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第二十四章 家族、恐怖、そして炎

朝日が窓から差し込み、優しくピアーズを起こした。

彼は身を起こし、ゆっくりと贅沢な動きで伸びをすると、深い眠りから覚めた者だけがする、そんなあくびを一つした。


久しぶりに、本当に休まった気がした。こんなに気持ちがいいのはいつ以来だろう。


まばたきをして視界をはっきりさせると、思わず笑みがこぼれる光景が広がっていた。


両親が、眠りについた時と全く同じ姿でそこにいた。母は――夢の中でも優雅で――左側に寄り添い、ゆっくりとした規則正しい呼吸をしていた。


父は…相変わらず物理法則を無視するかのように、ベッドの半分からまたもやはみ出してぐったりしていた。


温かな波が彼を包んだ。僕は幸せだ、と彼は思った。両親がいてくれること。スティクスがいてくれること。あの間抜けな女神は正しかった…前に進み、今を生き、今あるものを守らねばならない。


彼の視線は母親に留まった。眠る彼女の紫がかった黒髪が穏やかな顔立ちを縁取り、口元の小さなほくろが彼女に王族のような美しさを添えていた。


すると、いたずら心が芽生えた。

よし…くすぐって起こして、台所を襲撃して、それから—実験だ!彼の笑みは鋭さを増した。

身を乗り出し、指を彼女の耳元に浮かべた。


「ママ」と彼はささやき、優しくくすぐった。「起きて、起きて!何か食べたいんだ!」


彼女は身動きし、半睡状態で呟いた。「あら、坊や…起きたの?心配してたのよ…」 彼女の声は夢見心地で、遠くに聞こえた。


ピアースは躊躇い、ぎこちなく身を引いた。

ああ…多分、最高の目覚め方じゃないな。


彼のニヤリとした笑みが戻った。代わりにスティクスが何をやってるか見てみよう。


彼は自分を見下ろした——パジャマの短パンに柔らかいTシャツ。まあ、十分可愛い。


静かなため息をつき、両親に最後の一瞥を投げると、彼は部屋を抜け出した。

マナハンド。ドアノブに届かない?問題ない。


思考を一閃——取っ手が自ずと回り、扉がひらりと開く。


ピアーズは階段を足音を立てずに下り、スティクスの部屋へ向かう。ドアを押すと…空っぽだ。


おかしいな。


どこに行った?俺が外出中に一人で基地に行くわけないだろ。


胃のあたりに小さな不安がよぎった。


外の門がきしむ――するとスティクスが剣を腰に下げ、土埃まみれの訓練服姿で闊歩して入ってきた。


彼を見つけた瞬間、彼女の表情が輝いた。


「ピアース!起きてたんだ!」


その笑顔は明るく、エネルギーに満ちていた。


しかし彼女は足を止め――彼の服装を一瞥した。


柔らかなシャツ。短いパジャマ。


彼女の笑みはくすっと柔らかな声に変わった。


「あらっ、すごく可愛い!」


ピアースが反応する間もなく、彼女は飛びついて彼をぎゅっと抱きしめた——汗ばんだ頬が彼の顔に激しく擦りつけられる。


わかった。


パーソナルスペース? 消えた。それに…うっ。汗。


彼は明らかに不快そうに微かに身じろいしたが、彼女は離さず抱きしめ続けた…


ポン。


彼女の頭に小さなしこりができていた——彼の微妙な抵抗が、結局は微妙なものではなかったようだ。


「姉さん」彼は呆れたように乾いた口調で尋ねた。「こんな朝早くどこに行ってたんだ?」


スティクスは胸を張って、ふざけた英雄的なポーズを決めた。


「トレーニングよ!」彼女は誇らしげに宣言した。「強くなって、お兄ちゃんを助けるために!」


ピアーズはまばたきした。


その言葉…予想以上に彼の胸を温めた。


厄介者ではあっても、本心だったのだ。


だがその時――


スティックスの脳裏に突然、記憶が稲妻のように走った。


彼女はピアーズの手を掴むと、周囲をきょろきょろ見回し、隅へ引きずり込んだ。


震えるような小声で囁く。


「ママ、お兄ちゃんの力のこと知っちゃった」


ドカン!


生々しい恐怖がピアーズを貫いた。


な、なに?! 母さんは何を見たんだ?!


