第二十一章 ロナンの理由
地平線がオレンジ色に染まる――夜明けの最初の光が木々の間を這い上がる。
一本の黄金の光が樹冠を貫いた――
ピアーズの目がぴくっと動いた。
そして気づいた。
瞳孔が縮む。現実が平手打ちのように襲いかかり、目が震えた。
くそ。くそ。くそ!
太陽が昇る――
思考が崩れゆく魔法陣のように渦巻いた。
母が起きるのも時間の問題だ!
俺がいなくなったことに気づいたら――
「大爆発」なんて言葉じゃ到底収まらない!
彼はくるりと向きを変え、スティクスへ駆け寄り、命綱のように彼女の手を掴んだ。
「しっかり掴まってろ!」と彼は叫んだ。
そして飛び立った。
森の樹冠を突き抜け——憑かれたように空中を歩く。瞬きする間に、彼らは障壁の縁に到達し、朝の風が周囲を吹き荒れていた。
彼は空中で回転し、心臓が胸の中で激しく鼓動した。
「ムトウ!気をつけて!子供たちを見守ってくれ!今夜には戻る——生きて戻れたらな!」
ムトウが返答する間もなく、ピアースは閃光のように消えた。恐怖に駆られた速度が夜明けの空を横切る一筋の光となって。
ムトウはただ黙って頷いた。動揺の色ひとつ見せない。
スティクスは彼の背中にしがみつき、狂ったように笑い声をあげていた。
「もっと速く!もっと速く!!」風を切って両腕を振り回しながら彼女は叫んだ。
地上は静まり返っていた。
奇妙で、そしてあまりにも速い何かが起こった後に訪れる、気まずく呆然とした沈黙。
誰も口を開かなかった。
ギュンユウは瞬きをした。
トグはゆっくりと瞬きをした。
ルシはただため息をついた。
空では、ピアースが飛んでいた。
優雅さなど微塵もなかった。
落ち着きもなかった。
ただ、生々しい、根源的な恐怖に駆られていただけだ。
彼の思考は死の螺旋を描いた:
窓開けっ放しにしてきたか? もう確認されてたら??
クローンに気づかれたら?! いや——眉毛は付けたぞ。それで大丈夫のはずだ!
殺される!
彼は木々をかき分け、遠くの自宅を凝視しながら突っ走った。
「行け!」と彼は呟き、片腕でスティクスを抱え上げた。
「彼は彼女を寝室の窓から投げ飛ばした…」洗濯物の束のように。
彼女は床を転がり、笑い声をあげながら親指を立てて着地した。
「わーい!」と彼女はくすくす笑った。
次は彼の番だ。
影のように静かに、彼は自分の窓から滑り込んだ。
よし!まだ完全に寝ている!
父は獣のようないびきをかき、あのバカはまだベッドにいる。
彼はつま先立ちで窓に近づき、鍵を閉めようとした——深夜の冒険の痕跡を消し去るために。
だが、指がかぎに触れた瞬間——
母親が身動きした。
彼女は長い、眠たげなあくびをした。
ピアーズは凍りついた。
やばい。やばい、やばい。
ゆっくりと振り返った。
母は半身を起こし、片目を閉じたままで口を手で覆い、またあくびをした。
そして——
「どうしたの、ハニー?」眠たげな声でぼそりと言った。
ピアスの頭はパニックで爆発しそうだった。
早く考えろ!
ダミーを見られたら——終わりだ!
彼は深く息を吸った。
落ち着け。笑え。カリスマスキル発動。
彼の顔は純真無垢な太陽のように柔らかくなった。
「ママ」甘い声で、偽りの平穏を装った大きな瞳で
「この窓から日光浴しようかと思って」
彼女は瞬きした。そして眠たげな表情が微笑みに溶けた。
「あら、かわいそうに」と彼女は甘く囁き、近づいて彼を腕の中に抱き寄せた。
「まだ幼いのにな、もうこんなに健康に気を使うなんて!」
誇らしげに微笑み、頬にキスをすると、手を伸ばした──
「窓を開けてあげようか」
ダメだ──!彼は心の中で叫んだ。
「そうね。パパを起こしましょう」
彼女はそっと呟き、ベッドの方へ向き直った。
ピアーズの笑顔が凍りついた。
目を見開き、魂が叫んだ。
あのダミーが!
ダメだ、ダメだ、ダメだ!
