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カタる傍  作者: 金艮
16/23

狼毛犬角

 初めてキャンプをしたのも、もう相当前か。順当にキャンプに魅了され、幾度か経験も積み、上級者まではいかなくとも中級者くらいではあるだろうと自負している。今回は時間が取れたため、1週間ほど宿泊することに決めた。1週間も滞在するのだ、どうせならと、1度も行ったことのないキャンプ場に来てみたのだが、初めての場所だったことや久しぶりのキャンプだったこともあり、準備などに時間をとられ、すぐに暗くなってしまった。久々にするキャンプで疲れがたまったのか、夜になるとすごく眠くなった。今日はあまりキャンプを堪能できなかったし、早く寝て明日に備えよう。


 目を覚ますと、少し気分が悪かった。さすがにマットや寝袋だけでは疲れが完全に取れなかったのだろうか。体を起こすと、周りに無数に落ちている細く長い何かが目に入った。おそらく動物の毛だ。テントが開いていたのか、開いていたとして動物は入ってくるのか。テントを確認するが、やはり開いていない。毛の持ち主が熊だったら大変だ。熊は一度目をつけた獲物は絶対に逃がさないと聞く。少し位置を移動するくらいでは意味がないだろう。もう帰ってしまおうか。しかし、荷物が荒らされた形跡はないし、怪我もない。とりあえず様子見として、今夜は近くに予備のテントを張ってそこで寝て、荷物とビデオカメラを1つ目のテントに残し、毛の持ち主を動画に収めることにした。


 次の日目を覚ますと、また周りに毛が落ちていた。そのうえ量が増えていた。こころなしか気分の悪さも増している気がする。それにしても変だ。食べ物狙いの動物なら荷物が無いこちらのテントに来る意味が無い。人間だとしたらそれに加え動物の毛を落とす意味も無い。毛が落ちている以外実害はないし、カメラを確認しても、予備のテントを映していなかったため、毛の持ち主も映っていなかった。張った意味が無かった予備のテントを片付ける。今夜は自分が寝るテントの内部全体が映るようにビデオカメラを設置しよう。今度こそ毛の持ち主の正体を暴いてやる。


 みたび目を覚ます。落ちている毛はさらに増えていた。気分の悪さは最高潮、身体的には絶不調だ。どうにか体を起こし、ビデオカメラを確認する。とばしながら見ていると、何かが侵入している場面を発見。辛さを訴える体をどうにか無視し、動画を注視する。


 どこからともなく、額の一本角と異様に長い尻尾を持つイヌ科動物のような獣が4匹入ってくる。尻尾を除いた体の大きさは1mやそこらだろう。しかし尻尾がとにかく長い、というより大きく、体よりも場所をとっているように見える。それらは寝ている私の周りをぐるぐると歩きまわり、止まったかと思えば、前足を器用に使って尻尾をむしりはじめた。しばらくして1匹が私の腹に角を突き立てた。そしてそのまま、引きちぎるかのように頭を振り上げた。驚愕し、慌てて体のちぎられた箇所を見る。が、怪我はない。再び画面に向き直る。なぜかちぎられたであろう箇所からの出血はないが、かわりに何かぼやけたものが自分の腹から飛び出ていた。そのぼやけたものを完全に切り離すと、獣はむしった毛を張り付け始めた。4匹全てが、角を突き立てた箇所は違うが同じ行動をとっていた。4匹がその行動を終えると、尻尾が大きな獣が4匹と尻尾が小さな獣が4匹、合わせて8匹に増えていた。1匹の獣が1匹の獣をつくっていたのだ。8匹は大量の毛を残し、入ってきたときと同じように、どこからともなく出ていった。


 毛の持ち主は映っていたが、行動の意味や理由は分からなかった。おそらくだが気分の悪さも獣の行動に関係があるのだろう。もしかすると、ぼやけたものは私の体力のようなもので、それを材料にして個体数を増やしている、のかもしれない。キャンプ2日目の朝より3日目の朝、3日目の朝より今朝の方が気分が悪いのは、最初はあの行動をした獣は1匹だったが、2匹に増え、そして4匹に増えたからだとすると話が繋がる。それなら今夜は8匹が私から体力?を奪うことになる。4匹でこれだけしんどいのだ、8匹から奪われたらおそらく私は死ぬ。


 予定を繰り上げて荷物をまとめ、キャンプ場をあとにする。道中、数匹の異様に大きい尻尾を持つ獣が見えた気がするが、きっと見間違いだ、そうに違いない。





なかなか変な動物ですね。

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