんかじゃない、
ただこの惨事に巻き込まれた子供なのよ!」
ケンジが唸り、拳に火花が這う。
「愛子、バカを言うな! 彼を見ろ――魔力が彼を食い尽くしている。今すぐ始末しなければ、全てを滅ぼすぞ!」
桜は腕を組んで、口元を半笑いに歪めた。
「お前も見ただろう。哀れな子供なんかじゃない。化け物だ。生かしておけば、あの施設の人間たちと同じ末路を辿る… 壁に飛び散った連中みたいに」
「悪じゃないのよ、アイコ」アヤコが前に出ると、彼はただ道に迷ってるだけ!私たちがこの世界に引きずり込まれた時のことを覚えてる?彼にもチャンスを…せめて一度は!」
「道に迷ってる?」タケシの声がガラスのように鋭く切り裂いた。冷静だが容赦ない。彼は施設全体を壊滅させたのだ。
警備員、研究者…子供さえも。意図的かどうかは関係ない。結果は同じだ:「彼は危険だ」
後方で、いつもの仲間たちに囲まれたヒロキが嘲笑った。
「黙れよ、レップ。お前はただ何か証明したくてうずうずしてるだけだろ。今さら道徳家気取りでいるなよ」
「黙って、ヒロキ」愛子が鋭く言い放った。「これはゲームじゃない。誰かの人生がかかってるの。そんなこと…」
次の言葉が出る前に、議論を切り裂く声が響いた――揺るぎない、断固とした声で。
「もう十分だ」
少女が一歩踏み出し、ルーン文字が刻まれた巨大な戦斧を引きずっていた。
「騎士団長が――皇帝自らが認めた。そう言われた。不安定な器は均衡を脅かす。我々が帰るためには…」
彼女は言葉を切った。その瞳が私を見つめた――残酷でも怒りでもなく、それ以上に恐ろしいもの:諦念。
「未解決は残せない。これが代償だ」
彼女は愛子に向き直った。
「私が望んだと思う?数ヶ月前まで高校生だったのに。今は兵士。生存者。あの子は哀れな少年なんかじゃない――すでに数百人を殺した何かを背負っている」
「ア…リカ…」愛子の声が震えた。「別の方法を探すより楽だからって、本当に彼を殺すつもり?」
リカの斧を握る手がさらに強く締まった。
「誰にとっても手遅れになる前に、やるべきことをやるだけだ」
他の者たちが頷く。一人、また一人と。躊躇いも、慈悲もなしに。
頭がくらくらした。
彼らが話していたのは、呪われた霊のことでも、不安定な器の警告でもなかった。
彼らは私のことを話していたのだ。
土に横たわる壊れた子供のこと。
かろうじて持ちこたえている存在のこと。
俺――大樹。
俺のクラスメイト。昔の生活。俺の世界。
それでも、彼らは俺を認識していなかった。
彼らにとって、俺は少年の姿をした怪物に過ぎなかった。
全員――愛子を除いて。
彼女は揺るがず、相変わらず無鉄砲に、唯一まだ俺を人間として見ていた。
それは腹にナイフを突き刺されたように俺を襲った。
俺は救われていなかった。
追われているのだ。
敵として。
怪物として。
標的として。
「愛子、お願い…」震える声で彼女に手を伸ばした。「僕だ――大樹だ。まだここにいる――」
だがその言葉は、鋼と呪火の轟音に飲み込まれた。
彼らは襲いかかった。
全員で。
刃と炎と圧力の嵐——完璧なタイミング、容赦なく、終焉を告げる。
躊躇いなし。
慈悲なし。
愛子は叫んだが、処刑人たちは躊躇わなかった。
攻撃が襲いかかる。
苦痛が私を引き裂いた。肉体は引き裂かれ、押し潰され、焼き尽くされた——何度も何度も。だが今回は、再生は訪れなかった。醜悪な再生もなかった。体内の魔力は、壊れたエンジンのように無力に噴き散った。
私の肉体はこれ以上耐えられなかった。断片ごとに崩れ落ち――肉は破裂し、骨は灰へと崩れ、血は炎の中で沸騰して消えた。再構築できるものが何も残らないまで。
「私は滅びた」
闇が迫る中、私の最後の思考は一つの、答えのない叫びだった:
なぜ?
