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第十一章 亡霊の追跡(二)

影の中から、金属が石を引きずるような、ゆっくりとした軋む音が聞こえた。

影から一つの姿が現れ、重く不揃いな足取りでよたよたと歩み出た。

それは騎士だった――だが、かろうじて騎士と判別できる程度だった。

鎧は錆に覆われ、腐りかけた肉の断片が骨に張り付いている。その動きはぎこちなく、不自然だった。ゾンビ騎士だ。

老人の幽霊のような姿が揺らめき、陽気な様子が一瞬で消えた。

彼はピアーズに近づき、低く切迫した声で言った:

「若様…動くな。『走れ』と言うまで――門の方へ走れ」

ピアーズは凍りつき、牛乳瓶を握る手が固まった。

瓶の中の少女は危険を察知し、静まり返った。

ゾンビ騎士が軋むように前進し、兜がゆっくりと回転した――その下には目が見えないが、明らかに探している。

**その時、悲鳴が上がった。

瓶の中から、甲高く恐怖に震えた叫び声が。

ゾンビは即座に反応した。よろめき歩きが突然、捕食者の跳躍へと変わった――驚くほど速く。

老人の声が響いた:

「走れ、若様――今すぐだ!」

ピアースは本能で身をかわし、錆びた剣が顔をかすめる音を聞きながら横へ跳んだ。

「大丈夫だ」彼は平静を装い呟いた。

「こいつにスキルを使えばいいだけだ」

空いた手を上げ、魔力を集中させる――ソウルバインディングの準備だ。

その時――ゾンビが襲いかかった。

正面からではない。

グロテスクな捻りを加え、剣を後ろから突き刺すように——ピアーズの腕を貫いた。

「あっぐっ——!」

彼の悲鳴が洞窟に響き渡る。

手が床に落ちる。指が痙攣する。血が溜まっていく。

「くそ…痛い」ピアーズは歯を食いしばって呻いた。

瓶の中から、嗚咽交じりの声が漏れた。「ご、ご主人様…腕が…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」

彼女の小さな声は途切れ、ガラス瓶がすすり泣く音でかすかに震えた。

そして――最初は何も起こらなかった。

しかし数秒後、引き裂かれた切断面が痙攣し始めた。筋肉が蠢き、腱が伸び、骨が軋みながら元の位置に戻る。ゆっくりと、痛みを伴いながら、彼の手は再生を始め――やがて完全に元通りになった。