「待て…それってつまり――」


彼の心の動揺に全く気づかず、スティクスは続けた:

「お前のダミーのことよ。母さんがそれを見つけて、一日中私を叱ったの!」


短い沈黙が流れた。


彼は息を吐き、体から緊張が抜けていくのを感じた。


ああ…ただのダミーか。まさか…


胸の奥に詰まっていた塊がほぐれた。


その時、冷たく静かな、紛れもない影が二人を覆った。


ザイリアだ。


腕を組んで、眉を軽くひそめ、わずかに苛立った様子。


「隅っこでこそこそ何の話をしているの?」


二人は驚いた子猫のようにびくっとした。


「ママ」とピアーズは一歩踏み出し、まだ震える声で言い出した。「僕…僕の魔法のことを、ちょうど話そうとしてたんだ」

ザイリアの目が一瞬細まった――短い、無言の凝視――そして…


ため息が漏れた。彼女は膝をつくと、二人を両脇から抱き寄せた。それぞれの温もりが、彼女の心臓に押し付けられるように。


彼女が抱えていた厳しさは溶け去り、生々しく激しい母性へと変わった。


「もう秘密はなしよ」と彼女はささやき、声は低く震えていた。


「お前たちはまだ子供だ…私の子供なんだ」優しく髪を撫でながら、まるで逃げられるのを恐れるように抱きしめた。


「二度とこんな風に隠されたくない」囁きながら、腕で二人をさらに強く抱きしめた。「約束してくれ、二人とも――もう秘密は作らない。私に対しては」


彼女は息を震わせ、言葉を詰まらせた。「


「怒ってしまったのは分かってる…」怖くなるとついそうしてしまうの。他にどう対処すればいいか分からない時があるの。でもそれは…」声はひび割れ、言い表せない恐怖で震えていた。


「あなたが傷つくかもしれないという思い――そして私が救えなかったという思いが、私を恐怖で震えさせるの。もしあなたに何かあったら…私は自分を許せない」


彼女の抱擁が二人を強く包み込んだ。まるで抱きしめることで全てから守れるかのように。


続く沈黙は重く、痛みを伴っていた。これ以上言葉は不要だった。


ピアーズはうつむき、胸に罪悪感が渦巻いた。


スティクスは身を乗り出し、感情で喉を詰まらせながら、ザイリアの脇腹に顔を埋めた。


ザイリアは瞬きを繰り返し、目尻の湿り気を払った。唇がもう一拍震え、恐怖の影がまだそこにまとわりついていた――しかし、ゆっくりと彼女の表情が変わり始めた。


眉間の緊張がほぐれ、呼吸が整い、温もりが再び瞳に滲み戻った。


二人をしっかりと抱きしめたまま、彼女は視線をピアーズへと移した…手がゆっくりと上がり、優しく彼の髪を撫でた。親指がこめかみのすぐ上で留まる。まるで彼が確かにそこにいることを自らに確かめるかのように。


「そうね…私の輝く息子よ」彼女は囁いた。声は柔らかだが、今や確かなものになっていた。

「知っておいてほしいの——君の年齢で、あれほどの技を、あれほどの洗練さで操るなんて…君は本当に天才よ。これ以上ないほど誇りに思っているわ」


スティクスが即座に割り込んだ。

「ママ、私は?私はどうなの?」


ザイリアは娘の方を向き、顔にかかった髪をそっと払った。


「わがまま娘…君の並外れた力もまた、天からの贈り物よ」彼女は目を細めて、いたずらっぽい笑みを浮かべた。「でもね…弟への骨が折れるような抱擁は、もう少し控えめにしなさいね?」


