【番外編2】きみは星1
卒業式とプロム(卒業パーティ)が無事に終わり、数日後に春季休暇を控えたヘイミッシュ魔法学園。
5年生の教室ではステラ・リードが、抜け殻になっていた。
「では今期の授業はここまで。次に会う時は、皆6年——いよいよ最上級生だな。春休みの間も、予習復習を忘れずに!」
魔法歴史学の先生が締めの挨拶を終え、階段教室から退出した途端。
「あーっ……!」
机に両腕を投げ出して、ぱたりと倒れ込むステラ。
少し乱れたストレートの金髪が、ふわりと広がり後を追う。
「ちょっ、ステラ! 大丈夫!?」
親友のメイベルことベルに、肩を揺すられ。
「んぁ……だいじょぶ、だいじょぶ。プロム終わったら、何か気が抜けちゃって」
がくがく頭を揺らしながら、へらりと笑って見せた。
「わたしってほらー目標があると、とことん燃えるタイプだから?」
「だね? その節は、大変お世話になりました」
恋人のパーシーにいきなり誘われたお陰で、事前のダンスレッスンや諸々の情報、アドバイス。
当日は『プロム実行委員長』としてフォローしてくれた親友に、ベルは深々と頭を下げる。
「いいって、いいって! それより……」
「なに? マッサージでも、してあげよっか?」
『よっしゃ!』と、腕まくりしそうなベルの、琥珀色の目をじっと見上げて。
「プロムの途中でパーシー先輩と消えたとき、どこで何してたか教えて?」
鮮やかな若葉のような、緑の瞳を細めたステラが、にんまり問い質した。
「はっ、えっ!? べっ別に、何も……」
「うっそ! いちゃいちゃしてたって、この顔に書いてありまーす!」
真っ赤になった親友の、頬を突いて遊んでいると、
「んんっ——!」
低い咳払いと一緒に、通路側から伸びて来た指先が、とんっと目の前の机を叩いた。
「やばっ……」
イヤな予感に眉を寄せながら、ゆっくり顔を上げると。
前髪をきっちりサイドに流した、アッシュグレーの髪に、冷たいアイスブルーの瞳。
整った顔に、苛立ちを隠そうともしない同級生。
次期監督生のアレクシス・ブロワ——通称『氷のプリンス』が。
無言のまま机から上げた親指で、ぐいっと教室の出口を指す。
はっ……?
それって。
『とっとと出ていけ』ってことですか?
いつもサポート役の、ステラが主役のお話です。
全5話、毎日更新します。
ブクマやリアクション☆☆☆☆☆などで、応援いただけると嬉しいです!




