【番外編2.5】きみも星 前編
番外編2のオマケ話です。
前後編、明日で完結します。
4月の初め。
薄紅色のアーモンドの花が、庭のあちこちで咲き誇る、ヘイミッシュ魔法学園に。
春季休暇を終えた生徒たちが、賑やかに戻って来た。
「ベル、久しぶり! 休暇はどうだった?」
寮の部屋に入った途端、ステラ・リードが弾んだ声をあげる。
「楽しかったよ、ステラ! おばあさまたちと買い物に行ったり、パーシーと音楽会に行ったり!」
メイベル・ハートリーも、笑顔で返した。
「へーえ、音楽会? また途中で、抜け出したとか?」
にやりとベルに問いかけると、
「ちゃんと、最後までいました! パーシーが『終わった』って勘違いして、曲の途中で『ブラボー!』って叫んじゃったけど」
くふっと楽しそうに、恋人の『早とちりエピ』を披露して来る。
ベルは彼の早とちりを、バカにしたり嘲笑ったり、絶対にしない。
『だって、あれはパーシーの個性だし?』と、男前に胸を張る。
パーシー先輩、ほんっと、いい彼女見つけたね!
ベルの惚気を聞いてたら、何だか急に、アレクシスの顔が見たくなって。
「ちょっとだけ、温室行ってくるね!」
荷解きは後回し。
ステラは、部屋を飛び出した。
回廊を抜け、ピンク色の屋根のようなアーモンドの花の下、中庭を横切ると。
廊下の端に、温室が見えて来た。
『今日は水曜じゃないし、約束もしてないけど』
何となく会える気がして、ガラス張りのドアをそっと開くと、
「あっ、ステラ先輩―じゃなくて、ステラ!」
笑顔で振り向いたのは、赤毛のメガネ男子。
「えっ、アレク? 何でまた、弟のフリしてるの?」
きょとんと尋ねると、
「『変色魔法薬』が、1回分残ってたから。ステラをびっくりさせたくて!」
にっこり返して来た。
その笑顔に、何だか違和感を感じて。
メガネの奥をじっと見る。
口角はキレイに上がっているのに、黒い瞳は笑っていない。
ただ冷静に、観察してるだけ。
アレクはこんな目で、わたしを見ない。
いつも嬉しそうに、夢見るみたいに笑いかけてくれる。
「あなた……アレクじゃない。本物のケネスでしょ?」
すっと指で差しながら、ぴしりとステラが指摘する。
「えっ、マジで……?」
ぱちりと、黒い目を見開いて。
「何でこんなにすぐ、分かったの?」
偽アレクが、面白そうに聞いて来た。
「分かるよ。だって……あなたより」
ストレートの金髪をばさりと払い、きりっと緑の瞳で見据えて。
「あなたの真似したアレクの方が、百万倍可愛いから!」
『先輩なめんな』と、ステラは言い切る。
「かっけー!」
ひゅうっと口笛を吹いてから、
「―だってさ、アレク兄さん?」
ケネスがにんまり、温室の奥に声をかけると。
植物棚の陰から、真っ赤になった氷のプリンス―アレクこと、アレクシス・ブロワが現れた。