スティクスはふくれっ面をし、ふてくされたふりで目を細めた。


ピアーズがくすくす笑う。ザイリアは温かく、理解に満ちた笑い声をあげた。


すると――


グゥルルルル。


大きなうなり声が部屋中に響き渡った。


「私…めっちゃお腹空いた」スティクスは恥じらいひとつなく宣言した。


ザイリアの微笑みはさらに柔らかくなった。


「それなら、時間を無駄にしないでおきましょう。成長期の体に、しっかり食べ物を摂らせないとね」


母性的な温もりを宿した瞳で、彼女は振り返ると台所へ向かった。先ほどの緊張は、共有された空腹と愛情の安らぎの中に完全に溶けていった。


ちょうどその時、リガスが寝ぼけながら入ってきた。あくびをしながら背中をかき、髪はあらゆる方向に逆立っている。まぶたはまだ眠気で重かった。


「何があったの?」彼はぼそりと言った。「何か見逃した?」


ザイリアは横目で彼をちらりと見、からかうような光を瞳に宿した。


「ええ、あなた。あなたの脳みそはいつも少し理解が遅いのよ」


リガスはニヤリと笑った。


「それでも…この遅い脳みそを愛してくれてるんだ」


彼女の頬にほのかな赤みが差した。


「おい——子供たちが見てるぞ」


ピアーズとスティクスは顔を見合わせ…すぐにくすくすと笑い出した。


ピアーズはその瞬間を全身で味わっていた。


朝食の会話の温もり、焼きたてのパンのかすかな香り、家族の優しい声のリズムが、決して離れたくない毛布のように彼を包み込んでいた。


ああ…このままで永遠に生きていけそうだ。


そして——


バン!


ムトウの声が戦場の太鼓のように頭の中で轟いた。


「若様! 事態発生です! 緊急事態です!」


温もりは一瞬で砕け散り、アドレナリンの衝撃に取って代わられた。


ピアーズの目が大きく見開かれた。心臓がぎょろっとしたウサギのように跳ねた。


くそ、くそ、くそ!今度は何だ?!


一瞬、息を詰めて固まった。脳みそはパフォーマンス向上剤を飲んだハムスターより速く回転する。


考える。走って逃げられない——不自然だ。笑う?変すぎる。病気のふり?ありえる…でも質問される…動かなきゃ。今すぐ。


彼は鋭く息を吸い込んだ。


冷静を装え。でも——いや——時間がない!


彼の口から飛び出した言葉は、あまりに大きく、鋭すぎた:


「ママ、緊急事態だ!行かなきゃ——心配しないで、すぐ戻るから!」


誰かが反応するより早く、彼はもう部屋の半分を駆け抜けていた。一歩、二歩——そして洗面所へとぼやけた影となり、パニックに駆られた速さで移動していく。


ザイリアとスティクスは彼の後姿を見つめた。


ザイリアは首をかしげ、口元を軽く引き結んで心配そうに言った。「あらまあ、緊急事態?…夜のシチューが少し辛すぎたのかしら。レシピを調整しなくちゃ」


スティクスは咀嚼を続けながら、ただ困惑したように首を傾げた。


リガスは椅子に深く腰掛け、わずかに目を細めた――自らも怪しい退出を何度も繰り返してきた男のように。


ふん。


あのガキ、明らかに何か企んでる。


洗面所の中で、ピアーズは躊躇しなかった。


一歩、二歩——小さな窓に辿り着くと、勢いよく押し開けた。


息を吸う。


彼は飛び越えた。朝の空気が顔を叩く。


足の裏が地面を離れた瞬間、彼は空中を歩いていた。長く急ぐ歩幅が彼を前へ運ぶ。


「武藤! 応答せよ! 何が起きた?!」


脳裏に雑音が走った。武藤の声は緊張で張り詰めていた。


「若様、それは――」


彼は言葉を絶った。


ピアーズの速度が距離を引き裂き、光景が視界に飛び込んできた――


――そして胃が落ちた。


レインとリエルが地面に倒れ伏し、身体を激しく震わせていた。肌は不自然な内なる光を脈打たせ、血管は石に走る溶岩の裂け目のように輝いている。顔は無言の苦悶の叫びで歪んでいた。


近くではルシ、武藤、ギュンギュが取り囲み、無力に慌てふためいていた。ギュンギュは不安定に浮遊し、祈りさえも助けになるかのように小さな手を合わせていた。


空気には焼けた肉と煙のかすかな匂いが漂っていた。鍋や包丁、調理途中の食材が散乱している。まな板の上には手つかずの肉の塊が置かれ、暗く濁った肉汁が溜まっていた。


ピアーズの視線が半瞬、そこへ向けられた。


肉か? いや…違う。集中しろ。原因は後だ。


脈が激しく打ち鳴らされた。

治癒魔法なんて持っていない。基礎すら知らない…どうやって――?


