第27章 深淵の顕現
彼らは洞窟の入口にたどり着いた——「巨大な木の根を思わせる、同じような巨大で節くれだった構造物。その円形の開口部は未知へと続く巨口のように……」。
「粘り気のある、ほとんど触れることのできるような闇が入り口にまとわりついていた。渦巻く瘴気は気体というより、むしろ悪意ある存在のように感じられ、弱さを探るかのように彼らの肌に微かに押し寄せていた。
それでも……恐怖はなかった。
ピアーズの命名によって授けられた力が彼らの血管を震わせ、その暗黒の存在がもたらす重圧に対する目に見えない盾となっていた。
ピアーズの声が重苦しい空気を鋭く切り裂いた。静かだが威厳に満ちた声だ。
「全員。まとまって行動しろ。警戒を怠るな。突入する」
彼らが敷居を越えた瞬間、世界は消え去った。ここにある闇は光の不在以上のもの――音も触覚も、空間そのものの感覚さえも飲み込む、生ける虚無だった。
唯一見えるのは、各人の瞳に浮かぶかすかで不気味な輝きだけだった。それは彼らに宿るエネルギーの反射である。
彼らはゆっくりと前進した。足音は虚無へと消え去るように鈍く響く。空気は押し返すほど重く感じられた。
その時――
「痛っ!」
リーエルの声が鞭のように静寂を裂いた。彼女は足をつき、脚を押さえながらよろめいた。
「レイン!蹴ったじゃない!」
「え?違う、俺じゃない!」
レインの抗議は奇妙に反響した。洞窟が彼の声を異形の響きに変形させる。
「触ってなんかない!」
リーエルが鋭い眼差しを向けたが、反論する前にピアーズが首をかしげた。かすかな、ほとんど感知できないほどの前方のかすかな光に目を細める。
ついて来い
彼の声が低く切迫した口調で、彼らの精神に滑り込んだ。
彼らは一体となって、ゆっくりと慎重に動いた。湿った壁を手に触れながら、息も詰まる暗闇の中で、その光だけが唯一の道標だった。一歩一歩が時間を引き延ばすように感じられた。
ピアースは魔力感覚を伸ばし、見えない触角のように探り当てようとした。
そして——胃が落ちた。
彼は即座に凍りついた。
感じたものは異常だった。歪んでいる。歯が多すぎる笑みのように。
彼の精神的な声が、鋭く冷たく彼らの心に響いた:
全員。動くな。音を立てるな。俺が「動け」と言ったら、静かに、そして素早く入り口へ戻れ。
混乱がグループに広がったが、彼らは従った。彼の口調に鋭い刃を感じ取ったのだ。
他の者たちは呆然と固まった。変化があまりに急で、空気が重すぎた。ピアーズが何を見たのか、何が彼にこれほどの緊迫感を引き起こしたのか、誰も理解できなかった。
しかしリエルだけは、その感覚を振り払えなかった。脚に触れたあの感触。小さく、ぬめりとした触感…
それは彼女の想像ではなかった。
それは…まだそこにあった。
ピアーズの精神的な警告を無視し、彼女はゆっくりと息を吸い込み、手のひらに微かな癒しの光を呼び起こした。
彼女はそれを下へと導いた。かすかで躊躇いがちで、息が詰まるような暗闇に押し当てられる脆い輝き。
光が彼女のふくらはぎに触れた――
――そして彼女の胃が落ちた。
小さくて醜いゴブリンがそこにしがみつき、濡れた笑みを彼女の肌に押し付けていた。爪の生えた手が彼女のふくらはぎを強く掴んでいた。
リエルの息が詰まった――一度――
――そして絶叫した。
生々しく鋭い叫びが、洞窟の息苦しい静寂を引き裂き、恐怖を一同に跳ね返らせた。
ピアーズは即座に反応し、召喚獣たちに命令を脳裏で叩きつけた――
――そして氷のように冷たい現実が襲った。
彼らはここにいなかった。
彼の思考が一方向に走った:武藤!
