古い歴史と村の言い伝え
とある村のとある場所に、いまは古びた神社がある。
そこにはかつて、村人に慕われた神様のような人の形をしたモノがいた。
それは、もう35年も前の話で、私は都会に引っ越したけれど、どうしてももう一度会いたくて、こんな田舎まできてしまった。
私が住んでいた村は、いまや畑と田んぼに囲まれていて、ほとんどの人が自営業で働いていた。そのほとんどが年配の方々ばかりだ。当時の私を知る人はいないだろう。
この村のなにが異様だったかと言うと、怪我をしたときに医者よりも先に診てもらう存在のような崇められている神様がいた事だ。この神様を頼れば、たちまち怪我という怪我は治ってしまった。
どういう原理なのかはさっぱりわからない。誰かが高いところから落ちたり、致命傷で死にそうな患者がいると、すぐにそこへ連れて行かされる神社があった。
そこには、黒子のように真っ黒い装束を身にまとった男性のような形をした者が常駐していた。
その者の顔を見た人は誰もいない。常に顔の部分を1枚の布で隠されていて表情を見ることは出来ない。その異様さから村人からは、あまり好かれていなかった。というより、怖がられていた。
けれども、近くに大きな病院があるわけではない村の人達にとって、大病を一瞬にして治すことから、有難がられていたし私もその人に小さな頃、怪我を治してもらったことがある。
けれど、怪我をしていない時にこの神社には、決して来てはいけないと大人達から言われていた。
でも、私はその黒子がいまも気になっているのだと思う。
村には、もう数名の人しか暮らしていない。自分と同じように若い人は都会に行ってしまったんだ。
私が暮らしていた頃も田舎だなと思っていたけれど、よりいっそう田舎さを増していた。
小さな頃から、誰も近寄っていなかったのだから、神社の周りは荒れ放題だ。
けれど、神社内を黒子さんがいつも手入れをしていたのを私は知っている。
だから、いまも錆びれてしまっていても神社内部はそれなりに綺麗なままだった。久しぶりに来てもそれは変わらないなと感じさせた。
階段を上ると境内を掃き掃除している黒子さんを発見した。
その姿は、私が5歳の頃に会っていた姿と何も変わらなかった。やはり、この者は人の形をしていても人ではないのだろう。