ピアーズは指を曲げ伸ばした。皮膚にはまだ血がぬめっていた。

「よし。これで十分だ」彼は驚きよりも苛立ちを込めて呟いた。

再生を傍らで見守っていた老人は、口を開けたまま呆然と、信じられないという目で凝視していた。

だがその時、ピアーズは別のことに気づいた。

瓶からこぼれたミルクの飛沫が、ゾンビの鎧に当たっていたのだ。

液体が触れた箇所ごとに、ゾンビはぴくぴくと震え、後ずさった。

その動きは慌てふためき、ぎこちないものになった。まるで…恐怖しているかのように。

ミルクだ。

魂の束縛だけではない。

ミルクそのものが何かを成していた。

ピアーズは目を細めた。

瓶を握りしめる――もはや単なる容器ではない。今や武器だ。

突然の動作で、彼は瓶を絞った。

ミルクの奔流が外へ噴き出し――ゾンビの顔面に直撃した。

「えぇぇっ!ご主人様、ゆっくりで、お願い!」瓶の中から少女が悲鳴を上げた。その声には恐怖と恥ずかしさが等分に混じっていた。

牛乳はドスンと当たった。

ひるみも、声もなかった。

そして――ぬめりとした剥がれる音。

金属から肉が剥がれるような音。

ゾンビ騎士がよろめいた。

動きが鈍り…やがて止まった。

魂のかけら――脆く、腐敗した――が死体から剥がれ落ちた。空っぽの殻の上で一瞬漂い…

…そして上方の闇へと消えた。

「錆びた鎧が地面にガチャンと落ちた――生気なく。空っぽだった」


ピアーズは動かない。腕には乾きかけた血が付き、焦げた腐敗の微かな匂いがまだ空気に漂っている。

指の間からミルクがゆっくりと滴り落ち、暗い石に淡い水たまりを作った。

彼は震える息を吸った。そしてまた吸った。生きていた。どういうわけか。

彼はゾンビ騎士を…牛乳で倒したのだ。

「ご主人様、勝ったよ!悪い騎士がいなくなった!」少女の小さな声が静寂を破った。

老人は興奮で顔を輝かせながら、彼の周りをぐるぐる飛び回った。

「信じられない、若様!あなたはアンデッドの守護者を打ち倒したのです!」

彼はしばらくその場に浮かんだまま、目を大きく見開いた。

「正直に申し上げましょう…まさかあの牛乳が、アンデッドに効果を発揮するとは予想していませんでした」

「やったね! できるって知ってた!」少女が小鳥のようにさえずった。

ピアースはかすかに微笑みながら息を吐いた。

「ママのミルクがこんなに役に立つとは思わなかったよ」

少女はクスクスと笑った―小さな銀の鈴のような音だった。

「ママのミルク? そう呼ぶの、ご主人様? いいわね!」

老人は首を振りながらくすくす笑った。「実に…強力な武器だ」

ピアーズはそこに立っていた――傷だらけで血まみれ、輝くミルクを手に――歓声を上げる幽霊と、乳製品工場に閉じ込められた甲高い声の魂の少女に囲まれて。

それでも、なぜか彼は微笑んだ。

生き延びた。勝ったのだ。

だが何かが告げていた…これは始まりに過ぎないと。


すると地面が震え始めた。

低く喉の奥から響くうなりが洞窟に反響する。

ピアースが最初に感じた――足元で何かが目を覚ますような感覚。

老人と瓶の少女が凍りついた。振動は深まる。石に宿る破滅の唸り。

空気は重く、粘り気を帯びた。呼吸が苦しくなる。洞窟そのものが腐敗を吐き出しているかのようだった。

そして彼らはそれを見た。

光るキノコの向こう、黒ずんだ深淵から、動きが。

数十体。

いや、数百体。

「群れが押し寄せた――唸り声をあげた腐った死体の洪水、洞窟を襲う死の波濤」

ゾンビ化した少女たち。その空洞の瞳には、まだ笑いの記憶が宿っていた。

男たち、顔は乾いた叫びに歪み。

口を大きく開け、歯が折れた老婆たち。

子供たち。親たち。老人たち。

生命への嘲笑。村は悪夢へと変貌した。

瓶の少女の声がかすれた。

「ご主人様… あまりにも多いです!」

老人の亡霊はさらに青ざめ、揺らめく姿が不安定になった。

「こ… これは何だ…?」彼は囁いた。「これは自然の摂理ではない」

少女が再び、切迫した恐怖を込めて訴えた。

「行かなくては、主人! お願いです…ここから出ましょう!」

老人は激しく頷いた。

「入口の門だ! 今すぐ走れ、手遅れになる前に!」

二人はピアースの方を向いた。

だが彼は走っていなかった。

今回は違う。アンデッドが次々と現れる―這いずり、呻き、叫びながら。洞窟は彼らの数で揺れた。

そしてピアースは立ち止まった。

彼の呼吸はゆっくりだった。


瓶を握る手が強まった。 彼はゾンビ騎士を思い出した。切断された手。

救った魂。光。ミルク。

彼は群れを見た。そして震える仲間たちを見た。

彼の声は穏やかだった。明瞭で。揺るぎない。

「今回は違う」

間を置いて。

「もう逃げはしない」

彼は一歩踏み出した。

「戦う」

彼は意図的に動き、群れと仲間たち――老人と瓶の少女――の間に身を置いた。味方だ。

素早くベルトのループを外すと、瓶の少女を腰の位置にそっと収めた。

「しっかり掴まってろ」と彼は呟いた。

すると彼は手を上げた。

目を閉じた。

内側で、彼はきらめきを探った――あの奇妙な、内なる魔力の糸を。それは彼の核心から湧き上がり、四肢を駆け巡った。だが今回は、混沌とした感覚ではなかった。本能でもなかった。