剣士は躊躇しなかった。鋼が軋む音を立てて抜かれ、彼のオーラが青く閃光を放ち、虚空に幽玄な光を瞬時に照らし出した。その瞬間、真実が彼らを襲った――
ゴブリンは一匹ではない。
数百匹だ。
這いずり、チリチリと鳴く大群が、闇から溢れ出してきた。
リエルの足に絡みついていた一匹は、ムトウの刃が真っ二つに切り裂く前に、身震いする暇すらなかった。
仲間の死が群れを覚醒させた。
ゴブリンたちは狂乱状態に陥った——吠え、爪を立て、互いに躓きながら、狂ったように一斉に集団へ襲いかかる。
思考が追いつくより先にリエルが反応した。両手を打ち鳴らすと、きらめく光のドームが爆発的に広がり、一行を保護球内に封じ込めた。ゴブリンたちがそれに激突した――
ドスン。
ドスン、ドスン。
爪の生えた指が障壁を引っかき、金切り声をあげながら、歪んだ顔とギザギザの歯がどんどん近づいてくる。
ピアーズは躊躇しなかった。
彼を取り巻く魔力が燃え上がり、炎に包まれた雄大な駿馬へと形を変える。そのたてがみと尾は溶けた黄金のように燃え、蹄の一撃ごとに鋭いドーンという轟音が洞窟に響き渡った。
炎が闇を押し戻すと――
真実が明らかになった。
彼らは単に包囲されていたのではない。
圧倒的な数に埋もれていたのだ。
壁から壁へ、床から天井まで、洞窟はゴブリンの生ける大波と化していた――うごめき、息も詰まるような汚れた肉塊、爪を立てる手、歪んだ顔の塊が、リエルの障壁を打ち破ろうと押し寄せていた。
恐怖が冷たい指を背筋に這わせたが、足場は得られなかった。
代わりに固い決意が宿った。
ピアーズの手がぴくっと動いた——技を解き放つ寸前だったのに、他の者たちが先に動いたのだ。
ギュンユウは彼の頭にしがみつき、小さな瓶のような体を震わせながら、大きく瞬きもせず混沌を覗き見ている。
「今だ!」ルシの声が騒音を切り裂く刃のように響いた。
それが引き金となった――完璧に同期した一撃の中の鋭い一音。
リエルは鋭く息を吸い込み――そしてバリアを解除した。
無防備な一瞬の隙に、武藤が前に踏み出した。迫り来る波とリエルの間に、動かせぬ壁のように身を据える。
衝撃に備え構えた彼の鋼が、薄暗い光の中で光った。
バキッ!
トグの巨大な掌が激突した。衝撃波が最初のゴブリンの波を薙ぎ払う。
彼らは後方へ吹き飛ばされ、手足をばたつかせながら洞窟の壁に激突し、骨が砕けるほどの衝撃を受けた。
ルシの緋色の瞳が燃え上がった。床から影がうねり上がり、最も近いゴブリンたちへ絡みつく。痙攣し、不自然な形に歪んだ後、漂う黒い灰へと崩れ落ちた。
だが主役を奪ったのはレインだった。
彼はほとんど動かないまま——目と手だけが、複雑な舞を紡いでいた。
あらゆる角度から襲いかかるゴブリンたち。彼の手は刃のように常に先回りして迎撃した。
一閃——死。
一歩下がる――死。
一撃ごとに、外科手術のように正確だった。
足元の死体の山は瞬く間に恐ろしい丘へと膨れ上がったが、一滴の血も彼に触れることはなかった。
彼らは機械だった――それぞれの役割が完璧に次へと繋がっていた。
数分も経たぬうちに、数百のゴブリンは砕け散り、石床に散らばった。
聞こえるのは、荒い息遣いだけだった。
ピアーズの目が細められた。
これは…違う。奥深くで感じたものとは比べ物にならない。
彼は前方のかすかな光へと疾走し、防御壁を張ろうとした――
何も起こらない。
魔法は途切れ、彼を拒んだ。
何だ――?
