闇の中で
ホー ホー ホー
先ほどは見えていた月が、気付けば雲に覆われている。夜の静寂の中、鳴き声と車の音だけが響き渡る。ここまで遅くなったのは、仕事を片付けるのに時間がかかってしまったからだ。帰宅する時間がここまで遅くなると、焦燥感でハンドルを握る手に力がこもる。ふと見た時計。時刻を見て、今まで使うのを躊躇っていた、森の中に続く、ナビが近道と示すこの道を通ることに決めた。
道に入った瞬間。
おぉーーーい
突如響き渡る、静寂を切り裂く異音。人の声?こんな時間にこんな場所で?ハンドルを握る手にさらに力がこもる。
おぉーーい
音が、近づいた。まずいまずいまずいまずい。追いつかれたら絶対にまずい。根拠は無いが確信する。ナビによると、ここを抜けるまであと500m。
おぉーい
声がさらに近づく。あと400m。
声が止んだ。あと300m。
永遠に感じる。あと200m。
もう少し、あと100m。
おぉーーーい!
森を抜ける瞬間、一際大きな声が暗闇の中を木霊する。前だけを睨みつけ、そのまま脱出。しばらく進むと、闇を優しく照らす明かりが見える。ふう、助かった。一息つき、ハンドルを握り直す。刹那、耳元から。
おい
気付いときには家の前にいた。あの後、何があって、どう家に着いたのか、どうやっても思い出せない。
無事に帰れて良かったです。