その考えが、彼の腹をナイフで捻るように痛んだ。


彼がそこに立つ毎秒、彼らは苦しんでいる。


そして彼は彼らを救う方法を知らない。


その時、

突然、影が彼の背中に伸びた。


「そうか…ここへこっそり来ていたのか」背後で低い声が響いた。


ピアースが振り向いた。


壁のように巨大なリガスが立っていた。その瞳には、奇妙なほど心配と鋼のような決意が混ざり合っている。


一瞬で、騎士の構えが変わった――剣を半ば構え、鎧に力が入り、低く唸り声をあげた。


「待て!止まれ!」ピアースが声を張り上げた。声は震えていた。「父だ!」


ムトウは動きを止めた。鋭い眼差しが和らぎ、緊張が抜けていく。


「…ああ」彼は武器を下ろし、姿勢を緩めた。


だが真の危機は床でもがき苦しんでいた。


ギュンユウの声は震えていた。


「ご主人様――急いで!お願い――何かしなければ!」


ルシは両手を胸に押し当て、目に涙を浮かべていた。


「ピアース様…これは…まったく良くない…」


光り、もがき、苦しむレインとリエルの姿に――彼の胸が引き裂かれた。


絶望が言葉を突き破り、彼は父に向き直った。


「父さん…お願いだ!助けてくれ!」


涙が止まらぬまま、彼の目を刺した。


リガスの視線が鋭くなり、声は鋼のように低く響いた。


「待っていた言葉だ」


彼は倒れた兄妹の傍らに膝をつくと、かすかな青白い光を放つ目で二人を観察した。


何も言わずに左手を上げると――二つの水晶のような氷の破片が現れ、冷たく安定した光を放ちながら脈打った。


それぞれ胸に一つずつ置くと、霜が輝く肌にきらめいた。


そして顔を上げ、いつもと変わらぬ自信に満ちた笑みを浮かべた


「聞け、息子よ。彼らの体から流れる魔力を逆流させろ。この結晶へと引き込め。集中が必要だ——今まで以上に強くな。だがお前ならできる」


ピアースは息を呑み、呼吸を整えた。


「わかった、父さん…やるよ」


目を閉じ、散らばる思考を一点に集中させた。


呼びかけに応じ、魔力が沸き立つ。溶けた光の糸のように彼の中を流れる。


レインとリエルの体内にある混沌とした魔力に手を伸ばす——嵐の中の蛇のようにうごめくそれを——


——そして、それを解きほぐす骨の折れる作業を始めた。


ゆっくり。確実に。絡まった糸を、切らずにほぐすように。


源へ戻れ… 頼む…


次第に流れが変化した。


二人の胸に浮かぶ氷の結晶は、最初は純粋な青だったが、きらめき始めた――

――黄色、そしてオレンジ――

――やがて激しく脈打つ赤へと。


空気そのものが引き締まるようだった。


あれほどのエネルギーが、これほど脆い器に圧縮されて…


「過剰だ」リガスが叫んだ。


爆発まであと数秒。


誰かが反応するより早く、父が動いた――

地面に足をつけた次の瞬間――


空中に浮き上がり――


両方の結晶を掴み取った。


そして――


投げた。


結晶を天へ放り投げた。


全ての視線が追った。息を呑んで。


光が爆発した。空が千の色彩で咲き乱れ、雲を流れ落ち、森の樹冠をきらめく色で彩った。


ピアーズは息を切らして見つめていた。


「あいつ…またやった」彼は息を漏らした。声に畏怖が震えていた。

「ジェノラ教会でと同じように…」


光が消えると同時に、レインとリエルの体から輝きも消えた。


二人の呼吸は落ち着いた。


一瞬、静寂が訪れた。


そして──


レインの目がぱっと開いた。


バネの仕掛けのように跳ね起き、狂ったようにニヤリと笑った。


「わあ!千倍も軽くなった!飛べるぞ!」


ピアーズは安堵のため息をつき、肩の力が抜けた。他の者たちもそれに続いた。


ギュンユウは即座にレインの顔に飛びつき、小さな手を腰に当てた。


「レイン!跳ねないで!起きたばかりでしょう!大バカ者、怪我するわよ!」


近くでリエルが身動きし、まぶたをぱちぱちと開けた。視線が横の背の高い金髪の姿へ漂う。


「…ピアース様?」まだ半分眠った声で呟いた。


目を細める。「…どうしてそんなに背が高くなったの…?」