彼のマナは応答しなかった。
光の中からぼやけた影が噴き出した。
赤い肌。溶けた金のような瞳。
――そして赤い影が襲いかかる。
思考より速く、ゴブリンが光から爆発的に飛び出した。
ギザギザの刃が閃き――
白い痛みがピアーズの脇腹を貫いた――
そして腕は消えた。
考える暇などなかった。
叫び声もなかった。
ただ本能が働いた。
生々しく形のない魔力が彼の中を轟き、思考が追いつく前に掌に凝縮された――
フゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
火球が至近距離で炸裂し、赤いゴブリンを炎の渦に飲み込んだ。
焼けた肉の悪臭が一瞬遅れて襲い、続いて切断された腕が石床に鈍く湿った音を立てて落ちた。
全員が飛び起きた。
武藤が素早く動いた――鎧に覆われた影が、私と次の攻撃の間に割って入った。
他の者たちも続いた。衝撃で青ざめた顔で、彼の腕があった場所を凝視している。
ルシの怒りは手に取るように感じられ、波のように彼女から溢れ出していた。緋色の瞳は燃える炭のように輝いている。
だがピアーズの再生能力は既に作動していた。
肉は癒え、骨は再形成され、数秒後には切断された腕はかすかな、ほとんど拍子抜けするようなパキッという音と共に再び完全な形を取り戻した。
リエルの声は震えていた。
「ピアース…」彼女は彼に飛びつき、小さく震える抱擁で彼を包み込んだ。
落ち着け、リエル…大丈夫だ。ほぼな。
ルシはまだ怒りに震えながら、あの忌々しい光の方へ向き直った。
一歩踏み出した――そして凍りついた。
彼女が見たものは…
ただ悪いだけじゃなかった。
それ以上に酷いものだった。
「ご主人様…治ったんですか?」レインの声は震え、視線がピアーズの再生した腕から顔へと移った。
ピアーズは彼に短い、安心させるような微笑みを見せた。
トグは一瞬、驚きで目を見開いて固まっていたが、やがて表情は静かな称賛へと変わった。
彼は口を開かなかった――ただ、うなずくだけだった。まるで「ああ…さすがは我らがご主人様だ」と言わんばかりに。
ギュンユウの瞳に涙が溢れた。
「ご主人様、ごめんなさい!私…お守りできなくて!」
震える小さな声で彼女は泣き叫んだ。
ピアーズは彼女を一瞥し、目元に一瞬の安堵の表情を浮かべたが、口を開く前にムトウの声が鋭く、切迫して割り込んだ。
「若様、直ちに結界を張らねば。奴らが登ってまいりました…」
ピアーズの顔から温もりが消えた。登ってきている。もうか。それは一刻の猶予もないことを意味していた。
彼はまだ涙を拭っているリエルの方を向いた。
「リエル」彼はきっぱりと言った。「お前の結界を使え。あの区域を覆え」
彼女は息を詰まらせたが、うなずいた。
緑の魔力が彼女の掌から噴き出し、きらめく膜となって広がり、やがて奇妙な光源を保護ドームの下に封じ込めた。
ピアーズは武藤たちの方へ向き直った。
彼らが近づくにつれ、ようやく武藤が言っていたものが視界に飛び込んできた――その光景は彼らの息を詰まらせた。
リエンはいつもの興奮気味な様子に戻り、思わず叫んだ。
「あれは何だ?! どこまでも続くぞ!」
彼の大きく見開いた目は、うごめくゴブリンの海と遠くの洞窟の壁の間を素早く往復した。
彼らは広大な洞窟の高い位置にいた。床は数千メートル下に広がる群れに覆われ、見えなくなっていた。その圧倒的な高さと果てしなく続くゴブリンの群れは、一瞬立ち止まるだけで目眩がするほど――そして恐怖を覚えるほどだった。
傍らでリエルは障壁を保ち続け、震える声で言った。
「ピアース様…怖いです…」
彼女は足元の目眩がするほどの深淵を、あえて見下ろそうとはしなかった。
ルシは、ピアースの負傷を思い出し、まだ怒りが収まらず、硬直したまま立っていた。
彼女の緋色の瞳は燃え上がり、拳は白くなるほど強く握りしめられていた。
ピアースは彼女を一瞥し、その表情に渦巻く怒りを読み取った。
一言も発せず、彼は手を伸ばして彼女の手に触れた。
彼女の肩の緊張は、ほんの少しだけ和らいだが、視線は依然として固く、下の群れに釘付けのままであった。
「若様」
武藤はうなり声をあげ、群がる群衆から目を離さずに言った。
「ご命令は?撤退すべきか、それとも――」
「撤退」という言葉が宙に漂った瞬間、リエルの視線がピアースに向けられた。恐怖の中に希望が差し込んだ。
「後退する」
ピアースはついに口を開いた。「当面はな」
リエルは安堵のため息を漏らし、
移動の準備を整えるとバリアが微かに揺らめいた。
その時── 脳裏に馴染み深い警告音が響く。
「ココネイの深淵へ進入」
背筋を冷たいものが走り、かすかな知覚の紋章がちらつき、さらなる情報を明かす。
迷宮1 - ゴブリンの緑牙迷宮
緑牙ゴブリンがうごめく、広大な迷宮ネットワーク。迷路を生き延び、試練を乗り越え、制限時間内に脱出せよ。
推定ゴブリン生息数:10,000,000
制限時間:3日間
制約事項:
{ 障壁使用可能者:生来の治癒能力を有する者のみ。魔法存在の入場禁止。
