待雪家跡
この辺で肝試しをするなら、待雪家跡が真っ先に挙げられる。とはいっても、ここは雰囲気があるだけのただの廃墟で、今までも幽霊が出たというような噂も、心霊スポットとして紹介されるようなこともなく、たまに肝試しに地元の若者が入るような場所と化していた。だからこそ中は多少踏み荒らされている程度で、家具なども使われていた当時の姿を残している。立地面では、大きな道路からまあまあ近く、しかし人が通る場所からは上手く死角になっていて、バレないように侵入することは容易い。
そういう理由で、暇を持て余していた私は待雪家跡に忍び込むことにした。昼間だったため、障害物に足をとられるようなこともなく、スムーズに忍び込むことができた。
しばらく探索していると、足音に混じってギシ、ギシ、と何かが軋むような音が聞こえた。周りを見ても、人がいるような様子はない。ネズミかなんかかな、と考えつつ、洗面所まで来たとき。洗面台に設置されていた鏡に、ギシ、ギシ、という音と共に、紐が首に繋がり揺れる人が映っていた。
一目散に待雪家跡から脱出し、なんとか自宅まで辿り着くことができた。鏡に映っていた顔は、満面の笑みを浮かべていたように見えた。これまで待雪家跡に幽霊が出たことは聞いたことがない。そのうえ、確か十数年ほど前まで住んでいた4人家族の誰かが自殺したという情報は聞いたことがない。一体あいつは何だったんだ。
ギシ、ギシ。
まただ。この笑顔。またあの何かが軋むような音が聞こえる。笑顔と一緒に。後ろから?それとも、右?左のような気もする。笑顔。いや、前、か?
………まえ。
鏡に映ったのは何だったんでしょうか。




