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カタる傍  作者: 金艮
15/23

台風銀座

 風が吹き、戸や窓が揺れ、ガタガタと音をたてる。台風はとうに過ぎ去り、その名残は雨の匂いと荒れた敷地、そしてこの風だけだ。


 ここには昔から多く台風が来る。台風の知識が一般的になる前は、ある伝説が本当だと信じられていた。罪を犯し、この土地に封印された神がいた。その神と仲の良かった風の神が、封印された神を救うために身を台風へと変え、あらゆるものを壊しながらこの土地までやってくる。しかしそれは多くの力を使うため、あと一歩のところで力尽き、自らの領域で再生する。それでも諦められない風の神は、何度もその身を台風へと変え、この土地までやってくるが、あと一歩のところで力尽き、再生することを繰り返す。その繰り返ししかできなくなったことが、あらゆるものを破壊した風の神への罰だという。それだと被害を受ける我々人間はどうなんだと思うが、そのあたりは重要ではないのだろう。


 強い風で窓が揺れ、カーテンが膨らむ。その音で回想から引き戻され、考えないようにしていた、荒れた敷地の処理という現実が叩きつけられる。生まれたときから恒例行事となっているから慣れてはいるのだが、面倒なものは面倒だ。本気で移住を検討しようかな。金銭的に無理なんだが。現実に打ちひしがれている間にも風は吹き続ける。窓を閉めようと近寄った瞬間、一際大きくカーテンが膨らんだ。そして、そのカーテンを払いのけるように手が伸びてきた。は?手?網戸は閉めている、開ける音はしなかった、人間ではない?


 とっさに身を隠し、様子をうかがう。完全に侵入を果たしたなにかは、あたりを探っているようだ。息を殺し、暴れる心臓をおさえる。隠れている場所の反対側に向かう姿を確認し、その場を離れる。2階に避難するため、気配を消して階段を上っていく。上りきる直前、音をたててしまった。急いで部屋に逃げ込む。


 さきほど台風の神話を思い出していたからか、こんなときにもかかわらず物語の続きを思い出す。何度も力尽き、再生を繰り返した風の神は、消える寸前に近くにいた人間に取り憑くという手法を得た。その代わり、人間に乗り移ったことで、封印された神の場所が感知できなくなり、憑依が維持できなくなるまでさまよい続けるようになった。取り憑いた人間の精気までも使い果たし、最終的に風の神は自らの領域でまた再生する。取り憑かれた人間は、風が吹くだけで散り散りになるほどもろくなった。


 階段が軋む音が聞こえる。やはり音は聞かれていた。少しずつ近づいてくる足音。今は隣の部屋を開けているようだ。中までしっかり覗いている。くるな、くるな。念が通じたのか、足音は消えた。その穴を埋めるように、扉の向こうから、強い風が吹く音となにかが飛ばされるような音が聞こえた。





無事で良かったです。

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