制限時間内に迷宮を完遂できなかった場合の結果:消滅。}
最後の言葉が、鼓動のように一度脈打つと、静寂へと消えていった。
突然の寒気がピアースを駆け抜け、最悪の予感が確信へと変わった。彼の表情は曇り、思考は停止した。状況の重みが石のように彼にのしかかったのだ。
ギュンユウが眉をひそめながら近づいてきた。
「どうした、主人?」
ピアーズの声は低く響いた。
「ここを離れられない。閉じ込められた」
「その言葉は石のように胸に突き刺さった。リエルの膝が崩れ、肩を震わせながら地面に崩れ落ちた。『私たち…離れられない?最悪だ…最悪だ…』
対照的に、レインは指をポキポキ鳴らし、耳まで裂けるような笑みを浮かべた。
「じゃあ、この醜い顔共をぶっ潰すだけだろ?俺も行くぜ!」
トグは無言で肩を回し、獲物に襲いかかる捕食者のように、ゆっくりとした確かな動きで筋肉をほぐした。
ルシが前に進み出た。緋色の瞳が冷たい炎を燃やしている。
「ピアース様」彼女は低く、殺意に満ちた声で言った。
「お前の血を一滴でも流そうとする者なら、この手で引き裂いてみせる」
「そうだ!お前が奴らを潰す間、俺たちはここで応援してるぜ!」
肩に乗ったギュンユウが、小さな瓶のような体で精一杯威勢を張った。
ムトウは炎の兜を深く下げ、声は穏やかだが鋼のような鋭さを帯びていた。「ご命令通り、主君。この害虫どもを一掃する準備は整っております」
その確信が波のようにピアースを襲った――胸に温もりが込み上げ、鋭い恐怖がそれに続く。彼は小さく、柔らかな笑みを浮かべた。「…わかった」
「ご主人様」ギュンギュウが突然言った。「召喚獣たちはどこに?」
ピアースの眉間の皺が深まった。
「門の外だ。彼らは入れない――純粋な魔導存在は侵入できない。深淵が抑圧している」
彼の視線は暗い入口に留まった。
「もし可能なら、彼らは警告に来ていたはずだ」
一瞬の沈黙。
「…おそらく試みはあったのだろう」
「では、私が外に出て彼らを始末してもよろしいですか?」
ルシは躊躇なく尋ねた。
ピアーズは彼女の言葉を遮った。反射的に頭を左右に振った。
「ダメだ。少なくとも半数が消えるまでここに留まる。それから考える」
武藤が前に進み出た。声は穏やかだが確固としていた。
「若様、この数では、私やトグ、レインの接近戦は序盤ではほとんど役に立ちません。
若様とルシ、リエルが遠距離から先制攻撃を仕掛ける方が遥かに効率的です。
状況が要求する時には、我々が介入します。ご安心を」
レインの肩が落ち、唇がむすっとした。「あーあ、やめてよ!つまらねえよ。何人かぶっ潰したかったのに」
隅でトグは動きを止め、巨大な肩を丸め、視線を床に固定していた。それは恐怖というより、肝心な時に役立たないと思い込んだ者の、重く沈んだ姿勢だった。
ピアーズはそれに気づいた。洞窟を横切り、トグの肩に手を置いた。
「お前は強い、トグ。時が来たら、お前を呼ぶ」
ギュンユウが耳元まで飛び寄った。
「私もここにいますよ、ご主人様! 全力で守ります!」
その激しい口調に、他の者たちからくすくす笑いが漏れた。一瞬だけ緊張がほぐれる。彼女は注目されて小さな胸を張った――そして笑われていると気づくと、ふくれっ面をした。
その瞬間は長くは続かなかった。
下の影から、彼らは現れた――最初は細い流れ、やがて洪水のように。
緑の身体の壁が視界に飛び込んできた。爪の生えた手ががむしゃらに動き、唸り声をあげながら、ゴブリンの波が洞窟の床を押し寄せてくる。
「さあ、ルシ」ピアーズが言った。その声は、高まる唸り声の波を切り裂いた。
ルシの狂気じみた怒りが平静な仮面を引き裂いた。声は危険な唸りへと変わる。
「お前たち…醜くて臭い豚ども…よくも…」
奇妙な泡立つような笑いが漏れたかと思うと、その口調は刃のように鋭く切り替わった。
「—よくも私のピアーズ様にお手を触れたな」
彼女の影が激しい波となって噴出し、前衛を丸ごと飲み込んだ。闇が洞窟の壁を駆け上がり、登攀中のゴブリンを次々と捕らえ、その悲鳴は瞬時に消えた。
次の瞬間、彼女は崖端に立ち、両手で巨大な黒影の立方体を形作った。石を震わせるほどの力でそれを叩きつけると、闇は後退し、ゴブリンの海から完璧な正方形がくり抜かれた――その内部は全て消滅していた。
ピアーズの背筋に冷たい戦慄が走った。
…ああ。彼女を怒らせるな。絶対に。
リエルの震える声が割り込んだ。恐怖をかろうじて決意で覆い隠している。
「私も手伝う!ピアース様――見てて!」
レインとトグはくすくす笑い、勇ましくも怯えた彼女の様子にギュンギュウさえも鼻で笑った。
リエルはルシの傍らに立つと、緑の魔力が掌に溜まった。
障壁が膨張し、巨大化しながら群れの上に迫りくる壁のように張り巡らされた。最後の力を振り絞ると、それは轟音と共に崩れ落ちた。
砕ける音が遥か下のゴブリンの列に響き渡り――続いて緑の血の川が広がっていった。
無邪気な笑みを浮かべて振り返った彼女に、ピアーズはただ呆然と見つめた。
…マジかよ?
