つながる
何かが割れたような鋭い音。はっと目を覚まし、体を起こす。どうやら疲れ過ぎて床に倒れて寝ていたようだ。頭もすごく痛い。周囲を確認したが、いつも感じる気配以外には異常はないと思う。最近は過労死しそうなほど忙しかったため、今回はあの手順を踏むのも久しぶりだったが、どうやら無事に夢に来れたようだ。体が思い通りに動かせないことに気付き、体の状態が現実と同調することを思い出す。夢の中でというのも変な話だが、ゆっくり休むことにした。心做しか現実より回復している気がするし、多少はマシだと前向きに考えよう。
現代社会はストレスが積み重なり顕在化したものだと思う。人間関係、仕事、老後への不安、その他諸々と多岐に亘るストレスの出所が現代社会であるからだ。そのため、今を生きる人々は独自のストレス解消法を確立しているのではないだろうか。かくいう私もオリジナルの方法を使っている。そしてそのストレス解消法というのは「ある鏡に触れて就寝する」ことだ。もちろんこの行為そのものがストレス解消になるわけでは無い。こうすると見ることができるいい夢が、溜まったストレスを吹き飛ばしてくれる。
その夢は、不思議なことに起床するところから始まる。常に誰かがそばに居るような気配を感じられると、その夢に来ることができたということになる。夢の中の世界は建物の位置などは現実と同じように見えるが、やはり現実とは違う。今まで現実と夢の両方で関わったことがある人に限るが、性格が現実と正反対であることが分かっている。現実ではおとなしい人が、夢の中では常に叫び暴れ回っているという感じだ。夢の中で暴れ続けている人が多いのは、おそらくそれが関係しているのだろう。もちろん私も色々とやりたいことをやりたいようにしている。なぜなら夢の中だからだ。
この夢の中では、現実で物理的にできないこと、例えば空を飛ぶことなどはできない。また、夢の中での体や物の状態は現実の影響を受けるようで、怪我をした日にこの夢を見たときは同じ位置に怪我があり、現実でコップを壊したときは夢でも同じように壊れていた。しかしその逆はなく、夢で壊したはずの建物が現実では無事だった。他には、時間の流れが現実と同じではないことが分かっている。現実では夢で過ごしたよりも何倍も時間が経っていることが多い。
夢の中で満足すると、謎の強い確信に従って夢に来た時と同じように鏡に触れて眠りに就く。夢の中で眠りに就くというのもおかしいが、再び目が覚めると、感じていた気配が消え現実に戻ったことがわかる。
ある程度休めたし、そろそろ現実に戻る時間だろう。そう思って鏡を探すがどこにもなかった。寝室を出て、家中探し歩いたら、窓が粉々に割れていたのを見つけた。起きた時の何かが割れたような音を思い出す。現実では窓は割れていないはずだし、誰かが窓を割ったのだろうか。割れた窓の近くに例の鏡を見つけた。それに触れ、就寝しようと寝室に戻る。
寝室のドアの前で止まる。閉じたドアの向こうに、心做しかいつもとは違うような気配を感じるような気がした。ドアを開き、ベッドに向かう。そういえば、ここを出る時ドアを閉じただろうか。そう思った瞬間、鈍く響いた音と共に頭へ強い衝撃を感じ、意識を失った。
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