それは目的だった。彼はただ導いただけではない。形作ったのだ。

練り上げた。

まるで呼吸の仕方を思い出すように。

老人は黙って凝視し、幽霊のような顎がぽかんと開いた。ピアーズの腰に下げた瓶が不規則に光り、その小さな声は畏敬の念で静まり返っていた。

彼らの前に、エネルギーが集まった。白い球体が脈打つように現れ、宙に浮かび、渦巻きながら唸りを上げた。だがそれは火でも水でもなかった。それは乳だった。

巨大で、超高温の、輝く魔法の乳の球体。

洞窟に第二の太陽のように浮かび、暗き石と果てしなく押し寄せる死者の群れを、温かく黄金色の輝きで包んだ。

周囲の空気は波打つ。魔力と高まる緊張で重く淀んでいた。

ピアーズは目を開けた。

彼の声が響き渡った――揺るぎなく、断固として、激しく:

「ミルク…キャノン!」

言葉が部屋中に反響した。

彼は輝く球体を前方に放った。

彗星のように空気を裂いて飛んだ――無音で、眩しく、止めようのない速度で。

そして群れの中央に激突した時、それは爆発しなかった。

消し去ったのだ。

炎も、雷鳴もなかった。

ただ、純粋で輝きに満ちた乳白色の光が波紋のように広がり、アンデッドを飲み込んだ。

灼熱の波となって外へ溢れ出し、洞窟全体を白き津波で覆った。腐った肉は蒸気となってシューッと音を立てた。骨は軋み、粉々に砕け散った。群れは自らへ崩れ落ち、灼熱の乳の復讐に溺れた。

焦げた肉の悪臭が充満したが、蒸気の立つ奇妙な甘ったるい香りに一瞬覆い隠された。

ゾンビたちは叫びさえ上げなかった。

波が引いた時、戦場は原形を留めていなかった。かつてアンデッドの大群がいた場所には――今や水たまりだけ。泡。骨。壁に沿って立ち上る蒸気は、二度目の死から逃れる亡霊のようだった。

ピアーズは腕を下ろし、息を切らした。指先から放たれた魔力がきらめき、消えていく。

成し遂げた。

勝利したのだ。

背後には、静寂が支配していた。


老人は宙に浮かんだまま、目を見開き、口をぽかんと開けたままだった。

ゆっくりと瞬き——ピアーズを見、荒廃した光景を見、再び彼を見る——完全に、そして完全に呆然としていた。

腰に括り付けた瓶から、かすれた小さな声が漏れた。

「…あれは…温めたミルクか?」

老人はかすれた声で言った。「…若様…一体…何事だ…あれは?」

まだ息を切らしているピアーズは、ベルトの瓶をちらりと見た。

次に戦場を。

そして再び瓶を。

「…乳製品ネクロマンシーを発明したかもしれない」

長い沈黙が続いた。

洞窟の床には、壊れた小川のようにミルクが溜まっていた。上からは、濃厚なコンデンスミルクの滴が石に絶え間なく落ちている――戦いの余韻を刻む、ゆっくりとした、非現実的なメトロノームのように。

ピアーズは肩を震わせ、荒い息をつきながらじっと立っていた。

「若…若様…」老人は呟いた。「私は…何と言ってよいのか。御身の力は理解を超えている。これほどの力を——しかも牛乳で、だ!」

ピアーズは弱々しい笑みを浮かべ、額の汗を拭った。「ああ…まあ、言った通りさ——ママのミルクを侮るなよ」


瓶の少女がくすくすと笑った。

老人は厳かに頷いた。「その通りだ。お前の魔力は、これまで見たものとは全く違う。お前は何かを宿している…古くて、強くて、もしかすると神聖なものさえも」老人の口調が変わり、切迫感がにじむ。