ママに見られたら…
おしまいだ。
瞬時に思考を巡らせ、彼は叫んだ:
「ママ、お腹すいた!食べたい!」
声は切迫感でひび割れた——半分はパニック、半分は演技だ。
母親は瞬きし、彼の方へ向き直った。
「あら、ご飯が食べたいの?」彼女は甘く囁き、瞬時に柔らかな表情に変わった。
「ママが美味しいご飯をたくさん作ってあげる!」
彼女は優しく微笑んだ。
「でもその前に、ママにキスして~」
彼女が身を乗り出すと――瞳がきらめいた。
ピアーズの脳裏で叫び声が響いた――だが彼のマナハンドは動いた。
見えない。音も立てず。素早く。
幽玄な手がそっとダミーを押しやる…
ベッドの反対側へ――視界から消える。
フンッ。
寝具が音を吸収し、彼女は背を向けた――何も気づかずに。
彼は身を乗り出し、彼女の頬にキスをした。
彼女の顔に喜びが咲いた。
まぶたがふわりと閉じ、唇は夢見るような微笑みを浮かべ、頬はバラ色に染まった。
彼女の内なる世界では、すでに台所に立っていた――最愛の息子のためにご馳走を作るのを想像しながら、幸せそうに口ずさみ、今まさに起こりかけた危機に全く気づいていない。
彼女は最後に彼をぎゅっと抱きしめた。「何か特別なものを作るわ!」と彼女は笑顔で言い、立ち上がって去ろうとした。
危機…回避。
彼女の背中が見えなくなるや否や、ピアーズは膝をついた。安堵で肩がぐったりと落ちた。
「ふう…」危なかった…
ベッドから、眠たげなうめき声。
そして――
あくび。
大きく伸びをする。
父親が目を覚ました。
..
.
.
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盾の王国エイジスの大広間は、抑えきれない緊張感に満ちていた――威厳に満ち、抑制された緊張感だ。高らかな旗が部屋の上でそっと揺れ、空気は香とささやきに満ちていた。
中央には、銀木とサファイアで飾られた豪華な玉座に、オベロン王が座っていた。その眼差しは厳しく、思索にふけっているようだった。左側には忠実な騎士が立つ――老いて、無口で、揺るぎない。右側にはオーレリア姫が座り、姿勢は完璧、知性で鋭い瞳は…疑いようのない傲慢さに覆われ、冷ややかな距離感で下界の集いを眺めていた。
貴族や地方領主たちが周囲に並び、儀式用の豪華な衣装をまとっていた。彼らの表情は好奇心、計算、そして隠しきれない期待が入り混じったコラージュのようだった。
玉座の前にはローナンの一行が、慣れた敬意をもって頭を垂れていた。王国の英雄として、その武勇と外交手腕で知られるローナン自身が最前列に立つ。その傍らには信頼する仲間たちが――物静かな治療師、足が速い槍使い、沈黙に包まれた無表情な精霊使い。彼らの名は国中に知れ渡り、讃歌さえ歌われていた。
オベロン王がわずかに身を起こすと、その深い声が静寂を切り裂いた。
「諸君は本日ここに召喚された」彼は一語一語を慎重に紡いだ。「至上なる重要任務を授かるためである。禁断の森へ足を踏み入れよ――そして再び王国に力を貸すことを願う」
貴族たちの間にささやきが走った――短く、ひそやかな。禁断の森。太古の力が宿り、呪いの囁きが絶えない場所。自ら進んで入る者は稀だった。戻ってくる者はさらに稀だった。
その時、ローナンが前に進み出た。
マントが背後に揺れ、表情は揺るがない。深く、格式ばった一礼を捧げた。
「陛下」彼の声は明瞭で落ち着いていた。「ご信頼を賜り光栄に存じます…しかし…」
間を置く。
「…謹んでお断り申し上げます」
一斉の驚きの声が広間に響いた。オベロン王の慎重に保たれた平静が崩れ、苛立ちの影が顔をかすめた。
「その傍らで、アウレリア王女の眉がわずかにひそめられ、鋭い眼差しを細めてローナンを観察していた」
「説明せよ」王は命じ、声に硬さが増した。
ローナンはひるまなかった。
「我々は既に帝国からの依頼を受けております」と彼は平静に説明した。「極めて緊急の用件であり、良心に従い、その要請を断ることは叶いません」
彼は王の視線を真っ直ぐに見据えた。
「残念ながら、帝国への義務が優先されるのです」
重苦しい沈黙が続いた――厚く、息が詰まるような沈黙。ローナンの一言が、迫り来る嵐のように広間に重くのしかかった。