光が消えた時、愛子は無傷で立っていた。彼らは彼女を避けて狙っていた。慎重に。正確に。
刃は決して彼女に向けられていなかった。
私だけに向けられていたのだ。
彼らは私の残骸を見下ろしている——血の飛沫と、石に焼き付いたかすかな影の輪郭だけが残されている。
耳鳴りの向こうから彼らの声が聞こえる:
「終わった」と健二は呟き、頬の血を拭った。「醜いが、必要だった」
「十分きれいさ」と桜は嘲笑うように言い、ニヤリと笑った。
「あの練習も、結局無駄じゃなかったみたいだな」
「最初から勝ち目なんてなかった」と博樹は鼻で笑い、土を蹴った。
「哀れだ。消えてくれてよかった」
「なんてもったいない」と武は石のように平板な口調で呟いた。「あんな終わり方をするなんて」
彼らは少年を見ていなかった。
人間ですらなかった。
ただ寄生虫が、ついに駆除されただけだ。
愛子は膝をつき、嗚咽した。
彼女は私の名前を知らなかった。私の物語も知らなかった。
それでも彼女の心は私を哀れんだ。
理香が彼女の肩に手を置いた。
「行こう、愛子。終わったんだ」
そして彼らは去る。
一人、また一人。
足音は静寂へと消えていく。
だが私の声は残った。暗闇に響き渡る。
決して許さない。
———
うっ。またかよ。やっぱりな。
大樹の目がぱちりと開くと、そこには相変わらずの眩しい白の虚無が広がっていた。立ってもいない。座ってもいない。ただ…落ちていく。パラシュートも尊厳も忘れた天界のフリーフォール者のように。
「ふん。死んだ。またか」
もはや転生は運命というより、退屈した神が「どうなるか見てやろう」とリセットボタンを叩き続けるようなものだ。
彼は下を見下ろした——とはいえ「下」などここには存在しない——そしてわずかに苛立ちながら、元の身体に戻っていることに気づいた。あるいはそれに近い何か。十歳には到底見えないが。
まあ、どうでもいいことだ。死後の世界を深く考えすぎると、存在論的な頭痛への片道切符を手にすることになるだけだ。
落下は、宇宙が一時停止ボタンを押したかのように、突然止まった。
彼は虚ろな空を凝視し、呟いた。「ああ。虚無か。俺が一番嫌いな待合室だ」
重力は協力する気配すら見せなかった。彼は捨てられた人形のようにそこにぐったりと横たわった。
すると彼女が姿を現した。
少女はせいぜい十六歳くらいに見えた――鮮やかな青い瞳、永遠のシャンプーCMに囚われたかのように流れるピンクの髪。彼女は「女神」と紹介されすぎて反論する気すら失った者のような、得意げなオーラをまとっていた。だが唇を尖らせた様子がその効果を台無しにしていた。全能の存在というより、神聖な権威を装うのがバレた優等生のように見えた。
一方ダイキは、片足をだらりと組んで鼻に指を当て、究極のリラックスモードで横たわっていた。
彼は首を回し、彼女を長く疲れた目で一瞥すると、顔を背けた。
「いや。今日はだめだ。宇宙規模のセールストークなんて気分じゃない」
「何ですって?」彼女の声は高くなり、傷ついたように震えた。「今日はだめ!? 本当にそんなこと——女神様に向かって言ったの?」
彼女は足音を響かせて近づき、髪が危険なエネルギーを帯びて揺れた。
「起きろ。今すぐ」
大樹は完全にぐったりしたまま。微動だにしない。
彼女の目がピクッと動いた。手首を掴み、引っ張ってみる。反応なし。今度は足を揺すりながら、小銭を飲み込んだ自販機を修理しようとする人のように、ぶつぶつと呟いた。
「起きろ、この頑固者!無視するな!」
眩しい白の空間に漂う空気が、突然変わった。
ようやく大樹は座り直した。彼女の努力によるものではない。肩を落とし、皮肉も薄れ、表情は虚ろだった。