額から汗が滴り落ちた。
よし、彼女も逆らうのはやめとこう。
「よし」とピアースは一歩踏み出した。
「手伝ってやろう」
ルシは首をかしげ、真紅の瞳に好奇心がきらめいた。
「どうやって、ピアース様?」
彼の唇に謎めいた笑みが浮かんだ。
「見せてやろう」声に自信が渦巻いていた。
背後ではギュンユウ、トグ、レインが期待に満ちた大きな目で身を乗り出し、武藤の炎には好奇心と――おそらく少しの疑念が揺らめいていた。
彼はリエルとルシに向き直り、声の調子を明瞭で威厳あるものに変えた。
「跪け。背中を向けろ」
リエルは頬をわずかに染め躊躇したが、ルシは一瞬の躊躇もなく跪いた。まるでこれがごく普通の要求であるかのように。
彼らの背中……それはただの背中だった。平凡で、目立たず、全く魔法的でない背中。
「よし」ピアーズは無表情で言った。
「さあ始めるぞ。
技――マナ融合」
制御された安定した流れで彼からマナが噴出し、溶けた光のように二人の身体へと流れ込んだ。周囲の空気がうなり、緑と黒のエネルギーの閃光が二人を包み込み、彼の鼓動に合わせて脈打った。二人の姿は増幅された力の紛れもない輝きで揺らめいた。
「ありがとうございます、マスター!」二人は声を揃えて言った。声には鋭く新たな活力が宿っていた。
「これで、奴らを殲滅する」
ピアーズはかすかに、満足げな笑みを浮かべた。
ルシの掌が広がると、巨大な影の立方体が彼女の周囲に開花した。その表面は油のように波打っている。傍らでは、リエルのエメラルドの障壁が光の高壁へと膨張し、縁が力に満ちてパチパチと音を立てていた。
二人は洞窟の両側に陣取り、魔法が相反する潮流となって外へ奔り出し、未だ群がる大群へ切り込む態勢を整えた。
攻撃が轟音を立てて放たれると同時に、警告もなく情報が彼の脳裏に叩き込まれた――冷たく鋭いフォントで刻まれる数字:
推定ゴブリン殲滅数:4,461 / 10,000,00
ピアーズの眉が上がった。驚きというよりは、ほっとしたような表情だ。
この調子なら…思ったより早く片付くだろう。
轟く魔法の轟音の中、彼は叫んだ。
「よし、二人とも続けろ!お前たちが疲れたら俺が代わる」
「承知しました、マスター!お任せください!」二人の声が響き渡った。声は確固として、目は集中で輝いていた。
だがピアーズの頭には別の考えが浮かんでいた。
彼は手を上げ、ちらちらと揺らめく小さな火の粉を散らした――最初はただの火花に過ぎなかった。それらは目に見えない気流に乗って外へ漂い、やがて洞窟の広大な空間を横切って飛んでいった。
闇の奥深くで、それらの火花はかすかな光へと花開き、この場所がどれほど広大であるかを明らかにした。
入口は完全に封鎖されていた。群れがより速く押し寄せる隙はなかった。
かすかな光が、無数のゴブリンの死骸の山、半分埋まった頭蓋骨、そして数えきれない過去の戦いの古びた遺骸を浮かび上がらせた。
* * *