緊張した沈黙が降りた。
宮廷は静まり返った――壁沿いに立つ衛兵たちさえ背筋を伸ばし、警戒の眼差しでやり取りを見守っていた。
オベロン王の顎が固まった。顔に影が走る――苛立ちの閃きが、王族の仮面の下で巧みに押し殺された。拒絶されるのは好ましくない。特に公の場で。特に英雄たちによって。
しかし彼は、盾王国と帝国の間の微妙な力関係も理解していた。英雄たちを意に反して拘束することで彼らを刺激するわけにはいかない。
それでもオベロンは最後の試みを試みた。
「きっと」と、薄ら笑いを浮かべて「帝国の任務を終えた後なら、この任務を引き受けてくれるだろう? それほど長くはかからないはずだ…そうだろう?」
ローナンは続けた。「はい、引き受けます。だが、この任務は我々を魔界へと導く。そのような冒険は予測不能だ。移動だけで数ヶ月…いや、数年すらかかるかもしれない。正確な帰還時期は断言しがたい」
王の表情が歪んだ――苛立ちが表面下で花開く。だが彼は素早くそれを抑え、引きつった、慣れた笑みで覆い隠した。
「なるほど」彼は声をつまらせ…張り詰めた口調で言った。
「それならば…退席せよ」
英雄たちが再び礼をして去ろうとしたその時、
オーレリア王女の声が響いた。その言葉は傷つけるために計算されたものだった。
「なんとも残念なことだわ」彼女は全員に聞こえるほどの大声で言った。「これほど名高い英雄たちが、真に重要な使命が与えられた時にそれを認識する先見の明を持たないとは」
重い沈黙が続いた。
誰も返答する者はいなかった。
侮辱の言葉が空気に漂い続けた――意図的で、公然と、毒を含んだ言葉が。
オベロン王の視線は去りゆく英雄たちを追った。その表情は威厳ある平静の仮面のように固まっていた。
だが肘掛けを握る拳の関節が白く浮き出ている。
玉座の間への扉が彼らの背後に閉ざされると、仮面はひび割れた。
バタン。
彼は拳を玉座に叩きつけた。
「黙れ!」と彼は怒鳴った―その声は広間に響き渡った。彼は傍らに立つ老騎士に向き直り、
「ギデオン」と低く鋭く唸った。「雇い兵だけ森に送り込めぬものか?」
ギデオンが一歩踏み出した。表情は読めなかったが、口調は抑制されていた。
「陛下」彼は石のように冷静に語り始めた。「傭兵たちは…有能ではありますが、禁断の森での成功は、せいぜい望み薄でしょう」
彼は言葉を切り、目を細めた。
禁断の森は太古の力が宿り、予測不能な危険が潜む場所だ。結局のところ、我々は英雄たちの帰還の時を待つしかない
王の顔が静かな唸り声と共に歪んだ。
ついに彼は顧問に向かって手を振って追い払うようにした。
「四人の大祭司の預言者に伝えよ」不快感がにじんだ声で命じた。「我々の対応には少々遅れが生じる」
城壁の外では、緊張した城内の空気とは打って変わって、新鮮な空気が心地よかった。
ローナンは安堵と未練が入り混じった表情で息を吐いた。
「あれは最善の結果よ」ヴァニャは優しく言った。優しい瞳には理解が宿っていた。
「ご決断を疑わないでください、ローナン様。正しい選択でした。帝国の使命は重要…そして我々は約束したのですから」
ジャレスがローナンの背中をポンポンと叩いた。
「それに、魔界への旅を逃すなんて誰が望む? 見るべきワクワクする新天地の数々…そして直面するさらに刺激的な危険を想像してみろよ!」彼はニヤリと笑い、その熱意は伝染性だった。
イサライエルは近くの木にもたれかかり、唇に笑みを浮かべていた。
「あら、ジャレス、あなたって本当に子供ね」彼女はからかうように、遊び心と愛情を込めた声で言った。「いつも真っ先にトラブルに飛び込むのが好きで。悪魔がキラキラした歯をしてたら、きっと友達になろうとするわよ」
「おい、危険は俺のミドルネームだ!」ジャレスはふくれっ面で誇らしげに胸を張った。
イサライエルは呆れたように目を回した。
「危険がミドルネームなら、ファーストネームはバカで、ラストネームは怪物引き寄せ体質よ」
「うっ…痛い」ジャレスは胸を押さえて痛がるふりをした。「君の言葉はどんな刃より深く刺さる!少なくとも俺はリスから戦略の助言なんて受けないぜ」