「…意味あるのか?」彼は呟いた。「また壊すために戻すのか?死ぬたびに再構築され、その度に酷くなる。これが神の裁きなら、前世で天の蝶を踏んだに違いない」
女神は躊躇した。得意げな表情が消えた。
沈黙が一瞬、長く続いた。
そして──
彼女は彼の前に跪いた。その温もりが虚無を切り裂くほど近くに寄り添い、そっと顎を上げた。
「かわいそうな子よ」と彼女は優しく言った。「お前は、普通の人生では耐えられないほどの苦しみを味わってきた。だがお前は罰でも失敗でもない。苦痛に耐え、それをより強いものへと変えられる証なのだ」
一瞬、その言葉が彼の鎧を破った。瞳が柔らかくなり、希望がちらついた。
そして当然、彼は台無しにした。
「…上手いな」彼は口元を歪めて呟いた。「自己啓発本を出版しないか?『三転生でゼロからヒーローへ』。市場を席巻するぞ」
女神は瞬き、そっと鼻を鳴らした。頬を染めるのを隠すように、ほんの少し身を引いた。「あ、あんたって本当に無理よ」
「そうかもな」彼は肩をすくめた。「皮肉だけが、俺に残された武器だからな」
彼はゆっくりと息を吸い、うなずいた。
「…わかった。もう一回だけ、転生を許そう」
女神はしばらく呆然と見つめたまま、静かな安堵の吐息とともに唇を開いた。すると肩の緊張が解け、表情が明るくなった――神々しいというより、ほとんど子供のような輝きを帯びて。
「完璧! さて――君の…祝福についてね! この転生を何も持たずに迎えるわけにはいかないでしょう?」
彼女は手を打ち鳴らし、興奮で目を輝かせた。
「さあ、教えて!何が欲しい?最高級のチートスキルだよ!とんでもなく強すぎる能力とか?それとも、おお、次元の収納アイテムとか?ドラえもんのポケットみたいに、ランダムなガジェットじゃなくて…まあ、想像できるものは何でも入ってるんだ!無限のおやつ?自動掃除の家?持ち運び可能な温泉?街を焼き尽くす火の玉——何でも言ってみなよ!」
大樹は手を上げて遮った。「パス」
彼女の笑みが凍りついた。「…パス?」
「チートなんていらない。力もいらない。運命もいらない。ただ静かな生活が欲しい。悪魔も古代の予言もいらない。ただ…平和がほしい」
沈黙が流れた。すると彼女の笑みが鋭く歪んだ。まるで神様コスプレをした不良の取立て屋のように。
「…何だって? もう一度言ってみろよ、魂の少年。聞き間違いか?」
大樹は微動だにしなかった。「派手なものは何もいらないって言ったんだ。ただゆったりした生活がしたい。混乱も爆発も、突然目覚めた古代の邪悪が俺を宿敵に選ぶようなこともなしに。ただ家と静かな生活、そして五分おきに俺の名前を叫ぶ奴がいないだけでいい」
彼女は呆然と見つめた。
彼はまばたきした。
「…マジで?」
「本気だ」
彼女はうめき声を上げ、両手を投げ出した。天界の感情のジェットコースターだった彼女の表情は、ついに滑稽なほど苛立ったものへと落ち着いた。
「わかったわ!退屈で平和な人生、すぐ用意するわ!」
彼女の言葉は神々しい皮肉に満ち、手を振り払うように言った。そして、小声で呟いた:
信じられない…無限の力を与えてやれば、園芸道具をねだるなんて。牛に転生させるべきだった、せめてそうすれば静かな牧草地を手にできただろうに…
虚無が彼の足元で裂け、落下が始まった。
かすかに笑みを浮かべた。
女神が最後に彼に見せたのは、安っぽいメロドラマでしか見られないような大げさな泣き顔だった――涙が滝のように流れ落ち、両手は劇的に空を切っていた。
「…供え物、忘れないでね?!」彼女の必死の訴えが、半分命令、半分泣き言のように彼の背中に響いた。
そして、虚無が彼を丸ごと飲み込んだ。
* * *