リガスがニヤリと笑った。


リエルは凍りついた――そして真っ赤になった。


小さな悲鳴をあげると、すぐに地面に沈み込もうとした。


だがルシが飛び込んで、彼女をぎゅっと抱きしめた。


「リエル! びっくり死にかけたわ!」


「え? なんで泣いてるの…?」リエルはぼんやりしたまま呟いた。


トグがどっしりと近づき、大きな親指を立てて安心させるように身を屈めた。


武藤は小さく頷いた——相変わらず無表情だが、今は表情が柔らかくなっていた。


ピアーズはその光景を目にし、胸の奥に詰まっていたものがようやくほぐれていくのを感じた。


リガスが彼の横に歩み寄り、誇らしげな笑みを浮かべて彼の髪をくしゃくしゃに撫でた。


「よくやった。お前ならできると分かっていた」


ピアースは思わず、目尻まで届く本物の笑みを浮かべた。


リエルはようやくルシから離れ、頬はまだ赤らんだままだった。


「ピアース様…私…あなたを心配させるつもりはなかったんです。助けてくれて…ありがとう」


ピアーズは手を振って気にするなと示した。


「気にしないで、リエル。二人が無事なのが何よりだ」


彼女の頬はさらに赤らんだが、恥ずかしそうな笑みが浮かんだ。


リガスが咳払いし、ドラマチックな小声で近づいてきた。


「えーと…それで…」


彼の視線がピアーズに向けられ、そこにはからかうような光が宿っていた。


「さて…キシリアの件はどうする?」


「彼女が知ったら…きっと仰天するだろうな。いや、怒るかもしれない。本気で怒る…まだ2歳にもなってない娘が、あんなにマナを使いこなして…秘密基地まで持ってるなんて」


彼のニヤリとした笑みは、これからが楽しみだと語っていた。


ピアスは呆然と彼を見つめた――半分困惑、半分苛立ちで。


まさか…本気で俺を脅そうってのか?


彼は大げさにため息をついた。


「わかったよ、パパ… 仕方がねえな」


思案の沈黙…


顔を上げた彼の瞳は大きく、きらめき、痛々しいほど無垢だった。


カリスマスキル:発動。


「パパ… 本当にママにこのこと… 僕の基地のこと… 話すの?」


リガスは刺されたように身を引いた。


嘲笑は一瞬で崩れた。


「いや…待て、息子よ…」声は慌てふためいて震えた。


「後で知ったら母さんに殺される!頼む…やめてくれ!情けをかけてくれ!」


ピアーズは瞬きもしなかった。


「でも、お父さんより先に母さんに話したら…お父さんの問題じゃなくなるよね?」


周囲の野次馬たちが身を乗り出した。


レインとリエルの耳がぴくぴく動いた。


ルシは笑いをこらえた。


トグは好奇心旺盛な岩のように見つめていた。


ギュンギュンは興奮でくるくると回った。


無動の無表情な炎さえも輝きを増した。


リガスの顔がようやく崩れた。肩が落ち、うつむいた。


「…わかった。お前の勝ちだ」


周囲に柔らかな笑いが広がった。


しかしその瞬間は瞬く間に過ぎ去った――リガスは再び背筋を伸ばし、威厳がゆっくりと縫い合わされていく。


「よし、諸君…この件はなかったことにしてくれ」


彼が言い終えるか終えないかのうちに、武藤が前に進み出て深く頭を下げた。


「先ほどの件、心よりお詫び申し上げます。若様を守るのが私の役目です。慌てふためくあまり、貴殿のご高臨に気づかず、不遜な振る舞いをしました。どうかお許しください」


その言葉と共に、リガスから圧倒的な存在感が波のように押し寄せた——重く、古く、息が詰まるほどの圧迫感だ。


武藤は硬直し、息を呑んだ。


もしこの男が敵なら…最速の一撃すら届かないだろう。


敬意が彼の姿勢に滲んだ。


リガスの気配が和らぐ。


「リガスだ。礼儀はよせ。息子が君のような者——信頼できる者に守られていると知って、ただ嬉しく思っている。それで十分だ」


武藤の炎が微かに揺らめき、無表情な体躯の下に潜む驚きを露わにした。ゆっくりと、彼の姿勢が正される。


* * *


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