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時の扉を開けて~初恋をこじらせた魔法学園のプリンス令嬢と早とちり令息の時間旅行~  作者: 壱邑なお


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22/23

【番外編4】春のピクニック 前編

 ヘイミッシュ魔法学園の新学期が始まって、最初の外出日。


 最上級生になったメイベル・ハートリーは、親友のステラに連れられて、街外れにある公園に来ていた。

「えっ、ここ? で、パーシー達が待ってるの?」

 

 満開の時はさぞ見事だったろう、園内をぐるりと囲むアーモンドの花は、とっくに散り始めて。

 白い花びらにまみれた芝生の間を、数組の家族と大型犬がのんびりと、散策しているだけ。

 特に楽しいイベントも、サプライズも起こりそうにない。


 こんな所で待ち合わせ?


「そうだよ。あれれーっベル、何かがっかりしてる?」

「だって、せっかくの」

「Wデートなのに?」

 にんまりと、ステラに返された。


 今日は、ベルことメイベルとパーシー、ステラとアレク――二組のカップルが予定を合わせて、初めて一緒に出掛けることになった記念すべき日。

 外出日の決まり通り、いつもと同じ制服姿だけど。


 シンプルなシャツとタイの代わりに、今日は襟と袖口にレースが付いた、スタンドカラーのブラウスを合わせてみた。

 アドバスをしてくれたステラは、少し透け感のあるオフホワイトの、ボウタイ付きブラウス。


 黒いテールコートとグレーのストライプスカートに合わせると、二人共ぐっと大人っぽく見えた。

 寮の鏡の前で、『いいじゃん、似合ってるよ』『そっちこそ!』と、ワクワク支度して来たのに。

 

「だって……どうせなら。思い出に残るような、特別な日にしたかったなって」

 ぽつりと(つぶや)いたメイベルの顔を、イタズラっぽくステラがのぞき込む。


「例えば、おばあさんになった時、孫たちに話したくなるような?」

「うんっ!」

 きっぱりと(うなず)いたメイベルに、

「かーわいぃー! そーゆーとこ、ベルって乙女だよねー?」

 ステラがにんまり目を細めた。


「ちょ、乙女とかそんなんじゃ……!」

「はいはい、『ヘイミッシュのプリンス』様」

 喜劇女優のように、おどけてお辞儀をしてから、

「心配しなくても大丈夫。きっとステキな一日になるよ――ほら、あそこ!」

 ステラが、公園の奥手を指さした。


「おーい!」

「こっち、こっち!」

 少し小高くなった堤防の上で、二人の男子が手を振っている。


 その後ろでは、街の境界沿いに流れるイテル川が、春の日差しを銀色に反射して、ゆったりと蛇行していた。


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