ロナンは二人の軽妙なやり取りに笑いをこぼし、気分が和らいだ。「さあ、二人とも」彼は微笑みながら言った。「本題に戻ろう。回収すべき『ダンジョンコア』について話し合わねば」
ヴァニャの笑みは消え、真剣な表情に変わった。
「魔界は我々がこれまで経験したどんな場所とも異なる。混沌と強大な存在が渦巻く地だ。ダンジョンコア、特に彼らの領土深くにあるものは厳重に守られている」
「そこへの旅は少なくとも一年、それ以上かかるだろう」
彼女はマントのひだに手を入れ、帝国の紋章が押された封印された手紙と、金縁の巻かれた羊皮紙を取り出した。
「これが正式な指令書」と、彼女は手紙を掲げた。「そしてこれは——」慎重に地図を広げると、赤と黒で描かれた広大な暗黒の土地が現れた。「——魔界への道筋だ。少なくとも紙の上では、最も安全な既知のルートだ」
彼女は魔界の南縁近くにある影の濃い地域を指さした――地図の線がギザギザと乱れ、地形が歪んだ渦巻く線で刻まれた場所だ。
「ここ。ダンジョンの核は南辺境の深部に埋もれていると推測されている。帝国はこの一帯を『灰谷の縁』と呼んでいる――明確な集落はなく、呪われた土地と古く忘れ去られた地名だけだ」
他の者たちが身を乗り出し、そこへ向かう歪んだ道筋を辿るにつれ緊張が高まった。
「軽々しく、あるいは短時間で済む旅ではない」
そして間を置いて、彼女は静かに付け加えた――
「我々は伝説の世界へ足を踏み入れるのだ」
「つまり…楽な散歩道じゃないってことか」ジャレスは頭をかきながら呟いた。
「間違いなくな」ロナンが同意した。
「だが、これまでにももっと過酷な状況に直面してきた――そして今回も共に立ち向かう」
彼はヴァニャに向き直った。
「記録庫を掘り起こせるか? 悪魔界の伝承やダンジョン中核の伝説に関するもの――全て見つけ出せ」
ヴァニャは頷き、既に古代の文書や封印された書物を探し始めていた。
「最も古い文献を調べる。手がかりのささやかな兆候さえあれば、必ず見つけ出す」
「イサライエル」ロナンは続けた。「お前と精霊たちの絆は、周囲の世界の変化を感じ取れる。目的地付近の異変や異常、不自然な気配を感知してほしい」
イサライエルは静かに頷いた。その表情は読めなかった。
「近づけば精霊たちが応える。俺は耳を澄ませる」
最後に彼はジャレスに向き直り、確固たるが信頼に満ちた口調で言った。
「ジャレス――お前の機動性と長距離通信が鍵となる」ロナンは言った。
「前方の偵察が必要だ。地形や魔物の動向だけでなく――地図では得られない情報もだ」
彼は腕を組むと、鋭い眼差しを向けた。
「政治的支配構造、現地勢力、潜在的な…賄賂ルートすらも。警戒を招かずに彼らの領地を通過するのに役立つあらゆる情報だ」
ジャレスは首をかしげ、少し驚いた様子で言った。「待て…今夜は俺一人で行動するのか?」
ローナンは首を振った。
「いや。行動は共にする。どうしても必要な場合以外は単独行動は禁止だ。できる限りの情報を集めろ――人々と話し、耳を傾け、観察する。静かな偵察だ」
彼は力強く付け加えた。「夜明けと共に出発する。その時までには最新情報を入手しておけ――安全なルート、国境の緊張状況、警戒すべき人物だ。酒場の噂話すら役に立つかもしれない」
ジャレスは二本の指で簡潔な敬礼を返した。
「承知しました、隊長。朝食までには情報を揃えておきます」
ローナンは小さく微笑みながら彼の肩を叩いた。
「君ならできると分かっている。ただ…トラブルには巻き込まれないでくれ。長い道のりが待っている」
「約束はできん!」ジャレスはウインクすると、すでに足元で跳ねながら――エネルギーが全身から迸るように――いつもの無鉄砲な勢いで数歩先へ駆け出した。
ローナンは彼の背中を見送り、ヴァニャとイサレルに向き直った。
二人の間では、地図が微風にそよいでいた。
「我々の前には長く危険な道が待っている」声は低く、しかし揺るぎない。
「月単位ではなく、年単位でかかるかもしれない道だ。だが、どんな困難に直面しようとも…共に立ち向かう」
他の者たちは黙って頷いた――今回は虚勢も冗談もなかった。
ただ、炎を生き延びた者たち…そして再びその炎の中を歩む覚悟を決めた者たちだけが持つ、静かな理解があった。
* * *