「だが、この場所を離れねばならない。あの爆発は始まりに過ぎない。洞窟の防御は、さらに奥深くまで続いているかもしれない」

ピアーズはうなずいた。「ああ。ここを出よう。俺、昼寝が必要だ。長い昼寝をな」

しかし立ち去ろうとした時、ピアーズは躊躇した。

彼の視線は、ゾンビ騎士の名残である錆びた鎧の歪んだ山に落ちた。奇妙な考えが頭をよぎった。彼はゆっくりとそれを振り返った。

「おい、じいさん」彼の口調は気楽だった。「行く前に…試してみたいことがあるんだ」

幽霊が瞬きした。「また実験ですか、若様?」

ピアーズはニヤリと笑った。「ああ。手短なやつだ。こっちへ来い」

老人は警戒しながら近づいてきた。傍らに置かれた瓶の中から、少女が次第に緊張した声で言った。「ご主人様? いったい…何をなさるおつもりですか?」

ピアーズは答えなかった。彼は胸当てを拾い上げた。予想以上に重く、冷たかった。

「よし」再び立ち上がりながら言った。「こうしよう。魂縛りを試したいんだ。でも魂を瓶や石に閉じ込める代わりに…お前をこれと融合させてみる」


老人は後ずさった。「私を…融合?鎧と?でも…でも私は霊だ!そんな…不格好な人間の器など必要ない!」

「おいおい」彼の目は輝いていた。「新しい体験だと思えよ。それに」彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて付け加えた。「お前、めっちゃカッコよくなるぜ」

老人はためらった。半透明の体が不安定に脈打っている。錆びた金属を見やり、次にピアースを見た――そしてため息をついた。

「…これは狂気だ」

ピアースはウインクした。「その通り」

彼は空いた手を上げた。魔力が奔流のように湧き上がる。指先が淡く脈打つ光を放つ。見慣れた画面が目の前に点滅して現れた——青いホログラフィック画面が再び彼の前に実体化した

特殊スキル:魂縛

説明:この特殊スキルにより、憑依された存在や霊縛された存在(妖怪に類する存在を含む)から単一の魂を抽出し、適切な器やアーティファクトに縛り付けることが可能となる。宿主内に侵入した存在を特に標的とする。真に生ける者や憑依されていない者には効果がない。

スキルを使用する?

ピアーズは考えた:承諾。

画面がちらつき変化し、次のプロンプトが表示された:

魂を融合させる対象を選択:

彼は老人を見た。そして鎧を見た。

さて、これがどう機能するか見てみよう。

彼は集中し、錆びた鎧へと意思を注ぎ込んだ。ピアーズの掌から細い魔力の光線が放たれ、老人の幽霊のような姿と腐食した鎧を包み込んだ。両者はきらめき…ぼやけ…そして──

融合した。

その効果は…奇妙だった。

鎧がぴくぴくと動き出し、立ち上がった。手足が不自然に痙攣する。金属がきしむ。胸当てが肋骨のようにガタガタ鳴る。ゆっくりと鎧は直立した。

だが何かがおかしい。

頭部がなかった。

兜が失われていた。まるで首から上が空っぽの、動く鎧のようだった。

鎧の中から老人の声が反響した。金属的で歪んだ声だ。「な…何が起きた? 俺が…金属の中? 錆を感じられる?」混乱しているようだった。そして、かすかに不快感を帯びて。

ピアーズは瞬きした。「えっと…そうだな。お前は…今や首なし騎士ってわけだ」

「…えっ?!」鎧が噴き出した。

瓶の中から、少女の声が響いた。切迫しつつも希望に満ちて。「お父様?あなたなの?」

老人は凍りついた。そして、柔らかく、畏敬を込めて:


間を置いて、


「ああ、私のメリアよ…私だ。本当に私だ」

何かが動いた。空気の中ではなく――二人の間の空間で。共鳴が脈打って広がり、二人をつないだ。

ピアーズはベルトから瓶の少女を外し、慎重に持ち上げながら近づいた。

老人は震えるガントレットを一つ上げた。ピアーズは優しく、敬虔な気持ちで、瓶を差し伸べられた手にそっと置いた。

鎧の手が触れた瞬間、瓶の少女は輝いた――眩しい光ではなく、蘇った記憶のように柔らかく黄金色に。

そしてゆっくりと、ぎこちなく、彼は彼女を胸に抱き寄せた。

笑う顔も、涙を浮かべる目もなかった――それでも、その感情は紛れもなかった。

その瞬間、二人は互いを、金属の殻とガラスの容器としてではなく、父と娘として見つめ合った。

そして、彼らは互いを見つけたのだ。

ピアーズは深く感動し、静かに立っていた。

彼は、家族の愛の永遠の力を証明する、真に特別な瞬間を目撃していることに気づいた。




* * *


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